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平日の鳴虫山

アーカイブ:日光の山達  日時: 2007年06月20日 22:00

 平日に山行をしているというと、とうとう不良中年の仲間入りかと思えばさにあらず。
 珍しく、振替休日をとることになり、平日に休むというサラリーマンなら垂涎もののこの時間を何に使おうと思案したところ、「当然、バイクか山でしょう!」。

いろいろと思いめぐらし山行に決定。

 行き先は、中高年に人気の高いと言われている鳴虫山(なきむしやま){1103m}にすることにした。
 登山人口の大部分が中高年である昨今、あえて"中高年に人気の高い"という表現はなにゆえか、その謎を探りに行く山行である。(本当か?>自分)

 何はともあれ、もっともらしい理由をくっつけての出発であるが、天気がいまいちすっきりしない。大気が不安定であり、夕方にはにわか雨や雷雨の可能性が若干あることを天気予報が報じていたからである。山中での雷は最大の脅威である為、現地の状況で登山前の撤退、登山後は山中で遠雷を聞いたら即最短ルートで下山という覚悟で出発した。

 今回は車を使わずにJR線に乗り日光へアクセスすることにした。改めてのんびりした気持ちでローカル線の旅を楽しむのもまた良いものである。
 普通ならば日光へは車やバイク以外のアクセスが考えられない。あえて電車に揺られながら行くのも脱日常を感じることしきり。

 日光駅の改札を出てみると、それなりに青空が見えてはいるものの、男体山方面はガスが掛かっているが、雷雲のような動きが激しい感じが無いので一安心だ。多少の雨は覚悟して行動を開始することにした。

 コンビニで今日のランチ(おにぎりとパン)を仕込んで、住宅街の裏手にある登山口へ。
 登り始めてすぐに天王山に到着だ。鳥居をくぐれば小さな広場があり、日光市街が一望出来る。さながら近所の裏山といった趣である。

 天王山を後にして更に登って行く。評判通り道標や登山道もしっかりしており、間違えやすいポイントにはちゃんと案内がある。全山通しての印象だが、逆に通常コース以外もいろいろ歩かれており、よく見るとかなり濃い踏み跡があちこちにある。そういった所に全て「封印」がされているところが面白い。他県からの登山者も多いだろうから、地元観光担当部署の骨折りで、道迷い遭難者を出さない配慮であろう。

 若干の急登をこなすとそこは神ノ主山(こうのすやま){842m}である。日光市街への展望が開けているが、生憎の天気で今ひとつの景色である。一番よく見えなければならない男体山や女峰山もガスの中。晴れていれば相当に豪快な風景だと思う。是非次回リベンジしたいものである。

     
コース注意が随所に    神ノ主山 山頂    神ノ主山より日光市街

 神ノ主山を後にすると、鳴虫山までは小ピークをいくつも超しながら徐々に高度を上げていく。

 特徴的なのは、杉の根がうねうねと登山道に露出していることだ。(下写真左)
 足がかりがあって登りやすいという人もいるようだが、自分は階段系があまり好きでないので、巻道があれば積極的にそちらを登った。

 天気があまり良くないので、登山道に差し込む日差しも弱く、鬱蒼という雰囲気がぴったりとする。それに加えて、越えた小ピークの次にまた挑みかかるように忽然と立ちふさがる小ピーク。蛸入道よろしくウネウネとした足が張り出していて、さながら次から次へと出現してくるボスキャラを倒しながら進んでいくような感じである。

 もう一つの特徴は、三角点の標柱が随分と地面から飛び出している点だろうか。ウネウネした根っこが「動」ならば、対局な「静」の標柱。よく見てみると結構面白い組み合わせである。

     
木の根階段    標柱のある風景    標柱のある風景

 樹間からちらっと見える空を、更に低い雲が覆ってきた。そのうちパラパラと雨粒の落ちる音が聞こえてくる。天然の雨傘とはよく言ったもので、小降り程度では樹に覆われた登山道はまったく濡れないものだ。ちょっと雨足が強くなって来たが、雲は明らかに早く移動しているし流れる逆側には明るさもある。5分ほど休憩を兼ねて様子を見てから行動を開始した。

 雷鳴だけは聞き逃すまいとしていたが、遙か彼方で"ごう"という音がしてみれば、みな飛行機の通過音や里(日光市街地)での生活音。900m~1000m地帯だが、登山口が既に570mあるのだからこの標高差は充分里山レベルであろう。

 雲の通過と共に雨はやみ、相変わらず出現を続ける蛸入道ボスキャラを次から次へと退治していくと、程なく行く手に光が差した。鳴虫山の山頂へ到着である。立派な展望台があり、これまた観光関係者の力の入れようが感じられる。が、しかし、依然景色は深いガスに覆われており、追い打ちをかけるようにまた次の雨雲が流れてきた。

 暫くすると今登ってきた登山道から声がして、2人連れの中年女性、続けて同じような年齢のやはり女性3人のパーティが登ってきた。会話の内容をかいつまむと、どうやら自分も含めて全員同じ電車でやってきて登ったようである。孤独な往路であったが、山頂での昼食は場所を同じくすることになった。

 雨を避けるべく一旦携帯傘を開いてはみたものの、ザックから食事を取り出そうとしたらもうやんでしまった。まったく忙しい雨雲である。

 こちらは無口な一人旅。比べて女性陣は話題が豊富である。ドカっと腰かけ弁当を取り出すと、「さあおしゃべりの時間よ」とばかり話に花が咲く。そんな中、「お先に」と声を掛けて山頂を後にした。

 結構急な下りが続き、ようやく緩やかな尾根歩きになったころ、一瞬雲間から光が差し込み始めた。するとどうしたことだろう。それまで比較的静かだった山が一斉にざわめき始めたのだ。ヒグラシが鳴き始めたのである。初めはそこ此処に鳴いていたのが、やがて呼び合うような大合唱とでも言おうか、他の種類の蝉までつられてまるで山全体が大合唱をしているような感じである。まさに「鳴虫山」ではないか。

 さらに面白いのはその後である。一瞬の光の恵みをもたらした雲の切れ間も去りゆき、また元のどんよりとした空になるやいなや、今までの大合唱はぴたっとやんでしまった。まさに自然の寸劇の一幕を見る思いであった。

 その後も緩やかな尾根を進むと程なく合峰(がっぽう){1084m}へ到着。
 合峰は、本によっては合方と表記されていたり松立山とも呼ばれていたりするが、地形図では無名ピークである。

     
鳴虫山    鳴虫山より北西方向    合峰

 合峰には小祠があり、ここから谷沿いに鐵澤不動へ降りていくルートがある。元来修験道であり、若干急な下りもあるらしいが、ガイドブックによると道はしっかりしているということなので次回はチャレンジしてみたいものである。それにしてもこの案内板、山域全体の雰囲気に比べて随分と派手ではないか。

 合峰から更に高度を下げて少し登り返せばそこは独標(どっぴょう){925m}。ここもまた地形図では無名ピークである。この後は下り一辺倒だ。左手(南側)に見えるピークが969m峰ならば、その裏手はバイクで何度も超えたことがある滝ヶ原峠の筈。

 この辺からの登山道脇には小さな紫陽花のような?花が一面に咲いていた。先日寅巳山で見た花と同じだ。群生とはまさにこの事。一面に咲き誇っているようである。

     
合峰よりの修験道    独標    群生している

 高度をどんどん下げていくと、木の根階段の代わりに人口の階段が目立つようになってくる。残念なのは、その大部分が崩壊してしまってかえって歩きづらいことか。また、この辺になるとたまに草や枝が道に張りだしていたりして、そこをくぐるようにして進むようになる。帽子のつばに何かが居るのに気が付き、見てみると尺取り虫のような細長い虫がしがみついている。どうやら悟られまいとして渾身の擬態演技。小枝にでもなりきったつもりなのだろう。そっとしておくとまたのそのそと動き始めて、動かすとまたピタっと止まる。まるで「ダルマさんが転んだ」をやっているようで面白い。そのまま宇都宮まで連れていっても仕方がないので、その辺の葉っぱに待避してもらった。

 電力関係の作業林道のような広い道に行き会うと、ほぼ登山道もおしまい。
 「鳴虫山へ」の道標をいくつか過ごしながら日光第一発電所へ到着。無事下山終了である。

     
なんだろう?山イチゴ?    懸命に擬態中    次の登山者へのプレゼント?

 発電所を過ぎて日光自動車道の下をくぐると、含満ヶ淵と化け地蔵がある。こういった散策コースがデザートのように有るのが中高年人気の秘密なのかな?
 威勢よく流れる含満ヶ淵をしばし眺め、ずらっと居並ぶ化け地蔵の前を進む。よく見ると地蔵さんの顔が一つ一つみな違っているのにビックリ。有る程度似た傾向のやつもあれば、全く個性的な顔立ちで、どこかで会った事のあるようなのも居た。また、よだれかけや帽子も趣がこらされていたり、写真のようにひときわハイカラなお地蔵さんが居たりする。

     
居並ぶ化け地蔵    なかなかお洒落なのも居る    含満ヶ淵

 含満ヶ淵を後にして、滅多に歩くことの無い日光の裏手である町並みを歩き進む。含満ヶ淵から大谷川へ注ぎ込む瀬の水音が心地よい。ここを散策をするだけでも良いのではと思った。

 日光駅までは3Km以上あるが、のんびりを決め込み、ちょっとお洒落?な日光ウォーク。大谷川の橋から神橋の写真を撮ったり、日光駅までの商店街を覗きながら歩く。
 東武日光駅前では、TVでも紹介されたという揚げ湯葉饅頭をいただき本日の山遊びは終了!

     
神橋    揚げ湯葉饅頭    今回も鮮明な軌跡がとれた

概略コースタイム
JR日光駅前発(9:10)-登山口(9:30)-天王山(9:45)-神主山(10:26)-892m峰(10:45)-1058m峰(11:28)-鳴虫山着(11:51)-昼食休憩-鳴虫山発(12:20)-合峰(12:45)-独標(13:25)-日光第一発電所(14:20)-含満淵(14:30)-神橋(15:06)-JR日光駅着(15:50)

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コメント (12)

Non:

 こんばんは。ひとまず、雷に遭わなくてよかったですね。それにしても、平日に静かな
山歩き・・・と思ったら、そうでもなかったご様子。この人気の山で人に会わないというのは、
皆無に等しいのかもしれませんね。私たちが歩いた時はヤシオツツジの時期には少しだけ
早かったんですが、それでもけっこうな人数いました。
 魅力・・・展望と花と、やはりアクセスのよさでしょうね。観光にも事欠かないし(^^)
私たちはバスを使いましたが、観光客と化してのようにのんびり歩くのも、たまには
良さそうですね。

まっちゃん:

Nonさん。こんばんは。

ホント鳴虫山は人気スポットのようですね。
花のシーズンである4~5月。あと、男体山女峰山の雄大な雪景色が見られる3月位も是非昇って見たいなと思います。

今回は私も含満ヶ淵で観光客化してました(^_^)

せろー:

昔々 静かな山旅を好む青年がおったそうな。
ある日その青年は 『鳴虫山だば一人しずかに山旅を楽しめんべ』と
日光さ向かったそうな。 えっちら おっちら 静かな山の中に溶け込んで
青年は 鳴虫山の頂上にたっただよ。良い天気でいい気持ちで。

したらば 下の方から 女の声が聞こえてきたと 一人二人いやいや十人はいたべな。ぺちゃくちゃ ぺちゃくちゃ ぺちゃくちゃ ぺちゃくちゃ。

その集団が 頂上へ着いたと 『兄ちゃんどっから来たんだ』『一人か?』
『歳はいくつだ?』等々。静かな山旅は 終わってしまったとさ。

どんど晴れ

昔々の鳴虫山登山の強烈な思い出です。

    せろー

まっちゃん:

いやはや十対一では言わずとも決着はついていますネ(^^;

今度秋口にまた登ろうと思っていますが、もしよろしかったらご一緒に如何ですか?
と言っても私の超スローペースでご迷惑掛けちゃうこと必至ですが。
先般セローを購入された"なお"さんも山登りされるようなので、一度バイク好きの山登り企画やってみたいですね。

まっちゃんさん、こんばんわ。
今回も良い山行でしたね~^^

鳴虫山は交通の便もよいので、おばちゃんハイカーに人気があるようですね。
大渋滞の話をよく耳にします^^

バイク&山登り企画賛成です♪
最近、バイク好きは山好きも多いことに気づいた私でした。

まっちゃん:

大渋滞!

もしやあのウネウネした登りで渋滞するのでしょうか?
となると、頂上の食事の陣取りも大変そうですね。

山企画。秋口あたりに考えてみます。

せろー:

梅雨の合間の 24日 我中ツーにしようか迷ったが 
やはり男体山が私を呼んでいた。 

朝4時半に起きて 畑のジャガイモを堀り
急いで身支度 セローで行く予定だったが天候が怪しいので
急遽ベストセカンドカー ホンダアクティーに変更
一路 日光志津林道へ

今回は裏男体山ルート 標高差700メートル
7時15分より 登山開始 9時丁度位に男体山頂上に立つ
まっちゃんたちがいろは坂を気持ちよさそうに走っているのが見える??。

視界は良好 10時まで山頂にいて 下山 
お昼前に 車の所に帰り着く。

せっかくなので 湯ノ湖一周(三キロ)を歩いてくる。

まっちゃん:

せろー師匠は男体山でしたか。

「男体山」!
自分の場合は当面の目標です。

志津林道終点あたりから山頂まで水平距離約3Km、標高差700mですね。
うーん、頑張れば登れるかもしれないなぁ。

ちなみに山開きした後も志津林道に車で上がれるものなのでしょうか?

まっちゃんさん、こんにちは。
鳴虫山は、山登りが好きなグループ(倶楽部)や、中高年や初心者を対象とした山登り講習会によく使われているようです。
そうすると、30人が一斉に上り始める!なんてこともあるそうです。

100人くらいの集団に遭遇した人が、あまりのヒドイ事態にグループのリーダーを呼び出して説教をした!なんて笑い話もあります(笑)

まっちゃん:

100人とは凄い!

今年の1月からあちこち登り始めましたが、古賀志山の御岳でざっと20~30人程度の人を見たのが最高で、100人が同時に、しかもあの単一ルートの山域で行動するとは凄いですね。

10人ぐらいの小グループにわけても10グループ。

ということは先日は超ひっそりとした山行だったのですね。私の場合。

せろー:

まっちゃん こんばんわ。

志津林道の件ですが 太郎山や女峰山 大真名 小真名の各登山道の
入り口になっているので 男体山の山開き後でも関係なく
通行できると思いますよ。

標高差700メートルですから まっちゃんの足で楽勝です。ぜひ
快晴の登山日和の早朝に出かけてくださいな。本当に素晴らしい 眺めが
2486メートルの頂上に待っていますよ。

まっちゃん:

せろーさん。志津林道情報ありがとうございます。

なるほど。700メートル登るだけで男体山山頂に立てるなんてムフフですね。
梅雨が明けたら是非チャレンジしたいと思います。

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    大渋滞! もしやあのウネウネした登りで渋滞するの
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    まっちゃんさん、こんばんわ。 今回も良い山行でした
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