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半蔵山から池ノ鳥屋

アーカイブ:宇都宮近郊の山達  日時: 2009年03月08日 20:46
-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 宇都宮市内の山といえば、古賀志山が真っ先に上げられることに異論の有る方は少ないだろう。森林公園という行政のバックグランウンドを持つ山だから、整備もされているし訪れる人も沢山居る。

 確かに自分自身にとっても古賀志山は愛すべき山であるが、実は新里の北方に雄大な広がりを見せる半蔵山の存在はかなり以前から気になっていた。かなり以前というのは栃木で山に登るようになる以前からのことである。

 今市方面から宇都宮を目指す場合、日光街道はこの半蔵山山塊を迂回するように遠回りしている。直線的なアプローチは山越えしか無い。そこで作られたのが鞍掛峠である。今でこそ旧道の下にトンネルが作られて快適なドライブが約束されているこの道も、雪など降るとたちまちアイスバーンになり狭い車幅で対向車とのすれ違いに苦労する難所でもあった。

 また、家内の実家のある篠井地区では、かつてUHF波が供給されていなっかた頃宇都宮のVHF波がこの半蔵山山塊により遮られ、非常に難視聴区域であった。山が文化を遮っていたのだ。その外見の偉容さのみならず、半蔵山は大きな存在だったのである。

 栃木の山に登るようになり地図がある程度読めるようになってくると、遠くから見える半蔵山の主稜線がとても魅力的に感じるようになってきた。道は無いかもしれないが、宇都宮と今市を分けているあそこを歩けないものかと・・・

 

 相変わらずH君とのコンビは天気に恵まれていない。昨日(土曜日)は天気も良く温度も高かった。こういういうベストコンディションの日に限って、外の様子を恨めしく思いながら会社でデスクに向かっている。今日は曇予報だが雨は夜以降との事。眺望は期待していないから今日を決行日としよう。

 

 先日偵察済みの駐車地にパジェロミニを駐める。今回は車2台体制で、先ほどH君の車を栗谷沢ダム脇に駐めてきたところだ。

 駐車地が既に440m程の標高にあるので、半蔵山は目と鼻の先である。本来の企画は男抱山から半蔵山を目指すつもりであったが、池ノ鳥屋に向けての尾根歩きに藪漕ぎや直登があるといけないので体力温存でここまで標高を車で稼いでしまった。

 駐車地のすぐ右手には男抱山方面の道標がある。このデザインの道標は、一昨年あたりからこのエリア一帯の随所に見られる道標であり、先日偵察をした半蔵山の北西側や、離れてはいるがかまど倉周辺にも見られた。一体どういう方達が整備されているのだろうか。頭の下がる思いである。

 さて、車を置いた所から僅かに北に進むとすぐ左手に林業用の作業道があり、ここに道標がある。幅の広い作業道なので若干興ざめな感じもするが、まずは半蔵山を目指す。

     
半蔵山下駐車地    男抱山方面への案内    半蔵山登路の作業道

 かなり上の方まで作業道は伸びているが、尾根が見えた頃、刈り払われた伐採地を構わず直登するとすぐに半蔵山の山頂に到着した。枝越しに僅かに眺望があるが、三角点のみのひっそりとした山頂である。
 山頂からはいよいよ縦走の開始だ。尾根を外さずしっかり歩いていこう。

 意外な事に、驚くほど尾根上はよく歩かれている。道形もはっきりしているし、危ないところもほとんど無い。ちょっと拍子抜けしてしまった。

     
伐採地を登る    半蔵山頂上    台座のみの石祠(左奥)

 半蔵山から493p(羽黒山)までの尾根道は快適そのもの。途中大きな岩があちこちに顔を覗かせているが、道を塞ぐような岩は今のところ無い。また、道標も所々にあり、安心感があるのも意外だ。色んな事態を想定して、実はザックにツェルトを忍ばせていたりするのだがどうやら杞憂であったようだ。

     
展望岩    明るい尾根   

 程なく"羽黒山"の山名板が掛かったピークへ到着する。493mと書かれているが、地形図の493m地点はもう少し西側になる。

 ここで丁寧にも池ノ鳥屋への道標が掲げてあったが、安政年間に建立されたと彫られている巨大石祠に目を奪われてしまい、思わず祠の向かう先の続く良く踏まれた道を降りてしまった。

     
羽黒山頂上    巨大石祠    安政三年建立とあるが

 すぐに気が付き引き返したが、戻る途中に首欠けのご神体が忽然と現れたり、巨大石祠が地元の人達の強い信仰の対象であったことが窺われる。石祠の向かう先の南側の道は今でも参道なのかもしれない。

 羽黒山まで戻り、西の尾根への入り口を見つける。鞍部から一旦登り返して地図に表記のある493Pを通過。こちらは何も無い。

 493pから、更に西に向かって行くが、470m地点で今日一番の難所に差し掛かる。慎重に行けば問題は無いが、垂直の岩で遮られた所を立ち幅やっとで急斜面をトラバースする区間があった。道無き道が好きな人には面白いコースかも知れないが、山馴れしていない方にはここは勧められない。

     
首欠けのご神体    地図表記の493m    493Pよりの厳しい下り

 493pを下りきったあたりで、それまで西を目指していた尾根が北へ進路を変える。うっかりしていると西の尾根をそのまま進み兼ねないが、ここは事前に要注意ポイントだったので難なくクリア。依然として道形ははっきりしている。

     
南側が見え始める    オブジェ?    一旦北西へ方向転換

 471mp(池ノ鳥屋)の直前で、平たい岩に出くわす。これによじ登るとその先に、今度は小さいがまた石祠がある。祠の向かう方角は田口の集落か落合集落か。建立者の願いを静かにたたえながらも長い間人知れず風雪に耐えてきたかと思うと感慨深いものがある。

 ここから更に進むと、樹に覆われた薄暗い池ノ鳥屋に到着。SHCカワスミさんの青い山名板が目を引く。

     
平たい岩を登る    小さく佇む石祠    池ノ鳥屋

 池ノ鳥屋からの下りはまたしてもミスコース。下っていく眼前に拡がる市街地の景色を見て、「おや!鞍掛山方面が見える筈なのだが」。
GPSを出すと完璧に逆方向。さて、南西の尾根は何処にあるのだろうかと山頂から見渡すと、山頂の少し手前から派生している尾根が見える。これは解りづらい。

 無事南西の尾根に乗ることが出来たが、池の鳥屋からの下りは途中途中に等高線で10m程度のピーク、また地図に現れない小ピークも幾つか越していく。さほどきつくは無いのでむしろ変化があって楽しい。もともとあまり眺望には恵まれないこのコース、途中岩の間に山ツツジの芽があちこちにあったので春先の天気の良い日も楽しい尾根歩きになるのでは無いかと思いを巡らせながら進む。

 樹間に鞍掛山が見えてきた、だいぶゴールが近づいてきたようである。

 さて、予定時間より大幅に早く来てしまっているので飯をどうしよう。時計を見ると11時ちょっと前だが出来れば少し気分の良い所で食べていきたいものだ。事前に眺めていた地図で、寄り道しようと思っていたピークまで足を伸ばす事にした。

 コースが南へ大きく進路を変えるポイント、ここから北西に境界石を辿れば410m級ピークがある。そこで食事としよう。

 410m級ピークに続く道は途中からは踏み跡が極端に薄くなり、行く手を阻む岩でほぼ往来は閉ざされた感じがする。岩をどうしたものかと思案したが、偵察してみると適度にホールド感があり、高さもさほど無いので先ず私が先行して登り切る。上から廻りを眺めると巻ルートが有るように見えるが、思ったより岩が簡単にクリアできたので上からアドバイスを出してH君にも追従して貰う。

     
地図に無い小ピークを幾つも超していく    鞍掛山が見えてきた    寄り道ピーク手前を阻む岩

 岩を登り切ったその先には、枯葉の絨毯が敷き詰められた気持ちの良い小広いスペースがあった。ここもまた枝に覆われ景色は良くないが、静けさの支配するこの空間はとても心地よい。さぁ少し早いが食事にしよう。

 食後のコーヒーを飲んでいると人の声が聞こえてきた。別のハイカーが我々と同じコースを通過しているようだが、この寄り道ピークまでは近づく気配は無いようだ。やがて声が遠ざかった頃我々も腰を上げる。

 先ほどの分岐まで戻り、南へ進路が変わると植林地の中を進むようになる。等間隔に植えられた樹林は、下枝が綺麗に枝打ちされていてなかな美しい。

     
ここを昼食ポイントとしよう       よく枝打ちされた美しい植林

 やがて栗谷無線中継所が近づいてくると右手に管理用舗装道が見えてくる。無線中継所の所では先ほどのハイカーが食事中である。今日のコースでは、正直H君以外の顔を見ることは無いだろうと思っていただけに、これまた拍子抜けである。

 栗谷無線中継所からは真南に階段がありこれを降りる。と思いきや、階段はすぐに無くなり後は竹藪になってしまった。だが、はっきりと踏み跡が続くので構わずこれを追っていくと程なく舗装の鞍掛峠の旧道に出た。不法投棄が後を絶たないようで、冷蔵庫などが無造作に捨てられていて目を覆いたくなるような状況だ。

     
栗谷無線中継所    踏み跡を追って構わず降りる    鞍掛峠へ降りた

 H君の車を駐めた栗谷沢ダムまでの旧道のアスファルト歩きは案外と足に堪える。今日はスタート地点から大きく見れば山下り的なルートであったが、それでも幾つかの起伏を越しての尾根歩き。想像していたような未開ルートとは程遠かったが、鞍掛尾根に次ぐ宇都宮の奥座敷然とした雰囲気に満足することの出来た一日であった。

     
栗谷沢ダム駐車地へ到着    栗谷沢ダムより半蔵山    田口集落より半蔵山

概略コースタイム
駐車地発(8:40)-半蔵山頂上(8:52)-羽黒山(9:21)-池ノ鳥屋(10:21)-昼食ピーク着(11:02)-
昼食休憩-昼食ピーク発(11:40)-栗谷無線中継所(12:11)-栗谷沢ダム脇駐車地着(12:41)

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コメント (4)

けむ:

古賀志山塊鳥屋ハットトリック達成おめでとうございます。
雨に降られなくてよかったっす。

この山域、植生や踏み跡の感じが想像とずいぶん違っていて驚き。
もっと暗い植林帯に、薄い踏み跡って思っていました。
今回のルートは三つの山を周るのにこれ以上はないっていうすっきりしたルートですねえ。
私もこのレポートを参考に、ヘンタイなルートを探してみます。

まっちゃん:

けむぞうさん、こんばんは。

意外や意外。最近歩いたマイナールートの中では一番ハイキングコースっぽかったもしれませんよ。
眺望が無いからウリにはならないかもしれないけど、市で整備したら第二の古賀志山?(んな事ないか)

今回私が歩いたルートは、アドベンチャーけむぞう師匠にとってあまり見るべきもありませんが、ただ四方八方から尾根を目指すウルトラルートの開拓しがいはありそうです。

間違って吸い込まれそうになった羽黒山からの南尾根や池ノ鳥屋からの北尾根。
ここいらはかなり踏み跡も濃く、池ノ鳥屋からの北尾根は刈り込んだ痕跡も見られたり。

昼飯を食べたピークから伸びる境界尾根も微かに踏み跡がありました。
本文には書きませんでしたが、行く手を阻んだ岩は、帰りは巻ルートを探したらしっかりありました。踏み跡こそ微かですが、明らかに歩かれています。
その他にも、妙にルートくさいような箇所があちこちにあり、攻略しがいがありそうでした。
ちなみに過日の偵察で、半蔵山の北西エリアには林道から半蔵山・羽黒山への道標が複数箇所設置してありました。「半蔵山登山口駐車場」なんていう道標もありましたので、かなり精力的に開拓されている感じが伺えます。

Non:

 こんばんは。文章を拝読したら、なるほど拍子抜けなさったのがよく解りました。
ここまで踏み跡がしっかりしている上に、道標や山名版も整備されているようで、
私ももっと未開の地に近いところだと思っていましたので、正直驚きです。

 同じルートを歩いていたパーティーが他にもいた、そのこともビックリです。
これで展望が開けたら、もっともっとハイカーさんの数が増えるでしょうね。
で、私にとっては参考資料が増えて有難いです。ひとまずお疲れ様でした~

まっちゃん:

Nonさん、こんばんは。

ネットで著名な方が何人か歩かれていて記録もあるのですが、正直ここまで波乱の無いコースだとは思いませんでした。雰囲気があるコースなので、歩き重視なら一興だと思いますよ。

バリエーションとして、次回訪れる時は北西から男抱山へ縦断してみようかと考えてます。
(車2台出動で)

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