ONE
-愛になりたい-

    作 者:宮川匡代
    全巻数:7巻
    出版社:集英社
    初版年:1987年2月
ONE-愛になりたい-

あらすじ

 高校1年生の芳本さちよは水泳部員。両親が離婚し、おじの家でいとこの沢井圭子と共に暮らす。

 さちよは、同じ水泳部の小沢巧実とすれ違いの続く恋を歩むことになるが、父親の再婚相手の息子、幸也(ゆきや)との関係や、巧実を好きになってしまったいとこの圭子への負い目などが、彼女を苦しめることになる。

感想

さちよ・・・  私の名前、「幸せ」って書かないんだ


 序盤から演出が飛ばしている。世話になっている家のいとことの三角関係、義兄から言い寄られ、果ては母親の男問題。少女漫画的薄幸少女の話と割り切れない程、人間関係がどろどろしているシリアスなストーリ展開。一歩間違えば立派な昼メロで通せる。

 非常に涙もろくてナイーブなさちよは、次から次へと精神的な揺さぶりをかけられることになるが、読者はそんなさちよの涙攻撃に感情移入できるかどうかが、この作品を楽しむことの出来る臨界点。ちなみに私は、「何だかなぁ」と思いながらも一応さちよ哀れなりと思えた一人。

 一方、巧実は中盤以降水泳部のエースとして活躍する一面もあるが、どちらかといえばありふれた少年の素顔を見せる。涙少女、さちよとの付き合いに戸惑いを見せるあたりはむしろ等身大。

 繊細な乙女心に、弱さに陶酔して涙と同情を誘うという手法は古典的かつ普遍的であり、それはそれで一つのスタイルであるとは思う。だが、主人公さちよにはもう少し自力で人生を切り拓く姿勢が欲しかったと願うのは、男性視点故の評価なのだろうか。一応ハッピーエンドを迎えるのだが、本質の部分で救いのないような気がしてしかたがない。

宮川匡代ファンの方、辛口で申し訳ありません。決して作品の質がどうのこうのと言っている訳ではなく、あくまで個人的な好みで判断していますのでご容赦を。もちろんまっちゃんも泣けましたよ。

作成:02/01/08 加筆修正:02/05/04

当ページの画像は、宮川匡代、小学館発行の「ONE-愛になりたい-」7巻よりスキャンして使用しております。他に転載及び使用されることは堅くお断りします。