黒尾谷岳は那須連峰の中でも最南端に位置し、一連の華やかな那須の山並みとは一線を画した前衛峰である。
一般的な登路は二つあり、南側の別荘地よりのピストン、そして南月山からのルートである。
以前白笹山から南月山を目指した際に、小高い頂きが稜線の南側にあるのに気づいていたが、当時はその山が黒尾谷岳であることを特に意識していたわけではなかった。だが、特徴的なその山姿がとても印象的であったことは鮮やかな記憶として残っていた。
今回歩いたルートは沼原駐車場から白笹山を目指し、南月山へと到達。ここまでは以前歩いたルートと同じ。黒尾谷岳へは南月山からの寄り道ピストンとした。
花の時期は駐車場が混雑するのではないかと考え、早い時間に沼原の駐車場に到着。7時前ということもあったが、意外な事に未だガラガラだ。ちょっと拍子抜けしたが、まぁ良いだろう。早発早帰りは山の基本(^^ゞ
7時丁度くらいに支度を終えて出発。白笹山方面へ歩き出す人は少ないようだ。前日の雨をしっとりと含んだ早朝の静かな山道を進む。一度歩いているので登山道の大体の雰囲気は掴めているが、前回は地形図を眺めて一体この急な勾配をどうやって登るのかと心配になったものだ。実際には巧みに山をトラバースしたり、細かくジグザグに作られた登山道を登るのはそう大変なことではない。
徐々に高度が上がってくると、沼原調整池の向こうに見える大佐飛山の稜線が大きく横たわるようになる。百村山から大佐飛山へのアプローチは長丁場でなかなか骨の折れるコースと聞くが、体力と天候が揃えば是非チャレンジしたいものだ。
道標はこのスタイル | 朝の空気が清々しい | 百村山から大佐飛山への稜線 |
眺望がだいぶ良くなってきた頃、白ヤシオの株が目立ち始める。花については知識が覚束ないので自信は無いが、おそらく花期も盛りを過ぎたのであろうか。それでも自分には充分に綺麗。期待もせずに入山しただけにラッキーな気分に浸る。
シロヤシオ | 隠居倉方面 |
遠く茶臼岳の黒々とした頂稜部が見え出すと、白笹山山頂への道のりもあと少しである。
山頂は相変わらずの無愛想。道端に道標があるだけのそんな雰囲気の場所だ。この山だけを目当てに来る人はそうは居ないだろうが、来た道をそのまま下山するとなるとちょっと寂しいかもしれない。
山頂を通過するとその先にムラサキヤシオ(図鑑を見ると葉の形が違う気もするので、違う場合は御指摘願います)が鮮やかに咲いていた。実は山頂の少し手前あたりからシャクナゲもちらほら咲いており、自分としてはまさに花の山行である。
茶臼岳が頭を覗かせている | 相変わらずの白笹山頂上 | ムラサキヤシオ |
白笹山から高度を下げていくと今度は笹原の稜線へ出る。行く手には南月山へと伸びる美しい稜線。笹が光り輝くこの稜線をこれから登るかと思うと俄然登高意欲が湧いてくる。右手には今日の目的地である黒尾谷岳が、その名前には似合わない丸い輪郭の愛嬌のある高みを見せている。
今日の登山は実は万全な体調ではない。木曜日に行ったスポーツクラブで、いつもと違った不慣れなスタジオプログラムに参加してふくらはぎの筋肉痛が若干残っていたのだ。足の調子と相談するように、若干ペースを落として歩幅も狭くとる。いつしか気付くと、ふくらはぎの痛みもすっかり消えて調子が出てきた。だが、南月山から黒尾谷岳のピストンが結構キツそうなのは想定内なので、ここは体力温存で進むべし。
南月山へと伸びる稜線が美しい | 今日の目的地、黒尾谷岳 |
日差しの強い笹の稜線歩き。時折吹き抜ける早春の忘れ物のような冷たい風が火照った体を心地よく冷やす。天気晴朗、眺望良好、足取りも軽くなるというものだ。シャクナゲも色の濃いもの薄いもの。花の付いていない株はこれまでいろいろな山で嫌というほど見てきたが、華やかな花の姿を見ることが出来るのは山を歩く者として素直に嬉しいものだ。
白笹山を振り返る | シャクナゲ |
足元に咲く小さな花達はにわか花ハンター?のカメラに収まらなかったが、特徴的な葉が「亀の甲羅のよう」と記憶していたオオカメノキ(違っていたら指摘願います)も頭上を賑わしていた。白い花は青空に透かして見るとより一層美しく見えるものだが、悲しいかな安物のデジカメとつたない腕ではご覧の通り。肉眼で得られた感動を伝えるのは難しいものだ。
程なく南月山の山頂に着くと、まだ早い時間なのに既に数組のハイカーが休憩中である。ここに至るまで、駐車場で先発した先行者一組を追い抜いただけで他には人には遭っていなかった。黒尾谷岳からの帰りにここに立てば、その頃は昼食時。更に大量の人達で埋め尽くされているだろう。ゆっくりするなら今がチャンスなのだが、やはり山はより静かな場所が一番。軽い水分補給とシャリバテ防止のパンを一口頬張り賑やかな山頂を後にした。
会津の山並みは春遠し | オオカメノキ? |
南月山の三角点は山名板と石祠の更に奥の目立たない所にひっそりとある。茶臼岳を眺めなが休憩が出来る広場には大きな案内板があるので、そこが山頂と勘違いしている人が多いようだ。「おーい、ここが本当の山頂なんだよ」と教えてあげたい位だ。
黒尾谷岳へのルートは序盤は笹を分けながらの下降。胸あたりまで笹丈があるような箇所も、踏み跡道形は鮮やかなので問題は無い。やがて崩落地を警告する案内を見ると右手に折れる。回り込むようにして高度下げが始まる。
容赦ない高度下げ。どこまでも下げていく。里山なら下山しきってしまうくらいの勢いだからこれは帰りが大変だぞ。実際、300mの高度下げのあと黒尾谷岳には100mの登り返しとなり、帰りはその逆で、100m下って300mの登り返しだ。
南月山の三角点は裏手にひっそりと | 定番の茶臼岳眺望 | 下に見えているのは黒尾谷岳ではない |
あの崩落地脇を通過する | 崩落地より | 黒尾谷岳はまだ遠い |
どこまでも下げ止まらない下りに、若干怖気づきながらもようやくコルまで到達した。新緑の枝の合間から見れば、先ほど歩いてきた白笹山の稜線があんなに高く見えるではないか。いやはや、南月山への帰りが思いやられる。
こちらも白ヤシロが素晴らしい | 白笹山を見上げる程高度を下げた |
コルで一息入れて黒尾谷岳への登りにかかる。ここの登山道もジグザグに作られており案外楽に登れる。だが、帰りの登り返しを意識すると、のんびりゆっくりペースを堅持せざるを得ない。三人組のシルバーグループとすれ違うが、彼らもこれから向かう南月山への登り返しに苦笑いしていた。
黒尾谷岳の山頂もまた白笹山の山頂と五十歩百歩。グルリと眺望の無い山頂には山名板と土管が一本置かれているのみ。長居する雰囲気でも無いので写真を一枚撮って直ちに踵を返した。
ここで無理をして歩き通すと前回の袈裟丸山のようにバテる可能性があるので、コル近辺まで戻り木陰のランチ、大休憩とした。
今回から食事も夏モードとなり、ストーブとカップラーメン、1リットルの水の携行は無し。お陰で幾らか荷が軽くなった。そのかわりに、テルモスに氷と一緒に詰めたドリンクが装備に加わった。これから夏に向かってはこれが一番! 喉を冷やす冷たさは実に心地よい。
黒尾谷岳への登りは巻き道で穏やかだ | 白笹山といい勝負、何も無い山頂 | ここで食事休憩 |
南月山への辛い登り返しだが、美しく咲き誇る花に励まされて思ったより軽快に進むことが出来た。やはりペースダウンの効果は絶大だ。日頃の山行では如何に無駄なペース堅持で疲労を増大させていたのか、今更ながらこんな単純な事を実感して目から鱗が落ちる思いだ。
生命を感じるダケカンバ | 青空に映える |
白ヤシオの向こうに黒尾谷岳 | あの上まで登り返す | 一部背丈程の笹薮あるも道形明瞭 |
最後の笹薮を登り切る手前、振り返ると黒尾谷岳が頭を覗かせる。あそこから戻って来たのだと思うとそれなりに感慨深いものがある。
南月山へ着くと予想通り、色とりどりのウェアーで一面花咲く沢山のハイカー達が食事中であった。ここから先は基本的に下りだが、しばし茶臼岳の荒々しい眺望を楽しみながら自分も一休み。日の出平へ向けて出発した。
あそこから戻ってきたのだ | 日の出平へと向かう |
日の出平から沼原へ下るコースは今回初めて歩く。南月山から台地のように見える日の出平は、その名の通り平坦な道が続く。灌木に見通しを遮られる箇所もあり、熊の出没地として名高いこのエリア。ばったりお見合いということも排除出来ない状況だ。ザックより大音量の熊鈴を取り出して腰に装着す。肉厚の鐘から鳴り響く大音量は、着けている自分自身もうるさいくらいだから、他のハイカーが近くに居たら迷惑ものかもしれないが、肝心のクマに届けば良い。そこで、いつも思うのだが、クマには本当に鈴の音が聞こえているのかという実験が行われた半分ジョークな記事を読んだことがある。実験は動物園のクマに数種類のクマ鈴を聞かせたところどんな反応があったかというものである。結果は・・・どの鈴にも全く反応せずひたすら昼寝を貪るのみだったとか。
これはクマに喝! である。野生のクマならもっとしっかりしてるでしょう。なんてのはどうでも良いが、ここまで臆面もなくうるさい程だから効果は充分なのではないか。
途中、ミネザクラが数本咲いていた。南月山から先は驚くほど花が無かっただけに再びの花の出現は嬉しい。
平坦地を過ぎ、高度を下げ始めると北の隠居倉方面が大きく見え、やがて南月山から白笹山を広々と見渡せる笹道になる。
平坦な道が続く | ミネザクラ | 隠居倉方面(雪が残っている) |
ムラサキヤシオ白笹山 | 池塘あり |
道が北に進路変えをすると、開けた眺望とはお別れになるが、笹原に広がるダケカンバの林もまた美しい。綺麗に撮影出来なかったので掲載しなかったが、途中白ヤシオやシャクナゲも所々に咲いていた。つくづく今回は花に恵まれた山行であった。
ダケカンバの林 | 駐車場から白笹山 |
群馬県境には手強い栃木百名山が数座残っている。今年は皇海山を群馬側の林道から、庚申山と鋸山を夏場の日が長い時に銀山平から歩こうと思っているが、自分はどうも暑い時期のロングはバテ易い。情けない話だが、鋸山計画は懐疑的である。
一方、袈裟丸山は難易度はあまり高くないが、結構な長距離コースをピストンで往復しなければならない。周回好きの自分としては早い時期に食指が動かなかった理由である。慣れない山域と意外に山深いこのエリアだ。やはり手堅くガイドブックに従うほうが無難だろう。
花山行にはなかなかならない自分の山旅だが、"アカヤシオでも"と、久々に色気を出して計画をした次第だ。単にガイドブックに従うだけでは少し物足りなさを感じたのも事実。ならば『奥袈裟丸山まで』という準備と気概で出発した。どこまで体力気力が持つかは今日のコンディション次第。駄目なら戻るさの精神で。
『花の時期は早朝から車が置けない』とネット等で自習済なので、久々に早朝出発を奮発。土曜の早朝出発は仕事の疲れが残っているので正直辛くないといえば嘘になる。
わたらせ鉄道の沢入駅付近から国道より別れ、林道に入る。クネクネと軽快に車を走らせていくと、すぐ先行の2台に追いついてしまった。大柄な車両を林道に合わせるのに苦心している様子だが、この時間にこの道を走っているのは袈裟丸目当てのハイカー以外はほぼあり得ないだろう。
6時半頃に折場登山口に到着すると既に駐車場は満車。周囲に路駐の列が伸び始めている。なんとか100m位先の所の路側にありつくことが出来た。うかうかしていると次から次へと来る車であっという間に埋め尽くされていくので、多少遠くても場所が悪くても即断が必要な局面だ。
不思議な事に皆さん準備が済んだ人もなかなか出発しない。駐車地確保が出来れば後は朝食を採ったりと時間調整のようだ。自分は奥袈裟狙いなのでここで無駄な時間は使いたくない。まばらに出発するハイカーに紛れて登山口へと足を踏み出した。
折場登山口駐車場は既に満車 | 木の根の小尾根を登る |
序盤は木に囲われた小尾根を登るが、やがて正面に大きな尾根、左手には笹原の谷を挟んだ眺望が広がる。アルペンムードでなかなか良い景色だ。稜線の縁を回りこむようにして登っていくと、ちらほらアカヤシオの花が出てくるようになってくる。
笹原の胸すく尾根へ | 朝日を受けたアカヤシオ | 朝の空気が清々しい |
先程まで見えていた尾根の平坦部に到達すると景色が一変し、緩やかな幅の広い稜線のそこかしこにアカヤシオが増えてくる。遠くにはこれから登る袈裟丸山の峰々が良く見えてきた。
袈裟丸山は、正確には1878mの前袈裟丸山、その北にある後袈裟丸山、続けて中袈裟丸山、そして連峰の最高峰である奥袈裟丸山から構成される。また、前袈裟丸山に至る途中にある小丸山は別名小袈裟丸山とも言われているので、合計5峰からなるのだ。
一般的には前袈裟丸山を"袈裟丸山"としている。折場登山口からでも結構距離があるが、登山道は実に良く整備されており道迷いの可能性は微塵も感じられない。また滑落等の危険箇所も一切ない。比べると前袈裟丸山から北の領域は笹とシャクナゲなどの灌木が繁茂しており、こちらのルートは比較的難易度が上がる。また、後袈裟丸に登るには直前の八反張りという難所を通過し、笹の斜面を直登状に登らねばならない。更に、後袈裟丸山から奥地に入るといよいよ藪こぎルーファンの領域になる。徐々に難易度が上がってくるという寸法だ。ただ、このルーファン箇所は鋭敏な尾根を追っていくだけなので、派生尾根に引っ張られることなど無い。コース取りは意外と難しくないのだ。
袈裟丸山塊 一番右が奥袈裟丸山 | 展望櫓 |
賽の河原で塔ノ沢からの登山口を合わせる頃になると、いよいよアカヤシオの花が賑やかになってくる。時折女性ハイカーが上げる明るいはしゃぎ声が青空によく通る。花山行が似合わない自分もすっかり今日はお花見気分である。
賽の河原 | アカヤシオの尾根を登る |
一つ目のピークである小丸山からは日光方面の山がよく見えた。未だ白く冠雪する白根山とアカヤシオが美しいコントラストを織り成している。
小丸山頂上 |
小丸山から一旦高度を下げた所の鞍部にカマボコ型の黄色い避難小屋があった。内部を覗いて見ると、無理すれば三人くらいは入れそうな広さだ。避難小屋だから確信犯で泊まるわけにはいかないが、一度はこういった所で夜を過ごすのも憧れるものだ。
白根山とアカヤシオのコントラストが美しい | 避難小屋 | 2~3人ならOK |
避難小屋のある平坦地からシラカバ(?ダケカンバ)の林が、その先にどっしりと構えた前袈裟丸山が見える。結構急峻な感じだが、これからあそこまで登るのだと気を引き締め直す。
登りだすと、やはり急斜面に足も鈍り呼吸も乱れ出す。小丸山までが比較的緩斜面だったので尚更そう感じるのかもしれない。ただ、ここまで水平距離はかなり歩いているのも事実。疲れはじわじわと効いてきているのだ。(折場登山口~前袈裟丸山まで距離5.6Km、標高差679mであるから、そこそこの山登りでああろう)
前袈裟丸山頂は広場になっており、自分が到着したのが9時半前なのに既に沢山のハイカーが休憩中であった。先が長いということと、帰路に再び立ち寄るという事もあり写真を一枚撮ってすぐ出発。
シラカバ?ダケカンバ? | 前袈裟丸山が大きくたちはだかる | 袈裟丸(前袈裟丸)山 |
山頂北側に立つとご覧の豪快な風景が拡がる。遠く福島の峰々が白く輝くさまにしばし見とれた。手前に見える特徴的なピークが後袈裟丸山である。この後あそこを目指すのだが、本当の目標点はまだまだ先だ。
前袈裟丸山からは一旦高度を下げるとすぐに薮混じりのルートとなる。薮は高い所で腰から胸くらいあるも、足元を見ると意外と踏み跡が濃くさほど難しさは無い。ただ、山としての奥深さや雰囲気はそれまでのコースと一線を画すピリリとした雰囲気がある。前袈裟丸山までは散策路然とした雰囲気を逸脱しなかったが、やっとここに来て山を歩いているという雰囲気に包まれた。
折角長丁場を歩いて来たのだからこの山深さを味わずして帰るのは大変勿体無い気がするが、やはりこの薮では一般ハイカーはそうもいかないのだろう。
シャクナゲと笹と灌木と | 後袈裟丸山が正面に見える | 足元には踏み跡があるのでさして苦労はしない |
問題の八反張は崩落の為通行止めという情報があったが、途中や直前に特に注意書きなども無く、また真新しい鎖や鉄柱が打ち込まれて整備もされている。大部分のハイカーが前袈裟丸山止まりとはいえ、やはり相当数のハイカーはこちらまで流れて来ていて八反張も沢山の人が往来しているのだ。
確かに序盤の数ステップは要注意で、ここで足を滑らせると谷側に落ちていく可能性が否定出来ない。だが、自分の前後には難渋している人はおらず、皆慎重に通過しているので一般的には問題無いと思うが、こういった難所に苦手意識がある人は避けておいたほうが無難だろう。ただ、万が一滑落しても谷の浅さと緩やかさ故に多少の怪我程度という雰囲気ではあった。(あくまで主観的であるが)
八反張下降部 |
八反張からは眼前にそびえ立つ山頂に向けて笹に覆われたルートを直登していく。まるで頭が地面に着いてしまうのではは無いかという位前傾して登っていく。踏み跡を探してかがみ気味に登っているので余計なのだ。
何度か呼吸を整えて着いた先の後袈裟丸山も数組のハイカーが休憩中だ。しかし、本当に人の多い山である。
後袈裟丸山から更に奥へ |
奥袈裟丸山まで1.8Kmの立派な道標があるが、この先はいよいよキチンとした薮道となる。相変わらず薮をくぐるようにしていけば踏み跡を追うことは可能。時折見失っても尾根キープで行けばやがてまた踏跡と出会う事の繰り返し。ただ、東側にスパっと切れ落ちている箇所があるので愚直に深追いせずに、踏み跡が消えても少し西側を行ったほうが良いだろう。
実はこの時点でかなり疲労を感じていた。要因は二つある。
初夏の日差しは思いの外強く、帰宅して分かったが顔や手、首筋が日焼けしていた。水は飲み過ぎないように注意してウェアーも調整したのだが、やはり自分の一番の弱点の暑さバテが出てきた。
そしてもう一つは、マイペースを維持できなかった事。日頃人が居ない山歩きばかりしているせいか、どうも前後に挟まれて歩いているとペースがコントロール出来ない。2時間以上休憩を取らずに歩き続け、遅い先行者を追い抜くのに無駄な力を使う割りにはつまらぬ所で息が切れて立ち止まったりと、とにかくペース配分がめちゃくちゃであった。
時間的にも登山を開始してからそろそろ4時間が経過しようとしている。下山も登り返しが数箇所あるからやすやすと短時間で下山口に届くとは思えない。安全に下山出来る体力は残しておかないといけないとすればそろそろ潮時であろう。渾身の笹薮登りの末に到達した小さなピーク。数人立てば満員になってしまうような中袈裟丸山にて本日の撤退を決意した。
軽いノリで道標もあるが? | ひたすら上を目指すべし | 流石に時間も体力も限界だ |
中袈裟丸山からの眺望は樹木に遮られてあまり良くない。狭い山頂故にここで食事の用意を広げる訳にもいかない。また、せめてゆっくり木陰で休みたいという思いから少し戻った所で昼食とした。地面に腰を降ろして足を投げ出すと流石にじんわりと疲労を感じる。
昼食中に4人のグループが笹をかき分け登ってきた。上のほうでやがて声がしなくなったのを見るとそのまま奥袈裟に向かったのであろう。
また、食事後に下山を始めると今度は10人位の中高年グループが登ってくる。山岳会の人かどうかは分からないが、女性が主体のパーティーながらこのようなルートを一糸乱れず登って来るのだから、呆れると言おうか羨ましいと言おうか、かなりの体力である。自分も少しあやかりたい気分であった。彼らならこの地点から奥袈裟丸山までをピストンしても2時間はかからないだろう。
後袈裟丸山から北の領域は確かに薮深いものがあるが、時折登山道のようにスッキリした箇所があったりもする。往路にも火照った体を冷やした風の抜け道がある箇所。帰りもまたそこに立ち止まり、谷から通り抜ける冷たい風にしばし体を預けるのであった。どうせ食べるなら此処にすれば良かったなと多少後悔もした。
白骨化した木と山名板 | 谷から風が抜けるお気に入りポイント | 前袈裟丸山と奥袈裟丸山 |
後袈裟丸山まで戻ると、笹薮も八反張もクリアしたハイカー達が続々と山頂を踏んでいる。中には良くここまで来れたと感慨深気な人もいるが、良く整備された登山道しか歩いたことのない人には、後袈裟丸山への道筋も結構冒険的な雰囲気に包まれていることは想像に難くない。
前袈裟丸山まで戻ると丁度お昼時で、山頂は大量のハイカーで満ちていた。下の写真は一番人が少ないアングルで撮影したものだが、こんなに人の多い山頂は低山でも経験が無い。袈裟丸山は栃木と群馬両県の誇る山であり、アカヤシオの花期とも重なったので尚更のことなのであろう。
八反張に向けて笹原を下降 | 前袈裟丸山直前で振り返り見る福島の山並み | 大人気の前袈裟丸山 |
前袈裟丸山からの下りは、先ほどこんなに登ったのかと思い直してしまうほどのキツイ下りだ。太腿がそろそろ悲鳴を上げだしているので、オーバーペースは自重しながらそろりそろりと降りていく。
避難小屋の前ではベンチに腰掛け、暫しうぐいすの鳴き比べを聞いた。静寂に包まれてこのままずっと此処に居続けたいような気持ちにふと陥る。それでも、頬を撫ぜるような少し冷ための風に癒された頃、思い切って立ち上がった。さぁ、まだ先は長いぞ。まずは目の前の小丸山を登り返さないと。
(この時点で下山路の距離にしてまだ半ばであるという事を書き加えて、今回の記事を終了とさせていただく。)
往路では富士山が見えた | 心地良い笹原の稜線を下る |
世間では大型10連休などとも言われた今年のGW。我が職場はカレンダー通りの前半三日、後半四日となった。飛び石の年に比べればまとまった感じで休暇を楽しむ事が出来た。
前半三日は山・山・バイクと遊び、後半は初日に持丸山、残り三日間は・・・
4日
前日より帰省している娘と家内の三人でドライブ。小来川の山家で蕎麦を食べる。その後、滝ヶ原峠を越えて日光へ。
憾満ヶ淵で化地蔵を見る。帰りに娘と家内が地蔵様の数を数えていたが、胴体なしで紅の前掛けだけの石もあったりしてカウントの基準が難しそう。
5日
今春就職した息子が、初任給を貰ったので東京に遊びに来いと言う。15年ぶりくらいに乗る東武線で浅草へ向かった。
GWでいつもより人の出が多い浅草はスカイツリーのお膝元。
ツリー自体は大層の混雑で始末におえないが、ちょっと外せば街には静かな所も意外にあるものだ。
昼食に浅草のラーメン屋、夜は息子が就職したビール会社の直営ビアホールで家族四人で乾杯する。家で飲む缶ビールとは一線を画した味わいと美味いつまみに舌鼓を打ち杯を重ねる。息子の奢りで飲んだ初めての酒である。
6日
最終日は、「骨休み」の為に家内と二人で日帰り温泉へ行く。
いろいろ迷ったが、初志貫徹で"前日光つつじの湯"へ。山奥へ通じる道は閑散としていたが、流石は連休。いざ到着すれば駐車場はほぼ満車で、駐車場整理のおじさんも大変だぁとぼやいている。
自分は風呂はどちらかと言うと苦手のほうで、湯船に5分も浸かっているとのぼせてしまう質なのだ。それでも、ここのところちょっと忙しかったせいか何処と無く疲れが溜まっているような気がする。内なる欲求のなせるわざか、昼食を挟んで二回も湯船に長々と浸かった。
やはりというか、ちょっと湯あたり気味になったが、翌日になるとあら不思議。ぐずぐずと痛かった腰がスッキリとしている。湯治とはよく言ったものだ。これからは温泉に浸かって一日ぼーっと過ごすような日があっても良いかなと、ちょっぴり思ったりもした。
湯あたり気味の体と頭だが、懲りずに夕方のスポーツクラブで一汗かいてから三度目の入浴。未だ煩悩の捨てきれないオヤジ入り口である。お陰で、青春時代のように一度も目を覚まさずに朝まで眠れたのは久々で大変よろし(爆)
]]> 前回も触れたが、持丸山はこれで三回目のトライとなる。一度目はMixi仲間との明神ヶ岳ダブルヘッダー山行で体力切れ、二度目は先週の雨で登山口敗退。
天気については人一倍神経質な自分だが、先週は忙しさにかまけて事前情報収集不足ということもあった。また、帰路、鬼怒川温泉あたりから南はピーカンの晴だったので、天気の複雑さを改めて思い知らされた。
さて、予定通りに林道最深部の駐車地に到着。この林道は、四駆車なら問題は無いが、車高の低い車だと途中で立ち往生するような箇所があるので注意が必要だ。また道幅も車一台しかないのですれ違いが発生した場合の覚悟も必要。こういった状況だとパジェロミニの安心感は秀逸である。
本日の持丸山登山、単にトップバッターなのか、あるいはこのまま誰にも遭わずにパジェロミニ一台だけが止まっているこの場所へ戻ってくるのか。空を見上げると遥か高い所に白い雲が散在し、そこから差し込む明るい陽光を時折通り過ぎる低い雲が覆う。周囲の緑が照らされ、また陰るさまは自然の寸劇である。風も無く概ね良好のコンディションだ。山鳩のホーホーと鳴く声の中に混じって、まるでいま起きたばかりのような調子外れのうぐいすの声が沢音に混じる。
114号鉄塔巡視路の案内に従い沢の左岸を辿る。道は無いが、足の置きやすい場所を選んで進むとすぐ朽ちかけた橋がある。一歩一歩確かめながら渡り、右岸から続く巡視路を登っていく。
林道終点 | 左岸を辿る | 朽ちかけの橋を渡り |
114号鉄塔までは巡視路がよく整備されおり、難なく到達出来る。勾配は結構あり、じっくりと歩を進めるもたちまち汗だくになってきた。思えばMixi山行の時、明神ヶ岳の急登をハイペースで歩いた後に此処を登ったのだから途中でリタイヤしても不思議ではないだろうと改めて実感した。
114号鉄塔基部からは高原山がよく見える。ほぼ真南には電線が続いてその先に下山時の中継点である115号鉄塔、更にその先に116号鉄塔と続く。
巡視路を行く | 114号鉄塔 | 鉄塔より高原山 |
鉄塔で巡視路はお終いになるが、その先も道はしっかりしていて歩きやすい。途中からイワウチワの群生地が現れる。花はまだ咲き始めで少ししかついていなかったが、これから花期を迎えるとあたり一体が華やかになるだろう。標高を上げていくと全く見られなくなり、下山時も115号鉄塔付近で見かけたので、特定の標高域にのみ存在するようであるところが興味深い。
ルートは明るい落葉樹の自然林である。登山口から針葉樹を一切見ない山を登るのも自分の場合は珍しく、実に気持ちの良い登路である。途中薮があると聞いていたが、今の所そんな雰囲気は皆無。むしろ、自然豊かな清々しい林を縫って歩くこのコースは実は隠れた名ルートだなとも思いながら進む。
イワウチワ | 花期はこれから、群生している | 明るい美林を行く |
自然豊かな持丸山故に、その豊かな恵みと共に暮らすものも多いだろう。ということで、今回は熊鈴をダブル装着。この二つはあまりにも音量が大きいのでいつもは使わないのだが、今回は広葉樹林である山域ということと入山者の少なさを勘案し、あえて二刀流とした。
小ピーク直前の先が見えないポイントや、一息ついて再スタートする時は汽笛一声よろしくホイッスルを吹き、手で腰の鈴をジャンジャン鳴らしながら登っていく。今考えるとこれだけ見晴の良い山中である。周囲の谷筋などからもこちらの様子は丸見えの筈だ。
冬眠の間に出産を終えた母グマは、かようにやかましいヒトの進入にさぞや眉根をひそめていることだろう。「坊や、ああいう生き物が来たら近づいちゃダメよ」と。
苔むす倒木 | 今日は熊鈴ダブル+ホイッスル |
横に広がる登路は見通しが良く、上を目指すには何の不安も無いが、尾根形が鋭敏でないということは此処が背丈超えの薮になった場合は大苦戦する箇所であることは間違いないだろう。
急登をしばらく行くと上の方に何やら黒いものがある。うずくまっているようにも見えるが肉眼ではよく解らない。デジカメのデジタルズーム最高倍率で見ても今ひとつはっきりしない。
試しにホイッスルを吹いたり鈴を鳴らしたり、オーーイと呼びかけても動く様子が無い。まだかなり距離があるのでピクリとでも動いたら直ちに退散しようと思いしばらく観察するが、依然不動のままだ。
恐る恐る近づいて行くと、なんと倒木の根元の部分が見えていただけか。山を歩いているとよく見かける木の幹にあるコブなども山慣れしない頃は遠くから見てビビっていたものだが、今回は結構強烈であった。
急だが相変わらず美しい自然林 | あ、あれは(*_*; | 倒木だった |
山頂から北側に伸びる主稜線に乗ると、西側の県境にある山脈が枝越しに見えるようになる。またこのあたりから少し薮が出てくるが、尾根の中心線から若干西側に刈り払われたルートが出来ており、歩くのには苦労しない。脇を見ると登りには逆目の笹が繁茂しており、このルートが無いと相当難渋するだろう。
荒海山方面県境の山並み | 逆目だからまともに登ったら大変 | ウリ肌楓って教わったのだけど・・・ |
山頂まであと少しの箇所で背丈超えの笹薮が出てくるがそれも僅か。
山頂近くになると薮が出始めた | なんと、残雪 | 最後はご覧のとおり |
山頂は思ったよりも小広く、スッキリとはいかないが眺望もまぁまぁ。高原山方面と県境の山並みが見える。
少し早いが昼食をとっていると控えめな鈴の音が(自分とは大違い)聞こえてきた。どうやら後続のハイカーが登ってきたようだ。
最後の薮をくぐる直前ぴたっと動きが止まった。彼もまさか人がいるとは思わなかったので、山頂に居る"何か"に一瞬怯えたのかもしれない。彼は簡単に食事をした後、立派な三脚をザックから取り出してセルフ撮りをすると直ぐに南の尾根に発っていってしまった。
コーヒーを入れて飲み始める頃、今度は中年の夫婦が登ってきた。向こうもやはり人がいた事に驚いていたが、話を聞くと栃木百名山も完登直前で、登り残しのこの山にやってきたという。奥方は下野新聞栃木百名山の拡大コピーを片手に、南の尾根はどう行ったら良いのかしら。このままピストンで下山はつまらないといった口ぶり。
取り敢えず尾根を外さず行けば良いのでは、判らなければ最悪戻ってくれば良いと思います。とだけ答えたが、御主人はコンパスを手にしていたのできっと大丈夫だろう。登路もあんな感じだったからこの先も大したことは無いだろうと思い自分も出発した。
高原山方面 | 県境方面 | 山頂から程なく薮が出始める |
北尾根に比べると確かに笹薮が豊富だが、見通しがあるし尾根形が明瞭なので難しさは無い。途中、足元に落ちているシカの角に自然を感じつつ残雪のある自然のままの稜線歩きだ。
北尾根はいたるところに赤リボンが付いていたが、こちらは皆無。栃木百名山本にサブコースとして紹介されるも、殆ど歩いている人はいないようである。
落ちていた鹿の角 | 残雪 |
途中、大きな木に巨大なウロがあった。敢えて近づかず遠巻きにしてそっとその場を去る。まさかクマか何かがあんな所に居るとは思えないが、触らぬ神に祟なしである。
1312mPの方向変えは計画段階から一番の難所と考えていた。見通しが良ければさほど難しくは無いけれど、やはり背丈を超す薮で周囲が見えないとコンパスだけが便りとなる。GPSの軌跡を見ていただいても解るが、進路を確定するのに苦労しているのがよく分かる。
栃木百名山本の解説はサブルートとして登りにこのルートを紹介しているが、笹薮はともかく登りなら体力的にはきつくても案外楽に進路を決める事が出来るかもしれない。だが、下りで此処を降りる場合はかなり難しいポイントになるだろう。GPSの携行習熟や、確実な読図と進路補正の経験、しっかりとしたナビゲーション技術が無い方は歩かないほうが無難かも知れない。先ほど山頂で出会った夫婦に生返事でこちらのルートを話したが、少し心配になってきた。
怖くて遠巻きに | 笹薮の尾根 | 背丈ほどに |
度々進路をチェックして、目的の尾根に乗っていることを確認しながら進んでいく。踏み跡はあっても解らないから間違えても気が付かいないのだ。やがて、行く手に鉄塔が見えてきた。下山路で115号鉄塔下を通過する予定なので一瞬そちらに向かおうとしたが、よくよく地図を見ると115号鉄塔とは違う箇所にある。どうやら次の116号鉄塔のようで、このまま東に降りて行くと大幅なコースアウトになりその後の復帰が大変になるだろう。先ほどの夫婦に「取り敢えず鉄塔を目指して・・・」と喋ったのが更に気になってきた。
やがて、115号鉄塔上部で巡視路と交差する。右手はどうやら116号鉄塔へ伸びている様子。ということは116号鉄塔を目指して行っても巡視路に拾われるので大丈夫だなと一安心した。
笹が薄くなってきた | 116号鉄塔 | 115号鉄塔 |
ここで気づいたのは、栃木百名山本の誤り。本に書いてある鉄塔は116号とあるがこれは115号の間違い。116号は115号の南側直線にして約300mほど離れており、自分が初めに誤認した鉄塔である。鉄塔の番号は巡視路の黄色い標柱くらいしか知る方法はないが、この周回ルートの始めが114号、山の向こう側が115号というふうに考えるべきだし実際の鉄塔はそう配置されている。そこへ本に記載のある116号が115号の位置にあるとなると、困惑して読図を誤る可能性もある。次の版では訂正して欲しいところだ。
残る下山路は巡視路を下るのみ。若干退屈だが、先ほどの緊張感溢れるルーファンから開放されたのは事実。こちらでも見られるイワウチワに足を止めながら降りて行くと、最後の最後で巡視路は崩落して跡形も無し。この様子だとこちらを登りに使う人も居ないだろうと納得した。大した距離ではないので、カモシカよろしく斜面を直下降しながら沢に降り立った。釣りと山菜取りに来た家族が沢のほとりで弁当を広げていた。そこへ突然ガサガサと、そして熊鈴じゃんじゃんと鳴らしながらヒトが出現したので彼らもさぞ驚いたことだろう。かくして、持丸山登山は無事終了したのである。
鉄塔下は刈り払われている | 114号鉄塔が見えてきた | 巡視路が崩落している |
下山後はまだ時間が早かったので少し道草をすることにした。R121から芹沢の集落へ向かい、「丸太工房あくつ」さんの箇所よりアプローチの林道は伸びているが、芹沢沿いの道は延々西へと伸びている。地形図上では途中で道が消失しているので行き止まりの可能性は高いが、持丸山を登る途中でチラっと見えた感じだと結構立派な道路のようだ。
対向車も後続車も一切ない舗装路を快適に進めていく。所々路側に除雪車が切り通した跡があるので、冬場は閉鎖されているのだろう。地形図上で道路が途切れている地点を越えてもなお道は続く。東側に開ける眺望箇所を過ぎると林道の最高地点に到達。傍らの案内板を見ると、林道平沢芹沢線とある。(最高地点は地形図の湯坂峠の北西約300mの位置にある)
持丸山からの枝越しの眺望とは違い、胸ののすくような景色にしばし見とれる。残雪県境の山は綿々と繋がり、黒ぐろと鎮座する明神ヶ岳も大きい。寄り道の成果にも満足の一日であった。
枯木山か? | 明神ヶ岳 |
ちなみにこの林道、何処へ出たかというと、湯西川に最近出来た「湯西川水の郷」の直ぐ近くに通じていた。この小さな交差点の先があの雄大な景色を見ることが出来る林道に繋がっていることを知る人は少ないであろう。
川俣側林道出口 |
連休前半最終日は今年初めてのツーリング。この時期のツーリングは会津へ向けて走るのが定番であったが、今年は北茨城に向かった。
北茨城コースは栃木のバイク乗りなら定番のツーリングコース。県境のワイディングを駆け抜ける醍醐味と海辺で食す海鮮がセットのお楽しみ。ルートは何通りからあるが、広域農道や県道、国道も主に三桁、しかも300番台400番台を意識的に選んで走ると本当に気持ちの良い楽しいツーリングとなるのだ。
ヘルメットの中を通り過ぎる春の息吹。海辺の潮騒の香り。久しぶりに味わう1400ccの怒涛のパワーに酔いしれる一日であった。
五浦海岸にて、六角堂に向けて凛と佇む犬の石像
帰路の花園渓谷
]]>連休山行二発目は、家内と登る栃木百名山。諏訪岳である。栃木百名山本のルートでは東武佐野線、多田駅を発着とするコースのCTが2時間40分。駅から京路戸公園までの往復が1時間となっているから、CT1時間40分の行程となる。幾らか登りらしい登りもあるようなので、家内のペースを勘案しても2時間ちょいも見積もれば充分。のんびりと支度をして遅めの9時頃に自宅を出発した。
京路戸公園駐車場に着いてみると、テニスコートに来た人達の車だけでハイカーの姿は無し。コート脇を真っ直ぐ進むと、幾らか荒れた感じの樹林と背の高い竹やぶに挟まれた登山道が続く。
薮は決して嫌いでは無いが、ここまでの密薮になると流石に無理をしても進入不能だろう。古賀志山で一度、そして昨年の燕巣岳から湯沢峠への県境尾根は、これを少し薄くしたような感じだったが、下りならなんとか。登りならアウトだ。
それにしてもこの山は登山道以外は殆どこういう感じの薮に覆われていて、バリエーションルートも組みようも無い程だ。自分が経験してきた山でこういう所は珍しい気がする。
少し緩めの登山道を淡々と詰めていくと京路戸峠。このへんからハイカーの往来が多くなる(といっても数組)。唐沢山からのピストン組と村檜神社からのハイカーが多い雰囲気で、京路戸公園側からは不人気の様子だ。
京路戸峠から尾根を登り始めると、ようやく山道らしい雰囲気になってくる。写真のような白い花があちこちを飾ってなかなか綺麗だ。所々咲終いのツツジがアクセントを添える。
山頂直下は幾らか急斜面となり、休憩の回数が多くなった家内もようやく山頂へ到着。先行者夫婦が食事中であった。
山頂よりの風景は、山全体の雰囲気とも相通ず。地味な感じだが、木々に囲まれた明るい風景が広がる。
北の尾根に向けての下山は案外急斜面。こちらを登りに使ったら家内からクレームが出たのは間違いなかっただろう。だが、下りも結構大変。家内の途中しりもち2回は内緒の話である。
無事京路戸公園駐車場まで戻って見るとこんな注意書きがあった。 「しし」の上にイノと書き加えられている。
途中の緻密な笹ヤブを見た時、そして下山最後の谷筋の窪地を見た時、直感的にこれはイノシシ居そうだなぁと思っていた。まぁ、危険と書いてありながらすぐ脇にはっきり「至 諏訪岳」の道標があるのも少し可笑しいものだ。大体、山頂からの下山ルートにはそんな事は何処にも書いていなかったら、下山しきって初めて知る警告というのもねぇ(笑)。
話がちょっと飛んで、帰りに道の駅西方でとちおとめジェラートーをいただく。嗚呼、これで今日のカロリー消費も帳消しか?
でも、このとちおとめジェラートって美味しいのでまだの方には強くお勧めだ。
で、・・・更に話は飛ぶ。
家に帰着したのがまだ3時頃。日もまだ充分に高い。
それでは、とオフロードバイクを引っ張りだして久々の散歩に出かけた。場所は定番の半蔵山周辺の林道探索。
鬱蒼とした林道にも一箇所だけ外界が見えるビューポイントがある。お気に入りの場所だ。
こんな所まで来ると、ちょいとそこの斜面によじ登って、その後は薮をかき分け稜線キープなんて気分にもなってくるが、あくまで今日は(バイクの)散歩である。
半蔵山の南側(栗谷沢ダムの北側)エリアを一通り走った後、旧道の鞍掛峠へ。道祖神脇にバイクを止めて上を仰ぎ見る。
鞍掛山から半蔵山に至るには此処を降りて来なければならない。以前、半蔵山から池ノ鳥屋まで縦走し鞍掛峠に降り立っている。だがここから鞍掛山へ至る道筋は地形図を眺めるだけではどうにもイメージが沸かない。正面突破するには等高線が混みすぎているから。
あ、でもよく見るとあそこにも、そしてあっちにも意外とルートはあるじゃないか。帰ったら早速地形図を眺めるべし。これで次の冬のネタがまた一つ楽しみとなった。
一旦日光街道に抜け(実は途中で数箇所遊んできたがそれは割愛)最後は定番の林道牛沢線を走り抜ける。郷土の山、半蔵山を縦貫するこの林道も散歩の定番コースだ。
降り立った田口の集落はすっかり田んぼに水が張られて、後は田植えを待つばかり。そんな里を見守る半蔵山と写真を一枚パチリ。
以前、Mixiの山行で明神ヶ岳と持丸山ダブルヘッダーに参加した時のこと。健脚メンバーで、明神ヶ岳をついていいくのが精一杯であった。昼食後に登る持丸山はペースが極端に落ちてしまい、序盤でギブアップ宣言。メンバーは自分を見捨てずに一緒に計画を中断して下山してくれた。当時も今も大変申し訳無い思いがある。
そんな持丸山のリベンジだが、稜線に薮があるということなので登るなら新芽も少ないこの時期しかないだろうと思い立ち、GWの一本目として登ることにしたのである。
ちょっと言い訳になるが、実はここのところ仕事が忙しくて今回の山行は準備不十分。天気予報も昨晩ちらっと見ただけで、今朝の天気図や予報を見ないで出発したのが敗因であった。
鬼怒川温泉を過ぎた頃から北の方角の空がやけに暗い。川治温泉を走り抜ける頃には路面が濡れだし、やがて本降りになってしまった。登山口に着いてしばらく様子を見るが、思わせぶりに日が差しかけてはまた次の雨雲が通り過ぎるといった感じの繰り返しだ。約1時間ほど待機するも一向に好転の兆しは感じられない。
「今回も縁が無かったのか」と大変残念ではあったが、雨の薮を歩くのも気乗りしないので敗退を決意。まぁ三度めに賭けようじゃないか。
来た道を戻り車を走らせると、鬼怒川温泉付近から嘘のように青空が広がっている。振り返るとやはり北側は雲が厚くかかっているので、恐らく同じ状態なのだろう。いや、そう思いたいものだ。
林道西前高原線への標識を見ると、ロートルな頭脳がほぼ反射的に反応した。「そうだ!鶏岳登ろう」と。
林道から見る遅咲きの桜と目に染みるような青葉。これを見ただけでも随分心が軽くなる。昨日の荒天の名残で等圧線が狭くなっているせいなのだろうか。風はかなり強い。
これから登る鶏岳がよく見える。相変わらずトサカのように尖った山だ。
林道の空きスペースに車を停めて歩き出す。6年前、息子が進学で東京へ行く前に一緒に登った最後の山である。
あの時は山も今ひとつ目覚めていなかったような気がするが、ひと月遅れのこの時期は緑の芽吹きが目に眩しいほどである。
ちょっと勢いには欠けるが、ツツジだって健気に咲いている。地味な山にも春は確実にやってきているのだ。
ちょちょいと片付けてやろうじゃないかと登り出すも、7合目のゴーロから先の急登、トサカの核心部分はやはり辛い。6年という歳月で忘れ去ってしまった辛さを一歩また一歩と噛み締めながら登っていく。
頂きを雲に覆われ、ちょっとご機嫌斜めな男体山と女峰山がお出迎え。風も少し強いけれど、ぽかぽか日差しの山頂はやはり居心地が良い。
のんびり山頂を楽しんだらゆっくりと下山。今日は時間が沢山あるからね。おかしいな、下りの膝が笑ってる。やはりトサカには今回もヤラレたようだ。
]]>塩原周辺の栃木百名山で登り残しの安戸山。眺望はほぼ無く、ネット評ではかなり地味な山であるということでなかなか足が向かなかった。植物学者でもある昭和天皇が登られたという話は有名だが、季節を合わせればきっと色んな種類の植物や花を見ることが出来るのだろう。そんな安戸山だが、いつかは登ろうという気持ちで折りにふれ地形図を眺めていた。自然と目に入るのは南東に伸びる尾根。そして主稜線突端の1055mPが気になる存在である。事実「道の駅塩原」から眺めると、山頂と並ぶその姿は双耳峰のようにも見える。ならばこの二つのピークを踏んでやろうではないかと思い立ったのである。
今回のコースはガイド本に従い蟇沼側からのアプローチとする。蟇沼側の登山口はネットの情報でも皆さん苦労しているらしいが、お陰でいろいろな方々の情報を参考にさせていただき無事一発で到着することが出来た。民家へ入っていってしまいそうな雰囲気の林道入口を見逃すと苦戦する可能性は大である。
かなり道幅の狭い林道に入ると直ぐ鎮守様と貯水場があり、諸情報と一致して一安心する。貯水場脇には三台分の駐車スペースがあるが、先行車一台が変な駐め方でスペースを専有しているのでパジェロミニでさえも隣に駐められない。仕方なく鎮守様の前を失礼させていただいた。
枝打ちされた植林地は程よく光が差し込み、思った以上に明るい道が続く。鉄塔巡視路や林業作業道として整備されているので歩きやすさは遊歩道並だ。
道の駅塩原から安戸山 | 鎮守様手前のスペースを拝借 | 送電線巡視路でもある |
程なく堰堤から滝が落ちる沢に突き当たる。丸太造りの橋を渡り、そこを超えると今度は大きくジグザグに切られた道で植林帯を登っていく。巡視路だけあって勾配はいたって緩やかに作られている。歩くのが楽といえば楽なのだが、つい油断してオーバーペースとなり額の汗を拭うことしばし。
後ろにもう一人ハイカーが居るのは先程から気づいていたが、ハァハァと息を弾ませながら忽然と現れたのは柴犬である。首に発信機も付いていないし、猟犬で無いことは一目瞭然である。後続の単独ハイカーが連れているのだとばかり思っていたが、立ち止まって休憩している時に話をすると、先方もこちらが連れていると思っていたそうだ。先導するように先を行ったかと思えば突然谷の方へ消えてしまったり、気がつくと後ろから現れたりと常に付かず離れずで元気に飛び回る姿に心癒されるものがある。自分の前方にも二人組の登山者がいたが、そちらにも顔を出してるようで、行ったり来たりしながらハイカーの間を渡っているようだ。麓の民家に飼われており、この山を訪れるハイカーと共に山歩きを楽しんでいるようだ。鎖に繋がれ唯一の散歩も飼い主や社会の都合に依存されなければならない街中の犬達に比べればなんと幸せな生き方。
沢を渡る | 犬登場 | 案内してくれるのかな |
鉄塔への分岐を分けこの先はもはや山道と思いきや、なおも道はしっかりとしている。林道と呼ぶにはいささか道幅も狭いが、オフロードバイクなら自分程度のヘタな腕前でも充分通過出来る位なので、山歩きとしては若干面白みに欠ける感じもする。
やがて南側に眺望が開け安戸山の全容が見えるようになり、ここからはしばらく明るい空を仰ぎながら安戸山の裾へと回りんでいく。
巨木と石祠 | 安戸山北面は積雪あり | 光降り注ぐ道を進む |
突然広場が出現し、この先は四輪車でも通れそうなしっかりした林道が始まる。残念なことに、この林道の終点である塩原側は厳重にゲート封鎖されていて一般車の進入は許可されていないようだ。
林道手前で登山道は右手へと別れる。道標に落書きされた「何もみえんよ」に思わず苦笑。
左は林道、登山度は右へ | 道標をよく見ると・・・ | 下世話だが憎めない(笑) |
北斜面になるとにわかに残雪が出てくる。恐らく昨晩あたりに降った雪なのだろう。湿った重い雪は深いところで10センチ程度であろうか。特に歩くのに支障は無いが、先ほど見た安戸山の北斜面も遠目に分かるくらい雪が付いているので山頂付近の様子が楽しみである。
少しづつ雪が | 増えてきた |
徐々に間合いを詰めるが如くトラバースで高度を稼いで登るこのコースは、無駄な体力を消耗しないという点では秀逸である。林道を利用したコースだから当たり前と言えば当たり前だが、登山として考えるといささか面白みに欠けるのも事実。
そんなコースも安戸山北西の主稜線に乗るとやっと山道という趣が出てくる。そして最後は雪付の急登。先行者が足を滑られせて難儀しているのを下で見た自分は軽アイゼンを装着して余裕の通過・・・と言いたい所だが、足回りはともかく、やはり急登は息が切れる。ロープを使わず頑張るも、最後は見栄を捨ててロープを一握り。登り切った次のピークが山頂であった。
成る程、山頂は眺望も無く殺風景。「何もみえんよ」という落書きが頭をよぎって再び苦笑。しかし、本日の目標点は此処ではない。折角登り切った山頂だが、休憩さえ取らずに南東の尾根へと足を踏み出す。
こちらのルートを辿ると道の駅しおばら(アグリパル塩原)方面へ至るようだが、あまり歩かれている雰囲気が無く、一気に静かな尾根となる。蟇沼から山頂に至る前半の作業道歩きはあまりにも人工的なルートだったが、やはり山歩きはこういった所を歩かないと落ち着かないものだ。
樹間聳える1055mPが今日の目標点 | 静かな尾根を行く |
やがて、何も無い1055mPへ到達。ルートはこのあとストンと落ちるようにして続いているが、今日はここまでである。安戸山の山頂と同じで此処とて樹間の僅かな景色以外眺望は無いが、目論見の地点に到達出来た達成感と、想像通りの低い気温でいつものカップラーメンと食後のコーヒーが美味かったのは言うまでも無い。
話が突然変わるが、先日、時流に乗り遅れるまじと入手したGoogleの7インチタブレット(Nexsus7)について少し書かせていただきたい。
現在、いろいろとアプリを入れながら試行錯誤を重ねて楽しんでいるが、Anodoroid用アプリもスマホでユーザー規模が拡大して大抵のものは揃うようである。
ちなみに自分が入手したNexsus7だが、Wifiモデルしか無く自立通信が出来ないと思われがちだ。だが、2月にSIMフリー対応機種が発売されて、各通信会社のSIMを自由に装着して通信を行うことが出来るようになった。これをBIGLOBEがDOCOMO回線の2年縛りセットで売り出したのである。機体のローン代と毎月の通信料を含めても¥2,960とスマホを導入よりかなりお得。第一スマホの画面では老眼に厳しすぎるのだ(笑)
電話はガラケーで充分なのでタブレット機能だけあれば良いと思っていた自分だが、それでもスマホの誘惑と葛藤する日々もあっけなく終焉を迎えた。
機体を入手すると、しばらくは便利そうなアプリを試すのに時を費やした。そんな作業も一巡して「山」関係は?とアプリ検索をすると、やはりあるのだ。山関係のものが。
一つ目は、『山旅ロガー』
NexsusにはGPSが内蔵されてるのでこれの軌跡を取るソフト。単体では地図表示が出来ないが、ネットに繋がっている必要は無く、Wifiも通信も共にカットして更に画面を消灯してももOKなので電池の消費量が極めて少なく実用的である。恐らく日帰り山行ならば一日中電源を入れっぱなしでも問題無さそうである。採取したログはGPXファイルとして出力出来るので当然カシミール3Dで扱う事が出来る。
これはソフトとは関係の無い話だが、Nexsus内蔵のGPSの精度はかなり高く、今回の山行軌跡もガーミンのGPSMap60Csxと比べても遜色が無い。
二つ目は『地図ロイド』
こちらはネットに接続されていないと使えないが、なんと、うぉっちずを表示することが出来る。当然GPSで現在位置を更新したり軌跡の保存も可能である。設定でGoogle地図、Google航空写真、YAHOO地図、マピオン地図、マピオン3D地図も表示可能。Google地図を表示させるだけならNexsus7に標準でインストールされているマップソフトで充分だが、やはりカシミール3Dを使い慣れた者としてはうぉっちずが使えるのは大変嬉しい。これで、パソコンが無くても手軽に地形図を眺めながら新たなるコース模索が出来るというものだ(^^;
そして三つ目が『Yamanavi』
地図はカシミール3Dから自分で切り出してNexsusに配置する。地図をネットからダウンロードしながら動作する訳ではないので、電波の来ない山中でも使える。カシミール3Dで扱える地図は全てそのまま使えるので年間有償契約の「山旅マップ」などもそのまま持ち出せるというのは最大のアドバンテージである。加えて、カシミール3Dで作成したウェイポイントやルートも落とせるのでナビゲーションも可能である。
下の二枚の写真は、うぉっちずの3万5千分の一縮尺で切り出した安戸山北側エリア、そして9000分の一縮尺の安戸山からの南東尾根である。GPSMap60Csxで使っている地図が5万分の一相当なのと、画面の小ささ故に広域表示が大変見づらかったこと。そして何より10m等高線が7インチ大画面で見られるというのが実に有難い。流石にこのデカイ画面を毎回ザックから取り出して確認する訳にもいかないし、山用としてはやはり専用のGPS機に比べれば圧倒的に機能的が劣るのでNexsusだけで行動するわけにはいかない。だが、カシミールの画面そののままだから当たり前なのだが、この地図の見易さには心底脱帽だ。山の装備は軽量化が求められる筈なのに今後の山行は350gの増加は確定である。
何も無い1055mPへ到着 | 3万6千分の1縮尺で切り出した地図 | こちらは9000分の1 |
1055mPでゆったりとした時間を楽しんだ後は来た道を戻る。安戸山への登り返しにじんわりと汗をにじませる頃、またあの柴犬が現れた。何か言いたげなその背中を追いながら呟いた。お前ってほんとうに元気な奴だな。そして山が好きなんだね・・・と。
再び静かな尾根を戻る | 日なたは雪も無い穏やかな笹尾根 | 犬が再び案内 |
沢の脇にあった石像 |
県南で歩き残した栃木百名山。カタクリの群生が有名なこの山を花期に合わせて家内と歩いてきた。
ルートはサツマイモのような三毳山の北端にあるカタクリの里駐車場から出発し、竜ヶ岳(三毳山主峰)、中岳を巡り標高を下げてからの周回コースとした。
カタクリ満開の情報を聞きつけた観光客とハイカーで混雑する駐車場をスタートすると、屋台も出る賑わい。カタクリの株までも売られている。群生のカタクリにまみえる前からこれではいささか下世話とも思うが、それだけこの花が愛されているということなのだろう。
屋台も出る賑わい | 一株600円也 | 黄花は700円 |
立派に整備された遊歩道が幾らか登りに差し掛かり、登山道と別れるといよいよカタクリの群生地となる。なるほど噂に違わず一面に咲き誇る淡い紫が春の訪れを精一杯語っているようで美しいものだ。
群生地はお見事 | カメラマンも登路脇に咲く |
群生地を離れ幾らか登山道然としてくると、他の散策コースから「流れて」くる家族連れやカタクリだけが目当ての人達の数はぐっと減ってハイカーが目立つようになる。
どこの山域でもそうだが、中高年の比率が高いのは相変わらずだ。だがこの山で特に目立つのは、高い山はもう体力的に無理だ・・・という人達が自分の年齢と脚力に合わせながら山と付き合い続けるといった感じのハイカー達である。陰ながらエールを送りたい人も多かったが、自分もあの歳になって果たしてどうなっていることやら。
家内は登りがキツイらしくて、休憩が多発する我が登山隊のペースも牛歩が如し。それでもなんとか頑張って竜ヶ岳山頂へ到達。眺望はは西側しかないが、まずは山頂GETということで食事とした。
尾根筋に出れば里山の趣 | 所々岩も出てくる |
竜ヶ岳より南に見える中岳へ縦走開始。出だしの下りは見た目より急で滑りやすい。下りで喜んでいた家内だが、思わぬ"難所"に手こずる。
途中、管理用の舗装路二箇所を横切りながら尾根線歩きは続く。
これから向かう中岳 | 写真で見るより急な下り | 管理用道路を二度跨ぐ |
山名板が落ちた寂しい雰囲気の山頂の中岳だが、ベンチで食事する人達や後からやってくるハイカーで結構な賑わいである。竜ヶ岳の思った以上に端正な円錐形が枝越しに見える。
さぁ、ここからは下り一辺倒。途中、ハングライダーの発進所で胸のすく景色を見ながら進んでいくと、三毳神社奥社手前は若干の登り。家内は「登りがあるの?騙された」と言いながら石段を数えながら本当に最後の登りを登っていく。
中岳頂上 | 竜ヶ岳をのぞむ | 三毳神社奥社より |
コンクリートの階段は案外急 |
三毳神社奥社から先はコンクリート造りの直滑降階段が思いのほか急。一本目の鳥居を過ぎて二本目に差し掛かると思わず笑ってしまうほど急だ。ここも家内は難所となる。
階段が切れてもしばらくは足元の悪い急斜面が続くが、やがて季節を先取りした淡い色合いの花が待つ周回の管理道歩きとなった。
2本目は更に急 | シュゼンジカンザクラ | 気の早いツツジも |
フラワートレイン |
途中、「栃木花センター」で寄り道休憩。いちごのジェラートで鋭気を養うと、あとは車道歩きで駐車場を目指す。路傍の花や民家の庭先に咲き誇る花々。春の訪れを実感することの出来た一日であった。
とちぎ花センターで休憩 | 竜ヶ岳を背に | 路傍の草、色と形が美しい |
古賀志山馬蹄形縦走。トレースが馬蹄に見えるところからそう呼ばれているが、古賀志山に足繁く通う方なら一度は聞いたことのある名前だろう。
コースの全貌は上図の軌跡のような感じで、一般的には森林公園駐車場から北登山道経由で富士見峠よりこの周回コースに入るようだ。今回自分は、赤岩山の北西端から取り付き、再びそこへ戻る周回とすることにした。
赤岩山の北西からの登山道は、かつて「西登山道」の道標も掲げられていたということをネットで見たことがあるが、今はそれも撤去され、少し太めの赤テープが一本樹に巻かれているだけの寂れた登路となっている。
古の西登山口についてはヤマレコの馬蹄形縦走のデータを参考にさせていただいたが、駐車地の確保には不安があった。先般偵察を済ませてようやく実行に移す目処が付いたのである。余談であるが、駐車地の周辺は枝道も加えるとかなりの林道が存在し、中でも東に向かう主線は地図上で破線になるもまだ先まで走行可能で、鞍掛尾根まで直線で600m弱という箇所まで車(パジェロミニ)で接近可能である。ネタとしていつか企画に使いたいものだ。
森林公園を横目に文挟方面へと車を西走させる。古賀志山のビューポイントで赤岩山~古賀志山の岩稜をカメラに収めた。今日の縦走コースの南側半分ということになる。先週は母親の入院騒ぎがあり(経過良好で既に退院可能な状況まで回復)、仕事も超多忙であった為に気力が幾分衰え気味であったが、この稜線を見ていると力が沸き上がってくるので不思議なものだ。
予定していたポイントへ車を駐める。林道はよく整備されているので、ヘタをすると土曜日でも重機が入って作業があるかもしれないので念の為に邪魔にならないような場所を選んでおいた。
赤岩山から古賀志山全景 | 駐車地 | まずは作業道を辿り |
作業道を少し進むと左右の鉄塔へ向かう巡視路があるが、直進が赤テープが樹に巻かれた取り付き点である。ここまでは既に偵察済で、方角からして赤岩山の稜線に向かうことは間違いない。
しっかりとした道形を辿り、シダの生えた古い伐採地から左手にトラバース気味に登ると廃作業小屋があった。ここからは尾根に突き上げるように一本道になるも、道形は消え踏み跡も千々に乱れる。方角はひとつしか無いので迷うことは無い。登っていくと上の方に衝立のように大きな岩が見えてきた。
ここが取り付き点 | 廃作業小屋 | 奥に岩が聳える |
岩の直下まで来ると、左の巻き道に付いた赤テープと、半分に欠けた道標が掛かっているルートに分かれる。岩を縫って高度を上げる道標コースが正解と考えこちらを登る。それにしても欠けた道標の上半分が気になるところだ。二文字目は龍だと思うが一文字目は馬でないことは明らかのようだ。自分が知るこの先にある初めのピークは猿岩なのだが。
ルートは等高線の混み具合を見ていただくと解るが、時折岩混じりの胸突き八丁。今日は先が長いのでセーブしながら登っていくも、いきなり息が上がってくる。踏み跡は顕著で迷うようなことは無い。
岩肌が剥き出しに | 何岩なんだろう | 真新しいトラロープが下がる |
みるみる高度を稼ぎ、時折振り向くと西側の景色が広がってくる。笹目倉から鶏鳴山への美しい稜線の上に男体山が鎮座する姿、奥には白根山が白く輝くこの景色は宇都宮近郊の山からの定番眺望だ。
途中に小さなピークのような所があったが、此処が割れた道標にあった岩峰の頂上だったのか、山名板も何もかかっていなかったので不明である。
更にひと登りすると猿岩へ到着。三年前に赤岩山に登った時にこの猿岩までは歩いているが、その時に西の鉄塔の方から登ってきたという人に出会った。今回は自分もそのコースを辿ってきたのだ。
赤岩山主稜線は小さな岩のピーク超えの連続である。予報では風は強く無い筈だったが、いきなり強い風が稜線を吹き抜け始めた。急登の汗も引いてきたのでザックにしまっておいたダウンを思わず羽織る。
ここでちょっと不具合発生!
というと大袈裟だが、実はここ数年自分も世間の人並みに「花粉症」とやらが春に発症するようになっていた。重症ではないのだが春先は鼻がむずむずするのだ。山歩きを好む者にとって花粉症は手痛い病気。病は気からでは無いが、努めて「自分は花粉症では無い。ただちょっと鼻水が出るだけ」と暗示をかけまくって薬も使わず今までやり過ごしてきたのだ。
実は今年も数日前から鼻に異変を感じていたのだが、どうやらこの稜線に到着した途端に鼻水が炸裂。登りは頭が上を向いてるから良いのだが下りは汗の滴るが如く鼻水が垂れる始末。幸いにして先程から山域にハイカーの気配も無し、御岳山あたりまではティッシュの鼻栓をして歩くべし。
猿岩 | 岩のピーク超えの始まり |
いくつもの岩を越えていく岩稜は南側の景色がすこぶる良好。歩いているうちに風も収まりダウンをザックにしまう。これで鼻水が治まれば最高なんだけどね(笑)
篭岩 | ハングライダー着陸地点 |
鋭く毅立する岩をいくつも見送りながら、やがて赤岩山へ到着。高原山を真正面に捉えることの出来る眺望に観音寺山(猪倉城趾)が横たわり、その先に先般歩いた高知山などが見える。
赤岩山 |
寂れたハングライダーの離陸点跡地からは正面に古賀志山が見える。地形の関係なのか、成る程下から風が吹き上げてきているのでハングライダーやパラグライダーにはここは適しているのかもしれない。
それにしても今日の風は暖かいを通り越して少し暑い位だ。山登りは立ち止まれば寒いくらいのほうが調子の良い自分なので、胸元を開けて風を取り入れるなど体温調節に腐心する。嗚呼それにも増してこの鼻水が・・・(^^;
ハングライダー発進跡地から古賀志山方面 | ここは巻き道がある | 程よい緊張感の岩尾根 |
鼻水も流石に岩場超えをしている時は気にならいもの。やはり病は気からと自分にうそぶきながら進む。御岳山へあと少しという辺りで後続に今日初めてのハイカーの気配を感じる。
御岳は先着のシルバーハイカーのグループが談笑中であった。ティッシュの鼻栓を素早く抜き去った自分も端のベンチに腰を下ろす。やがて後続の単独者も到着し、山頂に収まる。
一息入れて先を急ぐ道すがら、沢山の人達が憩う古賀志山山頂。流石人気の山である。
人々が憩う古賀志山 |
富士見峠から登ってくるシルバーエイジの人達多数とすれ違う。この時間に登って、下山すると丁度半日コースで良いのだろう。それにしてもみなさん結構一杯一杯で登っているように見受けれるが、いざ我が身を振り返るに果たしてあの年齢まで山に登り続けることが出来るかどうか、いささか羨ましくもあるものだ。
富士見峠より少し北進すると最近有名になった伐採地である。稜線を外して伐採地に付いたトレースを進むとなかなか景色は良いが土が剥き出しなのは流石に悲しいものがある。御岳山で撮影した上の写真でも分かるように、下の方まで広く山が崩壊しているのが見て取れる。
中尾根分岐まで来ると、交差するハイカーの数も多く、更に先に見える559mPは沢山の人達で賑わっている模様。
富士見峠北側の伐採地 | 砂礫ならアルペンムードなのだが | 崩落で丸裸のピーク地 |
この先進むルート | こちらも痛々しい | 559mPは沢山の声で賑わっているようだ |
途中、左手に見える谷に向かった伐採地も行く手が丸見えになっており、踏み跡が下へ伸びている。古賀志山フリークのハイカーの格好の新ルート開拓の餌食になっているのだろう。
559mP手前の急登に息せき切りながら、やがていつもの静かな鞍掛尾根に落ち着く。ピーク超えにいささか足取りも重くなってきたが、自分の鞍掛尾根のお気に入りポイントである540mPで休憩と決めていた。
540mPはいつもの好眺望で迎えてくれたが、いかんせん日差しが強くて食事をするには少し辛い。東へ少し降りた箇所におあつらえ向きの岩のテラスがあるのを知っているのでそこへ移動。思えば今年の初日の出はやはりこの岩でコーヒーを沸かして迎えたものだ。二人も座れば一杯になってしまうような狭い岩だが、勝手にマイテラスと命名したくなるような景色の良い岩棚である。
こちらも伐採で丸見えになった谷筋、踏み跡が下へ伸びている | 鞍掛尾根に落ち着く | 540mP脇のマイテラス岩 |
食事の後は本日のコースの核心部、鞍掛尾根から444mPへ向かうルート。手始めの手岡方面への下りが待っている。
手岡方面への分岐は以前は古くて小さな道標が掲げられていたが、今は歩く人も無いらしく撤去されてしまった。それでも場所は以前から知っていたし、木の幹に刻み込まれた「手岡」の文字で解る。
出だしは若干心許ないが踏み跡は確かにある。辿っていくと自然林から植林帯へとトラバースし続け、やがて尾根へと導かれた。尾根に到達すれば、先ほどの分岐の心細さから想像出来ないような明るい落葉の稜線がしばらく続く。
今や木彫りの道標のみの手岡方面へ | トラバース気味に降りて尾根を探る | 落葉の稜線は心地よい |
やがて林相が完全に針葉樹へ変わるが、所々露出する岩が古賀志山ファミリーの一部であることを証明している。これから向かう444mP周辺は赤岩山側から見ると結構な岩稜なのだ。
途中、伐採地で辺りが急に開ける。コルを挟んで丁度V字型のように伐採されている。
この山域は全て岩で出来ているようだ | 383mP手前の伐採地 |
ハゲ山の下りと登り。大した標高差ではないが意外に骨が折れる。登り切って振り向くと鞍掛尾根が綿々と続いている。宇都宮側から見ることの多い鞍掛尾根だが、西側からの至近距離でのアングルは希少であろう。
振り返って鞍掛尾根を見る | 右奥が540mPだろう | 444mPに向けて岩超えが出てくる |
444mPに近づくと数箇所岩超えが出てくる。超マイナーコース故勿論整備などされていない。ロープや鎖は皆無だ。一番最後の岩が少し高度感があるが、落ち着いて行けばホールドも多いのでさほど心配も無い。
最後の岩を登り切った箇所が、四年前に岩崎にある無名五峰を巡った時に昼飯を食べた眺望地である。その時は今回のルートの383mPまで歩いているので、これで岩崎観音方面から鞍掛尾根まで貫通したことになる。
ロープは無いので慎重に | 幸いにしてホールドは多い | 最後の岩を登り切って鞍掛尾根方面 |
壊れかけの小さな石祠がある444mPを過ぎる。正面に朝登ってきた猿岩へ続く稜線が見えるので、馬蹄形としてはほぼ一周してきた訳だ。あとは高度を下げるだけなのだが、この最後の区間が実は一番の山場なのだ。最後の気力体力チャージの為、バテた体を地面に放り投げてしばしの休息をとることにした。
今日は暑さが予感できたので氷入りのテルモスにドリンクを詰めてきたが、まだ水の残量もあるのでテルモスの冷たいドリンクで体を冷やしてしばし鋭気を養う。
右手奥から朝登ってきた稜線 | 444mP | 流石にバテた |
降下点は444mPの南西側より岩の切れたところから降下すると山レコの記録にある。上から見てもどのへんに岩があるのか解らないので注意が必要だ。ヤマレコのGPSデータを参考に、ここぞという地点に到達するも、測位誤差が無いとは言えないので安心出来ない。
少し先の方まで歩いてみると稜線が急に切れ込んで降下していく。地図通りの状況であるし、そちらのほうが踏み跡も濃いような気がする。ただ、植林地や普通の薮とは違って岩の多い地帯故、実績を見ていないルートは避けるべきと判断し、引き返して予定地点から微かな踏み跡を追うことにした。
ニ~三箇所赤テープがあったが、方向に統一性が無いので全面的に信用出来ない。比較的濃い踏み跡も進路角から大きく外れてトラバースしようとしている。向かうべき方角は斜度がきついので落ち葉で踏み跡は消えかけているが、予定しているコースはあくまで稜線キープ。ここは手堅く方角を合わせて進むべし。しばし下り幾らか斜度が緩んだ頃、上を見ると結果的に岩の合間を縫ってうまく降りてこられたようだ。
目印も無いが間違いなく此処が降下開始点 | 踏跡も微かだが方角を外すまい | 岩の合間を縫うように降りてきた |
やがて尾根を正確に捉えることが出来るようになると再び踏み跡も濃くなってくる。馬蹄形縦走の本来のルートがここであるかどうかは不明だが、後半の歩きやすさと踏み跡の濃さを見るとあながち不正解とも言い切れない。ただ、軌跡を改めて眺めてみると、実は444mPの稜線から降下するときに少し行き過ぎた先の急降下をそのまま行けば、もっと綺麗な馬蹄形になったのではないかという些末な反省点を残した。これは本来の馬蹄形縦走がどうのこうのという古賀志山愛好家的(自分は古賀志山フリークでは無い)目線の話ではなく、地形図歩きを好む一登山者としての意見であることを付け加えておこう。
尾根を捉えると後は穏やか | 林道が見えてきた | こう降りてきた |
ゴール! |
谷倉山は南側の星野から登られることが多く、栃木百名山に選出されていながら今ひとつ地味な印象であまり訪れる人も多くないようだ。今回はそんなマイナーな山の、更にマイナーなルートである北面を周回することにした
今回のテーマは破線道の追跡である。通常ルーファンで歩く場合は、多少薮っぽくても理論的に一番手堅い尾根を堅持して歩くのが自分のこだわりである。今回のように地形図に描かれた破線を追跡するのは初めての試みだが、周辺の破線道を見ると谷沿いに付いている場合が多いのが判る。歩き終えて思ったのだが、古い時代に山から木材を搬出する時に作られた溝を航空測量が道として判断して地図に描かれているのではないかという想像に至ったのである。
下野新聞社「栃木百名山」のサブルートでは、星野から小山よし姫の墓地を経由して谷倉山の西に伸びる主稜線に突き上げるコースが紹介されている。自分もかつてこのコースを下りで使ったことがあるが、その時に地形図にあった南からの破線が尾根を超えて北に伸びていること。更にその先に林道が地図に描かれていることに興味を持った。もしかするとこのルートは古の交通の要衝だったのではないかと柄にもなく思索した。北面の破線部分だけでもトレースしてみたいという思いに駆られ、数度の偵察を重ねたのだ。
更に、下山は谷倉山北側の展望地から北に破線を辿り、周回コースとした。振り返ると、登りの破線道はその痕跡すら見いだすことが出来ず、また下りのそれはひたすら木材搬出用と思われる溝が続くのみ。懐古へのロマンは植林地の歴史と現実の中に深く埋没しているようである。
周回の帰着点付近、思川脇の少し広い所に車を停める。ここからはまず2km弱の車道歩きとなる。一旦思川を渡り、西へ川沿いの車道を進む。農道のような静かな道なので車は全く走っていないが、犬の散歩をする人数人と行き交う。人も犬もザックを背にする自分を皆珍しそうに見ている。一体どこへ、何をしに行くのかと思っていることだろう。
寒沢橋で再び思川を渡り返し、日陰で寒々しい雰囲気の寒沢林道へと足を踏み入れた。
思川脇の駐車地 | 寒沢橋を渡る | 寒沢林道へ |
暫くは林道歩きが続く。支線も沢山あるが、よく整備された本線をひとしきり進むとやがて終点へ到着。奥に続く薮が今日の取り付き点である。
いきなり薮漕ぎの様相だが、よく目を凝らすと沢沿いに仕事の人の踏跡が付いている。しばらくこれを辿っていくが、やがて谷が詰まってくるといかにも歩きにくそうになってきた。今回は破線道をGPSのルートとして設定しているが、既に破線道が有るべき場所は到底往来可能な道があるとは思えないもう一本隣の谷にあるようだ。ここは無理に破線を追うのは危険、方角さえ外さなければ谷倉山の主稜線に間違えなく到達するのだから手堅く行くべきであろう。脇の斜面を直登し小尾根に乗りあげた。
林道終点、この奥から取り付き | 暫く沢沿いに登る | 尾根に乗り上げた |
455mPへ向かうコースから少し進路角が外れていることに気がつく。このまま455mPに方向修正をするより、トラバース気味に谷倉山主稜線へ向けて方向修正するほうが妥当と判断した。やがてジャングルのように枝が弦巻く緩斜面に出て見通しが効くようになった。弦をくぐって登って行くとその先に主稜線が見えてきた。
ジャングルのような枝 | 谷倉山主稜線は近い |
たどり着いた主稜線を少し進むと星野方面への下山口を見る。文字の道標は無いが、ビニールテープで巻かれた矢印があるのみ。下野新聞社の本を見て歩くハイカーは此処を見落とすと苦戦するかもしれないポイントだ。星野から登って来た人には「谷倉山へ」の道標があるが、どうせ道標を建てるなら「星野方面へ」の下りの道標も併設すべきであると強く思うのだが。
星野方面の下山口 |
左右を杉に挟まれた防火帯のような尾根を進むと、ふっと明るい自然林に飛び出す。陽だまりは残雪も無くフカフカな落ち葉道。僅かな区間であるが穏やかな歩きを楽しむことが出来た。
電波中継アンテナのある山頂はいつものことながら殺風景だ。三角点と山名板をカメラに収める時間が精一杯の滞在で、踵を返すようにして北側にある展望地を目指す。
明るい自然林 | 殺風景な山頂 | 展望地へ向かう |
展望地はかつて大規模に伐採が行われた斜面の頂点部分で、粟野の運動公園あたりを車で走行中に見上げるとよく見える箇所である。以前は下草もほとんど無く、絶好の昼食ポイントであったが、笹の丈が高くなってしまい好眺望が失われつつあるのが残念だ。それでも笹薮を嫌わず少し分け入ると相変わらずの良い眺め。谷倉山はこの景色を見るために登るといっても過言ではない。
笹が生えてしまった展望地 | 日光方面は雪雲の中 | 粟野の市街地、遠く古賀志山も見える |
暫く景色を楽しんだあと、東側にある林道へ続く稜線を少し偵察してみる。以前、大倉山からこの林道まで縦走した時に谷倉山のこの展望地を終着点として計画したが、体力気力切れで割愛したいきさつの尾根だ。笹薮だが、見たところ難しそうな雰囲気は無いので機会があれば歩き繋ぎたいものだ。
尾根の固まりかけた残雪を脛くらいまで踏み抜きながら展望地へ復帰。まずは山頂の電波中継所から伸びる東電の電柱沿いの快適巡視路下りだ。途中プラスチックの階段もあるが、上に雪が付いているので却って滑りやすくて気を使う。表面がバリバリになった雪は、動物達の足跡も型を取ったようにしっかりと固まりつつある。
林道『真上男丸柏木線』へ降下する薮尾根偵察 | 送電線尾根を辿る |
巡視路が一気に高度を下げようとする箇所に青ペンキの矢印が切り株に書かれている。少し下ってみたが明らかにコースアウト。どうやらここで巡視道とはお別れのようである。
朝から強かった風もこの青ペンキの切り株付近では背後の山が全て受け止めてくれている。立派な景色があるわけではないが、轟々と唸り声を上げる強い風から、此処だけ静かなスポットを作ってくれているのだ。そんな優しい日溜まりは暖かな休憩地である。ためらうことも無くザックを置いた。
林道『真上男丸柏木線』 | ここから巡視路と分かれる |
食事を済ませて再出発。巡視路は下に降りて行ってしまうが電柱とは少しの間お付き合い。それにしてもこんな山中によく電柱を建てたものと感心する。
先ほどの展望地を眺めながら昼食 | 今日はスタバのコーヒー | 暫く林内の電柱を追う |
やがて電柱も自分の向かうべきルートから外れ、北東の稜線へと降りていってしまった。やがて、地図には記載の無い林道(真上男丸柏木線)へ到達するのだろう。だが、自分の追うべき破線路が向かう方角ははあくまでも北である。
よくこんな場所に建てたものだ | 電柱とも別れを告げて尾根キープ | 379mP |
植林地内の随所に付けられた溝は恐らく過去に木材搬出用に使われた木道であると思うが、これが蛇行しながら時には分岐をして複雑な地形を形成している。尾根形を拾い歩く有視界歩行だけではいささか心もとないので頻繁にGPSで方角を合わせながら進んでいく。もっともどこに引っ張られていっても思川沿いか東の林道に必ず拾われる地理なので心配は要らないが、計画ルートを辿れないのはルーファンとして目的を達成出来なかった事になる。
379mPで尾根の乗り換えに成功すると、今度は真新しい倒木が行く手を塞ぐようになり歩き辛いことこのうえない。終盤の破線道は谷底にあるようで、もはやそこは伐採木の海と化しておりとても歩けたものでは無い。トラバース気味に下降したり、谷の薄い所を乗り換えしたりと徐々に高度を下げてようやく作業林道へと降り立つことが出来た。
木材搬出用の古い溝 | 破線を追うと谷へ到達 | 倒木が多くて降りるのが大変だった |
林道『松崎滝の沢線』へ到達 | 駐車地へ戻る |
久々に「骨のある」コースを歩いたような気分に浸るが、車に向かう小路から思川の対岸に見える堂々とした稜線(無名三角点峰455.2mとその一帯)が目に入り、再びこの山域を歩かんという思いを新たにした。
今年で三年目になる雪の桝形山。無雪期にリンゴさん達と一緒にアカヤシオを見に行ったのを加えると4度目である。今年は下山路に若干アレンジを加える。
桝形山へアプローチするルートは昨今赤ペンキも多くなり秘境の趣が随分薄れた感があるが、今回の下山ルートはそんな思いを払拭するのに充分な素晴らしいフィールドであった。
下山後の牧場内散策も昨年に引き続き敢行。今年は牧場南部にある1049.6m三角点を踏むことを目標とした。
県道56号線を八方ヶ原へ向かう。県民の森分岐点あたりになっても乾燥路面が続いている。例年、此処より手前あたりから道路もまた見事な白銀の世界となっている筈なのだ。運転に気を遣わないので楽といえば楽だが、いささか拍子抜けである。やはり今年は雪が少ないのかもしれない。
それでも高度が上がるに従い、日陰には圧雪が見られるようになる。だがそれもわずかで「山の駅たかはら」へ到着。
先着ハイカーの車は数台だが、スノーモービルを懸架車から下ろしている人達が気になる。大抵のハイカーは大間々方面を目指すが、スノーモービルは自分が向かう北側の車道を進むので、トレース奪取のライバルとなるのだ。
慌てて支度{ヒップソリを車中に忘れてしまった。残念無念}するもむなし。スノーモービルはエンジンをかけて走り去っていってしまった。ところが、歩き始めて僅かの所で自分のコースから外れてくれていた。ラッキーである。行く手にはシルクを敷き詰めたような雪面が待ち受けていてくれた。
スノーモービルに先を越されてしまった! | 我がルートはOK | 状態良好也 |
展望台 |
例年は電波中継所脇から更に車道を辿り下りきったあたりから山に入ったが、今回は電波中継所と道路を挟んだ反対側から赤ペンキを追って入山した。
風が強く、桜沢側から吹く風がごうごうと唸り凄みを効かせている。沢側ギリギリのところは風に研ぎ澄まされた雪面が荒々しくも清らか。だが、ほんの僅かだけ内側を通れば、風は頭上を抜けて案外静かである。そこには表情豊かに雪に覆われた穏やかな森があった。
今回は電波中継所脇から道路を外れる |
真新しい鹿の糞 |
有名な目玉親父、冬バージョンは白目付き |
四回目ともなればトレースの無い雪面であろうと道に迷うことはない。だが春から秋にかけては、実り豊かなこの森は熊のパラダイスとなるらしい。従って、単独で入るのはこの時期をおいて他にはないのである。
樹間に前黒山 |
山頂滞留時間は風が強い為に10分程度。下山はいよいよ新ルートで山頂から東を目指す。実は夏に一度オフロードバイクで林道最深部や支線をひと通り偵察済なのでおおまかな地形と植生は頭に入っている。地形図ではヤブの記号が書かれおり、また等高線が緩いこんな所は一般的には藪が濃いと見るべきは妥当である。だが偵察で落葉樹のエリアがあることを把握していたのだ。
どうやら思惑通りの展開となる。右手は植林地境界。こちらを縫って降りれば林道に一発で出るが雪が積もった林床は案外手こずるもの。第一、気分的によろしくない。左手は地形図の表記とおりに小籔。その下には桝形山林道の終端部分が伸びている筈。直進は、今の季節ならではの落葉の樹間歩きだ。振り向くと何も無い林間に己の歩いた跡が道を形どっているのが愉快だ。
山頂より東を目指す | 己の歩いた跡が道となる |
目論見の箇所へ向けて、最後はいくらか斜度が加わり高度を下げる。突端は落差2mほど。尻もちで滑り降りて無事林道へ接合した。
林道は近い | 降下開始 | 林道へ接合 |
あとは牧場までひたすら林道歩きとなる。昨年はハンターのスノーモービルが入っていたが、今年は入った形跡がない。山中の動物の気配がさほど濃くないところを見ると、獲物が見込めないのでハンターの出入りも少ないのかな、などと考えながら歩いていると、谷から登ってきて林道をさまよう鹿の足跡が出現。
鹿の足跡が入り乱れる | こんな所にも目玉が | 天気晴朗 |
林道入口のゲートの箇所でスノーモービルがUターンした跡があった。状態を熟知した地元のハンターなら迷わず進入する筈だが、今日のドライバーはこちら方面に不慣れな者と見た。お陰で自分は静かな歩きを楽しむことが出来たので感謝ものである。
桝形山林道入口で引き返したスノーモービル | 車道から北側風景 |
車道に出て牧場を目指す途中、向こうから大量のスノーシューの団体に遭遇。その数およそ30人くらいであろうか。駐車場に戻ってわかったのだが、マイクロバスで訪れた団体さんのようだ。それにしても、牧場の北側エリアにこれだけの人が来るとは驚きだ。以前は、クロスカントリースキーやスノーシューの人を一日に数人見る程度であった。まさか桝形山に行くとは思えないが、ますますこのエリアの希少価値が失われていくような気がしていささか残念である。まぁ、フィールドは万人に等しく楽しまれるべきものだから、仕方ないということは頭では理解出来ているのだが。
牧場内に入ると雪の少なさに唖然とする。所々枯れた草が露出している。スノーシューのクランポンがガリガリと音を立てるほど雪は薄くかつ凍結している。進むにつれ幾らか積雪量が増えたころ、景色のよい箇所にさしかかった。時々思い出したように息づく強い風が気になるが、そんな風から少しでも守られればと思い、木に寄り添うように腰を降ろして食事をすることにした。
牧場内北東部は雪が少ない |
気温は測らなかったが、日差しが充分にあってもかなり手が冷たい。食事をする時はグローブを外しているから尚更だ。それでも食後のコーヒーとお菓子はやめられない。この雄大な景色を独り占めしてコーヒーを愉しまずしてこの場を去ることができようか。
塩那の山並み |
再出発後、想定ルートだと意外に起伏がきつそうな箇所を大回りにしたり、牧場内歩きを楽しみながら行く。見通しの効かない藪の中を神経質に進まなければならないのと大違い。見たままのコース選択はおおらかで楽しい。最後の目的地、1049.6m三角点は目視だけでは場所の特定はほとんど不可能だ。GPSで方角と距離は判るものの、ピークではないので遠くから眺めてもどこが三角点だかまったく見当が付かない。
そばまで寄って、後は手のひらにGPSを乗せたままアプローチすると雪中に測量用のポールを発見する。ポールの下に三角点がかろうじて雪面から頭を出していた。流石にこの周辺は積雪量も多く、場所によっては脛の半分くらい沈み込んだ。
1049.6mPを目指す | 1049.6mPへ到達 |
1049.6m三角点からは、事前に設定したルートで西側に向かい山の駅に向かう。途中水の流れがある沢をまたがなければいけないところを迂回したりと、積雪期ならではの自由闊達さが楽しい。途中から牧柵の有刺鉄線沿いに赤ペンキが誘導するコースに合流するが、これがまたキツイ登りで大変だ。浮力の大きい散策用スノーシューをもってしても脛全体まで沈み込むフカフカの柔らかい雪。そして雪が無くても難儀しそうな急登。気を抜くとずり落ちてしまうので、スノーシューでキックステップしながら微動前進という珍しい体験をすることになった。
西へ降下 | 深雪急登の登り返し |
急登箇所も2箇所通過してやっと平坦な所へ出てほっとしていると、その先は吹き溜まりでまた足が潜り込む。なかなかスパルタンなコースだなと思っていると、右手に急に広場が広がった。そう、山の駅たかはらの南側の広場に飛び出したのだ。
傾斜が緩むが | 結構スパルタン |
先ほどすれ違った団体さん達のはしゃいだ声が聞こえる。駐車場に並ぶ車。ロッジに出入りする人々。見渡す限りの雪原と山並み、樹の間を縫うようにして進み、最後は泳ぐようにして雪をかいくぐってきた自分は、突然文明社会にワープした原始人のような心持ちに包まれたのであった。
山の駅たかはらへ無事帰着 |