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半蔵山北側を歩く

アーカイブ:宇都宮近郊の山達  日時: 2010年01月23日 21:35

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 宇都宮市北西部に横たわる半蔵山。前回は楽を決め込み、山頂直下に車をデポして南西へと縦走、鞍掛峠へと抜けたが、歩き残しの北半分と林道が複数入り組んでいる西側の領域が気になっていた。

 半蔵山は里山にしては比較的スケールが大きいので「道無きアプローチ」もいろいろと考えられる。薮山歩きの素材としては楽しみな山なのだ。

 今回は、日光街道沿いの上町集落の神社から入山し、半蔵山の北東を登っていく。明瞭な尾根が無いため、地図を見ていて難易度が高いなと常々思っていたが、先般、数度にわたるオフロードバイクによる偵察を重ね、ようやくここをやる目処が付いたのである。

 取り付きより半蔵山の北の肩に到達したら、今度は北西に方向転換して425mPを踏み一旦石那田へ下山。林道を使い山頂の西側にアプローチしてから谷を詰める。半蔵山主稜線へ復帰した後、男抱山へ下っていくのが今回のコースである。

 家内に出動を要請し、2台で自宅を出発した。朝の気温は低いが、これから向かうコースへの緊張感で寒さをあまり感じない。
 下山地である男抱山登山口にパジェロミニを駐め、ここから更に取り付き地の上町集落に向かい鳥居の前で車から落として貰った。まばゆい陽差しの中いざ出発である。

 日光宇都宮道と平行する階段を登っていく。結構距離があるが、登り詰めると突き当たりに鳥居があり、社殿があった。名前など一切無いのがかえってミステリアスな雰囲気を醸し出しているが、良く手入れされた周囲は神事の日には信仰の人によって賑わうのだろう。

     
取付地の鳥居    まずは石段    社殿の前の鳥居

 静かな社殿脇からは、落ち葉を踏みしめながら小尾根を登っていく。さぁ今日のルーファンの首尾や如何に。

 初めのうちは歩きやすかったが、やがて細かい薮が出るようになってきた。特に濃い訳ではないので問題は無い。基本的に植林地なので、往時は山仕事の人が入っていたのだろうが、うち捨てられた倒木の古さやあまり手入れされていない枝ぶりからすると最近は訪れる人も絶えて久しい雰囲気である。無秩序に散らかる倒木を避けながらザクザクと進んでいくと、忽然と鉄塔が視界に入ってきた。(鉄塔1)

     
社殿脇から登っていく    濃くは無いがうるさい薮    突然鉄塔現る(鉄塔1)

 このあたりは傾斜が緩いので、針路角をミスする可能性が充分考えられた。GPSと地図を頻繁に出して針路の確保に努めるが、踏み跡は皆無。油断は禁物である。

 やがて光が差しこむようになると東側に開けた伐採地に出た。樹林歩きに馴れた目にはひときわ太陽の光が眩しく感じられる。

 伐採地を過ぎると、一旦下から上がってくる鉄塔巡視路に合わせるが、ここを登りきってしまうと目的の方角に向かうためには急斜面超えになってしまうことを先日の偵察で確認していたので、小さな谷を渡り隣の山腹に取り付いた。薮の薄い所を狙って若干頑張るとまた植林帯が拡がる。足元がフカフカした急斜面は非常に歩きにくい。

     
明るくなってくると・・・    伐採地に出た    歩きやすい所を選んで

 前方に苔むした岩が露出しているピークが現れた。向かうべき針路角と若干ずれるが、こんな所にひっそりと鎮座するピークに人知れず佇むのも一興だろうと思い、立ち寄る事にした。

 いざ岩に立って見るとさほど景色が良い訳ではない。枝越しに篠井連峰が見えるだけである。だが、何となく満たされた気分、そう、隠れ家を見つけた子供のような気持ち。

 更に登っていくと再び伐採地へ着くが、ここからの北側の眺望はなかなか素晴らしい。正直今回は景色をまったく期待していなかっただけに、予想外の眺望に思わず足を止めて長々と休憩をした。高原山も綺麗だが、手前に見える篠井連峰の榛名山や男山、本山をこの角度から見るのも新鮮だ。また、真正面には先日登った高へら山もその姿を全て見せている。

     
苔むした岩    岩の上から篠井連峰    好眺望!

 登りを再開したが、再び下から上がってきた別な古い作業道に一旦合わせる。そろそろ針路角がずれてきたなと思った頃に、良いタイミングで道が折れるも山を巻くのみで上に上がっていく様子が無い。どこかで見切りを付けなければまずいと思うが、上を見るとかなり濃い薮が覆っていて気乗りしない。この辺かこの辺かと窺いながら先に行くとやっと薮が切れた斜面が見つかる。何故かここだけ上まで電車道のように薮が切れているのだ。

 相変わらず歩きにくい急斜面の直登に喘ぐ。呼吸を整える小休止を数回経て平坦地に到着。半蔵山の北の肩に到着だ。

 ここからは北西に針路変更だが、地図上でもはっきりとした尾根線を行くのでルートの心配はほぼない。障害物があれば巻けば良いし、とにかく尾根キープで行けば問題は無さそうだ。

 こちらのルートはネットで報告もありそれなりに歩かれているようだ。踏み跡もあるし所々赤ペンキもあるので、先ほどまでの登りとは段違いの気楽さだ。明るい尾根を下るとやがて鉄塔に到達した。そこから男体山が良く見える。

     
薮を嫌うと突破口が開けた    明るい尾根    鉄塔2より男体山

 更に北西へ下り鞍部から425mPへ登り返す。写真で見ると大したことが無さそうだが、落ち葉で足が滑り易い急登。時折薄いが薮も邪魔をしてなかなか骨が折れる。

 大きく肩で息を切りながら登り詰めた425mPは眺望も何も無し。水を一口飲んで次を急ぐ。小広いピークからどうやって西へ進むのかと周囲を窺うと、足元に急降下があってその先に踏み跡が続く。これを丹念に辿っていくとやがて正面に紅白の鉄塔が見えてきた。

     
425Pへの登り    (同左)軽い薮の急登    425Pから西へ下る

 他のネット記事では、この鉄塔から先は巡視路を使って石那田へ降りているようである。先日の偵察でこの巡視路も検討したが今回自分はここを降りずに更に西の尾根を辿る。

 鉄塔を過ぎた頃一旦尾根形を見失う。ここもGPSと地図でしつこい程チェックを重ねながら進んで行くと薮の中にまた踏み跡を見つけた。鉄塔付近で失った踏み跡なのか、或いは違う目的の道と合流したのか。

 大分高度が下がってきた頃木造の祠と出くわす。もはや生活圏まで下ってきたようである。

     
紅白鉄塔    薮だが足元の踏み跡アリ    木造の祠

 舗装林道が下に見えてきた。本日の第一区間は緊張のルートファインディングであった。特に前半の半蔵山北の肩までは、なかなか難しい局面の連続であったが故に達成感も大きい。

 林道を離れ一旦車道を歩く。次なる取り付き点へ1Km強の移動である。

     
舗装林道が見えてきた    林道を一旦出る    次なる林道へ向けて車道歩き

 先ほどの紅白鉄塔を傍らに見ながら南に進み、やがて舗装林道へと吸い込まれていく。先日の偵察では支線の隅々まで調査済みなので、進むべき「羽黒山登山口」までは間違う筈がないのだが、緊張が途切れてぼっとしていたのだろうか。うっかり別の支線に間違えて入ってしまい行き止まりだ。脇の高みを超えれば目的の支線に、或いは眼前のピークを乗り越せば方角的には目的の登山口に到達出来るかも知れないという予想はしたが、家に残してきた行動予定線図以外のルートは取るべきではないだろう。すごすごと来た道を戻り分岐から再度林道を進んだ。

     
先程の紅白鉄塔    林道分岐    同左

 支線終点に「羽黒山登山口」とプレートがある。ここから谷詰めで、半蔵山と南西にある493mPの東方約200mにあるピーク、通称羽黒山に向かうことが出来るらしい。

 登山口と銘打つ位だから途中に道標が幾つかあるのだろうと思っていたが、見事にその期待は裏切られたようである。案内されたのは"登山口"という事実だけで、どこをどう登ったら良いのやら、どこでもお好きにどうそといった感じである。

 一応こんな時の為に想定ルートを考えていたので、まずは方角と一致した作業用のブル道を登る。上の方に行くと歩き辛くなってきていよいよ谷も詰まってきた。羽黒山へ向かう稜線は恐らく谷の右手を登らないといけないが、少し斜度もきつく稜線までの距離はかなりある。安全をとるならば左手を登り支尾根から主稜線に合流したほうがベターなような気がする。だが左の支尾根は、上の方に大きな岩が見えるのが気になった。

     
羽黒山登山口    ブル道を辿る    谷詰めになるが・・・

 しばし思案し、左の支尾根に取り付くことにした。微かであるが踏み跡が感じられる。他の人もやはりここで同じように考えたのだろうか。

 砂利で滑る足元に気を付けて小尾根によじ登ると、一直線上の真上に例の岩が待ちかまえていた。だが良く見ると岩の間が割れていて通過出来そうだ。ここが絶望的なら、一旦谷に戻り少し低い所から右の尾根を狙おうと思っていたので一安心である。

 岩に近づくと驚いた事にトラロープが下がっていた。もはや此処が羽黒山へのデフォルトルートであることは疑う余地も無い。ロープが無くても頑張れば通過出来るが、ありがたく補助として利用させていただいた。

     
左の小尾根に乗って    岩の間にルートアリ    先人のトラロープ

 トラロープの岩場を過ぎると、直ぐ半蔵山の主稜線に出ることが出来た。上から見ると何も目印が無いので、下りに使うには至難の業であろう。

 この区間は自宅に帰ってから落ち着いて良く地図を見返した。「羽黒山登山口」で左右の尾根のどちらかに、多少の藪漕ぎを辞さずに取り付いてしまえばスムースに登れたのではと反省。だが眼前に道があるとやはりそちらを歩いてしまう判断力の弱さがまだまだ払拭出来ていないようである。これは今後も課題であろう。

 主稜線から幾らか登っていき半蔵山頂上に到着。今日は踏ん張り続けの直登急登で前傾姿勢が多かったせいだろうか、珍しくかかとが靴に当たって痛い。前回の赤岩山に続いて新しい靴での2回目の山行になるが、概ね靴の調子は良好。当面、足との良い付き合いが期待できそうだ。

 景色のあまり良くない山頂であるが、時間なのでここで昼食休憩とした。幾らか雲が出てきて急に気温が下がってきた。汗が冷たいので上着を重ねて切り株に腰を降ろして静かな食事をとる。

 眼前には先ほど通過してきた425mPとその左手に紅白の鉄塔が見える。改めてぐるりと周回してきたことを実感した。

     
半蔵山南西主稜線に出る    半蔵山頂上    先ほどの425Pと紅白鉄塔

 山頂からは一旦舗装の林道、牛沢天王寺線へ出る。50m程で「男抱山へ」の道標を見てここから再び山に入る。半蔵山から男抱山までの区間はずっと歩きたいと思っていたが、単発で歩くのもちょっと物足りない気がしていたのでなかなか歩かずじまいであった。今日は好機である。

 下り始めるとまず大きな岩の出現に驚く。その名も大岩山。岩の地肌を見ると細かいノミの跡のようなものが多数見られる。誰がいつ、何の為に掘削したのかは知る由もないが、興味深い岩である。

 この後も途中途中に巨大岩場がルート脇にあり、飽きることがない。

     
一旦、林道牛沢天王寺線に出る    大岩山    同左

 最近整備された道標が所々に見られるが、ハイキングコースと言うにはややワイルド。途中植林地の作業道なども交錯し、山馴れした人でないと道迷いする可能性も高いが、概ね安心感のあるルートをつたい、男抱山の鞍部に到着した。

 犬を散歩させている夫婦に遭遇。本日初めてのヒトとの出会いだ。このあと男抱山東峰の富士山に到着すると、10人くらいのおばさん達が山頂の岩に陣取って、おしゃべりとお菓子に余念が無い。無愛想な中年男は写真を一枚だけ撮ってそそくさと下山。立派な木造プレートが最近設置された男抱山登山口に駐まっている愛車を見て、長かった緊張の一日が無事終わった事を知ったのである。

     
男抱山へ向かう    男抱富士より鞍掛山と鞍掛尾根    男抱山登山口へ到着

概略コースタイム
取付地の神社(9:29)-鉄塔1(9:50)-伐採地(10:00)-苔むした岩(10:16)-高原山眺望(10:23)-
半蔵山北の肩(10:39)-鉄塔2(10:46)-425mP(11:02)-紅白鉄塔(11:20)-木造の祠(11:30)-
林道着地(11:32)-道間違いで行き止まり(11:53)-羽黒山登山口(12:07)-半蔵山主稜線(12:26)-
半蔵山頂上着(12:41)-昼食休憩-行動再開(13:13)-林道牛沢天王寺線と合流(13:24)-大岩山(13:27)-
男抱山鞍部(14:13)-男抱山西峰富士山(14:18)-男抱山登山口着(14:44)

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コメント (4)

Non:

 こんばんは。早速拝読しました。なるほど、奥様に送っていただいたんですね。これは羨ましい(^^)
で、実際に歩かれたコースですが、予想なさっていたように神社~鉄塔2までが特段に難しそうですね。
尾根と言い切れない斜面を方角だけで進む、それも真北なり、真西なり、そういう分かりやすい方角に
向かうならまだしも、おおよそ南西へ、という感じですよね。それも作業道を歩くままではダメ、
どこかでコース修正して…という状況があって、私だったら、作業道を辿りきって別の方向に出て
「あらら…」になっていた可能性が高いだろうなぁと思います。

 そうそう、予想外の眺望って嬉しいですよね。それも一般的なコースから外れたところであれば、
なおさらのはず。つい長居したくなる気持、解ります。

 それと半蔵山~男抱山の間は、答え合わせに利用させて頂きました。291mPを巻くあたりは
OKでしたが、そこから男抱山へ向かう辺りが思いっきり間違っていました。修行が足りませんね(^^;)
 構想中のルートに関してはお話が出ていませんよね? またいつか、楽しみにしています。

リンゴ:

以前男抱山に登った時に半蔵山への道標を目にしていたので気になってはいました。
誰もが簡単に歩けるコースという訳では無さそうですね。
冒険心を掻き立てる山、そんな存在でしょうか。

けむ:

ほほー・・・
独創的なルート取りで一筆書きですね。
北東側の尾根は想像してたルートと全然違いました。
さすがまっちゃん、恐れ入りました。

あとは、あそこからと、あそこからかな?
別ルートも楽しみにしてます。
どこかのサイトで見たのですが、池ノ鳥屋の山名の由来があの辺りに池があったからとかなんとか。
地形図上では、どこかに池がありそうにも思えないのですがねえ。
ちょっとミステリアスなお話であります。

まっちゃん:

>Nonさん

今回は家内の世話になりました。
恩返しに、シニア割引(昨年暮れに齢50になりました)適用で映画でも観に行きますかね(笑)

北東エリアは偵察も随分したのですが、上の方は行ってみないと解らなかったので結構緊張しました。もっとも全山の殆どが植林帯なのでいざとなればどこにでも逃げられるという安心感はありました。これが自然林だと迂闊には入れないかもしれません。


>リンゴさん

男抱山~半蔵山間は途中に大きな岩がごろごろしていてなかなか雰囲気のある場所です。
多少読図能力が必要な箇所もありますが、男抱山からの登りであれば概ね簡単に行けると思います。私見ですが、初めに半蔵山からの下りですと不明瞭な箇所がありますが、往路に男抱山から歩いてピストンすれば大丈夫だと思います。
機会がありましたら是非お勧めの面白いコースですよ。


>けむさん

池ノ鳥屋の山名の由来の池。
これは確かに興味深いですね。稜線付近は池塘のようなものは見あたらないだけに、真実の断片を探す・・・なんてのも面白いかもしれませんね。

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