ソウル再び!HOTな旅
2度目の韓国である。熱いソウルに別れを告げたのがつい昨日のように思い出される。そんな2年ぶりの韓国である。
何がそんなに面白くて韓国かと問われれば、いろいろありすぎて何から説明してよいか解らない程答えに窮する。とにかくカルチャーショックとでも言おうかエキゾチックとでも言おうか。正直に白状してしまえば、この二年間欠かさず見続けていた『韓ドラ』の影響が多少なりともアリと言っておこう。
"冬のソナタ"が火付け役として沸き起こった韓ドラブーム。最近ではいくらか下火になったものの、今でも新大久保の韓国街に行けば、ペ・ヨンジュンに代表されるような男優のブロマイドに中年のオバサマ達が群がっているのは相変わらずの光景である。
我が家もこの二年間韓ドラを見続けてきた手前、こういったオバサマ達と大差は無いのかもしれないが、出演する俳優がどうのこうの以前に如何に韓国人や韓国の街並みが刺激的であるかということをドラマのフレームから感じ続けていた。そんなエキサイティングな韓国を今一度実体験してみたいという思いが今回の旅の一番大きな動機である。
前回の旅でソウルの街中の様子は大体判っていた。今回は地下鉄やタクシー、徒歩なら自力で移動する自信がはじめからあったので、3泊4日飛行機のチケットとホテルのみ手配の格安フリーツアーに申込みをした。基本的に観光は4日間全て自力行動になる。流石に一日だけはオプションツアーを申し込みお気楽日本人旅行者として過ごすが、全般的に緊張感とうだるような暑さで頭の中がグラグラしてくるような超刺激的な時間を体験する事になった。
口を開けば「暑い暑い疲れた疲れた」。三人(今回は息子はパス)とも殺人的な暑さと自力で行動する緊張感で疲弊していた。だが、少なくとも自分は「これこそが求めていたもの」、ビビンバをぐちゃぐちゃとかき混ぜたようなソウルの風情に酔いしれて内心ほくそ笑んでいたりもしたのだ。
今年の年初あたりからハングル教本を数冊眺めて、ほんの少しだけ読めるようになった。そして連夜の韓ドラ字幕で覚えた幾ばくかの単語を2つ3つ並べてカタコトを喋ってみたりもした。そんな事が今回の旅をいっそう面白くしたことも付け加えておこう。
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1日目 08年8月10日(日) 出国,景福宮,NANTA観賞,明洞で買い物
今回も朝早い便、帰りは一番遅い便を選んだ。JTBの成田空港カウンターに朝の7時15分集合だ。早朝車を飛ばして空港に来ても良かったのだが、万が一車が故障でもしたら厄介なので今回は隣接するホテルに前泊をした。旅行前に散財をしたくなかったが、出張でよく使うじゃらんでネットから申込みをして3人で素泊まり1万5千円を切る安さ。期待はしていなかったが、大都市なら一人1万円位はしそうな綺麗な広い部屋で前夜を過ごすことが出来た。これから向かう激安プランのソウルニュークッチェ(国際)ホテルはネットのクチコミであまり良い事が書かれていなかっただけに、いったいどれだけのギャップがあるのだろうと少し心配だ。
ホテルの送迎バスに揺られ空港に到着すると、早い時間なのに随分と人が溢れている。どうやらオリンピック目当てやその関連で中国に行く人が列をなしていたようである。
GPSの画面上に表示される現在地が飛ぶように移動する様はなかなか愉快である。トリップコンピューターに表示される時速が900Kmを越えているのも当たり前の事ながら豪気なものだ。
着陸の時に車輪が一度バウンドしたような気がした。一瞬肝を冷やしたがどうにか無事にインチョン(仁川)国際空港へ到着である。少し恥ずかしげに小さな声でカムサムニダと乗員に別れを告げ、機体のゲートをくぐると強烈な湿気と温度が我々を迎える。日本もここしばらくかなり暑かったが韓国もそうは変わらないようである。
シートがエコノミーの前から10列目だったので、入国審査待ちの時間も少なく、すぐ順番が回ってきた。審査官の女性は年の頃二十歳前半くらいだろうか。けだるそうにパスポートを受け取った瞬間、彼女の携帯に着信。パスポートはそこに放置されたまま携帯をチャっと取り出しメールチェックだ。おぃおぃ仕事中だろう。さして重要なメールではなかったのか、我に帰ったようにピッとリーダーにパスポートをかざす。大切な彼からのメール待ちだったのかな?
ラッキーな事に預け荷物もすんなりと出てきて幸先の良いスタートである。今回は出国審査カードの記入漏れが無かったので入国審査官の質問も無かった。
最後のゲートをくぐると、人買いよろしく観光会社の現地係員が小さなプラカードを持って待ちかまえていた。その中でも比較的小柄なクォン(権)さんに我々は拾われてひとまず落ち着くこととなる。
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クォンさんのもう一人の客である日本人の単独参加男性と合流し、手配の車に乗せられ灼熱のインチョン空港から一路ホテルへと向かう。前回の感想同様、日本の風景と見間違う程のんびりとした風景が車窓を流れる。のんびりしていないのはそこに住む人たちである。
クォンさんは通り一辺倒の説明を済ますと、今回は何をしに来たのだ?何処に行く?何を観る?何を食べる?良ければ自分が手配をするからといって迫ってくる。
最近観光客にも現地の人にも共に人気のあるNANTA、垢すりも既にネットで家内が手配済み。焼き肉は私が食べられないので行かない。免税店は興味無し。おまけに2日目のフリーは自力で電車に乗ってインチョン(仁川){空港のある所とは別の旧市街}に行くと告げる。少しだけちびまる子ちゃんのお母さん似のクォンさんの顔が曇る。この日本人はバックマージンのあてにはならないなと。
「粥は食べますか?」との彼女の問いに、「いや結構です」と私。
ホテルでチェックインをしている時に「流石に可愛そうなんじゃない」「何もきいてあげないのは人としてどうも・・・」などという家内と娘の哀願に折れて翌朝の粥の席の手配だけをクォンさんに頼む事にした。彼女達は当たって砕けろのしたたかさで動いているので話を聞いていたらきりが無いと思うし、こちらはあえてフリープランで来ているので入る店は自分の意志で決めたいという多少の残念な気持ちを残しながら彼女と別れる。
ちなみに、同行の日本人男性はチケット購入を彼女に幾つか頼んでいた。彼の泊まるホテルに車が先に寄ったのは言うまでも無い(笑)
ネットのクチコミで、「窓が無い部屋がある」「日本語全然通じない」「水とお湯が出ないことがある」等々、いろいろと悪い噂が目に付いたニュークッチェ(国際)ホテルだが、客室最上階の16階の角部屋のキーを渡された。
恐る恐る入って見ると、角部屋だけあって西と南に窓がある。ベッドは一脚がサイドベッドということだったが、普通サイズのベッドが置いてある。それに部屋の広さも申し分ない。ほんの少しカビくさい感じがしたが、ミョンドン(明洞)の外れとはいえ一応ソウル中心部というロケーションを考えれば上出来である。
さて時間はまだ1時を少し回ったばかり。夕方のNANTA公演までしばらく時間がある。予定していた通り、早速最寄りの地下鉄2号線シチョン(市庁)駅から地下鉄に乗る。2年前は900ウォンだった初乗り区間が値上げして千ウォンになっていた。一駅乗ってオレンジ色の3号線へ乗り換えだが、地下鉄の案内板は殆どハングルと英語と漢字の併記なので安心だ。何よりも、今回は地名くらいならあまり苦労せずともハングルが読めるようになったのが嬉しい。
観光の手始めはキョンボックン(景福宮)だ。2年前に壮大な正門前で雨に濡れながら観光を諦め、再来を胸に秘めた場所である。
その名もずばりキョンボックン(景福宮)駅を降りる。地上に向かう重厚な石壁の通路を歩いて行くと端のほうでアイス売りをしているアジュマ(中年のおばさん)が床に座って居眠りをしている。近代的な駅舎とは対照的にそこだけ時間が停まってしまっているような風景。新しいものと古いものが交錯する街。これこそがソウルなのだ。
併設の博物館から見学することにした。ちょっと温度が甘い気はしたが、こちらはクーラーが効いているので体が楽だ。
日曜日ということもあって、館内は外国人の姿よりも韓国人の親子連れが目立って見えた。印象的だったのは、真剣に展示物を説明する親、そしてそれをきちんと聞く子供の姿。いずれの親子も皆そのようにしている姿を見て、日本ではないがしろにされがちな歴史観や祖国愛へ対する考え方が根本的に違っていることを痛感した。
朝鮮半島の歴史と王室について詳しい展示物が並んでいたが、いかんせん日本語の解説文がなかったのがちょっと残念である。
涼しかった館内を後にして、焼け付くような光化門前を進みキョンボックン(景福宮)の城内へ向かう。世界的な観光地である為、チケット売り場には様々な人種の観光客が集まっている。だが皆一様に暑さには閉口しているようで飲料が飛ぶように売れていく。 自販機のコーラが600ウォンだから、日本円にして大体60円強くらいで割安感がある。だが、自販機では扱っていないペットボトルの千ウォンの水が飛ぶように売れていた。 | ![]() |
城内に入るとドーンとでかい建物が目に飛び込んできた。市内北側に聳える岩山と融和した風景が壮大さを一層醸し出している。
古い時代の韓服を着た番兵が観光サービスであちこちに配置されている。皆笑顔が禁じられているようで、カメラを向けられてもニコリともしない。日サロで焼けまくったような焦げ茶色のメイクの顔で暑い中じっとしている様子に同情を禁じ得ないが、学生のバイトでもなければこれは勤まらないだろう。
韓国の古代建造物の持つ鮮やかな色合いは、喧噪のソウル市内に実に良く溶け込んでいるとそんなふうに思った。
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客待ちのイルバン(一般)タクシーのドアに手をかけた。さて言葉は通じるかな?
{韓国のタクシー事情についてはこちらを参照されたし}
「ナンタ カー ジュセヨ?」と言ってみた。{ナンタへ行って下さい}
運転手のおじさんは、「ナンタ??」・・・・「おぉナンタ」
一応通じたようである。でもこのおじさん、途中違う所に間違って入っていって近くの若者に道を尋ねている。これも後で知った事なのだが、シチョン(市庁)のそばにあった劇場がつい最近移転したそうで、地元客が多いイルバン(一般)タクシーのドライバーにはまだ周知されていない感じである。
タクシー代は確か3,000ウォン程度だった。3人だと頭割りで約100円くらいだから激安だ。韓国は地下鉄もタクシーも信じられない程安い価格設定である。モボン(模範)タクシーが高いと言ってもイルバン(一般)タクシーの倍程度。それでも日本に比べればまだまだ安い。
劇場のチケット売り場でネット予約のプリントアウトを見せると、日本語の上手な娘さんが発券をしてくれた。カード決済OKということなので、初めて海外でクレジットカードを使ってみたのだが、ハングルで書かれたカードの明細書が珍しい。
チケットも無事手にしたし、開演までまだいくらか時間もある。ちょっと早いが腹ごしらえをすることにした。劇場からあまり離れたくなかったので廻りを見渡すと丁度向かい側に比較的明るい感じの店「キンパッ マンドウ」と書いてある店が目にとまった。白抜きの文字はお店の名前だと思うがどうしても1文字目が読めない。
キンパッとはキムパプ(海苔ご飯)、韓国風海苔巻きの事。マンドウは饅頭。但し饅頭はこちらでは餃子の事を差すのだ。両者とも韓国ではファーストフードの代名詞。このお店は屋台よりもちょっとしっかり食べたい人向けの雰囲気のようだ。庶民の食事どころであるシクタン(食堂)とまではいかないが、それでもメニューはハングルのみ。店内に入るとオソオセヨ〜(いらっしゃい)という元気なアジュマの声が飛んできた。この後、「日本人が来ちゃったよ。それも家族連れ。」というような困った雰囲気が店内に漂う。
何とかなるだろうと入店したものの、日本語が通じる感じがあまり無い。こちらもちょっと困ってしまったが、そこは勢い。イルボンメニュー?(日本のメニュー?)
本当は、イルボンマールメニューイッソヨ?(日本語のメニューはありますか?)と言うつもりだったのだが、とっさに出てこないところがやはり付け刃。アジュマもちょっと慌てて、イルボンメニューイルボンメニューと呟きながら程なく出てきたのが英語メニューだった。
無難なところを頼み事なきを得たが、今改めて壁のメニュー写真を眺めて見ると、左の列がマンドウ(餃子)関連、真ん中がラミョン(ラーメン)2,500ウォンから始まりトックラミョン(餅ラーメン)、マンドウラミョン(餃子ラーメン)、チスラミョン(恐らくチーズラーメン)、と興味津々の品揃えだ。韓国のラミョン(ラーメン)はインスタントラーメンを差すので、これにいろいろトッピングをしたものが出されるだけだと思うが、それでもこれらを食べ逃したのはちょっと惜しい。更に右の列に行くとネンミョン(冷麺)やククス(韓国うどん)などが名を連ね、一番最後の列はピピンパッ(ビビンバ)やキムチチゲのような鍋物が並んでいる。いざ店に入るとそう冷静になって読めるものではないが、今こうして辞書も無しに読めると随分アイテムが間引かれていた英語メニューで注文したことが今更ながら悔やまれる。
比較的空いていた店内にもやがて続々と客が入ってきて、あっという間に僅かな席は韓国人達で埋め尽くされた。TVに写る韓国人選手がオリンピックで好成績を上げる度に、喝采で大いに盛り上がる店内である。
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もうちょっと単価の高い店だと突き出しも点数が多いが、それでもキムチはお約束。タクアンは日本から伝わったものであるが、味はまったく一緒だ。
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キムチチャーハン 量が多いし味もイケル! | |
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ネンミョン(冷麺) コチュジャンが中にたっぷり | ムルネンミョン(水冷麺) 氷が入っていて涼しげ |
ショーが終わると今度はミョンドン(明洞)へ買い物へ行こうという事になった。
先ほども書いたが、ソウルの地下鉄はきちんと整理されていて大変利用しやすい。行き先案内も固定の掲示板、車内の電光掲示板もハングル英語漢字が交互表示され、特に日本人には漢字がありがたい。まれに料金図にハングルしかない場合もあるが、路線自体が解りやすいのであまり迷うこともないだろう。
日本の地下鉄もそうだが、ご覧のように、例えば5号線なら案内も乗り換えの通路の方向表示も、そして列車のサイドのカラーまで統一という徹底ぶりである。
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ミョンドン(明洞)の賑わいは相変わらずである。ハングルもさることながら、洒落た横文字ショップも立ち並ぶ中、韓国人や白人そして日本人でごったがえしている。
チープコスメショップが一番元気が良い。店先に立っているキャンペーンガールの娘が日本語と韓国語で流れの客に声を掛ける。店内で買い物に使う小さなバスケットにオマケの品を入れてさっと渡すと結構な確率で店に入っていくようだ。店に入ればお土産も貰っているし何か買わなければ出てこれないのが日本人の情といおうか欠点といおうか。
我が家の女衆もそんなチープコスメショップのキャンギャルに絡め取られたようにして入店していく。用なしの自分は一人屋台の居並ぶ通りを彷徨う。一人物の男に声を掛けてくる奴と言えば決まっている。「お兄さん。素晴らしいコピーあるよ。いい娘も一杯いるよ。私に言えばなんでもアルヨ」、脂ぎった顔で怪しさ全開の雰囲気で話しかけて来る男。
夜になってもちっとも涼しくならないのはこの街が単に明るいから?それともエネルギッシュな韓国人達のせい?
確かなことは、このギラギラした街に今自分が立っているということ。酒か何かで脳みそがジンジンしているような軽い目眩のようなものを感じながらソウルの夜に酔っていくのであった。
ザクザクと買い物をした娘達と合流し、ようやくホテルに戻った。少し水量が乏しいがそれでも恵みのようなシャワーでさっぱりとすると、泥に沈んでいくように眠りに落ちていったのはいうまでもない。
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