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燕巣山から湯沢峠

アーカイブ:日光の山達  日時: 2012年09月22日 21:29


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 以前から気になっていた燕巣山。金精峠を超えて丸沼近辺を通過する時、四郎岳と燕巣山の堂々とした双耳峰のような山姿にはいつも心惹かれていた。やるならば、南東の県境尾根も笹薮に名高いルートであり外せないと常々考えていた。尾根に難儀して雷に捉まるのも嫌だし、あえて夏場のピーカンを外して季節と天候を選んでいたら好機が到来したようである。

 すっきりとした晴れは期待していないつもりでも、いざ支度を終えて歩き出すと今にも降り出しそうな空模様には流石に心もトーンダウンする。予報では夕方まで幾らか天気が持ち直すはずなのだが、まぁ山の天気はそうは素直にはいかないのも承知。せめて雨脚が強くならなければ良いのだが。

 出だしは四郎沢沿いを登っていく。途中何度か沢を渡リ返すとやがて美しい滑床を見る。直ぐにロープが垂れ下がった小尾根に取り付いた。このまま高度を上げるのかと思ったら、また支沢沿いを行く。
 途中パラパラと雨が降り出した。沢沿いのルートは樹に覆われていて直接雨粒が落ちてくることはない。かえって涼しくて歩きやすい位だが、程なく雲間から薄日が射してくると内心ほっとする。やはり山登りは太陽の日差しが有ると無いとで精神的に随分違うのだなということをあらためて痛感した。

 沢から離れて少し登ると程なく四郎峠へ到着である。左が四郎岳、右が燕巣山へとよく踏まれた立派な尾根道が続く。
 栃木百名山本の記述には、丸沼温泉から燕巣山は、はっきりとした登山道があるとされているが、四郎峠へ到達するまでの沢沿いのルートは一部不鮮明な箇所もあり、初心者の方は経験者と共に登ることをお勧めする。一方、四郎峠から燕巣山へは多少急登だが迷うような所は全く無い一本道である。

     
四郎沢沿いの登山道を行く    何度か沢を渡り返す    晴れていればもっと美しい滑床
     
唯一の道標    時折、沢もルートとなる    四郎峠には立派な登山道が

 丸沼温泉から燕巣山へは標高差約800m。四郎峠まででその半分の400mを稼いだことになる。だが、等高線の詰まり具合を見ると、峠からの電車道のような登りがこのコースの真髄であろうと見てとれる。はたして出だしのゆるやかな尾根道も長くは続かず、やがて1891mPを超えると胸突き八丁というにはいささか大袈裟だが、地味に急登の連続がなかなか足腰に堪えるのだ。

     
   出だしは穏やかな道    東電の境界杭
     
眼下は丸沼    燕巣山へはひたすら急登   

 無事山頂に到着するもあいにくのガスで眺望は全く無し。本来ならばこの先の県境に累々と繋がる白根山や錫ヶ岳を大きく見ることが出来るだろうに、お隣の四郎岳でさえガスに深く閉ざされていた。次回訪れる時は四郎岳の山頂に立ち、この山域からの景色を眺めようと決意した。

     
   赤薙山以来のセルフ撮り    東電標柱を利用!

 腹ごしらえと充分な休憩、鋭気を養って出発。カッパのズボンだけを履いて上は藪こぎ専用ウィンドブレカーを着る。藪こぎ専用と言っても単なるユニクロの激安品で、要は枝などに引っ掛けて破いても惜しくないだけのことである。また、色は街中では恥ずかしくてとても着れないようなヴィヴィットなオレンジ色で、万が一の時も視認性は抜群である(笑)。
 登ってきた登山道と同じ方角に踏跡がありこちらへ一旦降りてみると腰高くらいの気持ち良い笹尾根が続く。だがこちらは方角違い。これを辿り北へ尾根を追えば鬼怒沼の西を抜け物見山に通じる。一度は歩いてみたいルートだが、下山後のアクセスを考えると少なくともどこかでテン泊が必須だろう。自分にはちょっとハードルが高いかもしれない。

 天気が良ければ尾根通しを目視してから下降点を決められたが、取り敢えず一旦降りた笹薮から山頂を観察し、笹の中に点在する木の並びから目論見の尾根と見当をつけてトラバース。尾根の芯に乗ると意外な事に微かに道形が認められたが、それも一瞬。後はひたすら笹に覆われた稜線下りである。

     
湯沢峠へ向けて薮下りスタート    一旦北東へ降りる    トラバースして尾根の芯に乗ると意外や道形微か

 笹薮が無ければルートの難しさは殆ど無い。だが、山頂からの初めの標高下げの区間は背丈程の笹で遠望が効かず若干てこずり、2083mPと2045mP付近の緩斜面も尾根形をはっきりと見分けられず進路確定が結構難しい。ルートミスをしても多少の登り返しをすれば良いのだが、笹薮の登り返しは思いの外体力を消耗する。できるだけ無駄な事はしたくないのだ。
 所々足元に隠された倒木に気をつけながら進むのは薮歩きのセオリーだが、横たわる古木の中には年輪を感じさせるような大きなものもあり、古からの自然の全てがこの笹薮に覆いつくされているのではないかと思うと感慨深いものがある。
 ネットで湯沢峠から燕巣山へ登った人の記録を見るが、屈強な笹薮に抗しての登りは容易でないことは想像に難くない。また、倉持裕至氏は著書の『栃木273山』で、この湯沢峠からの登りをさらっと記述している。今更に氏の桁外れた鉄人ぶりを実感した次第だ。

 難しかったのは2045mPでの方角替え。GPSのプロット点をもう少し増やしておけば現在地の正確な把握が容易だったと反省するが、ここは慎重にコンパスと地図とGPSとを総動員して正確にルートを維持する。

     
尾根を外さず笹薮を進む    人知れず池塘あり    笹薮は延々と続く

 2045mPから無事尾根の乗り換えに成功し、下って行くと遅まきながら日が射し始めてきた。樹間から根名草山が間近に見える。写真に捉えることが出来たのは下の1枚。根名草山北峰(2304mP)である。三角点峰のほうも笹の間からちらちらと見ることが出来た。

     
   幾らか日が射してきた    根名草山の北峰

 忘れた頃に気まぐれに点在する古い赤テープだが、ひときわ大きく樹に巻きつけられたテープに気づくとそこが湯沢峠との接合点である。無事登山道へ復帰することが出来た。あとはひたすら登山道を下るだけである。何よりも道形があるのが嬉しい。途中四郎岳が姿を覗かせたり、ほとばしる沢の流れに笹尾根の静謐の対極にある"動"を感じたりと、感慨深い下山みちであった。
 駐車場からの去り際にふと振り返ると、今しがた歩いてきた県境尾根がよく見える。心の中で、"あの"笹薮に軽く会釈をしながらハンドルを握りかえした。

     
湯沢峠の登山道に出る    樹間から四郎岳が大きい    鬱蒼とした行程故に沢が心地よい
     
駐車場へ到着(奥が湯沢峠方面)    四郎峠へは駐車場より北西、四郎沢沿いを登る    丸沼温泉より

概略コースタイム
駐車場発(6:04)-滑床の沢(6:43)-四郎峠(7:30)-燕巣山(8:49)-行動再開(9:10)-
2083mP(10:41)-2045mP(11:42)-湯沢峠(12:47)-湯沢に接合(13:55)-駐車場着(14:30)

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コメント (4)

リンゴ:

スタート時間が6:04と言うと、私と殆ど同じでしたね。
ただ大きく違うのはまっちゃんが登山者も少なく難易度の高い燕巣山へ、自分が人気の白根山へというところでしょうか(笑)
お互いの登山スタイルの違いがよく現れていると思いました(^_^;)

Non:

 こんばんは。燕巣山、数年前に同じコースで歩いた方の記録をネットで見て、いつかは、と考えていましたが、
思いがけず踏み跡が薄そうですね。特に燕巣山~湯沢峠、2045mPのつもりが、当てが外れて適当に~、
なんてことをしたら、シャツやズボンを破るだけでは済まなそうな… 湯沢峠から登る方が良いかも。
 と、その前に、Non夫に「そんなに薮山なら」と却下されそうですが…(^^;)

 ところで文中の『栃木273山』、在庫切れになったと、どこかで読んだ記憶があるのですが、古本ですか?
まっちゃんさんがテン泊をマスターなさった暁には、273山…と思うのは、私だけではないはず?(^^)

まっちゃん:

リンゴさん、こんばんは。

燕巣山は四郎峠経由のピストンなら大したことはありません。
沢詰めで道標に乏しいので、「最近ハイキング始めました」程度の方だとちょっと無理ですが、
ある程度の経験者なら問題無しです。
(古賀志山の複雑なバリエーションルートよりは簡単です)

登山スタイルの違い。
確かにそうかもしれませんね。

自分の場合は登ること自体に惹かれているのかもしれません。
そのせいか、未だに花や木が殆ど覚えられません。ブログ書いてて思うのは、こんな樹があって花が咲いていて・・・と一言書き添えることが出来ればもうちょっと山の特徴とか自分なりの心情を現わせるのかなぁと思ったりもします。

まっちゃん:

Nonさん、こんばんは。

燕巣山~湯沢峠はなかなかハードな笹薮でした。
ブログ本文でも書きましたが、"薮が無ければ"地形図通りのすっきりした尾根筋なので、2045mPの方向変えさえ間違わなければさほど難しくはありません。

湯沢峠から登るとすれば薮で視界が悪くてもルートミスの可能性は殆ど無いでしょう。
ただ、あの屈強な笹に抗って登り切る体力があればの話ですが。
自分にはあそこの登りは到底無理だと実感しました(^^;

『栃木273山』はネットで古本を購入しました。
コース解説本としては古い内容になってしまっているし、第一そいうった目的で書かれたものではなく、どういった心持ちでその山に登ったか、という倉持氏の心情を窺い知ることにより、また自分の山行にも少しは影響があるのではないかと度々読み返しています。
ルートの破天荒さや脚力などは到底及ぶべくもないですが、氏のような山登りをしたいといつも思っています。

テン泊は・・・体力勝負ですよね。
今夏、ちょっと荷を重くしただけでバテた裏那須ですから、装備してもツェルトが精一杯かも(笑)

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