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オフ車で行く猪苗代湖

アーカイブ:オフロード  日時: 2010年09月18日 22:00
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 実は8月に試みたこのルート。廃道寸前の甲子林道に迷いこんで実力不相応の超ハード走行となってしまった。大した事はなかったが、今現在も右の脛に残る小傷跡が反省のしるし。甲子林道には『洗礼』を受けたような気がする。バイクツーリングといっても単独で林道となるとやはり山に入る時とほぼ同じ心がけと救急装備は必須と実感したのであった。

 さて、前回未遂の企画のあらましはこうだ。

 まず、自宅から那須へ向かう。もちろん下道だ。宇都宮から玉生街道(県道63)経由で矢板へ出て、さらに県道30を使って北を目指す。いつものことながらメジャーな国道は一切嫌っていく。那須の大丸から北に降り、一旦R289で東走して雪割橋から西に戻ると本日の第一目標である「鎌房林道」へ到着。

 「鎌房林道」「西部林道」の後はR118で繋ぎ「黒沢林道」で安藤峠超え。会津若松へ出た後、猪苗代湖岸を出来るだけ湖面沿いに忠実に走る。ぐるりと南半分を周回した後に名前が如何にも恐ろしげな御霊櫃(ごれいひつ)峠を超える。その後もマイナー県道を繋いで宇都宮へ帰るというものだ。

 ポイントは、
 1.県北の手軽な林道(非舗装ダート)を楽しむ
 2.普段見たことの無い猪苗代湖の南岸を小路を辿りながら走ってみたい
 3.かねてより名前が気になっていた御霊櫃峠訪問

 ホントは夏の冒険として温めていた企画だったのだが、前回は道間違えの敗退。今回がリベンジと相成った。

 ついこの間まであんなに暑かったのが嘘のように突然やってきた秋。メッシュジャケットではすぐに寒くなりインナーにヤッケを着込んだ。
 走り慣れた県道63を北上すると、開けた所から日光の峰々や向かう北側の高原山が朝の清々しい光を受けてくっきりと全容を見渡すことが出来る。澄んだ空気で、山頂の木々の一本一本が見えるのではないかと見まごうばかりである。うろこ雲が浮かぶ高い空とのコントラストが美しい。

 那須の温泉街を抜けて殺生石で一回目の休憩を取る。3連休中日だけあってまだ早い時間なのにぽつぽつと観光客が訪れている。先を急ぎ、大丸でバイクを一旦止めて風景をカメラに収め北へと降下していく。

     
殺生石で1回目休憩    ススキと秋の空    大丸から茶臼と朝日岳

 R289から東へ約4km程走った箇所、うっかりしていると見落としそうな雪割橋入り口の看板を左折する。田舎道を辿ると本日のメイン区間である林道セクションへと繋がっていく。

 雪割橋から直線で西走すると行き止まりの看板がある。何気ないこのL字路を右折するのだが、行き先は下郷方面となっている。(下写真左)
 下郷に行くには鎌房林道から甲子林道を抜けなければならない。オフロード車でも悶絶しながら走行する区間だけに、この道案内の意図する部分がまったく見えない。更に面白いのはこの地点の北東部に広がる自衛隊の演習地の存在だ。(下写真中)
 丁度一週間前に実弾射撃訓練があったというのだ。もっとも、演習場のエリアには迷い込む可能性はゼロだが、なかなか凄い所である。そういえば辺りには広々とした牧場があってどこと無く北海道のような雰囲気も漂っていた。

     
下郷方面って!普通は通れないだろう    布引山の演習場がある    甲子峠方面

 畑の中の細い道を通っていくとダートに接合。さぁいよいよ林道区間の開始である。前回もこの先の西部林道・甲子林道分岐までは既に経験済みであるが、始めは楽に通過出来るダートも徐々に川原のように大きな石がゴロゴロするようになってきた。距離こそ短いが、険路である甲子林道の前哨戦に相応しい区間となる。
 今回はライディングシューズまで届くような長いニーシンパッドを装着、怪我をした時の応急セット等、装備も心構えも万全。気を引き締めて難路をクリアしていく。

 甲子林道との分岐点で一休みしていると、先程ダート入り口で地図を確認していたモタード車の人が、心地よい単気筒音を響かせながら先に西部林道へと吸い込まれていった。何時の日か再び訪れようぞと甲子林道入り口に目をやって自分もエンジンをかけた。

 小砂利の続く西部林道は走りやすい。自分のようなビギナーかつサンデーオフローダーには丁度楽しいコースである。距離も結構あって走り応えがある。

 途中羽鳥湖スキー場脇にぽこっと飛び出す。脇の舗装路をそのまま進むと市街地に下りていってしまうが、途中にある林道入り口を見つけて再びダートへ。奥西部林道の分岐を見送り北転すればやがて舗装路へ接合する。振動の無い平坦路のなんと快適なことか。まるで摩擦ゼロの氷上をスケートで滑っているような気分だ。

     
さぁダート開始    右が西部林道、左は悪夢の甲子林道    西部林道は走りやすい

 R118で移動し黒沢林道へ向けて再び北上する。人家もまばらな集落を過ぎると黒沢林道のダート区間開始である。こちらも特に荒れた所の無い快適ダートだ。頂上の安藤峠は北の会津若松市、南の天栄村との境界上にある。

 安藤峠より少し下ると布引山へ向かう支線がある。寄り道をして布引山の風力発電施設を見に行った。

 遠めにも大きな風力発電の羽根は真下で見ると壮大。そんな羽根が見渡す限りの広大なエリアに連なって設置されている風景は感動的である。エンジンを止めてヘルメットを脱ぐ。ススキがそよぐ一帯は、羽根が風を切る音でピューピューと何処か裏悲しい。

     
黒沢林道もまた快適ダート    見晴らしはないが、安藤峠に到着    布引山の風力発電所
     
      小さなせせらぎを跨ぎながら

 黒沢林道後半も心地よい自然路である。やがて、忽然と立派な舗装路に接合すると、山奥によくある照明の無いトンネル。まだ真新しい。
 安藤峠の標識にも書いてあったが、「東山温泉と天栄村を快適道路で結ぶ」プロジェクトがあるらしい。どうやら北側はここまで延びてきているようだが、少し東側にR294があることや、東山温泉が会津若松の中心部から至近でアクセス出来ることを考えるといささか疑問の残る開発のような気がする。

 東山ダムと温泉街を抜けると程なく会津盆地へ。昼飯の為に、飯盛山脇から一旦市街地を彷徨う。

 大きなバイバス通りを走ると、例に漏れず全国展開の外食チェーンやファーストフード店が並ぶ。その中で目を引いたお店、「万世楼飯店」の暖簾をくぐった。

     
途中から立派な舗装路とトンネル    東山ダム    会津ラーメンって有名だっけ?

 頑固親父の味、とうたった品書きから味噌タンメンと餃子を注文。北島三郎の色紙が掛けられていた。
 お味のほうは如何。中華料理店らしいしっかりした味わい。いささか冷えてしまった体の芯に染み透る。一緒に注文した餃子はなかなか素晴らしい。とかく脇役の餃子だが、独立した立派な一品(ひとしな)であった。

 食事の後は再び飯盛山方面へ戻り、東側の山沿いにある道を行く。普通ならR49を使って猪苗代湖を目指すところだが、ここもこだわりの狭路を辿る。距離的には最短のこのルートは、国道が整備されていなかった時代は猪苗代湖へ通じる重要な経路ではなかったのかと推察する。

 さびれ切ったわけでもなく、適度に整備されている舗装路なのでオンロード車はもとより4輪でも充分通行可であるが、やはりオフロード車がよく似合う道だ。
 山道を降りるとR294を跨ぐ。すぐ脇には車が沢山走っているR49も見えるが構わずそのまま進む。地図の上で存在する筈の道は途中薮で深く閉ざされていた。(写真下中)
 流石にこれはパスして少し先を遠回りして本来のルートに復帰。細かい分岐や交差点に注意してGPSに従って進むと猪苗代湖が見えた。

     
頑固親父の逸品味噌ラーメン    猪苗代湖へのアプローチ(流石にこれはパス)    湖が見えてきた

 湖岸道路に着いた最初の浜で一休みとする。雄大な湖に癒される思いだ。観光で賑わうことも無いこの静かな浜も、紅葉の頃はきっと素晴らしい風景が惜しげもなくあたりを飾ることだろう。

 この後は湖岸を舐めるようにして進んでいく。可能な限り湖面沿いにと行きたいところだが、途中高度を上げての山超えもある。高い所から見える磐梯山と茶色の砂浜が美しい。中禅寺湖の八丁出島を彷彿させるのは材木山。

     
湖岸で一休み    違う浜でも一休み    手前に突き出したのが材木山、奥は磐梯山

 一旦大きく内陸に入り、舗装林道を行く。すぐ南にはR294があるので、ここを走るのは地元の人か物好きかのどちらかである。峠から先はもう郡山市である。

     
一旦湖岸を離れて    内陸の林道を行く    最高標高部付近で郡山市へ

 林道が終わると再び湖岸へ出る。磐梯山も大分遠くなって気がする。キャンプ場脇の最後の直線区間を抜けて猪苗代湖に別れを告げて、本日の最終セクションである御霊櫃(おれいひつ)峠へと向かう。

 峠への入り口は小さな標識が一つ。道路地図でも白色の如何にも狭路といった雰囲気だったので、訪れるならオフ車でと以前から決めていた峠道だ。走ってみれば道幅こそ狭いがしっかり舗装整備されていて4輪でもまったく問題なし。名前のおどろどろしさから何となく寂れた悪路を想像していただけに若干拍子抜けした気がした。

     
磐梯山が遠くなってきた    御霊櫃峠へ向かう道    高度を上げて猪苗代湖を振り返る

 峠に着くとまさに郡山と猪苗代の分水嶺。古の人がこの峠を越えた思いに触れるような風景であった。また、この峠から南北は、国土地理院の地形図を見ると無名なピークを辿るハイキングコースが整備されている。
 北側の額取山方面は見た目にも岩尾根続きの展望コース。南側はロングな尾根歩きを楽しんで三森峠へと抜けることが出来る。車のデポが確保出来れば是非歩いてみたいものだ。

     
峠より郡山市街地方面    峠北側、額取山方面    峠南側
  
  

 御霊櫃峠を降りてしまえば後は帰るだけ。詳しいことはもうお終いにするが、国道を嫌ってGPSを睨みながら裏道を辿る旅は続く。稲刈りを終えた田に野焼きの煙がたなびく風景は一日の終わりを一層物悲しくする。ジェベルの非力なエンジンと振動に随分疲れたが、気がつくと300km超えのこのツーリング。思い描いたルートを行動出来た喜びがふつふつと湧き上がってきた。

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コメント (7)

けむ:

まっちゃん こんばんは

添付の地図でトラック再生して見ました。
まっちゃん迷いませんねー。
きっちり地図上で確認してから走るんですか?
私じゃ、あっちこっちでUターンかましそうです。

ところで、猪苗代湖の西岸から南岸はいい感じですね。
意外にあそこらへんって行かないので非常に参考になりました。っていうか私も行きたいぞ。
ああ~やっぱりバイク欲しいなあ・・・

せろーG:

ジェベル大活躍の一日でしたね。

オフ車は 道を選ばず 何処でも入っていけるし 道を間違っても簡単にUターンできますからいいですよ。
大型バイクだとそうもいかない(笑)

でもジェベルで300キロのロングツーだと お尻が悲鳴をあげそうですよね。
私もセローで100キロを超えるとつい背伸びというか 尻をシートから浮かせてしまいます。

そこで思ったのが自転車に乗るときに バッド入りのインナーパンツこれいいと思うのですが?
今度試してみて 良かったら 内緒でぢみさんに お教えしますよ。

まっちゃん:

>けむさん

いやぁ実は2回ほど迷っているのですよ。
あまりにも見苦しいのでトラックログをちょん切ってるだけです。

1回目は羽鳥湖スキー場脇から西部林道に入り直す所。GPSでチェックしながら走っていたので途中で気づきましたが、普通はそのまま市街地まで下りちゃう可能性大。

もう一箇所は黒沢林道終わって舗装路になって山のど真ん中の交差点。
こっちは2Km位行き過ぎ。あと3kmも走ればR294に出てしまっていたところでした。

猪苗代湖は北岸と東側しか走ったことが無かったのですが、今回のように西から南を舐めるようにして走るのはなかなか面白かったです。


>せろーさん

オフ車はどこでも気軽に入っていけるので良いですよね。
ジェベル200はもうちょっとオンの走行性(パワーや5速のギヤ比)をなんとかして欲しいところですが、ダートの時はコンパクトな車体+適度なパワーで、自分のスキル的に身の丈にあった性能のような気もします。

ちなみに今回は自宅から自宅までで360km走りました。
意外な事に尻の痛さはGSXより楽だったりします。ライポジの関係なんでしょうかね。
パッド入りインナーパンツ報告期待してますよ。

Non:

 こんばんは。かなりのロングツーですね~ しかも県道へのこだわりがすごい(^^;)
往路と復路を分けていらっしゃるのも、つくづくお好きなんだなぁって気がします。
こう、山歩きに共通するものがあるような… 磐梯山にはコメントが少なくて、
ずっとマイナーな額取山へは触手が動いたご様子で…(^^)
 なお、『福島県の山』に記述があるのはご存知でしょうか。御霊櫃峠から夏出まで
歩くコースが紹介されていますが、相当に展望が良さそうですね。興味が出ました。

まっちゃん:

Nonさん、コメントありがとうございます。

郡山の山好きさんにとって、御霊櫃峠周辺は我らが古賀志山のような距離感ぽかったです。

『福島県の山』買ってこよう(^_^)

リンゴ:

まっちゃんさんらしい拘りのコース選択とオフ車ならではの楽しいツーリング。
心に残る風景と頑固親父の中華店、何よりの思い出となった様ですね。

まっちゃん:

リンゴさん、こんばんは。

オフロード車の旅は細やかな出会いが多くて好きです。

オンロード車で行く、距離感のある移動感覚も捨てがたいですが、どちらも体験できるのは贅沢者なのかもしれません>自分

あ、そろそろ本腰入れて秋山に行かねば(^_^)

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