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地蔵岳と多気山 意外な組み合わせ?

アーカイブ:前日光の山達  日時: 2008年07月12日 22:00
-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 GPSを新調してからまだ実戦での使用を経験していない。梅雨の中休みの予報だが、基本的には不安定な大気。早い時間に一座こなして余裕があればもう一座と考え、粕尾峠にある地蔵岳(じぞうだけ){1274.3m}に、もう一座は細尾峠旧道から薬師岳往復をと考え自宅を発つ。

 粕尾峠はこの季節バイクが多い。タイトで見通しの悪いコーナーの連続は決してハイスピードで楽しむ事は出来ないが、それでも一つ一つコーナーを手繰っていき山越えをしてく醍醐味はこの峠ならではであろう。とりわけ今の季節は、明るい緑の織りなす風景が筆舌に尽くしがたい程美しい。そんな峠に向かって元気に走り去るバイクに道を譲りながら、パジェロミニも日常では使わないような低いギヤーと高回転域のエンジンで高度を上げていく。久しぶりに鞭打たれたターボーエンジンの甲高いタービン音が高揚を誘う。

 峠を越して250m程先に地蔵岳登山口の道標があり、もう少し先に駐車スペースが有った。身支度を調え、GPSをカーナビモードから登山モードに設定変更していざ出発!

 登山口から暫くは穏やかな斜面が続き、ガイドブック通り「トラバース気味」に高度を上げていく。それもすぐ終わって平坦な湿地帯のような所へと出る。地蔵平である。「思川源流へ5分」の道標がある。帰りに寄ってみよう。

 新しいGPSが気になって途中幾度も画面を覗き込んだのだが、事前に把握していた尾根道とは随分離れているルートを歩いて来たようだ。途中には道標が至る所に設置されており、現に予定通りに地蔵平へも到着しているのでミスコースでは無いの確かなのだが・・・

 下野新聞社「栃木百名山」や「栃木の山紀行」さんで紹介されているルートは、いずれも「粕尾峠より足尾寄りに250m下ったポイントから入山し、トラバース気味に登り地蔵平へと到着する」とある。今回自分もまったくその通りに歩いて来たのだが、決定的に事実と違うのは両者とも紹介している地図上に、粕尾峠から殆ど離れていない地点から続く境界尾根を示している点であった。

 ここまでは尾根に乗らずにトラバースしているので、GPSなぞ無くても山慣れした方なら状況記述と地図にトレースされたコースとの不一致にすぐ気付く筈だ。初心者の自分もこの事に確信を持つに至ったのは後半の下山時であった。

     
登山口    地蔵平   

 地蔵平からは山頂より伸びる主尾根に乗り、段々と斜度もきつくなってくる。途中にある展望岩からは東側がひらけており、方塞山の電波塔から大きな横根山一帯が広がる。この展望岩から一登りで山頂である。

 山頂もまた東側の樹木が伐採されており眺望は展望岩とほぼ同じである。祠に鎮座する地蔵が見守る静かな山頂には沢山のトンボが飛んでいた。ザックを降ろししばし休憩といきたいところだが、先ほどから顔の廻りや両腕にアブやら虫がまとわりついて五月蠅いことこの上なし。貴重なほ乳類出現とあって吸血鬼の格好のターゲットにされそうになった。いや、正確には2度ほどチクリとやられているのでもはや未遂ではない。虫除けスプレーの携帯を忘れた事に深く後悔しながら慌ただしく山頂を後にするのであった。

 実は後になって地蔵岳が双耳峰であることを知った。山頂からほぼ南に直線で約200m。確かに地図上には顕著なピークが記されてる。前地蔵と呼ばれているそうだ。南に向かう道形は山頂で確認していたので、もし事前に知っていたら間違いなく歩いていた筈だが、次回の楽しみにとっておこう。

     
展望岩    展望岩より横根山方面    地蔵岳山頂

 地蔵平まで戻り、「この先5分」の道標に従い"思川源流"を訪ねる事にした。
 途中崩落した所を上巻するように付けられた場所以外は特に起伏も無く、程なく源流へと到着した。栃木市をゆったりと流れる思川がここより始まるという感慨を胸にして、地蔵岳より生まれし清流をひとしずく口に含む。冷たくはあったが、どこか柔らかい味のする水であった。

 地蔵平でひときわ目を引くのが少し小高い場所にある首缺け地蔵である。200年程の昔から存在すると言われているが、真新しい緋色の涎掛けは今でも篤い信仰のもと手入れがされている事を物語っている。

 で、この地蔵さまの写真を撮ってふと上のほうを見てみると、境界石が埋め込まれているではないか。往路に気になっていたことが一瞬で頭の中ではじけた。慌てて地図を取り出してみると間違いなく境界尾根である。GPSを取り出し"臨戦モード"に設定し辿って見ることにした。本来は此処を通ってくるべきだったのだから。

 歩き出してすぐ道形が無くなったと思ったら見覚えのある地点、すなわち往路で通過した地点で登山道と合流。ここでクロスしていたのか。

 さて改めて地図とGPSで検討し、目前を塞ぐピークに取り付いてその先に続く尾根を追うことにした。当然の事ながら道は無いが、薮にはなっていないので高度を上げるのは易しい。所々よく見るとかなり薄いが消えかかった踏み跡が散見される。最後の方は斜度も若干きつくなったが、登り切ってみるとやはり地図通り延々と尾根が続いている。尾根通しの道形ははっきりしてはまた消失しての繰り返し。境界杭の存在と、GPSの示す現在位置と次のポイントへのコース角、いずれもが一致していた。若干痩せ気味の箇所もあったが、危険な感じはまったく無い。

     
思川源流    首缺け地蔵    道無き尾根を辿る

 2つめのピークを降りた所で忽然と手前に岩が散乱するピークが現れた。それまで忠実に追うことが出来た稜線も見た目には此処で分断された形になった。写真で見ると小さな石ころのように見えるが、大きな物は長辺で2m弱くらいのものもある。よく見ると角が浸食されておりかなりの長い年月そこに露出していたことが伺える。向かい側の斜面から崩落したにしては付近にあまり岩が目立たないのは不思議である。人知を越えた神のなせる技・・・天狗の仕業か?人知れぬ粕尾の山中のミステリーである。

 さて、ここをどう進もうかと思案する。斜度を見ると右手が比較的楽に行けそうだが薮が濃い。左手を巻くのはちょっと偵察してみたが、どのみちピークに這い上がらなければならない。ならば正面突破だろう。岩を越えてその先の斜面を、高度差にして約20m程よじ登るとまた道形が現れた。

 以前はこのルートで地蔵岳にアクセスしていのかも知れないが、起伏を嫌ってトラバースルートが出来てからはこちらは歩かれなくなったのだと思う。ネットで色々な人の山行記録を読んでみると、粕尾峠からのこのルートは、先ほどの岩場地点あたりで踏み跡消失という雰囲気で書かれているものが多い。今回の自分のケースでは車道まで数百mの地点で、目指す方向も明確故に余裕の判断であったが、逆向きに山奥へ向かうとなると、いくら地図と照らし合わせて正しい方角でも、完全に道形と踏み跡が消失する岩場付近で諦めるのは正解と言える。

 寄り道ですっかり時間を食ってしまった。もう少しで粕尾峠へ出てしまうのは解っていたが、丁度昼食に良い岩があったのでここで食べていく事にした。樹に囲われていて全く景色は無いが、苔むした岩に腰掛けて食事するのも一興だろう。ここでもまた、珍客を格好の吸血ターゲットとする虫達と共に過ごすことになった。

 食事を終えて再スタートするとあっけなく粕尾峠のアスファルトが目に飛び込んできた。最後はザクザクと草を踏んで適当にフィニッシュ。道路に出て見ると、「登山口250m先→」と往路のトラバースルートに誘導する道標が目に入る。

     
行く手を阻む岩場    手頃な岩で昼食    粕尾峠出合

 車に戻り次なる目的地、細尾峠旧道へと向かう。相変わらずバイクの走行台数は多い。

 足尾側へ幾つか下った右カーブの所で、SUZUKIの赤い400ccがガードレールの所に前輪を落としていた。ライダーが引き上げようともがいている。恐らくオーバースピードでフロントブレーキを掛けたら浮き砂でスライドでもしたのだろう。車を脇に駐めて一緒に引き上げた。中排気量だとフロントも軽いので2人で引っ張れば大丈夫だが、大型だとこんな場面はかなりキツイかもしれない。まぁライダーも怪我無し、バイクも目立った損傷も無かったようで何よりである。

 日足トンネルの手前を道路標識に従い旧道へと曲がる。草が左右に張り出した入り口を少し進むとすぐ通行止めの看板が目に飛び込んできた。道路崩落で歩行者までも通行禁止になっている。「長い長い峠道案内」かぁ。徒歩でも良いから一度は歩いて見たいものだ。

 国道へ復帰し、長い長い日足トンネルをくぐる。向こう側の日光側入り口に未練たらしく行って見るも、ここは以前からゲートで閉鎖されていることは知っていた。うーーむ。閉ざされた細尾峠。いつの日か訪れん。

     
細尾峠足尾側入り口    うーん行ってみたい    細尾峠日光側入り口

 二座目を肩すかしされた格好の自分であるが、このままおめおめと日光街道を走って帰るのも悔しかったので寄り道をすることにした。

 寂光の滝。涼味満点。女峰山登山口として登山カード入れが設置してあったが、地図を見るとここからのピストンはかなり体力がある人でないと制覇できそうも無い。自分などとんでも無さそうだ。

     
寂光の滝      

 まだまだ、寄り道は続く。

 大沢の先からいつもの県道22号に入り、鞍掛トンネルを越える。栗谷沢ダムの北側、すなわち半蔵山の南面にちょっとした林道がある。以前まだ草があまり生えていない頃に走ったことが有ったが近況や如何に。

 なるほど鬱蒼と茂った道はまるで山に吸い込まれていくような有様である。途中唯一のビューポイントからのロマンチック村方面の明るい景色が眩しい。

 更に寄り道は続く。

 仕上げは「多気山だな」と、心の中で呟く自分。

 実は以前に走った林道で気になるポイントがあったのだ。今日は装備万全なので是非足で歩いて見ようと思った。

 多気山の南側を巻く舗装林道から、更にまたもう一つ山側を巻く砂利林道へと車を入れると程なく砂利道は行き止まりになる。

     
栗谷沢ダム北面林道    林道からロマンチック村方面    多気山南側林道終点

 以前偵察で訪れたこのポイントに、「愛宕神社入り口」という道標があったことがいつも頭の片隅にあったのだ。

 ネットでいろいろと調べては見たのだが、詳しい情報は見あたらない。
 多気山は元来山城であり、その遺構地形も多いようであり、神社があっても不思議では無いのだろう。

 道標に導かれ、作業道を進むと辺り一帯がかなり伐採されており比較的見通しが良い。2枚目の道標で道を逸れて草むらを横切ると、果たして鳥居が見えた。愛宕神社である。山でよく見る祠と変わらないが、近年立派な石の鳥居をあつらえたのだろう。場所が場所だけに、なかなか荘厳な雰囲気を醸し出している。

 祠の裏手を失礼し(バチあたりか?)、何かの遺構のような広い平坦地を越えて再び作業道に出会う。後はGPSで山頂を目指しながら作業道を何本か乗り換えると御殿平へ到着してしまった。改めて今日一日のGPSの働きを振り返ると、予想通りの高感度で衛星の補足切れも無い。20mとはいえ等高線付きの地図を表示出来るのは大変に頼もしい限りであった。衛星から計算されるコンパスは自分が移動していないと正しく表示出来ないが、GPSMAP60CSxは電子コンパス内蔵でこれもまた使いやすさに大きく貢献している。素晴らしいマシンである。

 多気山山頂では大量の薮蚊の熱烈歓迎を受けたのは言うまでも無い。だが薮蚊の攻撃も、里山のうだるような蒸し暑い道も、探検を終えた少年の心のような軽い足取りの自分にとってはさして辛くも感じない、そんな夕刻であった。

     
愛宕神社の標識あり    愛宕神社    作業道を進む
  
多気山頂上      

概略コースタイム
駐車地(10:07)発-地蔵平(10:25)-展望岩(10:41)-地蔵岳山頂着(10:57)-小休止-
地蔵平(11:18)-思川源流(11:22)-地蔵平(11:34)-往路と交差(11:41)-
岩場(11:59)-昼食P着(12:06)-再出発(12:32)-粕尾峠(12:43)-駐車地着(12:50)


《番外編 多気山》
駐車地発(15:47)-愛宕神社(15:51)-山頂(16:09)-駐車地着(16:25)

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コメント (6)

Non:

 こんばんは。早速拝見しました。タイトルのまま、意外な組み合わせで(^^)
 まず地蔵岳、渋いところを攻めましたね~。でも、予定なさっていたとおりに
GPSの性能チェックも怠りなくできて、それも往路と復路それぞれ歩かれて、
こういう冒険はGPSをお持ちの方ならではだなぁと思います。
ご考察のように、元々は尾根道があったけれど、大きな岩に阻まれてトラバースが…
というのは、往々にしてありそうですよね。

 多気山、なるほどです。これだったら、しっかり周回コースにして楽しめますね。
まだ地形図を確実に読めないので、冬になったらまっちゃんさんの地図を持参して
行ってみたいです。
 それと、よく虫除けを持たずに歩かれましたね! 虫(特に薮蚊)大嫌いで
ザックに虫除けを入れっぱなしの私にはすごいな~の一言でした。
想像しただけで、ひえ~です(^^;)

まっちゃん:

いや、ホントに虫には閉口しました。
そろそろまたNonさん謹製の虫除けスプレー調合の季節がやってきましたね。
次回はぬかりなく持参いたします。

ス、ス、スゴイ移動攻撃ですね!

地蔵岳は粕尾峠に登山口があるので、オートバイでトレッキング的に良い山だと思い、以前から気になっていました。
思川源流や湿原、首缺け地蔵など、手軽に歩ける距離の中に見所も多いですしね~(笑)

薬師岳は残念でしたね。
歩行者も通れないなんて、どんだけぇ~ですねw

寂光の滝から女峰山は少々ハードですが、沢を登って寂光沢源流を訪ねてみたいと思いませんか?
プチ沢登りが体験できて楽しそう♪ 夏はマムシがコワいけど…w
次回、オートバイでトレッキング部(いつの間に開部?笑)の候補にいいかも?

独身オヤジ:

はじめまして。
貴方にコメントいただきましたが、
私は自己中心的な登山者ではありません。

自己中心的なのは団体の人達でしょう。そう思いませんか?

まっちゃん:

なおさん。こんばんは。

地蔵岳は確かにオートバイでトレッキングには良いですね。
バイクと歩きの両方で峠を楽しむのはオートバイでトレッキングならではでしょう。
ただ、虫と蒸し暑さで秋口のほうが良いと思います。
紅葉の時期と春のアカヤシオの頃が最高らしいです。

オートバイでトレッキング部。ついに開部ですね。
特別要訓練部員で参加お願いします(^^;

しごかないでね! というよりはついて行けないかも。

まっちゃん:

独身オヤジさん。はじめまして。

当ブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。

ただ、残念な事に独身オヤジさんとは初対面だと思います。
したがいまして、「自己中心的な登山者」という批判をしたというのも何かの勘違い、あるいはありがちな"まっちゃん"という名前でブログを書かれている他の方とお間違いになっているのではと思います。

何はともあれ、登山者同士楽しい山歩きをしたいものですね。

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