奥久慈男体山、外周縦走
県外遠征で茨城の名山である奥久慈男体山を登る。
紅葉の時期の山行報告を目にする度にいつか行こうと思っていたのだが、駐車地が今ひとつ分からずにいた。本腰を入れてネット情報を漁り、先日はバイクで下見も済ませてある。ようやく悩みも解消されたという訳だ。だが特に広い駐車地は無く、臨機応変に駐車地と登山コースを変更出来るほどの情報はまだ持ちあわせていない。せめて車を駐めるのに右往左往したくなかったので、まずは早立ち(と言っても6時自宅発、駐車地8時着)だ。大円地側の立派なトイレがあつらえてある駐車場は既に満車だが、少し先の駐車スペースになんとかありつくことが出来た。
今回は岩稜を直登気味に登る『健脚コース』で山頂に立ち、その後尾根を北進し月居山方面を見送り稜線伝いに白木山、高崎山へと縦走する。高崎山からは一旦車道に降りた後、持方から大円地越へ登り返して大円地登山口から登ってくる『一般コース』を下り駐車地へ戻るルートとした。
駐車地を離れ、集落の最奥地にある民家脇を伝うように進むとそこが登山口である。ここで『健脚コース』と『一般コース』に分かれる。疲れた後の岩場下りは御免蒙りたいし、まずは朝の元気なうちにこちらの登りをを片付けてしまおう。
出だしは植林帯を巻くようにして登っていくが、小尾根に突き上げ立派な道標を過ぎて暫く進むといよいよ岩場の始まりである。
左 健脚コース、直進 一般コース | 道標も立派 | 岩場区間開始 |
さほど苦もなく、またこれといって注意すべき箇所も無く中間点の展望岩へ到着した。出発時の寒さで若干着膨れ気味だったが、脱いだものをザックにしまいながら冷たいペットボトルで喉を潤す。今日の登りは随分と発汗量が多いのだが、成る程、前の晩スポーツクラブで汗を流していたせいであろうか、代謝が上がっていたのかもしれない。日頃運動不足気味の中年の体は誠に正直なものである。
展望岩より |
第一区間を終え「健脚コースも大したことないな」と高をくくっていると、山頂までの第二区間はやっぱりじわじわと効いてきた。息を整える間隔が狭まってくると先程までの鼻息も何処へやら。後続の軽快な足さばきのハイカーにたまらず道を譲る。立ち止まり汗を拭えば、水郡線を走るSLの汽笛が遠くまでよく響き渡る。何処か陽気でもあり、また、憂いをも含んだ音色にしばし耳をそばだてた。
山頂は成る程評判に違わぬ絶景なり。先ほどの展望岩からの眺望に加え、360度の景色が拡がる。見慣れた日光連山や高原山、那須の山並みも、さながらお客さまのように遥か彼方に鎮座する。眼下に拡がる茨城の山並みは馴染みも薄く名前を言い当てることは出来ないが、低山ながら何処までも山また山の続く様子は栃木のハイカーの目には新鮮に映る。
綺麗な双耳峰 | 遠く日光連山と高原山 |
まだ10時にもならないというのに次から次へと登山者が登ってくる混雑気味な山頂を後にして、月居山へと向かう稜線へ足を踏み入れた。姿は見えずとも後続のハイカーの話し声が聞こえるので、まだまだ人が沢山居そうだが、山頂の喧騒から開放されてようやく静かさが戻ってきた。
山頂より | 終始西側の眺望が良い尾根 |
おにぎりの形のような男体山を背にして進んで行くと、程よく落葉した明るく美しい尾根歩きとなる。傾斜も緩いので、進む足取りも軽やかだ。
山頂を振り返る | 黄金色に輝く尾根を進む |
月居山へ伸びる縦走路を左手に見送ると右手は白木山へ向かう迂回路分岐である。直進の尾根通しは建設中の道路で分断されている為に、迂回路が設定されたようだが、尾根が分断された箇所は一旦道路へ下って登り返せば良いという情報をネットで得ていたのでここは直進である。
成る程、歩く人が少ないせいか、若干道が薄くはなっているも道形を失う事は無い。派生尾根も無く尾根形は明瞭なので迷うことも無いだろう。一箇所だけ進路なりに進むと植林地へ突っ込んで行ってしまう所で道形が消えた。難しいのはここだけだが、少し下の方を偵察すると数十m先に目論見の尾根を見ることが出来る。此処に道標を一本立てれば初心者もOKになるのだが惜しい。
白木山迂回路を選ばず尾根を追う | 所々笹薮もあるが道形はしっかりしている | この下で一旦尾根派生を見誤る |
落葉が踏み跡を隠し、すっかり自然な感じで心地よい。そんな尾根を辿っていくと、切通しで突然行く手が分断される。問題の箇所である。突端に真新しい立派な道標があり一旦道路への下降を促しているが、フェンス沿いは荊棘の多い薮なのでちょっと躊躇される。今日は薮漕ぎヤッケも持ってきていないので服をボロボロにしたくないのだ。少し戻って見渡すと、足跡発見。ギザギザ薮が嫌いなのは皆さん同じようである。
自然な感じの尾根が心地よい | 道標は立派でも荊棘の薮はちょっと勘弁 | 本来なら向こうへ尾根が続いていた |
一旦道路に降りて登り返すと、一変して針葉樹の植林帯となる。真新しい道標を見送ると、後は山頂までなかなかの急登。立派な太いロープが延々と上の方へ続く。先ほどの迂回路と尾根通しの分岐点からここまでは、通行者は自分一人のみという閑散さなのに何故こんなに立派な整備をしているのかと少し不思議である。ただ、全般的に言えるのは、かなりこの山域の整備にお金をかけているということは感じ取れた。
歩いてきた尾根側 | その通行止め箇所から登ってきたのだが |
ロープが張られれば掴みたくなるのは人情。解ってはいたが不自然な体勢でロープ頼りに登ったので余計に体力を消耗する。ロープ無しでこなせない程の急斜面では無いので、ペースは落ちても着実に行くべきだったと反省。大汗をかきながら登り切った所が白木山の山頂である。錆びた山名板と何故か三角点石が二つ埋め込まれた山頂は、少し寂しげにひっそりと自分を迎えてくれた。期待はしていなかったが、眺望は枝越しに幾らか・・・といった感じである。
ザックを降ろし昼食の支度をしていると高崎山方面から地元の中高年グループ4名が登ってきて、彼らも食事をとりはじめた。その会話を聞くとはなしに小耳に挟む。先程自分が歩いてきた箇所の尾根派生点で道が見いだせずに何度か敗退したという話になった。
「宇都宮から来ました。茨城の山は初めてですが、今のお話の行き止まりは下巻きすると尾根が見つかります」と切り出すと、こんなマイナーな白木山に登るとはきっと地元の山好きな方なのかと先ほどから思っていたと返事がかえってきた。
成る程、男体山の賑わいを思えばここ白木山は地元ハイカーにも忘れられつつあるような寂しさが漂うが、地形図を見た時に真っ先に目に入るのが男体山から白木山~高崎山の外周尾根である。初めての奥久慈男体山ならば、どうしたってこの周回は外せないと直感的に思ってしまうのは自分だけなのだろうか。いろいろと考えると、どうやら縦横無尽に林道や道路が登山道近辺に配置あるいは工事が進行しており、ある時は先程の切通のように登山道を分断している。そんな状況を考えると、同じマイナーコースやサブルート好きでも山行に対する考え方が微妙に違っているのではないかとも考察。
高崎山に向けて下っていくと、途中に「恋人峠」なる看板がある。ハイキング中のカップルに愛を語りませんか?と書いてあるのはよいが肝心のハイカーの往来が皆無というのも逆に物悲しい(^^;
何故か立派なロープが設置の急登 | 山名板の錆が渋い | 滅多に往来が無さそうなのにちょっと浮いてる看板 |
高度を下げていくと、ぽっかりと集落の風景が広がった。すぐ下には車道が延びてきている。集落の向こうには岩の鎧を脱ぎ捨てた穏やかな表情の男体山が集落を見守るように鎮座している。大円地側から見る男体山が筋肉質な岩場に覆われているのに比べ、全く違った表情を見せているのが面白い。
すっかり冬景色の日溜まり稜線 | 里見方面 | 男体山を南西に見る集落 |
一旦道路へ降り、はす向かいの斜面を物色すると小さな標識があり、そこが高崎山への登山口であることを知る。雰囲気からしてこちらは明らかにマイナーコースだと直感。足を踏み入れると、やはり入山者は少ないがその分自然な感じがするルートに好感を感じる。白木山に輪をかけたように静かな山頂は眺望も殆ど無し。そんな高崎山からの下山は下から登ってくる登山者一名と出会う。物好きは自分一人ではないようである。
道路から高崎山へ |
高崎山登山口まで一旦下山すると、後は暫しの車道歩きとなる。集落のどこかで牛の鳴く声が実に長閑で思わず眠気を誘うほどだ。朝方の寒さも降り注ぐ陽光ですっかり暖められた里の散歩である。
ひっそりとした高崎山 | 暫くは車道歩き | 持方集落 |
持方集落より林道に入ると程なくして大円地越へ到達。林道はひと気も無く少し気味が悪かったが、大円地越からは一般コースを下山する沢山のハイカーに出会う。後は駐車地を目指して降りていくだけだが、染まりしまいの紅葉が山行の終わりのご褒美のように山を明るく照らしていた。
ガイド本には「四季を通じて何回か登って欲しい」と書いてあったが、成る程、想像以上に"いい山"だったという心持ちを胸にし、奥久慈の地を後にしたのである。
大円地越へショートカットする林道 |
下山地から見上げる男体山 |
概略コースタイム
駐車地発(08:03)-健脚コース分岐(08:14)-展望岩(08:44)-男体山(09:27)-月居山分岐(10:28)
尾根分断地点(11:00)-白木山(11:53)-昼食休憩-行動再開(12:06)-恋人峠(12:12)-
車道出会(13:11)-大円地越(13:55)-駐車地着(14:39)
GPSのログを見ると、沿面距離11.8Km、累積標高差+1,257mと、データ的には骨のあるコースであった。
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