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高へら山と富士山(船生)

アーカイブ:宇都宮近郊の山達  日時: 2009年12月13日 20:00

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 高へら山は日光街道から船生方面へ抜ける県道を走る時にいつも横目で眺めていた山だった。少し南側にある人気のハイキングスポット、篠井富屋連峰とは趣を異にする静かな里山である。
 一般的な登山道は無いが、地図を眺めると山頂からそれぞれ北西、南東に延びる尾根が特徴的である。今回は北西の尾根を辿ってみることにした。

 本日の行動は午前中の数時間となるが、時間が余ったら船生にある富士山にも足を伸ばす予定だ。

 高へら山のアプローチは、ネットで記録のある山頂西側から直登するコースが考えられる。これだといささか強引過ぎて面白みに欠ける気がするので、あくまで尾根狙いとし北西尾根を選んだ。林道の奥は偵察が不十分故に駐車地が心配だったが、車が置けなかった場合は手前側の既知スペースに駐め西面直登でも仕方が無いだろうという気持ちで臨む。

 やんぬるかな、狭い林道を進むと想定していた尾根末端付近で駐車可能なスペースがあった。恐らく山仕事の人が車を置きやすいように作ったのだろう。

 支度を済ませ裏手の薮から取り付く。枯れ草の平坦部からすぐに突き上げるように登っていくが、思った以上に足元が滑らないので楽に高度を稼げる。やがて境界石が出てくると幾らか斜度が緩んできた。

 尾根上は広葉樹の自然林である。葉もすっかりと落ちた今の季節は軽く枝を払って歩くことが出来るが、春から秋にかけては遠慮したいところだろう。切り株や倒木などの仕事の跡はいずれも古く、あまり人が入っていない様子は一目瞭然である。

     
駐車地と取り付き    尾根末端    境界石

 山頂の北西尾根に突き上げる直前、枝越しに高へら山の頂が見えた。右へ90度針路が変わると、今度は少しづつ岩が出てきて山頂が近いことを知る。景色は殆ど無いが、うっすらと北側の小林地区であろうか、町並みが広がっている。

     
向かう高へら山    岩も出てくる    北側

 山頂近辺で岩を巻く顕著な細い踏み跡がある。人ならばもう少し太い筈だが、果たして獣道なのだろうか。獣といってもこの近辺では猪くらいしか居ない筈なのでそれはそれで遭遇したくない嫌な奴である。

 山頂に着くと石祠と数枚の山名板が迎えてくれた。ザックを降ろして一休みしたあと、南東側を覗いて見るとこちらも大体同じような雰囲気である。南側に降りてしまうと林道との間の薮が深そうなので、こちらに降りるならば尾根末端まで南東にずっと行くしかないだろう。駐車地のことを考えるとこれは現実的でない。

 エスケープルートとして往路ピストンを担保し、山頂西側を窺う。数例のネットでの山行記録ではここを使って登っている筈であるが、よく見ると成る程、赤リボンが僅かであるが付けられている。あちこちに咲いている季節外れのヤマツツジがリボンと紛らわしい。

     
高へら山三角点    西へ向かって降りる    季節外れのヤマツツジ

 標高差にして150m程降下しなければならないので油断は出来ないが、枯れ枝で見通しが良いので不安感は無い。ずり落ちないように注意しながらトラバース気味に高度を下げていくと左手に植林地が見える。リボンはそちらに向かっているが、車が遠くなるので想定コースへと針路を変えた。

 やがて林道が見えてきて、小薮を抜けると無事着地である。

     
ルートを選びながら    林道が見えてきた    無事着地

 首尾良く一座目を終えて、まだ時間も充分にある。予定の富士山に向かって車を走らせた。

 富士山は数度偵察を行っているが、取り付き地の薮の深さが未知数、そして民家の裏から登るのが少し気が引けるところである。

 取り付き地の横にある路側の広い所に車を駐めて、民家のまさに裏側から登り始めるが、侵入するといった体でいささか気後れする。

 前もろくに見えないような檄薮だが、足元を見ると微かな踏み跡が続いているではないか。物好きなのはどうやら自分だけでは無いらしい。とにかく薮を踏む音が思ったより大きく響く。近隣の優秀な番犬達が一斉に吠え立てるのには閉口した。どうやら彼らにとって自分は特一級の侵入者であり、ここぞとばかりに警告を発しているようだ。

 全力で激薮ゾーンを切り抜けると、やっと犬達も一息ついたようで辺りに静寂さが戻ってきた。腰ほどまで丈が低くなってきたがまだ薮は続いている。だがそれもほんの少しの辛抱で、尾根形がはっきりしてくると歩き易くなってきた。山頂東側の谷には作業道が上がってきているので、面白味に欠けるがこれを使うのが無難だっただろう。

     
民家裏から失敬    激薮    薄くなるもまだ薮

 やはり山頂が近くなると岩が出てきた。高さは3m近くもあるだろうか。巨大な岩が重なっている。先ほどから山頂近辺にはカラスが群れ飛んでいる。山でカラスを見る事自体が珍しいが、生活圏にある里山ならではの光景であろう。突然の人間の侵入に対し数羽が警戒を発し、取りあえず山頂を明け渡して貰った形でそこへ到着した。

 三角点は西側に突出した岩の上にある。足を一歩踏み出すと、それまで無縁だった光と風に、一遍にまみえる感動の瞬間である。更にその先は切り立った崖になっているので景色が良いわけだ。

 眼下に広がる田畑や道路といった、生活感の有るありふれた田舎の風景。遠くには我らが栃木の山々が連なる。これぞ里山の原風景ではないだろうか。

     
高さ3m近い巨岩    山頂直下    三角点と日光の山
     
山頂よりパノラマ      

 吹きさらしのような山頂は北風が冷たい。だが、コーヒーで体を温めていると日当たりのよい山頂は思いの外心地よいものだ。春の暖かな日に、ここで昼寝をしたり読書をしたりしたらさぞ素晴らしいことだろう。そんな山頂を後にして、下山は外輪尾根を北に向かい周回することにした。

 途中に石祠一基、針路が東に変わった頃に「富士浅間」と刻まれた比較的新しい碑石と崩壊した石祠があった。地元の人の信仰が偲ばれる。

     
山頂尾根を北へ    北の方に石祠    富士浅間の碑石

 朽ちた中継用TVアンテナを通り過ぎると、予定していた方角より少しずれて一旦不明瞭になった尾根形がはっきりしてくる。着地点に大差は無いだろうと判断し、端正な木立の間の歩きやすい尾根の背を下っていくと直ぐに平坦な薄薮へ出た。

     
朽ちたアンテナ    端正な木立を下る    道路まであと僅か

 無事道路に復帰し車の所に戻る道すがら、取り付き箇所の全貌を見ることが出来た。成る程。これは薮が濃い訳だ。よくぞあんな所を登ったものだ。冬なお濃いこの薮をくぐるなら、すぐ脇にある作業道をおとなしく辿ったほうが正解。地域の番人である犬達に迷惑をかけないことは明らかだから。

     
薮が濃い訳だ    駐車地    帰路日光を望む

概略コースタイム
《高へら山》
駐車地発(8:17)-北西尾根(8:37)-山頂(8:57)-林道出会(9:21)-駐車地着(9:40)


《富士山》
駐車地発(9:40)-山頂(9:59)-休憩-再出発(10:09)-駐車地着(10:29)

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コメント (6)

Non:

 こんばんは。かなりの里山度と伺って、楽しみにしていましたら… ま~、この2座でしたか!
ずっと前に「栃木の山紀行」さんかどこかで見て、「ちゃんとした山道がないんだな」と思って、
そのままスルーしていました。こんな風にも歩けるんですね~ 私がもし紅葉ハンターなら、
まっちゃんさんは里山ハンターさんだなぁと… 激薮にもだいぶ慣れていらっしゃるような(^^)

 そう、私はできれば、そこそこに距離があって激薮が少ない方が嬉しいので(最近、顔周りの
引っかき傷が気になってしまって… 微妙なお年頃[爆])、富士山の方の往路は避けたいかなぁ
と思いますが、この展望を拝見してしまった今は、復路の方は心が惹かれます~ 魅力的ですよね。

 高へら山の方は、ルーファンの練習に良さそうですね。読図トレをかねて、あえて南東尾根を
しばらく辿って戻ってみたり。
 で、改めて地形図を見ていますが、この辺の境界線はえらく複雑ですね。ビックリしていたら、
真西に発電所まであったなんて・・・ まさに2度ビックリ(^^;)
 この近辺、なかなか侮れないんですね。おかげ様でかなり興味が湧きました(^^)

Non:

 追伸です。ふっと、「里山ハンター」という言葉を思い返していて… 私自身、ハンターよりも
マスターと言われた方が嬉しいなぁと思ったので、まっちゃんさんも「里山マスター」とお呼びする
ことにしますね(^^) 私は、目指せ「読図マスター」です。道のりは長いけど… (^^;)

けむ:

むむむっ・・・
高へら山の境界標石がちょっと気になります。
山標石ですかね? いずれにしても白御影石製の立派な姿。
少なくとも戦前、ひょっとすると明治はありそうな。

富士山の民家裏のルートってあんな激薮なんですねー。
私もここはヘンタイルートでもって考えていましたが、作業道以外は薮が深そうでちょっと萎え萎えです。
パノラマ写真の三枚目で、みっしり飛んでいるのはカラスですか?
あの岩場あたりってカラス団地になってたりして。

ここの二座は、私の趣味にジャストミートしました。
今シーズンは行ってみたいです。

まっちゃん:

>Nonさん

こんばんは。
先日はフリースを着ていったのですが、富士山から下りてみたら全身草の種だらけでした。
途中で着替えようと薮用ウィンドブレーカー(普通のやつ)持って行ったのに、ものぐさでした。

今回は薮よりもワンコの追撃が厳しかったです。
ま、鎖に繋がれてるから安心だけど。

お互い、マスターへの道、邁進いたしましょう。


>けむさん

写真三枚目はずばりカラスです。
自分が行く前は山頂にたむろしていたようです。何が有るってわけじゃないんですが。

高へら山の境界石ですが、北西尾根は地図上に境界線が無いので何故?と思っていましたが、あまり深く考えていませんでした。
もっとアップで写真撮ってくればよかったですね。

いや、是非ご自分で調査しに行ってください。

当ブログへのコメント&トラバ有難うございました。

また、気になっていた富士山山頂から北へと伸びる尾根道の情報も参考になりました。
今後も情報交換させて頂きたく、リンクの許可をお願い致します。

まっちゃん:

リンゴさん、いらっしゃいませ。

リンゴさんの山と自然を慈しむ気持ちがいっぱいのブログ記事はいつも楽しませていただいています。

リンクの件は是非ともよろしくお願いします。相互リンクということでリンゴさんのブログへのリンクをお許し下さい。

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