梅雨明けの山
7月の3連休の天気はどうだろうかとやきもきしていたら、見事タイミングを計ったように梅雨が明けた。夏が来たら高い山に登ろうと思っていたので、まずは手始めに男体山ファミリーの歩き残しの名峰、女峰山から始めることとした。
女峰山は二荒山神社裏手から登るのが正統派、寂光の滝から馬立へ登り上がるコースもまたハード、骨っぽいところでは霧降から赤薙山経由もある。今回軟弱な自分は(というか身の丈にあったというほうが正解)志津峠から馬立経由のラクラクコースを選択した。
志津乗越は相変わらず男体山周辺を訪れる登山者の車でごった返している。こんな山奥にこれだけ車が集まるのは異様な光景だが、流石は人気スポットだ。
去年2度ここに来ていたので事情は飲み込めている。今回も早発ちで自宅5時発、志津乗越先の野州原林道への最終ゲート付近には7時前に着いたが、既にゲート前は満車である。100m程手前までバックして駐車スペースにどうにかありつくことが出来た。
朝の澄んだ空気の中、気もそぞろで準備を終えると、胸弾ませていよいよ出発である。振り返ると、いつもと違った角度の男体山に夏らしい緑が輝いている。はじめは砂利の林道歩きでいささか退屈だが、向かう女峰山から帝釈山の稜線が馬の鞍のように見えてくると、遮るもののないその露わな山容に登高意欲が駆りたてられた。
馬立分岐からは林道に別れを告げて、沢に向かって一気に高度を下げる。女峰山登山の開始である。
男体山を背にして | 向かう女峰山と帝釈山 | 馬立分岐 |
どうも写真ではスケール感がまったく損なわれてしまって残念でしかたがない。下の写真で大き目の岩は長辺が5m以上もあろうか。そんな岩がごろごろしている枯れ沢を渡る。大雨の後の激流で、こういった巨岩でさえいとも簡単に流されるのだろう。自然の偉大さの中ではこの沢を渡る自分などは、あたかも小石の間を行く蟻のようなものである。
馬立の川原から向かいの尾根に取り付くといよいよ登りに転じ、暫くは右手の薙が綺麗に砂防工事された所を進んでいく。よくぞこんなに山奥に重機を持ち込み、かように大きな工事を行えたのか。人間の営みもまた実に凄いものだ。
道はさほど急ではないが、所々樹林が切れる箇所になると夏の鋭い日差しがことのほか体に堪える。太陽が一瞬雲で覆われると幾らか元気が戻るが、再び日が射すと水を失った花がしおれるように疲れが芯からやってくる。給水のペースもいつもよりは急ピッチである。まだまだ序の口の行程なので先が思いやられる。
コツコツと高度を上げていく。気がつくとガスが下からどんどん上がってくる。見上げると山頂方面はすっかりガスに覆われてしまった。朝のあの素晴らしい晴天が嘘のようである。
大分高度を上げて二つ目の沢を横断すると、そこは水場。コンコンと湧き出る名水をザックから取り出したカップですくって口にする。真冬の女峰山の厳しさを彷彿とさせる氷雪の産物。キリっとした冷たさと雑味の無い透き通った味わいに思わず喉を鳴らす。顔を洗うと一気に元気が蘇ってきた。
馬立の沢 | 二つ目の沢の向こうに水場 | 男体山がガスで覆われてきた |
水場から一登りすると唐沢小屋へ到着する。無人の避難小屋だ。小屋で一夜を過ごし、女峰山頂から日の出を拝むなんていうのも楽しそうである。いつの日か実現したいものだ。
小屋裏手から更に登って行くと、まもなくガレ場に出る。所々黄色いペンキで岩に丸印が描かれているのでこれがルートなのだが、先行者は皆無理矢理ガレの間を縫って登っている。落石を考えるとルートを行くべきなのに、気付かないのであろうか。
無人の唐沢小屋 | ガレ場登り | ガレ場上部より |
ガレ場も上の方へいくとなかなか斜度があり手強い。無事樹林帯へ吸い込まれるとその先に追悼碑(下写真中)があった。山を愛する者としてはある種のロマンを禁じ得ないのは正直なところ、やはり19歳という若さで逝ってしまったのは悲しいことである。
段々と這松が多くなり、森林限界に到達したような雰囲気で一投足(いや、気持ち的には数投足か)にてようやく山頂へ到着。途中、後続対向のハイカーはぼちぼち居たのは確かだが、思いのほか沢山の登山者で賑わう狭い山頂は込み合っていた。
期待の360度眺望は残念ながらガスに阻まれ南は全滅。かろうじて北側のみ確保されていた。西は大真名子・小真名子方面もガスの中である。
なんとか腰をかける場所を確保して、時間は早いがコンビにおにぎりを頬張った。20人近くは居たと思うがそれなりに皆静かに山頂を楽しんでいるところへ、70歳くらいの夫婦が大きな音量のラジオをかけて山頂にやってきた。
人の気配の無い山道が心細いからとか、雷鳴をいち早くキャッチするとかそいうい理由は判らないでもない。場合によってはクマ鈴だって充分迷惑たりえるのに、なぜ人が沢山いる山頂でスイッチを切らないのだろうか。貴方が聞いているそのラジオは否応無しに皆の耳にも聞こえているのですよ。
傍らで食事をしている中には、昨今高齢者主体のハイカーとしては珍しい若い男女のグループも居る。そんな中、いい年をした大人が礼儀を欠いては筋が通らないのではと思った。
ガスで景色が悪いのは自然が相手だから仕方がないが、ラジオ騒音は耐え難い。如何に秀麗な眺望があろうとも台無しである。弁当をザックにしまい込んで一足先に眼下の馬ノ背渡りへと向かうことにした。
樹林帯まであと少し | 樹林の中の追悼碑 | 山頂到着!眺望は・・・ |
北はまずまず | 帝釈山へ向かう馬ノ背渡り |
馬ノ背渡りは写真で見てのとおり、いわゆる痩せ尾根である。険所と言われてはいるが、強風があるときはともかく、慎重に通過すればどうといったことは無い。そのへんの薮山でも樹を取っ払えばこの程度の痩せ尾根はごまんとあるだろう。ただ、周りがガランとしてるので高度感があるのか、通過する人を見ていると腰が引けて停滞している人も居た。
馬ノ背からは"稜線"という言葉がよく似合う道を帝釈山へ向かって進む。所々にシャクナゲが淡い色の花を咲かせていた。盛りはすぎているものの、春の花期の山歩きに恵まれなかった自分には嬉しい彩りだ。
馬ノ背から女峰山を見上げる | 帝釈山 | 盛りは過ぎたがシャクナゲが迎えてくれた |
途中の小ピーク、専女山は全方位ガス。最後に登り返した帝釈山も遂に眺望を得ることは出来なかったが、残りの食料を口にしながら静かな山頂を愉しむことが出来た。谷から吹き上げる雲が頬をなぜると冷たくて心地よい。憎いガスも案外捨てたもんじゃないさ。
全方位ガス | 帝釈山もガスの中 | 晴れていれば太郎山方面 |
帝釈山からの下りは、地図そのまま。愚直とも言えるほど真っ直ぐな尾根を富士見峠へと降下していく。雨水でルートが削られて荒れ気味なのは男体山の志津側と同じ感じだ。景色が何も無く淡々とした感じなので、出来れば登りには使いたくないルートである。
富士見峠からは、長い長い、本当に長くて嫌になってしまう林道歩きが残っている。前回、大真名子・小真名子の帰りに洗礼を受けてはいたので先が見えていた分楽だったが、やはり疲れにムチ打つようなこの林道歩きは辛いもの。まてよ、二荒山神社からの往復なんてこんなもんじゃ無いぜ。思わずブルッ。そんな正統派ルートも体力に自信を付けて何時の日かチャレンジしてみたいものである。
駐車地に近づく頃になると、濃い霧は遂に雨粒となって地面を濡らしはじめた。汗ばんだ体に心地よい雨粒もとうとう最後は本降りだ。ゴールは目と鼻の先故カッパは面倒だ。こんな時にとザックに忍ばせておいた真っ赤なヤッケを羽織ると、モノトーンの林道に一瞬華が咲いたようだった。
ひたすら樹林の尾根筋を下る | 富士見峠へ到着 | Pへ着いたら雨がやんだ |
概略コースタイム
駐車地発(7:03)-馬立分岐(7:43)-馬立(7:55)-水場(9:10)-唐沢小屋(9:27)-
女峰山頂上着(10:12)-行動再開(10:21)-帝釈山(10:52)-行動再開(11:06)-
富士見峠(12:04)-馬立分岐(13:26)-駐車地着(14:01)
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