久々のH君との山行は茨城県境の稜線歩きである仏頂山と高峯である。
R123を水戸方面へ走り七井の先から笠間に抜ける県道の途中、小貫の集落方面で南へと折れた。集落の最奥地の堰堤の箇所に車を駐めて林道歩きで奈良駄峠を目指す。
栃木茨城県境は標高500m程度の山地が多く、伐採材の搬送路としての林道もしっかりした道が縦横無尽に作られておりアクセスが大変楽である。その反面人工的な雰囲気が奥地まで届いているというマイナス面も併せ持つ。
砂利の林道を進んでいくと間伐された箇所が目立つようになるが、売り物にはならない細い丸太が放置されて散らかっているのは少し残念な思いである。下の写真のように日の浅いものはまだ良いが、場所によっては長年放置された箇所も目につく。林業にはまったく疎い自分だが、植林地をあちこち歩いた経験からやはり美林とそうでない山ははっきりと見分けることが出来る。山を想えばオーナーも美林たらんと考えるだろうが、やはり林業経営の厳しさというものが立ちはだかっているのだろう。
左手を奈良駄峠へ向かう | 砂利林道 | 間伐されている |
いよいよ車が通れなくなる位に道が細くなってくる。もはや自転車とオフロードバイク位しか通行は無理である。しかも一箇所道が崩落している箇所があり、自分の腕前ならオフロードバイクも無理であろう。谷に後輪を落として復帰不能になるのが関の山。
そんな道であるが、次の瞬間思わず目を疑う。
四輪車が捨てられているのである。一体全体こんな場所にどうやって? 捨てられた車の車幅すら無いような道なのに、実にミステリアス。過去は車が往来出来るような道だったのだろうか。
この四輪車遺棄現場よりほんの僅か先に茂木町の町道終点の杭があり、その先が奈良駄峠である。峠の先には南に向かうやはり歩道にしかならない程度の細い道が続くのみ。ますますもって謎である。
何故車が?? | 謎である | 奈良駄峠が見えてきた |
奈良駄峠にある巨大境界石に驚き、更に峠南面に拡がる採掘場に溜息をつく。いろいろと意外性のある山である。一休みして、ここからが山登り本番となる。
まずは東側に尾根を縦走し仏頂山までのピストンだ。階段の多いルートとは聞いていたが、のっけからその洗礼を受けることになった。
でかい境界石 | 何かの採掘場 | 足に優しくない立派な階段 |
一旦階段を登り切ってやや平らな所へ出るとその先にまた階段。遊歩道として整備するのもよいが、少し過剰なのではと思う。階段嫌いの人が"避けて"出来た踏み跡がしっかり出来ている。自分も出来るだけ階段を使わずにそちらを通った。
殆ど岩が見られない尾根道に、突然桃が2つに割れたその名も桃太郎石の出現。意外性は尾根道でも健在だ。
やがて伐採地に到着すると、北側の景色が広がった。それまでの風景に乏しい歩きの溜飲を下げる思いだ。残念なのは天気がイマイチなこと。冬の低山歩きは、やはりすっきりした青空が似合うものなのだがこればかりはしょうがない。
登り切ってもまた階段 | 桃太郎石 | 伐採地から北側 |
東へ向かっていた尾根が大きく北へ針路を変えると一旦ガクンと高度を下げる。下りきった所から尾根を乗り換え再び東進し標高差にして90mも登り返すとそこが仏頂山の頂上である。樹に覆われた山頂からの景色はすっきりしないが、天気が悪いのでさほど落胆もしない。久々の山行でまた調子のあがらないH君が登って来るのを待って写真を撮った。
ここまでの区間、階段もそうだが道標も完璧に整備されていて流石にハイキングコースを胸張って名乗るだけのことはあるとは思う。事実、先ほどから既に数組のハイカーとすれ違っておりそれなりの人気コースのようであるが、やはりどう考えても階段づくしはいただけない。コースが荒れないようにという配慮からだろうが、足元の悪さもハイキングの味わいの一つと自分などは思うのだが。
向かうピークへもまた階段 | H君山頂までもうちょっと | 仏頂山頂上 |
ピストンで奈良駄峠まで戻り此処から今度は高峯に向けて西進である。奈良駄峠は尾根の下部を突き抜いたような感じで交差しており、東西の尾根に取り付くにはまず階段登りをしなければならない。えぇい面倒だから適当に取り付いて尾根に上がってしまえという行儀の悪い事は今日は無し。おとなしく階段をコツコツと登っていく。
平坦な箇所になると時折穏やかな道が現れほっとする。少し斜度が出るとすかさず出てくる階段にもあきらめがついてきた頃、高峯山頂に到着。こちらは仏頂山より南北に幾らか眺望があるが、更に西に行った次のピークが景色が良いというのでそちらへ進む。
当然帰りも階段 | 緩やかな尾根にほっとする | 高峯山頂 |
一旦鞍部まで下がり次のピークがパラグライダーの離陸場で南側180度の好眺望。
驚いた事に、鞍部まで下から車で上がって来れるようだ。元々パラグライダーの機材を上げた道なのだろう。今はマウンテンバイクをワンボックス車で上げて来てダウンヒルを楽しむ若者達で賑わっている。肝心のパラグライダーのほうは、設備が見る影も無い状況なので今はもう使われていないのだろうか。
兎にも角にもハイカーにとっては嬉しい好眺望ポイントであるのは間違いない。
ハングライダー場パノラマ |
幸いにして陽差しが幾らか出てきて暖かくなってきた。疲れて食事が喉を通らないH君には申し訳ないが、向かいに加波山を望む雄大な景色でゆっくりと昼食を楽しませて貰った。
下山を始めると「太平洋眺望まで50秒」という道標が目に入り寄り道をする。笹を分けてほんの少しだけ行くと東側に開けたポイントがあった。良く晴れた日なら太平洋も可能かも知れないが、残念ながら今日は霞がかかっていて遠くはよく見えない。
帰路は奈良駄峠まで下らずに、途中から上小貫への分岐を下っていくが、いやはや強烈な階段下りがまたまた出現だ。どこまでも続く階段はやがて植林帯へと呑み込まれ、そして林道終点でやっと階段から解放された。
階段尽くしと奇妙なオブジェの眠る山。いつもとは変わった雰囲気の山行であった。
太平洋眺望50秒とな? | 晴れていれば見えるのだろう | うわぁ下りも階段! |
林道出会い | 駐車地の堰堤 |
概略コースタイム
駐車地発(9:40)-奈良駄峠(10:14)-桃太郎石(10:28)-伐採地(10:35)-仏頂山(11:00)-
奈良駄峠(11:53)-高峯山頂(12:46)-パラグライダー場(12:55)-昼食休憩-
下山開始(13:38)-下山口分岐(13:54)-林道出会(14:08)-駐車地着(14:35)
コメント (6)
こんばんは。31日に歩かれたんですね。仏頂山と高峯、私ももちろん目を付けていましたが、
うーん、そうなのかぁ…という、なんとも言い難い… まず階段の多さ、たとえば、その山肌が
崩れやすく植生を守るためとか、ハイカーが貴重な植物を踏み荒らしすぎるとか、そういうので
整備するのでなければ、マイナスばかりだと私も思います。何も考えなくても歩けるなんて、
山歩きの楽しみのひとつを奪うな~と言いたいです。
あと、放置された車は、ひょっとして盗難車?? でも、それだけ歩く人が多いことを考えると
引き上げるのにお金がかかるから、そのまま放置なのでしょうか。以前、他の方のブログで、
登山道にオフ車が乗り捨てられているという記事があって、つい気になってしまいました。
さらに気になったのが、MTBでダウンヒルを楽しんでいる、という部分… 山の持ち主さんは
了解済みなのかなぁって… こういうの、興味本位なお節介ですね(^^;)
あれこれ書きましたが、コース自体はコンパクトに楽しめるようで、レポを参考にさせて頂いて
いつか訪れたいです。
投稿者: Non | 2010年02月03日 02:35
日時: 2010年02月03日 02:35
高峯・・・確か雨巻山から東に位置する山ですね。
面白そうなコースですが、やっぱり階段は避けたいですね。
私も今後の参考とさせていただきます。
投稿者: リンゴ | 2010年02月03日 19:12
日時: 2010年02月03日 19:12
ルートは階段なんですね。
自然のままのほうが歩きやすいのになー。
私が短足すぎるからってわけじゃないですよね。
放置車両は盗難車っぽいですね。
その頃は道がちゃんとしていたのでしょうか。
ナゾですねー。
投稿者: けむ | 2010年02月03日 19:20
日時: 2010年02月03日 19:20
>Nonさん
階段は、恐らく・・・
「とちぎの元気な森づくり県民税」
http://www.pref.tochigi.lg.jp/eco/shinrin/zenpan/1216274969214.html
なんかで予算があるので整備したんじゃないかと思っているのですが、"関東ふれあいの道"周辺という事で殊更力をいれているのでしょう。きっと。
でも、山好きな人が担当なら少しやり方が違ったかもしれませんね。
>リンゴさん
雨巻山は高峯の北西隣、また、仏頂山から県境の線を北に辿ると鶏足山があります。
どちらもがなかなか良い山ですね。
このあたりの山は天気の良い日には東京の高層ビルが見えたり太平洋が見えたりしますので、宇都宮や鹿沼周辺、日光をホームとする自分にとってはなかなか新鮮なエリアです。
茨城栃木県境の山も結構懐が深く、八溝山系の南側に花瓶山というのがあります。ここの南北にすっきり伸びた尾根を地図で見るたびに溜息をついています。いつか歩いてやるぞって(^_^)
>けむさん
階段が出現すると、
「おっ!階段だ。巻く道はないか?」なんて廻りを探してしまって(爆)
薮山の岩場じゃ無いって・・・>自分
下りの階段は、膝関節のクッションが年々減少してきている自分のような者には殊の外優しくありませんです。
投稿者: まっちゃん | 2010年02月03日 22:09
日時: 2010年02月03日 22:09
こんばんは(再)です(^^;) 私の無知のために、階段のことでリンクまで貼っていただいて、
お手間をおかけしました。私、全く知らずにいましたら(『栃木の山140』も持ちません)、
この仏頂山と高峯、益子県立自然公園の一部で、
「高峯は、栃木県と茨城県の県境で、北は益子県立自然公園、南は笠間県立自然公園に指定(略)
高峯山頂までと高峯と仏頂山をつなぐ遊歩道が整備されていて、動植物の観察をしながらの
ハイキングが楽しめます」<栃木県HPより抜粋>だそうですね。
古賀志や篠井にも階段道があるのに、なんで仏頂山&高峯には、こんなに抵抗を感じたのかな?
と思いまして。過剰整備に見える整備も、公園だからという共通の理由があるからなんですよね…。
ただ、遊歩道と言われると、サンダルでも歩けそうなイメージで、なんか抵抗ありますが(^^;)
それと、山を歩き出した当初は、階段道=「整備が行き届いた山」という感覚を持っていた
ような気がしました。そういう考え方も、知らずに段々と変わってきますよね。
とりあえず、無知ゆえの発言で大変失礼いたしました、ということだけ。お邪魔しました(^^;)
投稿者: Non | 2010年02月04日 19:01
日時: 2010年02月04日 19:01
>Nonさん
いえいえ無知だなんてそんな。
私も良くは解っていませんが、ただ前のコメントにも書いたように、
同じお金を掛けて整備するにしてもひたすら階段ばかりつくるのは如何なものか
という思いです。
山歩きの好きな人は階段歩きが嫌いというのはほぼ間違いの無い意見ですので、
どうせ人工的にやるなら、初心者や家族連れでも楽しめる工夫が欲しいなとは思いました。
ちなみにコース上にはワンポイント標語や木に巻き付けられた樹名板などがあちこちにありましたが、ちょっと自分的には?でした。
投稿者: まっちゃん | 2010年02月04日 22:12
日時: 2010年02月04日 22:12