今回はログ収集が出来なかった為、予想ルート
春の花と秋の紅葉を迎える頃は、山歩きをする者にとって楽しみな時期である。これがなかなかタイミングが難しく、相手が自然だけにベストコンディションで山に行けるとは限らない。ましてや未だ現役として社会人生活を送る者として、思い立った時に山へ向かうことが出来る身分では無い。本当は多少の悪天なども気にしなければよいのだが、どうも天気がすぐれないと腰があがらないという贅沢な気持ちが実は障害だったりするのである。
結局他人の山行報告を読んだり、天気に一喜一憂したり、さらに野暮用などにも逡巡しているうちに花も紅葉もいつしかすっかりその盛りを過ぎてしまうという繰り返しであった。そんな優柔不断な自分にいつも舌打ちしていたのだが、今年は違う。
ブログ仲間のリンゴさんが、一週間程前に色づき始めた那須の風景を紹介していたのを見た翌週、連休最終日はなんと好天予報である。自分もいよいよ燃え盛る景色にまみえることが出来そうだ。
那須と言えば紅葉で有名なのは姥ヶ平だ。去年は沼ッ原から白笹山へ登り南月山経由で姥ヶ平へ降りたが、紅葉はいささか盛りを過ぎていた。それでも感動的であったことは記憶に新しい。
今回は沼ッ原より直接姥ヶ平へ登り(このコースが普通らしい)、紅葉を堪能した後は牛ヶ首から朝日の肩、熊見曽根、隠居倉へと向かう。下山は三斗小屋温泉から沼ッ原へと周回するコースである。
ここ数日TVなどで那須の紅葉が盛りを迎えたことが報じられていたことに加え、土曜日から体育の日までの三連休の前半二日は雨予報で外出を控えていた人達が一斉に繰り出すのだから、駐車場も混雑を極めることは想像に難くない。予想通り、沼ッ原に着いたのが朝の7時前だというのに既に駐車場は満車であった。少し離れた未整地の駐車場へなんとか駐めることが出来たが、いやはや流石に紅葉のメッカだけのことはある。すれ違った登山者から聞きかじった話によると、峠の茶屋側の第一駐車場は深夜の2時半には既に満車になったらしい。登山口に近い場所にすんなりと車を停められただけでもありがたや。
姥ヶ平へ向かう道は駐車場の左奥を行けばよいのだが、以前白笹山を登った時に脇に分岐していくショートカット道の存在に気づき、地図に明瞭なこの裏道を歩いてみたいという衝動にかられた。GPSにはこのラインを入力していなかったのだが、往来は少なくとも地形図に道が記入されているくらいだから踏み跡探索は容易だろう。コース途中の難所は地図を見る限り無さそうである。だがこの後、この判断により辛い藪漕ぎを強いられることになるとはこの時点で予想だにしていなかった。
その如何にも怪しげな分岐には道標の類は無いが、GPSで見ると地図とピッタリ一致しているので間違いは無い。最初のうちは若干荒れた感じのガレ道だが、進むに従い段々と草が生い茂るようになってくる。だが足元の道形は未だ明瞭である。ストックで草を払いながら軽快に進んでいくと、やがて広い湿地帯のような所へ出た。この時点で道形も踏み跡も消失しているが、依然としてGPSを見ると進路と道はシンクロしている模様である。登山道でさえ喧騒に包まれているというこの那須で、まったく閑散としたこの荒野はまるで別世界のようだ。
いよいよ進路が閉ざされてきたので、まずは行く手を阻む笹薮の丘に一考する。見渡す限り踏み跡すら見つからない。いや、あってもこの背丈ほどの笹では見分けもつかないだろう。ここを突破すれば登山道に合流するのは明らかである。GPSで進路を決めるが、どうにも勾配がきつく難しそうなのでストレートは諦めて若干巻きながら進んで行った。背丈を完全に越える藪は過去に古賀志山で経験しているが、あの時は尾根を忠実に下るだけだったので比較的簡単だった。だが今回はなかなか手強い。しなる笹を分けるのに力が必要なのと、地面が見えないが故に斜面への感が狂うのであろうか、思いのほか体力を消耗するものである。右に左へと千々にルートを取りながら進んでいくが一向に登山道に近づかない。直線距離にして僅か百m程度しかないのにである。これが見通しの良い植林地やせめて腰高程度の藪なら簡単なのだが。
どうにかこうにかトラバース状の踏み跡に接合し、これを追ってやがて登山道に合流することが出来た。ほっとして登山道を登り始めたのも束の間、ここでもまた大きな間違いに気付くことになる。
どうにも様子がおかしい。あれほど人が多かった筈なのになぜか登山者の姿がまばらである。改めてGPSを取り出して見たら唖然とした。どうやら日の出平への道を登っているようだ。それも標高にして100m近くも。「コース変更」が一瞬頭をよぎったが、初志貫徹すべし。泣く泣く来た道を下った。
まずは薮?? | 別世界である | 地図通り湿地がある |
沼ッ原から三斗小屋温泉分岐をへて姥ヶ平へ向かう銀座コース(自分で勝手に命名)のハイカー渋滞に並びながら歩いていると、先ほどまで笹藪と格闘していたのが嘘のようである。既に一座登り終えてきたような心持だが、まだやっと今日の出発点に立ったようなものである。
徐々に高度を上げていくとみるみる葉の染まり具合が美しくなってくる。茶臼岳と姥ヶ平のお決まりコンビショットは予想を裏切らずに目に鮮やかである。人が多いのはこの際辛抱するしかないか。
全山燃ゆる | 姥ヶ平より茶臼岳 |
牛ヶ首へ登る途中、振り向いて姥ヶ平を見る回数が多いのは決して疲れているからではない。ご覧の通りのすばらしい紅葉が青空に映えているからだ。
ロープウェイからやってくる観光客で賑わう茶臼の鉢廻りから峰の茶屋までを通過し、朝日岳方面へと向かう。こちらもクサリ場などは大渋滞だ。だがここから先はガスが掛かっていて眺望は得られそうにもない。
姥ヶ平を上から | 朝日岳から鬼面山への稜線 | 朝日の肩より |
熊見曽根分岐より隠居倉方面への稜線に分け入ると途端にハイカーの数が少なくなり、落ち着いた趣になってきた。三本槍方面は向かう人の姿が多いのに、こちらはあまり人気が無いようである。それでも景色はなかなか素晴らしい。ガスで生憎北の景色は無かったが、剣が峰西側の谷の紅葉が丁度見頃となっている。自分にとっては何よりも静かなのが一番である。
緩やかな起伏を幾つか超えて霧深き隠居倉山頂へ到着。360度眺望が望めるということだが、今日は残念なことに全方位ホワイトアウトしてしまっている。数組のハイカーと共に自分もザックを下ろして軽食小休止とした。
熊見曽根への稜線 | 剣が峰西側の谷 | 隠居倉山頂 |
隠居倉からの下山路は三斗小屋温泉へ向けて下るが、こちらの谷間もまた人知れず燃える紅葉が素晴らしい。
途中、ぽつねんとある噴気口を通過してしばらく下ると、程なく温泉宿の屋根が見えてきた。山小屋を考えれば不思議もないが、かくも山奥によくも建てたものよと思う。かつて会津への荷駄が行き交う交通の要衝として賑わい、数件の旅館が存在したとういう。当時の会津中街道は沼ッ原より北進して麦飯坂を越えた後、三斗小屋宿を経て東進して三斗小屋温泉へ。ここより再び北に進路を取って大峠を越えて会津へ入るというものであったという。いくら切り開かれていたとは言え、今日(こんにち)のハイカーの山遊びとは違い、かくも山深き場所が商業の動脈であったことを考えると感慨深いものがある。
宿の水場で顔を洗い喉を潤してさっぱりした後、足元の古びた道標、「沼ッ原へ至る」を見て進む。ここで本日2度目の失敗。他に道らしい道も見当たらなかったのと、地図をよく見ていなかったのが敗因である。西へ西へと下るルートの途中、件の大峠への分岐を見た時にもっと早く気づくべきであった。15分も下った頃だろうか、やはりGPSを見て愕然。やれやれ三斗小屋の旧宿場方面へ降りてしまっているようだ。流石に足取りが重くなってきたが、まだまだ余力充分と自分に言い聞かせ、カラ元気で温泉へ復帰。
南へ下る道など何処にあるのだろうと見渡していると、宿の居並ぶ真ん中あたりに大きな道標があるではないか。ヤレヤレである。
三斗小屋温泉からの山道は、はじめのうちは平坦な下りで心地よい散策気分。また、既に午後になっているのにまだまだ登ってくる人も多い。見るからに今晩温泉に投宿するような雰囲気の高齢者夫婦も多い。連休も過ぎた山峡の鄙びた温泉の静かさは如何ばかりか。考えるだけでも溜め息が出そうになる贅沢さだ。せめて休日でよいから泊まってみたいと切に思うのであった。
隠居倉から西へ下る | 静かなる紅葉 | 三斗小屋温泉 |
うまい水であった |
三斗小屋温泉から沼ッ原までは道標のタイムで約1時間半。一旦沢を跨ぐので、かなり高度を下げた後登り返しをして沼ッ原~姥ヶ平ルートへ接合する。今日は道間違えのお陰?で随分登りの標高差を稼いだ気がするが、案の定終盤に疲れが出て来た。朝、藪漕ぎで体力を消耗した後に間違えて登ってしまった日の出平コースへの分岐を見た時に、ふとGPSを見ると、おやおや、「ログ採集のスイッチが入っていない!!」事に気がつく。
悪いことは重なるものだ。いや、別に怪我をしたとか本格的に遭難したとかそういうことでは無いのだが、今日は全てにおいてツイて無い。いや、本当は全て自分が不注意だっただけなのである。メジャーな山域という気の緩みからか、地図をよく読まずにGPSも進路に迷ってから出す。コンパスを出して精査もしない。ないないづくしであった。FKDに買い物に行った時、地下駐車場で自分の車を何処に置いたか判らなくなることがあるが、あれと同じくらいに情けない結果であった。
まぁ良いだろう。今回は勉強させて貰ったことにしよう。次回は全力でこのメジャーな山域を歩いてやろうと強く胸に秘めるのであった。
古は会津への通過点 | 立派な道標、流石那須! | 白笹山とパジェロミニ |
コメント (8)
素晴らしい紅葉を見てきましたね。羨ましい。
昔 三斗小屋温泉の大黒屋さんに泊まって 同じように紅葉の那須を楽しんだことがありました。
11日は 太鼓叩きの疲れで いい天気だったのですが 一日中 テレビの前で
合唱コンクール見ながら ゴロゴロしてました。
金賞高校は安積黎明高等学校 私も審査していて 安積黎明高等学校が一番だななんて思っていたので 予想が当たってびっくりしました。
投稿者: せろーG | 2010年10月14日 20:34
日時: 2010年10月14日 20:34
こんばんは。ご自身ですっかり反省なさっているので、コメントをするのもなんですが、
まっちゃんさんでもこういうことがあるんですね。やはり、よく歩かれているメジャーな山、
道標もあるし、踏み跡も明瞭だし・・・と、まっちゃんさん好みの山とは趣が違いますしね。
間違いを正直に告白なさっているところが、また良いなぁと思いましたが・・・(^^)
三斗小屋温泉は、それこそガイドブックと、あとは数年前にTVで見たことがあるだけ
ですが、かなり年季が入っているように見えますね。私がこれまでに泊まったことのある
山小屋の中でも(数えると9回=9軒)、「年季の入ってるベスト3」に入りそうです。
もっと年齢を重ねて、「こんなに家から近いのになぁ、来ちゃった」なんて言いいながら
泊まれたら楽しそうです(^^)
投稿者: Non | 2010年10月15日 02:16
日時: 2010年10月15日 02:16
速報を拝見したときにコースタイム8時間と書いてあったので、何処を歩かれたのだろうと不思議に思ってました。
なるほど色々あったのですね~(^^ゞ
私は姥ヶ平でゆっくりとした時間を過ごしていました。
紅葉は前日までの風雨でピークを過ぎていましたが、青空が広がりそれなりに満喫できました。
投稿者: リンゴ | 2010年10月15日 18:35
日時: 2010年10月15日 18:35
>せろーGさん
お祭りお疲れさまでした。
三斗小屋温泉は今は、大黒屋と煙草屋の2軒だけですが、どちらも日帰り入浴をやっていないようで、目当てで来た登山者が残念がっていました。
是非泊まって夜とか朝の雰囲気を味わいたいものです。
>Nonさん
今回の山行は徹底的にケチョンケチョンでした。
お陰で良い足腰の鍛錬に(爆)なったようで、2日後まで筋肉痛が長引きましたが、今日現在、若干後脛辺りに違和感が残る程度まで復活してきました。
紅葉喧騒の那須は確かに山全体が騒がしい感じがしましたが、熊見曽根から隠居倉方面はホント静かでよい所ですね。ガスの無い時にまた訪れたいものです。
>りんごさん
8時間掛けて那須を堪能してまいりました(笑)
紅葉のピークはあれよりもっと凄かったのですね。
うーーむ。自分的にはかなりハイレベルな景色を見ることが出来たと思っていたのですが、
"本当の紅葉"をまだ見られていないということは・・・
来年また是非リベンジしたいです(^_^)
投稿者: まっちゃん | 2010年10月15日 21:33
日時: 2010年10月15日 21:33
まっちゃん こんばんは
二度目にルートミスした道が会津中街道になるんですかね。
これ、一度は歩いてみたいと思っているルートです。板室から大峠越えで。
公共交通機関頼りになるので、きちんと計画立てなきゃいけないので、なんとなく二の足を踏んでますが。
しかし、昔の人はここを越えたんですよねー。えらいもんです。
投稿者: けむ | 2010年10月16日 20:14
日時: 2010年10月16日 20:14
けむさん。どうもです。
会津中街道トレースはロマンがあって良いですね。
古の人の足音が聞こえてきそうです。
交通機関のアクセスは・・・確かにこれが一番ネックですねぇ。
投稿者: まっちゃん | 2010年10月16日 21:36
日時: 2010年10月16日 21:36
はじめまして
リンゴさんのブログから来ました。
なかなかの冒険家で感心しました。最初の湿原は沼原の貯水池の残土置き場だそうです。
前に私たちも同じコースを通り藪に阻まれ撤退したことがあります。
三斗小屋宿跡への道は旧街道ではありません。西側に最近刈り払いしてくれた旧街道があります。
那須はいろいろと面白い所があり私も大好きな場所です。
11日は皆さん那須に集合だったようですからどこかでお会い出来るかもしれませんね。
楽しみにしています。
投稿者: Q造 | 2010年10月25日 12:34
日時: 2010年10月25日 12:34
Q造さん、はじめまして。
コメントいただきありがとうございます。
リンゴさんのブログでよくお見かけしていましたが、ベテランのQ造さんにお越しいただいて光栄です。
なるほど、あの湿原は沼原貯水池の残土置き場だったのですね。
U字溝を埋めた排水路が地形図の破線と一致しているので、何かあるのではとは思っていました。
今思うと最後の笹薮はU字溝の中を歩いていけば楽勝だったかもしれません。
来年にまたリベンジで行ってみようと思ってます。今度はGPSのログをばっちり取りますよ。
三斗小屋宿跡への旧街道は刈り払いされた旧道が復元されているのですね。
これもまた興味深いお話。
機会がありましたら、是非いろいろとお話を伺わせてください。
投稿者: まっちゃん | 2010年10月25日 22:36
日時: 2010年10月25日 22:36