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再訪、鞍掛尾根

アーカイブ:宇都宮近郊の山達  日時: 2008年03月08日 21:38
-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 鞍掛山から古賀志山へと連なっていく尾根筋を誰が言うともなく「鞍掛尾根」と呼ぶ。
 古賀志山も鞍掛山も宇都宮市民に愛されている山であるのは言うまでもないが、この二つの山を結ぶ尾根筋、遠目に見ても起伏の激しいこの尾根筋を歩いて見たいと考えるのは宇都宮に暮らすハイカーならば誰しもが一度は抱く願望かもしれない。

 さて、くだんの鞍掛尾根であるが、私は既に3度目になる。正確には途中挫折一回、想定コース一部逸脱一回。すなわち全コースをきちんと歩き通したことが無かったのである。今回はまさにリベンジならぬ三度目の正直になる。

 途中挫折の一回目は体力不足と準備不足。そしてミスコースの二回目は地図読み能力の欠如と判断力の甘さが原因。鞍掛尾根に「おまえにはまだ早い」と諭されているようで内心結構悔しかったのは事実。今回は充分に周到な準備で臨み全コース制覇を成し遂げた。前回の失敗をまた繰り返してしまいそうな一幕もあったが・・・

 

 今回のチャレンジは単独では無い。H君同行だ。二人だとこういうマイナーなコースは(後で決してマイナーでは無いという事を知る)心強いということや、離れた地点に車をデポ出来て機動性が発揮出来るのがありがたい。

 まずは森林公園の駐車場で待ち合わせ。パジェロミニにH君を乗せて鞍掛山の方へと赤川ダム脇の車道を奥へと進む。細野ダムを過ぎ、対向車が来たら到底すれ違い出来ないような舗装林道を走る。

 峠から高度を下げて直線の区間に入った時、突然目に入ったのがあたり一帯の落ち葉が焼けて灰になった光景である。まだあちこちくすぶっていて煙が立ちこめている。数カ所赤い火も小さいながら見られる。割と平坦な場所だったのと、かなり広い範囲だったので下草焼でもしているのかなと思い通り過ぎる。だが周囲に全く人の気配が無い。H君と「あれは山火事なんじゃない」と話して急遽Uターン。

 戻って見るとやはりくすぶってはいるものの熾火のように中が真っ赤に燃えているところ、炎が立木を焦がしている場所もあり、慌てて消防へ通報する事にした。消火活動をしようと思ったが近づいて見るとかなり危険な雰囲気だし、延焼していきそうな感じは取りあえず無さそうなので消防車を待つことにした。
 どうも周囲の焼け方を見ると昨晩あたりに焼けたのでは無いかと思う。付近にビールの空き缶が散乱していたり、焼けたスプレー缶が何故か道の真ん中当たりに落ちている所から、未成年者が焚き火でもして飲酒をしたのでは無いかなどと想像してしまう。いずれにせよ空気が乾燥している昨今、山での焚き火は危険極まりない。

 10分も待っただろうか、消防車や警察、関連の車両がけたたましいサイレンと共に到着。目の前で消火活動開始。とはいっても元々大きな火の手が上がっていたのではないのでちょろちょろっと水を撒いて鎮火した。
 この後、発見&通報者として消防と警察から簡単な事情聴取を受ける。いざこれから登山と言う時に出鼻をくじかれたようでちょっと気落ちしてしまったが、まだ9時前なので今から行けば間に合うだろうと考え予定通りに行動を開始した。

     
消防車到着    くすぶっている    消火活動

 鞍掛山登山口の少し先の所へパジェロミニを駐める。路側にちょっと張り出したところがあって、そんな所でもすっぽりと駐車出来る。流石は軽である。こんな時の為におまえを買ったのだよと一人悦に入るのであった。

 さてさて、山火事騒ぎも一件落着した事だし気を取り直して登山開始だ。今回は長丁場故、出来るだけ体力温存したいところだ。従って、登りの楽な大岩を目指す東回りコースで登る事にした。

 楽なコースなのだがやはり急登の鞍掛山は辛い。それでもまだまだ元気な二人は息を弾ませて大岩に辿り着く。天気は上々。風も無く日差しが暖かい。これから向かう古賀志山が向こうに見える。気温が高いせいか霞が掛かって遠景は今一つだ。

 大岩で充分休憩を取り、文字取り馬の鞍のように平らな山頂尾根をのんびりと進む。相変わらず眺望の全く無い山頂を通り過ぎ、程なく分岐地点を古賀志山方面へと進む。なんと道標が新設されているではないか。最近道標整備のめざましい鞍掛山であるが、よほど歩く人が増えたのだろうか。

 暫く西へ進路を取る尾根であるが、440m級ピークから境界尾根は北へ方向を転じアップダウンのきつい460m級ピーク越えに向かう筈である。実は去年の失敗はここで北へ進路を変えることが出来なかった事だった。今年はここが山場とばかりに注意をしながら進むが、やはり今回も再び440m級ピークから明らかにしっかりと踏まれた西側へのルートへ引き込まれそうになる。下の方面にあちこちにヒラヒラしている赤テープに惑わされて失敗したのが去年。流石に同じ轡は踏まじと立ち止まり北へのルートを探す。少し直下降してはみたものの、道は有りそうもなく山肌は何処までも谷に向かっていく。

 このルート探索の最中に東側の木立の隙間に微かに稜線のようなものが見えた。一旦440m級ピークへ登り返して見ると、なんと北に向かう尾根の入り口に赤ペンキの大きな矢印が。東から歩いて来ると見にくいのが難点だがまずは一安心。今年はルートを外さないで済みそうだ。それにしても如何に廻りをよく見ていないで歩いているということである。ちょっと反省をした。

地図の拡大図はこちら

     
大岩から古賀志山    道標が新設されている    ここは絶対間違えてはいけない

 鞍掛山の北北西にある460m級ピーク越えはなかなかキツイ。等高線を見てもらえばわかるが、北へ方向転換する「例の分岐」から一気に下げて、まるで一こぶラクダようなとんがりピーク越えだ。

 また、コブを下りきった最低鞍部(約340m)から次の431mピークまで一気に90m高度を稼ぐのはかなり脚に負担が掛かる。休日の登山以外、日頃のトレーニングをしていないにわかハイカーの二人にとってはなかなかに骨の折れるコースである。

     
北方面が開ける    尾根からの鞍掛山    ピーク超えは続く

 今日のコースは多くても一人か二人くらいしか会わないのでは無いかと思っていたが、どうしてどうして結構ハイカーが多い。古賀志山の奥座敷としては渋いコースだと思っていた自分にとっては軽いショックだ。何と東京からやってきた6~7人の団体さんも鞍掛山から尾根に乗ってきたという。途中森林公園脇の林道からショートカットで尾根に上がってきた人達。古賀志山から鞍掛山へ向かう老夫婦や、いかにも歩き慣れた感じの中年3人組。すっかりこのコースもポピュラーになってしまったと言わなければならないようだ。
 ちなみに去年2回歩いた時はいずれも一日中人には出会わず、むしろ心細い位だったものだ。

 今日このコースを歩いた人達の中では一番ペースが遅いのではと自負する(笑)われら二人もようやく好眺望の530m級ピークへ到着。このコースでは唯一樹に邪魔されない広々とした眺望が得られるポイントだ。食事は此処か559でと考えていたが、山火事騒ぎで時間が遅れていたのでここで弁当を広げる事にした。

 岩に腰掛け、良く歩いたものだと二人してつぶやく。距離は決して無いのだが、ピーク越えが連続するこのコースはボディブローのように脚に疲労が溜まっていく。こういう時は大休止の後に腿がつったりするものなので注意注意。

 相変わらず霞がかった遠景はイマイチだが、稟とそびえ立つ雪の日光連山や手前に静かに控える鶏鳴山。左へ目をやれば、先日歩いた笹目倉の三角形の山姿が美しい。

     
鉄塔はアクセント?    昼食Pから    笹目倉と鶏鳴山

 一旦50m程下って2つのピーク越え。ランチ休憩で幾らか足取りが軽くなった感じもしたが、やはりかなり辛い。既に太ももがパンパンだ。

 559直前の北側、左手が切れ落ちた部分は水たまりがそのまま凍っていて危険箇所である。神経を使いながらゆっくりと進む。やがて、見慣れた南側からの道との分岐へ、そして559へ到着。

 いやぁー疲れた疲れた。この先ピーク越えはもう無いという安心感から丸太ベンチにどっと腰を掛け、しばし休憩だ。後ろを振り向くと、朝から歩いてきた鞍掛尾根が見渡せる。見ればやはりアップダウンはかなりのものだ。

 559で中年ハイカー二人(それぞれ単独)と話をしたが、鞍掛尾根縦走をするのに森林公園駐車場から天狗鳥屋脇の尾根を縦断して、鞍掛山登山口へ向かうコースで歩いた事があるという。流石に辛かったそうであるが、我々としてはそんな事をしなくても車で鞍掛山登山口へ横付けしてもまだまだ辛い。話をよく聞くと、このお二人、相当古賀志山を歩き込んでいるようで、最近のハイキングブームで心ない人が山を荒らしていくことをしきりにぼやいていた。

     
559から鞍掛尾根    同左    同左

 さあ、いよいよ下山だ。疲れも溜まってきているし事故があってはいけない。注意をしながら降りていこう。

 うーん、やはり太ももがかなりのダメージ。ピクピクと軽い痙攣を起こしそうになる。ちょっと立ち止まり軽くマッサージ。こういう時は少しづつ負荷を掛けながら動かし続けた方が良いので、リズム良く筋を伸縮させながら歩く。

 下山コースは一旦中尾根コースへ入り、途中、北登山道へのエスケープルートを通った。
 中尾根コースは途中ちょっとした岩場が何箇所かあるが、下から登ってくる犬連れのハイカーに二度遭遇した。かねてより犬が岩場を登れるかというのが気になっていたのと、たまたま3m程の鎖場の後だったので飼い主に質問してみた。

 犬はダックスフンド(のような)小型犬であった。だが、殆ど自力で登るという。肉球でグリップしながらルートも考えながら登っていくという。飼い主は勿論イザという時の為にリードは握っているのだから万が一滑落しても大事には至らないのだろう。だが犬にとっては自分の体の数百倍もある岸壁に素手(?)で挑むのだから、結構なチャレンジだと思う。愛犬がけなげに岩場をアタックする姿に飼い主が目を細めるのも解るような気がする。

 やれやれ、北登山道への分岐が見えてきた。ここからはやや急ではあるが南向きに降りていく。降り注ぐ浅春の日差し、広く開けた斜面が優しく一日の疲れを労ってくれているような心もちであった。

     
中尾根から古賀志東稜    中尾根から北登山道へ    鞍掛山麓にて

概略コースタイム
鞍掛山駐車地発(9:00)-周回コース分岐(9:18)-大岩(9:41)-小休止-鞍掛山頂(9:58)-
440m級ピーク(10:08)-約8分間道迷い-460m級ピーク(10:36)-尾根最低標高地点(10:54)-
431mピーク(11:10)-530m級ピーク着(12:17)-昼食-530m級ピーク発(12:46)-
559mピーク(13:18)-小休止-中尾根分岐(13:41)-北登山道への分岐(13:59)-
北登山道合流(14:07)-森林公園駐車場着(14:48)

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コメント (2)

Non:

 こんばんは。一気に拝読しました。まずは消防への通報や事情聴取、お疲れ様でした。誰か解らないけど、
「火事、起こすんじゃねーよ!」ですね! でも大きな山火事には至らなかったようで、本当に良かった…。
 そして、まっちゃんさんとHさん、市民(&県民)の鑑です(^^)

 お二人で挑まれた鞍掛尾根… ま~、道標まで整備されたメジャールートに格上げ(?)されていたとは、
私もビックリしました。私が躊躇している間に、他の方たちはブログなどに掲載されたまっちゃんさん他の
情報を元に、どんどん歩かれていたのでしょうね。
 今度、近場の山に…という話になったら、是非とも Non夫と行ってみます。それこそバイク+車で行けば、
車道歩きが短縮できるし… こうして「間違いやすい箇所」もしっかりチェックできると心強いですし(^^)

 と、私たちの方は、佐野市から熊鷹山を往復してきました。短いわりに手応えがあって、なかなか面白かったです。

まっちゃん:

お読みいただきありがとうございます。

火事は貴重な体験でした。
実はオフレコ(此処に書いたんじゃ全然オフレコでにあですね)なのですが、駆けつけた消防車が活動を開始したときに、若い隊員から「水があと半分しかありません!」という声が上がったり、隊長らしき人が若手にグズグズするな!と檄を飛ばしたりと、なかなか日頃では見られない姿を間近で見ることが出来ました。

水が半分しかないのは違う現場から戻ってきたついでだったのかなぁ。
端にある沢から取水なんて言葉も聞き取れましたが、くすぶっていた程度なので水は間に合ったみたいです(^^;

なになに。熊鷹山ですか。ではでは早速拝見に上がります。


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    再訪、鞍掛尾根
    お読みいただきありがとうございます。 火事は貴重
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     こんばんは。一気に拝読しました。まずは消防への通
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