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荒海山

アーカイブ:県北の山達  日時: 2012年10月08日 20:44

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今年の夏は県境をいくつか歩いてきた。例年より幾分長かった暑さもようやく秋へと移ろうなか、夏山の登り終いとしてやはり県境の荒海山を選んだ。

 荒海山へは福島の南会津町側から荒海川上流の沢を詰めるコースが一般的である。また、栃木側は三依から入山沢を詰めて登るルートがあるらしく、一部ロープの設置などもされているという。だが、かなり不鮮明であるのと殆ど直登に近い箇所に苦労したという報告も見られる。そんなストイックな山行にも憧れないではないが、流石に実力が伴わないのは明白。無難に正規登山道を登ることにした。

 八総鉱山跡まで車を進めると既に先客2台。駐車スペースに空きはあったが、もう少し先まで行けそうだったので道幅が狭くなってきたあたりにパジェロミニを駐めた。歩き始めると程なく登山届のポストがあり、すぐその先に堰堤がある。堰堤の縁を溢れる浅い流れを渡り切ると前夜の雨水をたっぷりと含んだ一面の雑草の薮が待ち構えていた。道形ははっきりしているので迷うことはないが、本で紹介されている登山コース故に少し心細い感じもする。念の為にGPSで進路を確認しながら進んだ。

     
R352より山あいへ入る    駐車地    昨夜の雨で草が濡れている

 幾らか進んだ所で立ち止まってスパッツを付けた。背の高い草薮が服を濡らすが、カッパは面倒なので着なかった。沢を何度か渡り返しながら高度を上げていく。露岩の上に細い沢水が流れている箇所はことさら足場が悪く、垂れ下がっていたフィックスロープに大いに助けられる。
 ルートが沢を離れると、それまでの足場の悪さに急登が加勢し一層難儀するがそれも長くは続かずやがて尾根へと到達する。

     
出だしは少々薮化している    沢の中をロープを頼りに   

 尾根でザックを降ろして一息ついた。よく見ると笹に覆われてはいるものの、かすかに北に向かっていく踏み跡がある。地図をなぞると、北西の1249.5mP、その北方の1234mP、更に北西に伸びる尾根通しでR352の中山トンネル上部に到達可能な雰囲気である。(そのあと道路に降りるのはかなり難しそうだが)

 荒海山に向かう尾根道は、基本的に終始西側に少し巻くような感じで付いている。尾根の背は雑木ないし笹薮となっていて歩けない。また、登山道も笹薮に覆われていて不鮮明な箇所が時たま出現する。だが、中に隠されている道形ははっきりしているので迷うことは無いだろう。こういう道に慣れていない人は少し戸惑うかもしれないが。
 山頂へ向かう長い長い尾根道は、穏やかな区間と急登を織り交ぜながら進む。終始眺望に恵まれないため、閉塞的な雰囲気にいささか辟易気味になるが、山の深さをも醸し出す。樹木の根が張りだして歩きづらい急登区間になると、そんな鬱々とした雰囲気で一層疲労に拍車がかかるようだ。時折樹間から遠く顔を覗かせている荒海山を眺めると、まだまだ行く先の長いことを知り溜息が出る。

 山頂直下になると段々に周囲が開け眺望が広がりだす。だが足場の悪い急登ではそれを眺める余裕も無し。ここからの景色は下山時までおあずけとし、まずは山頂を目指すべし。途中、単独者2名とすれ違う。駐車地に駐めていた人であろう。

     
尾根へ到達    道形はしっかりしているが時折薮漕ぎ    荒海山が姿を現す

 笹をくぐるようにしてぱっと辺りが開けたらそこが山頂である。まずは西峰だ。360度の胸をすくような眺望が待ち構えていた。眼下に横たわる芝草山、幾筋もの沢に削り取られた彫りの深い尾根筋は寄せる荒波が波打つようである。遠くの山並みも浮島のように美しい。古の人が"あらうみ"と例えたのもさもありなん、などと勝手に妄想する。北には会津の名峰七ヶ岳がギザギザしたシルエットを見せている。堂々たる男鹿山塊の右に目をやると見慣れた高原山。多少遠いが日光連山も見渡すことが出来る。

山頂よりの眺望(安カメラに"腕無し"なので山頂の雰囲気をうまく伝えられないのが残念)

 眼下に目を移すと南西に控える1560mP、通称"次郎岳"へ伸びる稜線にも心動かされる。荒海山の栃木での呼称は太郎岳だ。ならば次郎岳も踏んでみたいと思うのは栃木県民ハイカーならではの感傷か。沿面にして僅か600m程度だが、踏み跡も見当たらず恐らく全行程屈強な薮であるこを考えると情報収集も充分でない今回は残念ながらパスである。

 三角点のあるお隣の荒海山東峰までは背丈超えの笹薮をかき分けて進む。前回の燕巣山からの県境尾根を考えれば、僅かな距離で先も見えているから楽勝なのだが、力づくに進もうとすると案外苦戦する。かがみこんで笹の下に隠されている踏み跡を辿れば楽に進めるのだ。

     
西峰山頂    眼下の1560Pが次郎岳    東峰までは背丈超えの薮漕ぎ5分位

 直線距離にして100mもないような双耳峰だから、さして眺望に変化も無いはずだが微妙に東峰のほうが良いように感じるのは気のせいだろうか。ザックを降ろしてひたすら眺望を堪能したあとは昼食とした。天気晴朗、気温も暑くも無し寒くも無し。こんなにベストコンディションな山行はなかなか無いだろう。

 西峰のほうに声がする。どうやら後続のハイカーらしいが、東峰に渡ってくる様子は無いので最後まで東峰を独占することが出来た。

     
三角点のある東峰山頂    次朗岳と西峰    手前が芝草山、奥が高原山

 西峰に渡り返すと後続者は夫婦一組と単独者一名。山頂直下で下山の2名と会っているから自分も含めて合計6名入山の賑わいだ。登山者は少ないと書かれてはいるがやはり人気の山と言ってよいだろう。

 下山を始めて気づいたのは1500m近辺から幾らか紅葉が色づいていたこと。登るときは余裕が無かったが、山頂を見上げては周囲の控えめな色づきにしばし足を止めた

     
1500mあたりから一部紅葉    七ヶ岳    山頂方面

 下山はひたすら来た道を下るのみ。足場の悪いところが続くので、下りといえども体力を案外消耗するような気がする。多少食傷気味になってきた下山路も終盤は美しい沢に癒された。まだ充分に光が差し込んでいなかった朝とは比べようの無いほどの輝く水のきらめきがそこにはある。鬱蒼とした樹間をひたすら歩く地味なコースで疲れた心身をリフレシュしてくれる瞬間であった

  
沢を降りるに従い美しい渓谷となる     

概略コースタイム
駐車地発(7:30)-荒海川源流分岐(7:58)-尾根(8:44)-1251mP(9:11)-1380mP(9:53)-
大岩(10:09)-西峰山頂(10:43)-東峰山頂(10:50)-昼食休憩-行動再開(11:41)-
大岩(12:12)-1380mP(12:26)-1251mP(13:09)-沢への下降点(13:28)-駐車地着(14:28)

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コメント (2)

Non:

 こんばんは。近くて遠い会津寄りの山ですね(登山道が全て栃木県側なら、もっと近く感じそうですけどね ^^;)
移動も歩行も距離が少し長めで、かつ往復になるため、行きたい山リストの上部に来づらい山ですが、
こういう青空の下、遥か彼方まで山並み(たしかに荒波でもありますね)が続く写真を拝見すると、
やっぱりいい山なんだろうなぁ…と見直さずにはいられません。我が家の場合、要は歩行時間かなぁ。
 そうそう、写真では「山頂方面」、紅葉の感じがいいですね~ まだ若い紅葉が鮮やかです。

 我が家の方は、まっちゃんさんも割りに最近歩かれた、那須連峰の大峠から三本槍コースを歩いてきました。
ひと、多かったです。山中ではなく、山頂が。びっくりo(@.@)o でした。

まっちゃん:

Nonさん、こんばんは。

県北の山は宇都宮からだとアプローチ自体がキツイですが、今年の夏は慣れてしまってさほど移動が負担に感じなくなってきました。山自体が素晴らしいせいだからなんでしょうね。来年の夏はもうちょっと北(福島側)まで足を伸ばそうかなぁなどと思っています。

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     こんばんは。近くて遠い会津寄りの山ですね(登山道
    10月11日

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