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塩原の山達アーカイブ


2013年04月27日

持丸山リベンジならず、敗退で鶏岳

関連山行記事
  2011年11月13日 静かなる明神ヶ岳

 以前、Mixiの山行で明神ヶ岳と持丸山ダブルヘッダーに参加した時のこと。健脚メンバーで、明神ヶ岳をついていいくのが精一杯であった。昼食後に登る持丸山はペースが極端に落ちてしまい、序盤でギブアップ宣言。メンバーは自分を見捨てずに一緒に計画を中断して下山してくれた。当時も今も大変申し訳無い思いがある。

 そんな持丸山のリベンジだが、稜線に薮があるということなので登るなら新芽も少ないこの時期しかないだろうと思い立ち、GWの一本目として登ることにしたのである。

 ちょっと言い訳になるが、実はここのところ仕事が忙しくて今回の山行は準備不十分。天気予報も昨晩ちらっと見ただけで、今朝の天気図や予報を見ないで出発したのが敗因であった。

 鬼怒川温泉を過ぎた頃から北の方角の空がやけに暗い。川治温泉を走り抜ける頃には路面が濡れだし、やがて本降りになってしまった。登山口に着いてしばらく様子を見るが、思わせぶりに日が差しかけてはまた次の雨雲が通り過ぎるといった感じの繰り返しだ。約1時間ほど待機するも一向に好転の兆しは感じられない。
 「今回も縁が無かったのか」と大変残念ではあったが、雨の薮を歩くのも気乗りしないので敗退を決意。まぁ三度めに賭けようじゃないか。

 

 来た道を戻り車を走らせると、鬼怒川温泉付近から嘘のように青空が広がっている。振り返るとやはり北側は雲が厚くかかっているので、恐らく同じ状態なのだろう。いや、そう思いたいものだ。

 林道西前高原線への標識を見ると、ロートルな頭脳がほぼ反射的に反応した。「そうだ!鶏岳登ろう」と。

 林道から見る遅咲きの桜と目に染みるような青葉。これを見ただけでも随分心が軽くなる。昨日の荒天の名残で等圧線が狭くなっているせいなのだろうか。風はかなり強い。

 

 これから登る鶏岳がよく見える。相変わらずトサカのように尖った山だ。

 

 林道の空きスペースに車を停めて歩き出す。6年前、息子が進学で東京へ行く前に一緒に登った最後の山である。
 あの時は山も今ひとつ目覚めていなかったような気がするが、ひと月遅れのこの時期は緑の芽吹きが目に眩しいほどである。

 

 ちょっと勢いには欠けるが、ツツジだって健気に咲いている。地味な山にも春は確実にやってきているのだ。

 

 ちょちょいと片付けてやろうじゃないかと登り出すも、7合目のゴーロから先の急登、トサカの核心部分はやはり辛い。6年という歳月で忘れ去ってしまった辛さを一歩また一歩と噛み締めながら登っていく。

 

 頂きを雲に覆われ、ちょっとご機嫌斜めな男体山と女峰山がお出迎え。風も少し強いけれど、ぽかぽか日差しの山頂はやはり居心地が良い。

 

 のんびり山頂を楽しんだらゆっくりと下山。今日は時間が沢山あるからね。おかしいな、下りの膝が笑ってる。やはりトサカには今回もヤラレたようだ。

2013年04月13日

早春の安戸山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 塩原周辺の栃木百名山で登り残しの安戸山。眺望はほぼ無く、ネット評ではかなり地味な山であるということでなかなか足が向かなかった。植物学者でもある昭和天皇が登られたという話は有名だが、季節を合わせればきっと色んな種類の植物や花を見ることが出来るのだろう。そんな安戸山だが、いつかは登ろうという気持ちで折りにふれ地形図を眺めていた。自然と目に入るのは南東に伸びる尾根。そして主稜線突端の1055mPが気になる存在である。事実「道の駅塩原」から眺めると、山頂と並ぶその姿は双耳峰のようにも見える。ならばこの二つのピークを踏んでやろうではないかと思い立ったのである。

 今回のコースはガイド本に従い蟇沼側からのアプローチとする。蟇沼側の登山口はネットの情報でも皆さん苦労しているらしいが、お陰でいろいろな方々の情報を参考にさせていただき無事一発で到着することが出来た。民家へ入っていってしまいそうな雰囲気の林道入口を見逃すと苦戦する可能性は大である。

 かなり道幅の狭い林道に入ると直ぐ鎮守様と貯水場があり、諸情報と一致して一安心する。貯水場脇には三台分の駐車スペースがあるが、先行車一台が変な駐め方でスペースを専有しているのでパジェロミニでさえも隣に駐められない。仕方なく鎮守様の前を失礼させていただいた。

 枝打ちされた植林地は程よく光が差し込み、思った以上に明るい道が続く。鉄塔巡視路や林業作業道として整備されているので歩きやすさは遊歩道並だ。

     
道の駅塩原から安戸山    鎮守様手前のスペースを拝借    送電線巡視路でもある

 程なく堰堤から滝が落ちる沢に突き当たる。丸太造りの橋を渡り、そこを超えると今度は大きくジグザグに切られた道で植林帯を登っていく。巡視路だけあって勾配はいたって緩やかに作られている。歩くのが楽といえば楽なのだが、つい油断してオーバーペースとなり額の汗を拭うことしばし。

 後ろにもう一人ハイカーが居るのは先程から気づいていたが、ハァハァと息を弾ませながら忽然と現れたのは柴犬である。首に発信機も付いていないし、猟犬で無いことは一目瞭然である。後続の単独ハイカーが連れているのだとばかり思っていたが、立ち止まって休憩している時に話をすると、先方もこちらが連れていると思っていたそうだ。先導するように先を行ったかと思えば突然谷の方へ消えてしまったり、気がつくと後ろから現れたりと常に付かず離れずで元気に飛び回る姿に心癒されるものがある。自分の前方にも二人組の登山者がいたが、そちらにも顔を出してるようで、行ったり来たりしながらハイカーの間を渡っているようだ。麓の民家に飼われており、この山を訪れるハイカーと共に山歩きを楽しんでいるようだ。鎖に繋がれ唯一の散歩も飼い主や社会の都合に依存されなければならない街中の犬達に比べればなんと幸せな生き方。

     
沢を渡る    犬登場    案内してくれるのかな

 鉄塔への分岐を分けこの先はもはや山道と思いきや、なおも道はしっかりとしている。林道と呼ぶにはいささか道幅も狭いが、オフロードバイクなら自分程度のヘタな腕前でも充分通過出来る位なので、山歩きとしては若干面白みに欠ける感じもする。
 やがて南側に眺望が開け安戸山の全容が見えるようになり、ここからはしばらく明るい空を仰ぎながら安戸山の裾へと回りんでいく。

     
巨木と石祠    安戸山北面は積雪あり    光降り注ぐ道を進む
 
左端が1055mP右のピークが安戸山。

 突然広場が出現し、この先は四輪車でも通れそうなしっかりした林道が始まる。残念なことに、この林道の終点である塩原側は厳重にゲート封鎖されていて一般車の進入は許可されていないようだ。

 林道手前で登山道は右手へと別れる。道標に落書きされた「何もみえんよ」に思わず苦笑。

     
左は林道、登山度は右へ    道標をよく見ると・・・    下世話だが憎めない(笑)

 北斜面になるとにわかに残雪が出てくる。恐らく昨晩あたりに降った雪なのだろう。湿った重い雪は深いところで10センチ程度であろうか。特に歩くのに支障は無いが、先ほど見た安戸山の北斜面も遠目に分かるくらい雪が付いているので山頂付近の様子が楽しみである。

     
少しづつ雪が    増えてきた   

 徐々に間合いを詰めるが如くトラバースで高度を稼いで登るこのコースは、無駄な体力を消耗しないという点では秀逸である。林道を利用したコースだから当たり前と言えば当たり前だが、登山として考えるといささか面白みに欠けるのも事実。
 そんなコースも安戸山北西の主稜線に乗るとやっと山道という趣が出てくる。そして最後は雪付の急登。先行者が足を滑られせて難儀しているのを下で見た自分は軽アイゼンを装着して余裕の通過・・・と言いたい所だが、足回りはともかく、やはり急登は息が切れる。ロープを使わず頑張るも、最後は見栄を捨ててロープを一握り。登り切った次のピークが山頂であった。

 成る程、山頂は眺望も無く殺風景。「何もみえんよ」という落書きが頭をよぎって再び苦笑。しかし、本日の目標点は此処ではない。折角登り切った山頂だが、休憩さえ取らずに南東の尾根へと足を踏み出す。

 こちらのルートを辿ると道の駅しおばら(アグリパル塩原)方面へ至るようだが、あまり歩かれている雰囲気が無く、一気に静かな尾根となる。蟇沼から山頂に至る前半の作業道歩きはあまりにも人工的なルートだったが、やはり山歩きはこういった所を歩かないと落ち着かないものだ。

     
   樹間聳える1055mPが今日の目標点    静かな尾根を行く

 やがて、何も無い1055mPへ到達。ルートはこのあとストンと落ちるようにして続いているが、今日はここまでである。安戸山の山頂と同じで此処とて樹間の僅かな景色以外眺望は無いが、目論見の地点に到達出来た達成感と、想像通りの低い気温でいつものカップラーメンと食後のコーヒーが美味かったのは言うまでも無い。

 話が突然変わるが、先日、時流に乗り遅れるまじと入手したGoogleの7インチタブレット(Nexsus7)について少し書かせていただきたい。
 現在、いろいろとアプリを入れながら試行錯誤を重ねて楽しんでいるが、Anodoroid用アプリもスマホでユーザー規模が拡大して大抵のものは揃うようである。
 ちなみに自分が入手したNexsus7だが、Wifiモデルしか無く自立通信が出来ないと思われがちだ。だが、2月にSIMフリー対応機種が発売されて、各通信会社のSIMを自由に装着して通信を行うことが出来るようになった。これをBIGLOBEがDOCOMO回線の2年縛りセットで売り出したのである。機体のローン代と毎月の通信料を含めても¥2,960とスマホを導入よりかなりお得。第一スマホの画面では老眼に厳しすぎるのだ(笑)
 電話はガラケーで充分なのでタブレット機能だけあれば良いと思っていた自分だが、それでもスマホの誘惑と葛藤する日々もあっけなく終焉を迎えた。

 機体を入手すると、しばらくは便利そうなアプリを試すのに時を費やした。そんな作業も一巡して「山」関係は?とアプリ検索をすると、やはりあるのだ。山関係のものが。

 一つ目は、『山旅ロガー
 NexsusにはGPSが内蔵されてるのでこれの軌跡を取るソフト。単体では地図表示が出来ないが、ネットに繋がっている必要は無く、Wifiも通信も共にカットして更に画面を消灯してももOKなので電池の消費量が極めて少なく実用的である。恐らく日帰り山行ならば一日中電源を入れっぱなしでも問題無さそうである。採取したログはGPXファイルとして出力出来るので当然カシミール3Dで扱う事が出来る。
 これはソフトとは関係の無い話だが、Nexsus内蔵のGPSの精度はかなり高く、今回の山行軌跡もガーミンのGPSMap60Csxと比べても遜色が無い。

 二つ目は『地図ロイド
 こちらはネットに接続されていないと使えないが、なんと、うぉっちずを表示することが出来る。当然GPSで現在位置を更新したり軌跡の保存も可能である。設定でGoogle地図、Google航空写真、YAHOO地図、マピオン地図、マピオン3D地図も表示可能。Google地図を表示させるだけならNexsus7に標準でインストールされているマップソフトで充分だが、やはりカシミール3Dを使い慣れた者としてはうぉっちずが使えるのは大変嬉しい。これで、パソコンが無くても手軽に地形図を眺めながら新たなるコース模索が出来るというものだ(^^;

 そして三つ目が『Yamanavi
 地図はカシミール3Dから自分で切り出してNexsusに配置する。地図をネットからダウンロードしながら動作する訳ではないので、電波の来ない山中でも使える。カシミール3Dで扱える地図は全てそのまま使えるので年間有償契約の「山旅マップ」などもそのまま持ち出せるというのは最大のアドバンテージである。加えて、カシミール3Dで作成したウェイポイントやルートも落とせるのでナビゲーションも可能である。
 下の二枚の写真は、うぉっちずの3万5千分の一縮尺で切り出した安戸山北側エリア、そして9000分の一縮尺の安戸山からの南東尾根である。GPSMap60Csxで使っている地図が5万分の一相当なのと、画面の小ささ故に広域表示が大変見づらかったこと。そして何より10m等高線が7インチ大画面で見られるというのが実に有難い。流石にこのデカイ画面を毎回ザックから取り出して確認する訳にもいかないし、山用としてはやはり専用のGPS機に比べれば圧倒的に機能的が劣るのでNexsusだけで行動するわけにはいかない。だが、カシミールの画面そののままだから当たり前なのだが、この地図の見易さには心底脱帽だ。山の装備は軽量化が求められる筈なのに今後の山行は350gの増加は確定である。

     
何も無い1055mPへ到着    3万6千分の1縮尺で切り出した地図    こちらは9000分の1

 1055mPでゆったりとした時間を楽しんだ後は来た道を戻る。安戸山への登り返しにじんわりと汗をにじませる頃、またあの柴犬が現れた。何か言いたげなその背中を追いながら呟いた。お前ってほんとうに元気な奴だな。そして山が好きなんだね・・・と。

     
再び静かな尾根を戻る    日なたは雪も無い穏やかな笹尾根    犬が再び案内
  
   沢の脇にあった石像

概略コースタイム
駐車地発(09:53)-沢(10:03)-広場(11:06)-山頂主稜線北西肩(11:20)-
安戸山(11:39)-1055mP(11:59)-昼食休憩-行動再開(12:49)-安戸山(13:19)-
広場(13:52)-駐車地着(14:46)

2013年02月17日

今年の桝形山

   
-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
また雪の無いシーズンの牧場内は、防疫の為関係者以外の立ち入りが禁じられています。
桝形山の過去の記事
  2012年3月3日 再訪、雪の桝形山
  2011年5月4日 八方ヶ原のアカヤシオ
  2011年2月13 リベンジ、桝形山

 今年で三年目になる雪の桝形山。無雪期にリンゴさん達と一緒にアカヤシオを見に行ったのを加えると4度目である。今年は下山路に若干アレンジを加える。
 桝形山へアプローチするルートは昨今赤ペンキも多くなり秘境の趣が随分薄れた感があるが、今回の下山ルートはそんな思いを払拭するのに充分な素晴らしいフィールドであった。

 下山後の牧場内散策も昨年に引き続き敢行。今年は牧場南部にある1049.6m三角点を踏むことを目標とした。

 

 県道56号線を八方ヶ原へ向かう。県民の森分岐点あたりになっても乾燥路面が続いている。例年、此処より手前あたりから道路もまた見事な白銀の世界となっている筈なのだ。運転に気を遣わないので楽といえば楽だが、いささか拍子抜けである。やはり今年は雪が少ないのかもしれない。
 それでも高度が上がるに従い、日陰には圧雪が見られるようになる。だがそれもわずかで「山の駅たかはら」へ到着。

 先着ハイカーの車は数台だが、スノーモービルを懸架車から下ろしている人達が気になる。大抵のハイカーは大間々方面を目指すが、スノーモービルは自分が向かう北側の車道を進むので、トレース奪取のライバルとなるのだ。
 慌てて支度{ヒップソリを車中に忘れてしまった。残念無念}するもむなし。スノーモービルはエンジンをかけて走り去っていってしまった。ところが、歩き始めて僅かの所で自分のコースから外れてくれていた。ラッキーである。行く手にはシルクを敷き詰めたような雪面が待ち受けていてくれた。

     
スノーモービルに先を越されてしまった!    我がルートはOK    状態良好也
     
      展望台

 例年は電波中継所脇から更に車道を辿り下りきったあたりから山に入ったが、今回は電波中継所と道路を挟んだ反対側から赤ペンキを追って入山した。
 風が強く、桜沢側から吹く風がごうごうと唸り凄みを効かせている。沢側ギリギリのところは風に研ぎ澄まされた雪面が荒々しくも清らか。だが、ほんの僅かだけ内側を通れば、風は頭上を抜けて案外静かである。そこには表情豊かに雪に覆われた穏やかな森があった。

     
今回は電波中継所脇から道路を外れる      
     
      真新しい鹿の糞
     
      有名な目玉親父、冬バージョンは白目付き

 四回目ともなればトレースの無い雪面であろうと道に迷うことはない。だが春から秋にかけては、実り豊かなこの森は熊のパラダイスとなるらしい。従って、単独で入るのはこの時期をおいて他にはないのである。

     
      樹間に前黒山

 山頂滞留時間は風が強い為に10分程度。下山はいよいよ新ルートで山頂から東を目指す。実は夏に一度オフロードバイクで林道最深部や支線をひと通り偵察済なのでおおまかな地形と植生は頭に入っている。地形図ではヤブの記号が書かれおり、また等高線が緩いこんな所は一般的には藪が濃いと見るべきは妥当である。だが偵察で落葉樹のエリアがあることを把握していたのだ。

 どうやら思惑通りの展開となる。右手は植林地境界。こちらを縫って降りれば林道に一発で出るが雪が積もった林床は案外手こずるもの。第一、気分的によろしくない。左手は地形図の表記とおりに小籔。その下には桝形山林道の終端部分が伸びている筈。直進は、今の季節ならではの落葉の樹間歩きだ。振り向くと何も無い林間に己の歩いた跡が道を形どっているのが愉快だ。

     
山頂より東を目指す       己の歩いた跡が道となる

 目論見の箇所へ向けて、最後はいくらか斜度が加わり高度を下げる。突端は落差2mほど。尻もちで滑り降りて無事林道へ接合した。

     
林道は近い    降下開始    林道へ接合

 あとは牧場までひたすら林道歩きとなる。昨年はハンターのスノーモービルが入っていたが、今年は入った形跡がない。山中の動物の気配がさほど濃くないところを見ると、獲物が見込めないのでハンターの出入りも少ないのかな、などと考えながら歩いていると、谷から登ってきて林道をさまよう鹿の足跡が出現。

     
鹿の足跡が入り乱れる    こんな所にも目玉が    天気晴朗

 林道入口のゲートの箇所でスノーモービルがUターンした跡があった。状態を熟知した地元のハンターなら迷わず進入する筈だが、今日のドライバーはこちら方面に不慣れな者と見た。お陰で自分は静かな歩きを楽しむことが出来たので感謝ものである。

     
桝形山林道入口で引き返したスノーモービル       車道から北側風景

 車道に出て牧場を目指す途中、向こうから大量のスノーシューの団体に遭遇。その数およそ30人くらいであろうか。駐車場に戻ってわかったのだが、マイクロバスで訪れた団体さんのようだ。それにしても、牧場の北側エリアにこれだけの人が来るとは驚きだ。以前は、クロスカントリースキーやスノーシューの人を一日に数人見る程度であった。まさか桝形山に行くとは思えないが、ますますこのエリアの希少価値が失われていくような気がしていささか残念である。まぁ、フィールドは万人に等しく楽しまれるべきものだから、仕方ないということは頭では理解出来ているのだが。

 牧場内に入ると雪の少なさに唖然とする。所々枯れた草が露出している。スノーシューのクランポンがガリガリと音を立てるほど雪は薄くかつ凍結している。進むにつれ幾らか積雪量が増えたころ、景色のよい箇所にさしかかった。時々思い出したように息づく強い風が気になるが、そんな風から少しでも守られればと思い、木に寄り添うように腰を降ろして食事をすることにした。

     
   牧場内北東部は雪が少ない   

昼食休憩地より

 気温は測らなかったが、日差しが充分にあってもかなり手が冷たい。食事をする時はグローブを外しているから尚更だ。それでも食後のコーヒーとお菓子はやめられない。この雄大な景色を独り占めしてコーヒーを愉しまずしてこの場を去ることができようか。

     
      塩那の山並み

 再出発後、想定ルートだと意外に起伏がきつそうな箇所を大回りにしたり、牧場内歩きを楽しみながら行く。見通しの効かない藪の中を神経質に進まなければならないのと大違い。見たままのコース選択はおおらかで楽しい。最後の目的地、1049.6m三角点は目視だけでは場所の特定はほとんど不可能だ。GPSで方角と距離は判るものの、ピークではないので遠くから眺めてもどこが三角点だかまったく見当が付かない。
 そばまで寄って、後は手のひらにGPSを乗せたままアプローチすると雪中に測量用のポールを発見する。ポールの下に三角点がかろうじて雪面から頭を出していた。流石にこの周辺は積雪量も多く、場所によっては脛の半分くらい沈み込んだ。

     
1049.6mPを目指す    1049.6mPへ到達   

 1049.6m三角点からは、事前に設定したルートで西側に向かい山の駅に向かう。途中水の流れがある沢をまたがなければいけないところを迂回したりと、積雪期ならではの自由闊達さが楽しい。途中から牧柵の有刺鉄線沿いに赤ペンキが誘導するコースに合流するが、これがまたキツイ登りで大変だ。浮力の大きい散策用スノーシューをもってしても脛全体まで沈み込むフカフカの柔らかい雪。そして雪が無くても難儀しそうな急登。気を抜くとずり落ちてしまうので、スノーシューでキックステップしながら微動前進という珍しい体験をすることになった。

     
西へ降下    深雪急登の登り返し   

 急登箇所も2箇所通過してやっと平坦な所へ出てほっとしていると、その先は吹き溜まりでまた足が潜り込む。なかなかスパルタンなコースだなと思っていると、右手に急に広場が広がった。そう、山の駅たかはらの南側の広場に飛び出したのだ。

     
   傾斜が緩むが    結構スパルタン

 先ほどすれ違った団体さん達のはしゃいだ声が聞こえる。駐車場に並ぶ車。ロッジに出入りする人々。見渡す限りの雪原と山並み、樹の間を縫うようにして進み、最後は泳ぐようにして雪をかいくぐってきた自分は、突然文明社会にワープした原始人のような心持ちに包まれたのであった。

山の駅たかはらへ無事帰着

概略コースタイム
駐車場発(07:43)-電波中継所(08:28)-桝形山(09:22)-林道復帰(9:59)-
桝形山林道入り口(10:41)-牧場進入(10:54)-昼食地(11:13)-昼食休憩-
行動再開(11:55)-1049.6m三角点(12:23)-駐車場着(13:01)

2013年01月06日

前黒山敗退

 Mixiの山仲間、なおべぇさんが栃木百名山をコンプリートするということで、ラストを飾る前黒山を登ろうというイベントに参加することにした。

 一昨年来、スノーシューとワカンを履き比べたりして雪道での感触は掴んでいたつもりではあった。所有しているスノーシューは平地用のショボイやつなので、前黒山の想定コースを見るにとても歯が立ちそうもない。それならば、ワカン+アイゼンでどうだろう思い参加することにした。

 いざ歩き始めると妙にペースが速い。傾斜の緩い林道歩きだが、緩やかでも登りは登り。初めのうちは無理をして追いついていたが、一度呼吸が乱れだすともうペースを合わせるのが辛くなってくる。もはやワカンがどうのこうのというレベルではない。

 林道を外れて尾根に取り付く急登区間になると、いくら蹴りこんで登ろうとしてもずり落ちるばかり。ワカンの場合は新雪のほうがかえって楽に登れるものだが、先頭でラッセルするのはもっと骨が折れる。先行者のスノーシューが付けた後は若干締まり気味かつ平になっているのでどうにもワカンとの相性が悪いようである。

 このままあがきながら登っていっても、グループの下山時刻に影響してしまうと判断し途中で登頂を諦め下山した。

 山頂を踏めなかった悔しさは残るが、自分の実力を知る上で貴重な体験だったといえよう。山岳会などに入っていれば、ビギナーはこういう辛酸を舐め尽くしているだろうが、自分のような気ままな単独者にとっては良い勉強であったと思う。

2012年03月03日

再訪、雪の桝形山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
また雪の無いシーズンの牧場内は、防疫の為関係者以外の立ち入りが禁じられています。
桝形山の過去の記事
  2011年5月4日 八方ヶ原のアカヤシオ
  2011年2月13 リベンジ、桝形山

 今シーズンはスノーシューをまだ履いていないが、個人的に3月から暫くアウトドア遊びは中断せざるを得ない事情にある。だが、ぎりぎり休みを一回使える事になった。

 昨晩、宇都宮市内は冷たい雨が降ったが、メッシュ予報では山間部は降雪予報。ここのところ平野部も春の雪が降るなど確実に季節の移ろいを感じる日々である。もし予報が外れて八方ヶ原に降雨があり、雪質が落ちていたら軽く散歩に留めて帰ろうと思っていた。

 県道30号を泉交差点から離れ西に向かい、コーナーの続く山道に差し掛かる。このあたりの道路の積雪具合で八方ヶ原のコンディションが大体想像出来るのだが、今日は昨晩の雪が溶けてシャーベット状になっている。圧雪ではないのでやはり気温が高いのだろう。
 県民の森から登ってくる道と合わせると、その先から段々と路面全体が雪で覆われてくるようになった。先行した車の轍を追いながら快調に進んでいくと、見る見る間に雪の量が多くなり、ついには先行車も途中でUターンしてしまったようである。パジェロミニには嬉しいコンディションだが二駆車にはちょっとキツイ路面かもしれない。

 本日の一番タイヤ痕を付けながら山の駅たかはらへ到着。

 風が多少強く、雪の結晶が時折頬を打つ。だが、朝一で見た天気図はさほど等圧線が込んでいなかったから、そんなに悪い状況にはならないだろう。何よりも頭上には真っ青な空が広がっている。

 雪質は申し分の無いほどのとびきり特上である。出発時の予想は完全に杞憂に終わったようだ。

     
雪で垂れ下がった枝が前方を遮る    本日の一番のり    雪質抜群

 序盤は車道を使い北進する。八方ヶ原北部は車道がぐるりと整備されている。もちろんこの時期は雪に深く閉ざされているので一般車両の通過は出来ないが、趣味や狩猟の人のスノーモービルの往来が結構多い。
 時間が遅くなると、スノーモービルが通過して轍が出来てしまうと思って早く来たのだが、これが正解だった。ベルベットのように敷き積まれた雪面に足跡を刻みながら進んでいくのが楽しい。スノーシューを履いていても10センチから20センチは沈むが、林の中にある道に入りこむと更に深さが加わり、時折膝くらいまで埋まることもある。脇道に入った途端、深い雪に覆われて道自体が不鮮明となった。何処を歩いても同じなので林の中を方角を頼りに進んで行った。

     
見渡す限りの新雪    道路も途中で不明に   

 車道を離れ山の中に入った。桝形山へのルートは整備された登山道があるわけではない。去年、やはり雪の中を登った時は少し先の林道から植林帯を突っ切って最短距離で山頂を目指した。今回は去年の春にアカヤシオ目当てリンゴさんに連れて行って貰ったコースを再現することにした。

 当時のGPSログがあるので迷うことは無いが、緩斜面ではあるが微妙なアップダウンが加わると軽快なスノーシューとはいえ案外ラッセルに体力を消耗する。夏道では要領よく超えることが出来た小さな沢も、今は深く雪に閉ざされている。吹き溜まりの斜面は膝まで埋まりながらの前進となった。

     
山中もまた静寂なり      

 沢を越えるとルートは比較的明瞭になる。とは言っても足跡一つ無い緩斜面なので方角だけは失ってはいけないが、進むに従い段々と記憶に懐かしい景色が見えてくる。夏道ならさして苦労することもない傾斜だが、雪に足を取られると、そう楽には進めない。

 やがて最後の登りを詰めると、そこは山名板一枚が静かに迎える桝形山の頂きである。樹林に覆われ相変わらず眺望に乏しいその山頂からは、向こうに前黒山が大きく聳えていた。間をわかつ桜沢に吹き渡る風が、轟々と恐ろしげな音を立てているのもまた去年と同じであった。

 時間が早かったので、山頂は小休止に留め下山を開始した。往路は孤独なラッセルであったが、帰路は我が足跡が相棒である。

 このままただ往路を辿るのも勿体無いと考え、適当な所で東側にある林道「桝形山線」を目指すことにした。左手に疎林が拡がる。突破するなら此処しかないだろう。

     
三角点石は雪の下       疎林を縫い林道を目指す

 林道手前は僅かに植林帯があるが、適当に降りていったら時折腰のあたりまでも埋まりながら脱出する。去年は逆に林道側から薄手の所を選んで侵入したのだが今年は逆。もっとも僅かな距離なので雪にまみれながら行くのも爽快で楽しいものだ。

 林道に降り立つとスノーモービルの轍がある。林道の終端から戻ってきたのであろうか、間もなく後方より一台通過する。「物好きな奴が歩いているな」ときっと思った事だろう。実際、大間々方面は人気のスノーシューコースだが、桝形山を歩こうとい人は殆どいないだろう。ましてや経路にこの林道を使う人は更に少ないだろう。だが、桝形山にしてもこの林道にしても大間々方面に負けず劣らす、いや、自分的には人が多いあちらより格段に素晴らしい八方ヶ原であると思うのだが。いや、訪れる人が増えるのが嫌なのでここは敢えて声を大にするのを控えておこう(笑)。

 林道を抜ければ再び車道を使い戻ることも可能だが、今年は牧場内を歩いてみたいと考えていた。その前に、そろそろ足も疲れてきたし、先程からガス切れのような気もするので腹ごしらえとしよう。

     
桝形山林道はスノーモービルの先客あり    桝形山林道入口    八方湖に向かう車道

 牧場の傍らにビニールシートを敷いて腰かける。スノーシューを外すと一気に足が自由になって面白いくらいだ。朝方いくらか吹いていた風もどうにか収まったようだ。流れる雲が時折日差しを遮ると、さっと気温が下がる。雲が切れて暖かさが元に戻れば、これほどの雪を前にしてもどことなく春の匂いが感じられるものだ。

 食後は牧柵を超えて駐車場まで直線最短距離を目指す。道も目印も無いこんな広大な雪原はまさにGPSの面目躍如。コースポインタの指し示す方角に向けて雪の海原を踏みしめながら進んでいく。

     
食事ポイントより牧柵    あの樹の元へ、いざ行かん    広大な牧場に我がトレースのみ

 最短距離で直線というのも案外楽ではない。地図ではこれといった変化の無い地形の筈が、超えるとなるといろいろと障害もあり、急斜面の谷下りは時には迂回、また状況に応じては正面突破など。結構な汗をかく。それでも、どこまでも続く美しい雪面を進むのは感動的であり、振り向けば後方に延々と続く我が足跡もかなり非日常的な光景として思い出となった。

 冒頭にも書いたが、今年の春は訳あってアウトドアに興ずることが出来ない。だが、2月に入って雲竜渓谷、赤薙山、そして今回の桝形と季節にふさわしい雪のフィールドを堪能することが出来た。そして先週は粟野のいぶし銀のような薮山、大倉山を楽しむ事も出来た。春のアカヤシオの時期に入山出来ないのは後ろ髪を引かれる思いだが、県北の山に遅い春が訪れ、峰々にツツジが咲く頃にまた山を訪れたいと思う。

     
谷超えも雪なら何処でも通れる    風紋が美しい    延々と続く足跡
  
  

概略コースタイム

《今回は登山とは多少趣が異なるが、約7.5Kmの雪中行動であった》

山の駅たかはら発(8:06)-展望台(8:42)-車道より離れる(9:05)-桝形山(10:04)-
往路より離脱、東の疎林へ(10:34)-林道に接合(10:50)-牧場脇昼食ポイント着(11:28)-
昼食休憩-行動再開(12:09)-山の駅たかはら着(13:18)

2011年06月24日

新湯富士の山頂を探す


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今月末から秋口まで職場の休日が金曜日と日曜日入れ替えになる。休日出勤を除くと、長年暦通りに勤め人生活を刻む習慣を続けてきた者にとってはなかなか新鮮なものである。

 さぁ、栄えある?一回目の定休金曜日をどう過ごそうか、多少悩むも前夜までは特に妙案無し。

 とりあえず朝早く布団から出て予報を見ると雨は降りそうにない。ならばと思案をめぐらし、かねてより気にかけていた塩原の安戸山に向かうことにした。(情報収集不足で結局途中で断念することになったが)

 安戸山へはガイドブックに紹介されているコースではなく、塩原から八汐ダムへ向かう林道をバイクで走り、更に派生する林道を通り最短距離で山頂を踏む予定であった。

 R400より右折すると林道入り口に頑丈なゲート出現。脇のガードも鉄壁の構えで入る隙はまったく無い。途中で通行止めになっている可能性は想定の範疇。また、午後の予定もあるので仕切りなおして正規登山道を登って山頂を踏むのは次回へと見送ることとしよう。

 少しでも山の空気を感じていこうと思い、帰路は塩原の温泉街から八方ヶ原への山越えルートを取ることにした。
 新湯方面への分岐地点でふと思う。「新湯富士山」も登って居なかったなと。急遽この交差点を西へ進路変更し、まずはヨシ沼へ到着した。

 一旦バイクを降りてヨシ沼の周遊道を散策すると、ヨシ原の向こう側の新湯富士が美しい。小高い丘のようにも感じられるそのコンパクトな山姿は、肩の稜線にうまく乗れれば適当に取り付いても直登できるのではないかと感じられるほどだ。
 ヨシ沼駐車場にあるハイキングマップも見ながら検討したが、今回は予定外の山故に、GPSデータの用意も紙の地形図も持ち合わせが無い。家内への行動予定図も安戸山しか渡していないので、ここはやはり安全な正規の登山道を行くのが無難なところだろう。

 大沼方面へは、初めは四駆車でも通れそうな感じの道だが、段々荒れてくる。だが、傾斜が緩いのでオフロードバイクだとなかなか楽しいルートだ。

 荒れた区間をやり過ごすと再び穏やかになり、眼下にS字カーブが見えると、その手前が道標が設置されている富士山の登山口である。

     
安戸山へはこの時点で諦めた    ヨシ沼から新湯富士    登山口

 登山道は、新湯から富士山経由で大沼に至る自然散策路の一部として付けられており、程よく整備されている。岩がごろごろと露出した山道だが総じて苔が生えており、登りはともかく下りは足を滑らせないように気を遣わなければならないだろう。

 ジグザグに付けられた山道を登っていくとあっけなく山頂へ到着。四方を木に囲まれており眺望はまったく無い。山頂より少し手前の所に北側に面した展望地のようなところがあったが、残念なことに木が生長してしまってこちらもまた景色が得られなかった。

 さて、立派なプレートが掲げられたこの山頂。GPSを見ると三角点とは随分離れているではないか。紙にプリントした地図を持ち合わせていなかったのでGPSの小さな画面の1/5万図で判断するに、西側にある双耳ピークがどうやら山頂のようである。地図に示された登山道は実際には本来の山頂を北巻くように付けられている。更に南に目をやると、同じくらいの高さのピークも見えている。こいつは久々に薮歩きの虫が疼いてきた・・・とは言っても薮と呼ぶにはあまりにも若く背丈の低い草が若干生えているだけなので雑作もないことではあるが。

     
苔むす岩が露出する登山道    山頂は眺望まったく無し    真の山頂は何処に

 南のピークを漁ると小さな岩が積み重なったような高みに折れた測量ポールを発見した。三角点の類や境界標も見あたらなかったが、一体何の目的でこのポールを放置したのだろうか。

 更にGPSで正確に方角を出して山頂を探索。南ピークから若干トラバース気味に鞍部に一旦降りた後直登すると、山名板の類も一枚も無く石祠が一つ鎮座まします静かな三角点に到達した。周囲に新しい踏み跡は見当たらない。
 自宅に帰って1/2.5万図で改めて見直すと、この近辺は等高線には現れない高低差が顕著で、現場は思った以上に複雑な地形をしていた。人知れぬ里山の奥道を歩いていると時々そういう箇所に出くわすことがあるが、ハイキングコース以外でこの山を攻略するのはなかなか手強そうである。ヨシ沼から直登など安易な事を先ほどは考えていたが、実行していたらかなりてこずったことであろう。

     
測量ポールを発見    GPSでピークを探る    人知れず山頂あり

 森の精にでも遭遇しそうな苔とシダの支配する鬱蒼とした森。ゆったりとした時間を語るように横たわる倒木の間を縫いながら下っていくと、やがて登山道に合流した。ほんの僅かな距離ではあったが、久しぶりに味わう緊張感溢れるピークハントを振り返って喜びがこみあげてきた。

     
鬱蒼とした森を戻る       下山時に見た唯一の空

概略コースタイム
バイク駐車地発(10:33)-山名板のある山頂着(11:01)-周辺探索-三角点(11:25)-バイク駐車地着(11:55)

2011年06月05日

塩原の名峰、日留賀岳



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 塩原の名峰、日留賀岳に登ろうという企画がなおさんからあり、参加をさせていただくことにした。

 日留賀岳は登山口からの標高差が1300mにも迫ろうという健脚向けの山。  日留賀岳より北へ目をやると、鹿又岳・男鹿岳へと続く秘境ともいうべきこの稜線は県境へと繋がっていく。以前、北海道へ飛ぶ飛行機の窓からこの山塊を見下ろした時、心を奪われたものである。

 単独で行こうかと悩んだこともあるが、5合目からの富士登山に匹敵する標高差と16kmを超える移動距離、そして熊の出現率が高いという話を聞くとさすがに心細い。今回は企画にありがたく参加させていただくことにした。
 また、参加メンバーの一部で前半区間の林道をバイクでやっつけてしまおうという魅力的なオマケ付きの企画でもあった。

 約束の時間で合流し登山口の小山氏宅にメンバーの車を駐車させていただき、バイク組の我々は林道へ向けて出発。小山氏によると、途中崖崩れで道路が寸断されているということであったが、とりあえずこの目で確認するまではという気持ちで走り出す。

 ウトウ沢林道にあるゲートは手で開閉出来たのでとりあえず問題は無し。暫く走ると突然目の前に崩落現場が・・・

 こりゃ無理だね!とバイク組三人は思わず失笑。急遽Uターンとなった。

 本隊に遅れること30分あまり、急ぎ支度をして小山邸の傍らにある登山道入り口より登山開始である。

     
林道崩落現場    小山氏宅    お宅の裏手より登山道

 小山邸の裏庭のような美しい竹林を過ぎると、今度はシラン沢林道へと向かうジグザグの登り。やがて鉄塔へ到達し林道へ合流すると、東側に深い谷と向かい側のピークがはっきりと見える。本隊に無事合流して林道終点で一休みしてから登山道へ入った。緑豊かな広葉樹林が登山者に優しい。良く手入れされていている登山道は歩きやすいことこのうえも無し。

     
まずは林道へ向けて    林道の途中で貴重な眺望    緑あふれる林を行く

 比津羅山の北側をトラバースして一旦下ると、そのあと暫くは谷詰めとなる。1200mまで高度を稼いだ頃に再度トラバースして尾根に登り返す。地形図の道は比津羅山の北コルから尾根にまっすぐ引かれているが、実際の道はこのようになっていた。

 高度を稼いでいくとやがてツツジが見られるようになり、疲れた体が癒される思いだ。連続する急登にいささかうんざりする頃に傾斜が緩んでくると木の鳥居が見えた。

     
   標高が低い場所にはツツジ    木の鳥居

 日留賀岳の特徴は、その標高差ゆえに異なる植生を一度の登山で楽しめる点にある。樹木についてはまったく知識の無い自分であるが、それでも登るにつれ木々の変化を感じ取ることが出来た。花も、ツツジ・白ヤシオシャクナゲと登るに従い次々と楽しむことが出来る。
 鳥居を過ぎるるとまもなく行者ニンニクの群生地である。歩いている時にどこに行者ニンニクがあるのか皆目見当がつかなかったが、参加者のととさんに教えてもらうと、実はそこかしこに生えていることに初めて気づく。
 生でも食べられるということなので早速葉を一齧りしてみると、ニンニクとニラを混ぜたような味わいでなかなかいける。野菜や山菜好きの自分としては摘んで持ち帰る袋を持ち合わせていなかったのがまことに残念であった。

     
シロヤシオ    行者ニンニクの群生地    長楕円の葉が行者ニンニク
     
標高があがるとシャクナゲ    株によって濃淡がある    清楚に咲く山桜

 行者ニンニクの群生地を過ぎると再び稜線は上へ上へと伸びていく。植生の変化や花には随分慰められる登りだが、稜線の左右は殆ど景色が無いところがたまにきずである。

 終盤のキツイ登りに喘いでいると金属製の小さな鳥居があった。いよいよ山頂も間近かと思ったが、登りきると眼前に一層小高くそびえる山頂が姿を現した。
 いつもの登山ならなんてことはない距離感だが、今日は流石に足がなかなか前に出ない。ラストは太い根に足運びを大いに邪魔されながらも渾身の一投足で山頂へ到達!

 期待していた360度眺望はガスに深く閉ざされていたが、憧れの名峰に立つ事が出来た喜びの方が勝っていた。僅か5年程前までは、慢性の運動不足で階段の登り下りだけでも息が切れていた自分が嘘のようである。

 やがて後続グループも無事到着し、山頂には満足げなメンバーの笑顔が花咲いた。

     
金属製の鳥居、頂上近し    山頂現る    最後の登りがきつい
     
山頂    鹿又岳方面へのピーク   

概略コースタイム
登山口発(7:30)-シラン沢林道(7:53)-林道終点(8:22)-木製鳥居(10:13)-金属鳥居(11:26)-
山頂(11:52)-昼食休憩-下山開始(13:01)-木製鳥居(14:23)-林道終点(15:54)-登山口着(17:04)

2011年05月04日

八方ヶ原のアカヤシオ

 ブログ仲間のリンゴさん企画のアカヤシオの秘境ハイクに参加させていただいた。

 集合場所の山の駅たかはらに到着。雪の桝形山を訪れたのがつい昨日のようで懐かしい。

 駐車場をぐるりと見渡すとブログのプロフィール写真と雰囲気が似た方が居た。勿論顔をあわせるのは初めてだが、思いきって声を掛けるとビンゴ。ブログでのお付き合いが一年以上もあると、初めて会ったとは思えない。そんな心持ちでリンゴさんと挨拶を交わした。
 本日同行のyamasanpoさんご夫妻にもご挨拶を済ませていると、昨年末に篠井富屋連峰縦走をお付き合いいただいたQ造さんも見えて一向は出発。

 まずは、東トンボ沢へ。普通なら薮道で訪れる人もなかろうに、沢に至るルートの笹が刈り払われている。このエリアのエキスパートである『なためさん』という方が整備されているという。
 途中から尾根に突き上げると、そこは人知れず咲き誇るアカヤシオの群生地。ガスが掛かっていたのが残念であったが、仄暗い中幻想的に佇むそのさまは何処か気高さも感じられるような印象であった。

 東トンボ沢を後にして、次は桝形山へ向かう。

 前回自分が雪の中目指したルートは桝形山林道と山頂の南東の緩い尾根との最短地点からであった。はじめに植林帯を抜けなければならない事と、雪の無い今の時期は車で入れない林道歩きが長いという点がデメリットであろう。
 今回は、碁盤のように配されている南側の林道の最奥地点まで車で移動しそこから入山した。やはり刈り払いがされたルートを辿り、北北東になだらかに降りて行く。地図には無い沢を渡るとおおむね前回自分が歩いたコースと合流した。

 進んでいくと周囲の風景が鮮明な記憶で蘇ってきた。一面を雪に覆われたこの場所を、足跡一つ無い静寂なこの場所を、たった一人で一歩一歩雪を踏みしめながら歩んでいったことを。だが、今日は明るい日差しに覆われた地面が優しい。秋の忘れ物、山栗のイガに並んでひっそりと咲くカタクリも可憐だ。そして足音を並べる仲間もいる。

 桜沢の谷沿いに群生するアカヤシオもまた素晴らしく、幹に大きなコブを付けた通称「目玉おやじ」や、ブナ太郎と呼ばれている巨木もあり自然の豊かさに感動しながら山頂へ到達。

 山頂で和気藹々とお茶休憩の後に下山。それまでなかなかすっきりしなかった空の青さがやっと戻ってきた。明るい日差しを受けて花が輝きだすと、桃源郷と呼ぶにふさわしい美しさに歓声をあげる一行であった。

 下山後は山の駅たかはらで食事会。お茶休憩の時もそうだったが、参加の皆さんには大変ご馳走になり、準備不足の自分は少し恐縮してしまったが、美味しく頂かせていただいた。

 なお、今回のGPS軌跡は諸事情を勘案し掲載しないことにした。一度に大量のハイカーが入山して豊かな自然が云々・・・ということは、自分自身が道なきルートを歩く者として言うに憚れる。だが正確なGPSの軌跡をもってすればここをトレースすることは容易である。自分のように単に物好きなルートを辿るのとは違い、アカヤシオの秘境と言われればおのずと人が増えることは間違いない。刈り払いなどされながらもこのルートを愛している人達に敬意を表し、掲載しないことにしたのである。

 
東トンボ沢へ向かう一行   幻想的なアカヤシオもまた美しい

 
帰路に辿るこの笹道も、古道かもしれないらしい   桝形山に向かうと青空が戻ってきた

 
野生の証(鹿の骨?)   通称『目玉おやじ』

 
桝形山周辺は豊かな落葉樹林   ブナの巨木なども多い

 
桃源郷の撮影会は尽きない   自分的にはこれがベストショット?

2011年02月13日

リベンジ、桝形山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 前回(1月30日)、登り逃した桝形山のリベンジである。

 三連休の二日間にかけて通過した低気圧のせいで、平野部にもたっぷりと降雪があった。山間部の積雪は疑う余地も無しのパウダースノーであろう。そんな白銀の世界を求めて再び八方ヶ原へと向かった。

 前回は軽いスノーハイキングとタカをくくっていた。八方ヶ原がまさかの好コースコンディションで、スノーシューが埋まる程の深雪とは想像していなかったのだ。そんな嬉しい思い違いがあだになり、少々消化不良の感が拭えなかったのであった。

 今回はトレッキングシューズに嫌というほど防水スプレーを吹きかけ、オーバーズボンの下にスパッツ装着という体勢で望む。そしてもう一つの新兵器。スノーシューが西洋カンジキと言われるならば、元祖かんじきであるワカンを用意した。
 きつい斜面を登るならヒールリフター付きのショートめのスノーシューというのが昨今のトレンドだろう。しかし、所有の安物スノーシューは平地歩き用。要は雪遊び用である。昨年はこのスノーシューで大間々から八海山神社を往復したものだが、稜線までの急登の間はスノーシューのテールが邪魔で登り辛かった。ワカンの先行者の軽快な雰囲気の足跡を見て溜息をついたものである。

 今回のコースは緩斜面の連続故に、ワカンよりスノーシュー向きなのは言うまでも無い。だが、ワカン扱いの習熟と歩きの感覚の確認の為に帰路に頃合を見て履いてみることとする。

 八方ヶ原へ向かう道も、もうすっかりお馴染みになった。学校平が近づくにつれてどんどん圧雪となっていく。今日もゲレンデの状態は良好だろう。眩しい青空と、時折舞い降りる雪が朝の光を受けてキラキラと輝く。

 駐車場は既に数台の車があったが、皆大間々方面へ向かったようである。八方湖へ向かう林道は自分が一番乗り。スノーモービルも今日はまだ入っていないようだ。

     
バッチリ圧雪    今日は一番乗り   
     
   昨日までのトレースも新雪に覆われている    展望台周辺も足跡は無い

 晴れているせいか、気温が若干高めで汗ばむ。展望台のやぐらでインナーのフリースを一枚脱いだ。背中のワカンが出番待ちだが、まだまだお預け。

 進めば進むほど、新雪の沈み込みは深くなっていく。吹き溜まりは膝近くまで埋まるので結構なラッセルである。脇道に一本入ると、これまた裏切ることの無い無垢なパウダースノーエリアが待っている。

     
筑波山    出番待ちのニューアイテム    無垢なパウダースノ

 桝形山林道に差し掛かると、前回も撮影した「熊出没注意」の看板が雪でほぼ埋まる寸前。積雪量の多さを改めて感じさせる。まるでシルクを敷き詰めたような綺麗な雪道がどこまでも続いていく。

     
スノーシューでもここまで沈む    前回に比べて埋没寸前    眩しい新雪


 我、粛々と雪を踏みしめ向かう先に何もなし。伴侶は我が足跡のみ。そんな桝形林道を進み前回撤退を決意した地点に到達。林道を最後まで詰めて、短距離のラッセルか、あるいは此処から緩い尾根を目指して樹林に突入か。

 ここまで来るのに、緩傾斜とはいえ新雪歩きにだいぶ体が慣れてきている。靴もスパッツと防水スプレーのお陰でまったく問題は無い。地形図を見る限りは此処から登るのが絶好のポイントであろう。

 一歩踏み出し植林帯に入ると思ったほど沈み込みも無く、案外雪が締まっていて歩きやすい。なによりも緩斜面なので体力はさほど消費しないからこれならば安心だ。

     
後続は我が足跡のみ    前回の撤退地点    樹林に足を踏み込むと

 一登りするとすぐに林相が変わり広葉樹の自然林となった。一気に空が明るくなって気持ちよい。冬枯れの枝越しに、雪煙が舞う前黒山の勇姿が見える。

 高みを目指して登っていくと、地形図では判り辛いが稜線へと突き上げた。稜線上はことのほか雪が深くてラッセルも大変で難渋するが、、向かうべきルートは明瞭なので気軽である。

     
気持ちよい広葉樹林へ抜けた    登路を振り返る    行く先に道は無いがルートは明瞭

 暫くすると、まだ真新しいトレースが行く手を横切っている。先行者か?桝形林道に足跡は皆無だったから何処か他のルートがあるのだろうか?

 近づいてみると、稜線を上から降りてきた"そいつ"は直角に左折して谷に降りていった模様。足跡を観察すると、沈み込んだ足先の形が犬のような動物にも見える。ハンターの気配が無いから猟犬の可能性は無いとは思うのだが。

     
先行者か?    谷に降りていくトレース    犬の足跡なのか?

 桜沢から吹き上げる強い風の作り出す造形美。雪庇のミニチュアのようなオブジェがあった。角度を変えてみるとディシャで掬ったアイスクリームのような感じもして面白い。人知れず山中にて繰り広げられる自然の美しさに改めて感動。周囲には先ほどの足跡よりもっと新しい、蹄の形がくっきりした足跡があった。形が崩れていないことから、ほんの直前に付けられたような雰囲気である。 

     
雪庇のミニチュア    真新しい蹄の足跡    前黒山が大きい

 斜度が緩いうえに夏道は雪に覆い尽くされている。どこをどう歩くかは自分一人が決めることである。進路を間違える訳にはいかないが、ラッセルさえ厭わなければどこでも通過可能なのは、薮漕ぎの辛さを多少なりとも知る者にとってはありがたいことである。
 そろそろ山頂という頃になってくると、樹の枝の高い所に括り付けられている青や赤のリボンが見られるようになり、これを追っていく。

 登り詰めた所が桝形山の山頂である。三角点の存在を示す標柱のてっぺんが少しだけ雪から顔を覗かせていた。先ほどまで吹いていた風が運よく収まってくると、静寂が支配する山頂は、抜けるような青空とキラキラと光り輝く雪の結晶に包まれる。ザックを降ろしいつものように湯を沸かし、食後の熱いコーヒーまでの至福の時間だ。

 食事の間穏やかだった風が再び吹き出してきた。木々を揺らしてごうごうと凄みがある。気温も急に下がってくる。束の間の自然の配慮に感謝しつつ山頂を辞することにした。

 さて、帰りはワカンの履き心地を検証することにしよう。

     
雪に覆われた桝形山三角点       スノーシューからワカンに選手交代

 浮力だけならば、やはりスノーシューに比べると劣るが、それは構造上致し方のないことである。取り回しのしやすさや急斜面での足裁きは思ったとおりワカンのほうに断然軍配が上がる。沈むといっても許容できないレベルではないので、アイゼンの同時装着も考えるならやはり登山はワカンだろうという結論に自分の中では落ち着いた。

 帰路の林道でスノーモービルのキャタピラ痕を歩いて感じたが、スノーシューではこのキャタピラ痕が足幅に合わずに思いのほか歩き辛かったが、ワカンでは快適であった。極端に雪面が硬くなっている箇所は、ワカンの2枚の大きな爪が食い込まずにかえって歩き辛いという側面もあったが、そんなに硬いところは八方ヶ原には殆ど無いし、そういった所はむしろアイゼン単体装着になるだろう。

     
自分のトレースを忠実に辿る       ワカンは深雪だとこんなに沈む

 八方湖の手前から車道に出ると傍らに牧場へ向かうトレースが見られた。このまま車道を行くのもつまらないのでトレースを追ってみることにした。車道から大きく外さなければ駐車場への復帰も難しくはないだろう。

     
クラストした所はスノーシューより楽    柵を越えるトレースを追う   
     
   牧場内の風景   

 トレースは、時折牧柵を越えながらも続いていく。夏場なら放牧地は立ち入れないので、雪のある時ならではのコースであろう。

 やがてハイキングコースと合流する。ここから先は前回も歩いているが、「冒険コース」方面は誰も歩いていない。朝からずっと新雪にトレースを付け続けてきたが、風紋で美しい雪原を惜しげもなく踏みしめて進んでいくのもまた楽し。雪三昧の八方ヶ原スノーハイクであった。

     
時折柵を跨ぐ       『冒険コース』はトレース無し
           
     

概略コースタイム
駐車場発(9:10)-展望台(9:48)-桝形林道入口(10:23)-林道より樹林へ(10:42)-
広葉林帯へ(10:50)-桝形山頂上着(11:28)-昼食休憩-下山開始(12:13)-
桝形山林道へ復帰(12:49)-牧場へ入る(13:29)-ハイキングコースに合流(14:00)-
冒険コース分岐(14:17)-駐車場着(14:35)

2010年10月16日

大間々より西平岳


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 一週間も経たない内に山に行けるのもなかなか贅沢なことであはあるが、紅葉を逃したくないという思いから何処に行こうかと思案した。日光の太郎山と白根山はまだ登ってないので丁度紅葉と合わせたいところだが、この時期大渋滞必至のいろは坂超えはどうも気乗りしない。

 そうだ!高原山へ行こう! とひらめく。
 那須の時同様、リンゴさんの情報がヒントになったのは言うまでも無い。

 宇都宮から県道63を北上。玉生から更に県民の森へ。クネクネ道を快適に走るが、いつ走ってもこの道は通行量が少なくて快適だ。やがて快晴の大間々駐車場に着くと既に10数台の車が停まっていたが、那須のような狂気的な込み具合とは別世界である。

 支度を終えて、ザクザクと砂利の道を歩き出した。今日の予定は見晴らしコースで釈迦ヶ岳まで、更に足を伸ばし中岳、西平岳をピストンし、時間と体力にお釣りがあれば鶏頂山も廻ってしまうという欲張りなものである。

     
快晴の大間々駐車場    駐車場より大入道方面   

 登山口から展望の良い尾根にを伝う「青空コース」を登るのは今回で三回目になるが、一度目は三年前の六月で、八海山神社に至るのも結構疲労困憊。あの時は釈迦ヶ岳の下山に大入道経由で小間々に降りたのだから今考えてみると体力的に無謀だったとも言える。
 二度目は今冬、スノーシューで八海山神社を目指した時。慣れていなかったせいか、雪道が相手となるとやはり通常の倍近く疲労するような気がした。
 そして今回の三回目は、あっけないほどたやすく取り掛かりの区間を登ることが出来た。自分のようなビギナーにとっては、時間をおいて同じコースを歩くのは脚力の向上が実感出来て大変嬉しいものである。

 稜線の木々は既に落葉してしまっていて、もはや初冬の趣である。それでも所々にまだ赤い葉を付けた木々が山肌に遠く見えて地味ながら秋の美しさを精一杯見せてくれているようでもある。

     
稜線は既に落葉    正面、鶏岳   
     
八海山神社より       樹間より明神岳方面

 景色の無い剣が峰はパスして、尾根を乗り換えるような感じで釈迦ヶ岳方面へと廻り込んでいく。途中の痩せ尾根通過も、三年前は多少腰が引けていたような記憶があるが、今ではすっかり落ち着いて通過出来るようになった。
 山頂直下の標高差約200mくらいの急登は流石に今回も息が切れるが、それでも以前のボロボロになりながら登っていた自分が懐かしい程だ。

 登山道で後続者先行者は数人しか見なかったが、流石人気の山だけに山頂には既に数十人の登山者が休憩中である。自分にとって今回釈迦ヶ岳は通過点なので先を急いだ。

     
落葉    笹道を登る    釈迦ヶ岳より鶏頂山

 釈迦ヶ岳山頂より笹の間を南西に抜けると眼下に続く急降下とその向こうの中岳、そして厳しい下りの途中から北側に見えるどっしりとした鶏頂山に目を奪われる。大間々からだけではなく、旧鶏頂山スキー場からも釈迦ヶ岳に登ったことがあるが、今まで歩いた箇所と雰囲気がかなり異なる。いわば奥座敷のような趣きが自分は一発で気に入った。

 ジェットコースターのように鞍部まで一気に降りると、今度は岩交じりの中岳へよじ登っていく感じ。トラロープが何箇所か下がっているも岩の間を縫うようなルートなので骨が折れる。だがなかなか荒々しくて変化があってよろしい。

 そろそろ上が見えてきたかなと思ったら、何も眺望の無い中岳山頂。山名板のみの静かな山頂である。

     
中岳への下りから鶏頂山    中岳   

 中岳から西平岳に向かう下りもまた荒々しい。コースも不明瞭な上深く堆積した落ち葉が先行者の足跡をかき消す。というよりも、釈迦ヶ岳より先行者後続者はまったく無し。実に静かな行程である。

 時々樹にくくり付けられた赤リボンやコースの足元に半分朽ちかけている道標を見ると心強くなる。もっとも、この区間は足跡が薄いであろうことは事前に予見出来ていた。先日失態の那須のように観光客然としてではなく、藪山歩きと同じくらいの警戒レベルで行動しているので心の迷いは無い。

 間もなく西平岳山頂手前のザレ場に到着。単独の登山者が一名、岩に腰掛けて眼前の雄大な鶏頂山に向かって食事中であった。あまりにも深山故に心細くて鳴らしていた熊鈴のネジを慌てて緩めて音を消した。喧しい鈴の音は、一人静かに雄大な景色を楽しんでいた彼にとってきっと迷惑であったろう。

     
   中岳を振り返る    西平岳山頂直下のザレ場

 西平岳の山頂はこのザレ場のほんの少し先にある。先ほどから南からガスが上がり始めていて山頂はまったく視界が利かなくなっている。写真を一枚撮ってすぐ先ほどのザレ場に戻って自分も食事にすることにした。
 食事を終えたら鶏頂山の写真を撮ろうと思っていたが、ガスが見る見る昇ってきて撮影する頃には大分鶏頂山の光が失われしまったのが残念である。

 先客の登山者が腰をあげて釈迦ヶ岳方面へ向かうと今度は自分一人の番になった。こうして目の前の大きな鶏頂山と谷一つを挟んで向き合っていると実に雄大な気持ちになってくる。時折谷のどこかから鹿の甲高い鳴き声が聞こえてくる。ガスの動きが早くて山肌に射す光の去就が忙しい。まるで大自然の寸劇を見ているようである。

     
      ザレ場より鶏頂山

 すっかり体も冷えてしまったので撤収することとしよう。

 帰路もまた原始の山道のような中岳を超えて一旦下がりきると釈迦ヶ岳への突き上げるような登り返しが待っている。流石に一気には登れず、少し登っては一息ついての繰り返し。

     
   釈迦ヶ岳への登り返し    登りこたえあり

 釈迦ヶ岳山頂に着くと、もはやガスが掛かっていてほとんど眺望は無い。それでも時折南の景色が切れることがあり、これを楽しみながらおやつを頬張り第二の休憩。後はひたすら往路を帰るのみ。朝はあんなに天気が良かったのに、ガスというより低い雲に覆われ出した山道は急に薄暗くなってきた。

     
   鹿の食害    岐路に見る矢板市最高点方面

 八海山神社に立つと風が冷い。秋というよりどことなく寂寞感を含んだ初冬の雰囲気が漂っている。真冬にスノーシューで此処まで登ってきた事がふと思い出される。

 帰路は林間コースを抜けて行った。驚くほど至近に、また遠く離れた箇所で鹿の鳴く声が林間に鋭く響く。鈴を鳴らしながら闖入する者に警告を発しているのであろうか。ここはオレ達の縄張りだぞ・・・と。

           
鹿の鳴き声が始終聞こえた     

概略コースタイム
駐車場発(8:25)-八海山神社(9:25)-剣ヶ峰分岐(9:50)-釈迦ヶ岳(10:57)-中岳(11:25)-西平岳(11:44)-
ザレ場(11:46)-昼食休憩-再出発(12:08)-中岳(12:33)-釈迦ヶ岳(13:02)若干休憩後-
八海山神社(14:50)-駐車場着(15:59)


2010年02月14日

雪の八海山神社


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 先週も同じパターンで週末に降雪があったが今年は実に良く降る年だ。降らない年はまったくないこともあるのに。
まぁドカ雪にならないので生活上は助かってはいるのだが。

 さて、先週マイスノーシューを購入後初のフィールドデビューと意気込んで出掛けたのは良かったが、あまりにもの強風で車で目的地に近づくことさえ叶わなかった八方ヶ原。土曜日までは平野部でもぐずぐずと雪がちらついていた栃木県だが、日曜日は絶好の雪遊び日和となった。風ナシ雲ナシ。先週を我慢したご褒美のようである。

 先週同様、県民の森突破は道路状況に不安があるので、矢板から県道を西走。先日豪雪地吹雪だった地帯は嘘のように無雪で穏やか。だが、山間部に差し掛かってくると段々雪の厚みが増してきてやがて圧雪状態になる。先週同様、直結四駆のパジェロミニが大活躍である。

 山の駅たかはらに着くと既に10台以上の車が駐まっている。さすがは人気エリアだ。

 初めておろすスノーシューに足を通していざ出発。まずは車道を塩原方面へ200m程移動。そこが今回の取り付き地(道標2)になる。

 トレースはばっちりなので道に迷う可能性はほぼゼロ。というよりもトレースを追う以外為す術が無しといったほうが正解か。一応GPSにポイントの仕込みはしてきてあるのでどこでも勝手に歩くことは可能なのだが、初めての雪道なので表面から判断できない危険など察知する能力も自分には無い。したがって手堅くトレースを追うのみである。何の跡もついていない無垢な雪面に踏み出すのを躊躇するのは、神々しいほどに美しい雪のせいであろう。

 初めの僅かな区間は比較的急な登りになる。先日奥日光でスノーシューを体験済みとはいえ、本格的に登るのは今回が初めてである。足捌きはまぁ問題無いとしても、やはり夏道を歩くのと比べると時間も体力も消費量が多めである。

     
ここから入山、道標2    はじめはこんな感じ   

 斜度が緩み平坦路を行くと小間々から大間々へ向かう夏道の散策路に合流する。まさに"スノーシューハイク"といった風情で鼻歌交じりだ。途中で4人組パーティを追い越し、大間々駐車場の手前あたりからは本日の初足跡になり益々気分上々。春を待ち望むツツジの枝の間を縫いながら進んでいく。

     
      途中から本日の初足跡になる

 大間々駐車場へ到着。夏であれば観光客や登山者の車で賑わうこの場所も、学校平でゲート閉鎖されているのでまったく閑散としている。スノーモービルの走った跡ばかりが目立つ。所々風紋状にアイスバーンになっているが此処は相当風が強いのだろう。
 左手に目をやると釈迦ヶ岳、そして塩那の山々が拡がる大パノラマである。

 一体外気温は何度なのだろうか。ドリンクカバーに入れているのに買ったときより冷たくなっているお茶で喉を潤して再出発する。夏の様子が到底想像できないような圧雪路の林道を釈迦ヶ岳登山口へと進む。

     
大間々Pよりパノラマ      

 さぁいよいよ登山道である。学校平から目的地の八海山神社までのほぼ半分の標高まで登ってきているが、ここまでは散策路。ここからが登山道となる。褌を締めてではないが、気合いを入れて登ることにした。

 斜度がきついぶん散歩用のテールが長いスノーシューはやはり歩きにくい気がする。トレースの先行者も初めのうちはアイゼン装着だが、何箇所か踏み抜いた後にワカン(輪のかんじき)に切り替えたようである。更に高度を上げていくと今度はスノーシューの跡になった。両方持ってきたのだろうか。謎は後刻解き明かされる。

 今回スノーシューで実際に歩いてみた感想としては、やはり斜度がきつい箇所は前後長が短いワカンの方が有利のように思えた。カカトが自由で無い点がワカンのデメリットなので履いて歩いてみないと本当のところは判らないが。
 それから、自分が今回買ったスノーシューは登山用ではないモデルなので浮力重視でカカトの後ろが長い。これが斜度の急な登り下りだとネックになるのである。かなり深い新雪ならともかく、有る程度硬い雪ならあまり浮力も必要ないような気がするのである。こういったことを考えるとやはり登山用のモデルのほうがオススメかもしれない。
 余計な浮力よりも取り回しを重視したテール長。登り斜面でカカトを上げることが出来るヒールリフターの存在。だが、数万円という値段を考えるとワカンも捨てがたいような気がする。

     
ここからいよいよ山道へ       樹氷が美しい!

 樹林の中をアルバイトよろしく、時には逆ハの字の足で汗を掻きながら稜線へ到着すると、眩しいばかりの雪面の耀きが待ち受けていた。

 夏道なら尾根とはいっても道の左右には幾ばくかの木なりなんなりがあるものだが、こんもりと円く湾曲した真ん中にあるトレースを追っていく。トレースを外して谷側に寄ったらそのまま下まで真っ逆さまか。ふと向こう側に目をやると雪庇があり、その上に楽しげな小動物の足跡が見えている。

 初め痩せていた稜線も、やがて幅が広くなってくる頃には正面の釈迦ヶ岳が大きく見えるようになってきた。南に見える筈の塩谷町方面はガスが掛かっていて何も見えない。

     
樹林を登り詰め稜線へ    釈迦ヶ岳が見えてきた    南からガスが登ってくる

 途中で下ってくる一行とすれ違う。60過ぎくらいの男女だが、皆見るからに足がしっかりしている。挨拶を交わしながら足元を観察すると全員ワカンである。そして最後尾にスノーシューが一名。登りの足跡の謎が解けた。初めツボ足だった面々はやがてワカン、そして最後尾の人がついにスノーシューを履いたのだろう。

八海山神社から南に弓なりになっている稜線は、後半になると北側の眺望に恵まれるようになる。那須野ヶ原をしっかり見届け、雪の上に岩が所々露出する箇所にさしかかるとスノーシューは少々邪魔になってくる。なんとか我慢して進んでいくとようやく八海山神社小洞のある標高1539m地点へ到着である。


     
北側眺望    那須野ヶ原    八海山神社直下

 見れば剣が峰方面へ向けてトレースはまだまだ続く。だが今日はここまでとしよう。下りもあるし体力配分がまだ見えていないから。

 今回初装備(という程のものでは無いが)のレジャーシートを雪の上に敷きスノーシューを脱いで腰を降ろす。釈迦ヶ岳を眺めながらランチを済ませてコーヒーが終わる頃には、塩谷方面から登ってきたガスであっという間にホワイトアウト。急激に気温が下がってきたので早々に片付けをして八海山神社の小洞を辞すことにした。

     
先にトレースは続くが自分はここまで    雪上ランチ    ガスってきた八海山神社を辞す

 林間コースは途中迷いやすいというのをネットで読んだことがあったので敢えて登りには使わなかったが、先ほど山頂から先発したグループも林間コースを使って降りていった。様子を伺うとトレースは充分にあるので、自分もこちらを降りることにした。

 ガスが通過したようで途中で空が明るくなってきた。恐らく尾根からは南側にひらけた眺望が見えるのだろう。だがこちらのコースも捨てたもんじゃない。かなりゆったりとした平均斜度と明らかに豊富な雪の量。危険の無い範囲で少しトレースを外しながら新雪を楽しむことが出来た。

     
林間コースは雪深い       トレースを付けながら

 帰路は大間々から小間々そして直接学校平へ抜ける夏道をそのままトレース。後半は靴ズレに若干悩まされる。
 というのも、スノーシューで長時間靴を振り回され、急な登りや下りは通常ならあり得ない角度に足を置いたりするのでこれが以外な箇所を擦りつけて靴ずれとなったようである。

 今回は、曇止めを持って行かなかったゴーグルが全く使いものにならなかった事や、やはりスキーウェアでは無く山用ウェア(シェル)が欲しかった点、ワカンも意外に検討の価値有りなどなど。いろいろと課題の残る山行ではあったが、初めての雪山(とは言えないが自分的には充分)は満足のいく内容となった。今シーズン中に奥日光でもう一度ガッツリと歩いてみたいところである。

     
学校平へ帰着    帰路に寄った県民の森方面    バイクの快走路も春まだ遠し

概略コースタイム
山の駅たかはら発(9:21)-取り付き点:道標2(9:28)-夏道合流:道標4(10:03)-大間々駐車場(10:36)-
見晴らしコース登山口(10:52)-主稜線(11:19)-八海山神社着(11:52)-昼食休憩-再出発(12:24)-
大間々との分岐点:道標5(13:21)-往路と合流(13:35)-道標8(14:04)-山の駅たかはら着(14:23)

2009年11月03日

冠雪の弥太郎山を歩く


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 日光の高山以来一緒に歩いていないH君だが、実は単独で古賀志山「自主練」を敢行し、そろそろ一緒に歩けそうだという事だ。そこで何処か手軽な所はと探していた。歩きやすい所、標高差があまりない所、塩原の若見山弥太郎山が頭に浮かんだ。若見山は一度訪れているので、今回は弥太郎山をチョイス。塩原から大きく蛇行しながら伸びていく塩那スカイラインをアプローチに使うのも前から興味があったので楽しみな山行となりそうだ。

 前日に寒気が流れ込んで大荒れの天気であったが、朝になると平野部は天気が良い。県北のほうは降雪が午前中一杯続くと予報されていたので少し心配だったが、車窓から真っ白に冠雪した日光連山が見えると、本当に雪が降ったのだなと実感。今年は紅葉も冠雪も実に早い。

 国道400号に入り塩原の温泉街を抜けた。此処までは近くの山肌にも明るい陽差しが照りつけ長閑な山行が予感されたが、塩那スカイラインのつづら折れから上を見ると標高の高い部分には幾らか雪雲のようなものが掛かっている。

 塩那スカイラインは絶景ロードで意外や穴場。途中の好眺望ポイントから撮影したのが下の2枚だが、紅葉と冠雪という貴重な画をカメラに収めることができた。

 雪なのかふっかけ(栃木方言で風花のこと)なのか、ちらちらと白いものが舞う土平駐車場に着く。身支度を調え駐車場奥の鉄塔巡視路へ入った。

     
紅葉と冠雪    塩那スカイライン    土平駐車場

 まだ誰も足を踏み入れてないまったくのバージンスノー。針葉樹の葉が雪の中に何層にも閉じこめられているのが美しい。そっと添えられたように顔を覗かせている赤い葉が雪に映える。踏み出すのに躊躇するような大自然の贈り物の中を進んで行った。

 新雪なれど深さはさほどでは無く、靴がすっぽり埋まることはない。それに超とびっきりに整備された巡視路が雪の歩行を助けてくれる。荒れた登山道なら途中で断念しただろうに、歩くのが実に楽しい。

     
新雪を行く      

 ジグザグに付いた道を暫く登ると9号鉄塔に向かう道と巻道とに別れるが、この山は鉄塔が半分は主役のようなものなので、各鉄塔を順番に丁寧に廻っていこう。

 9号鉄塔へ到着すると威風堂々の高原山山塊に圧倒される。北の空は重く、日本海側からの湿った冷たい空気が少しづつ太平洋側に流れ出している様子が見て取れるようだ。今まさにその最先端にいるような感覚。時折強い風が吹くと雪の粒が顔にあたって痛い。そして晴れ渡った東側の平野の風景。実に対比的で面白いものだ。

 9号鉄塔のピークを後にして先ほどの巻道に合流すると暫くは高低差が殆ど無い尾根道となる。正確には尾根を一つ外したトラバース道なのだが、巡視路は流石効率的な無駄の無いコース取りである。

 茂みから飛び出して巡視路を元気よく横切っていった足跡を見つけると、足跡の持ち主を想像するのもまた楽しい。小さい足跡大きい足跡、それからとても大きな足跡・・・? 谷から這い上がってまた脇の斜面に登って行っている。この足の大きさの動物といえば・・・(^^;
 普段中々見ることが出来ない山の住人達の姿を垣間見たような気がする。
 (このあとクマ鈴じゃんじゃん鳴らして、帰路はホイッスルも鳴らしながら下山す)

 途中8号鉄塔への分岐を折れ寄り道だ。

 8号鉄塔からは、先ほどの9号鉄塔が見えるが僅かな時間なのに随分遠くまで歩いてきたのだなと錯覚する。直線にしてしまえば僅か600m程度なのだが。

     
9号鉄塔より高原山    8号鉄塔分岐    8号より9号鉄塔を望む

 8号鉄塔よりは再びジグザグの登りに転じる。初めの登りより幾らか急な感じもするが、いずれにせよコースは良く整備されているので不安感は全く無い。折からの強い風で、表面が磨き込まれた輝く雪面に踏み込む足元が心地良い。

 登り切ると7号鉄塔の元へと辿り着く。鉄塔奥には小ピークがあるが、ちょっと見たところ登路は見あたらない。僅かの距離なので適当に薮を踏みしめ登ってみたが景色はあまり良くない。高原山が枝の向こうに見える。

     
7号鉄塔より山頂    7号鉄塔より8号方面    7号鉄塔奥ピークより高原山

 7号鉄塔下の鞍部からは最後の登りだ。笹藪登りとガイドブックに書いてあった。雪に覆われていてどう登ったらよいものかと一瞬思案するも、笹の丈が低い箇所を選んで進むとどうやら正解のようである。

 三等三角点のある山頂は樹に覆われていて眺望はほとんど無い。南東側に平野部が一部望めるが、それよりも枝に張り付いた雪が樹氷のようで綺麗だ。昨晩は余程風が強かったのだろう。

     
雪の笹原を最後の登り    弥太郎山頂上    東側平野部

 一旦7号鉄塔まで降り、鉄塔の土手脇で北風を避けて昼食とした。どの位の気温なのだろうか。ストーブの火力がなかなか強くならずにお湯が沸くのに随分時間が掛かったが、こんな寒い所で食べるカップラーメンは格別のご馳走である。

 帰りの巡視路は気温も幾ら上がっていたせいか所々地面が顔を覗かせていて穏やかな表情に変わっていた。今日の弥太郎山で我々以外の唯一のハイカーは後続で歩いていた家族連れの3人のみ。我々が食事中に既に下山している。5人分の往復の足跡で雪が剥がれる程の軽い積雪ではあったが、季節外れの美しい弥太郎山を体験できたのもまたこの5人だけであった。

     
帰りの巡視道の様子       ひなたはもう雪が無い

     
塩那スカイラインよりパノラマ      

概略コースタイム
駐車場発(10:22)-9号鉄塔(10:51)-8号鉄塔(11:12)-7号鉄塔(11:45)-
山頂(11:50)-7号鉄塔脇(11:59)-昼食休憩-再出発(12:45)-8号鉄塔脇(13:07)-
登山口寄り9号鉄塔分岐(13:24)-駐車場着(13:42)

2008年10月25日

紅葉間に合わず!ガスの高原山を歩く

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 どうも読みが甘いというか運が悪いというか、はたまたよほど日頃の行いが悪いのか。

 鬼怒川温泉へ向けて車を走らせていた頃は、遠目にも赤みかかった高原山の姿がくっきりと見えて「これは久々にナイスな」山行と思っていた。ところがどっこい。いざ入山してみると・・・

 

 廃業してしまったスキー場のどーんと広い駐車場の端に数台車が止まっている。寄り添うようにしてH君の車も列に加わった。人の気配は無いので皆さん既に出立済みである。

 支度を調え、「登頂口」と朱く書かれた看板の横を通ってゲレンデ跡に出ると、ススキの間に「道」がある。まずは此処を歩いて行けば良いのだろう。林間コースだったのだろうか、初心者スキーヤーにとっては丁度良い塩梅の斜度の所を登っていく。直線的だったルートが少し迂回気味になると枯木沼へ到着だ。木道を渡り再びゲレンデへと合流し、やがてゲレンデ最高標高点へと到達する。

     
登山口    枯木沼の木道    ゲレンデ最高点

 ゲレンデ最高地点からは幾らか山道然としてくる。昨晩の雨で沼地からかなり水が溢れているようで、大沼へ分ける手前では数カ所道が川のようになっていた。向こうからやってくる若い夫婦連れが長靴を履いていた。きっとこの状況を把握して大沼に何かを観察にでも行ったのか、常連さんなのだろう。

 鬱蒼とした苔むす道もまだ傾斜は緩い。程なく、にぎにぎしく石祠や碑版が立ち並ぶ弁天沼へ到着。すっかり白く晒された鳥居の向こうに目指す鶏頂山の姿が見える。鐘をつき無事を祈りいざ登らん。

     
大沼への分岐    いよいよ山道だがまだ平坦    弁天沼で鐘をつくH君

 弁天沼まではアプローチ、ここからがまさに登りである。岩混じりだがしっかりとあつらえた感じのする山道は、修験者の山、栃木の三峰山のようである。

 とうとう苦しくなってきた頃に、山頂からの肩尾根に乗る。それまで、上の方だけ見えていた空だったが、尾根に上がって見ると向かう山頂にはしっかりガスが掛かっているのが見えていささか気落ちする。

 山頂に着いてみると、状況は予想していた通り。

 晴れていれば間近の釈迦ヶ岳を初め南側に絶景が拡がっているだろうに、ガス以外のなにものもなし。ごくたまにガスの切れ目から間近な景色が見えるのがせめてものお慰み。

 まぁ山頂は山頂だからという事で昼飯とすることにした。

     
これより聖域    笹の道を最後の登り    鶏頂山頂上

 弁天沼からは結構急登だったが、距離がさほどでなかったので案外疲労感は少ない。状況によってはこれで下山という心づもりもあったが、時間も早いので釈迦ヶ岳往復をする事にした。

 そういえば今日の目当ての紅葉だが、どうやら日塩もみじラインの標高1000m~1300m付近が綺麗に色づいており、そこから上はとうに葉を落としてしまっているようである。

 ガスに包まれた幻想的な尾根道を向かう。一旦高度を下げた後、一つめの登り返しと釈迦ヶ岳の肩尾根に乗る直前の急登には苦戦する。先ほど別な地点で会ったトレイルランの若者が後ろから急登区間を追い抜いていく。両手を地面に付けて、まるで獣のような身軽さであっという間に登り去っていってしまった。あのパワーの微塵でもよいから分けて欲しいとしみじみ思うのであった。

     
染まり遅れ?    霧深き尾根    大間々からの分岐

 釈迦ヶ岳に着けばこれまたホワイトアウトの世界。一応此処まで来たのだからと、南に面した笹原に腰を下ろして休憩する。だがガスばかり眺めていてもしょうがないので早々に退散だ。以前登頂したときの絶景が嘘のような有様である。

 ピストンで尾根を戻るが、途中の明神岳に向かう分岐は、山奥深く吸い込まれていくような独特な雰囲気がある。日塩もみじラインから明神岳へは、ゴンドラで容易にアクセス出来るので、これを利用したコースで一度歩いてみたいものである。

 往路の分岐の手前にもう一本弁天沼へ下る道があるので、帰りはこちらを通る事にした。初めのうちは土が露出しており折からの雨水でぬかるんでいて滑りやすく気を使ったが、すぐ岩が出てきて歩きやすくなった。道を塞ぐ倒木も苔むして山の重々しさが感じられる。ガスも益々濃くなり、見通しの悪い笹の辻の向こうに熊が居るのではなどという妄想を抱き出すと心細くなって仕方がない。一旦音を止めた鈴をまた鳴らしながら歩き始めた。やがて登りの分岐点である弁天沼へと到着だ。

     
釈迦ヶ岳    明神岳へ分ける道    倒木も年期が入っている

 無事を祈願した鐘を再び鳴らして、あとはゲレンデをのんびりと下るだけである。
 かつて沢山のスキーヤーで賑わったであろう光景を思い浮かべ、今は静かな斜面をテクテクと降りる。

 笹だけが青い高原山の懐は、すっかり冬支度を迎えてしっまたようである。

     
かつてのゲレンデを彷彿させる風景      

概略コースタイム
駐車場発(9:34)-枯木沼(10:02)-ゲレンデ最高地点(10:22)-弁天沼(10:46)-
肩尾根(11:12)-山頂着(11:33)-昼食休憩-山頂発(12:09)-釈迦ヶ岳(13:28)-
弁天沼への分岐(14:26)-弁天沼(14:48)-駐車場着(15:42)

2008年06月08日

バイク仲間と若見山へ

 「若見山へ登りませんか?」と誘いがあった。

 どうひいき目に見ても体力が劣る自分が一緒に歩くのはかなり迷惑なのではと思い、以前から同様の誘いになかなか応じる事が出来なかったが、大勢で登る楽しさも味わってみたくなり思い切って同行を申し出た。

 参加者は基本的に皆バイク乗りであり、殆どの方と実際にツーリングでも一緒している。今回は日頃オフロードバイクで山野を駆けめぐるような登山指向のグループが集まった訳だ。

 ちょっと時間を読み違えてしまい、約1時間も早く集合場所の駐車地に着いてしまう。食べ足りなかった朝食を車の中で頬張りながらのんびりと時を潰す。昨夜の雨露に濡れた草をかき分けて水の音のする方へ歩み寄ると、砂防ダムから落ちる清冽な滝の姿が目に入った。

 支度をすっかり終えた頃には参加者全員が車やバイクで集合した。皆日頃から鍛錬を怠っていない感じのメンバーなので、予想していたもののいささか自分のペースに不安を感じる。まぁとにかく潰れないように頑張るしかないだろう。

     
登山口前の駐車地    18号鉄塔巡視路標柱    ひっそりと道標がある

 駐車地前の18号鉄塔の作業道を登って行く。「中高年の山登りと温泉」さんが設置された道標が静かに我々を迎えてくれる。露を充分に含んだ草を踏みしめながらジグザグの巡視路を登り始めた。

 今回企画主催のN氏の後を追って2番手に付く。パーティでは一番弱い者が2番と決まっているからだ。
 始めに自分のペースを乱すと後で苦しくなるのは解っていたが、リーダーの脚は屈強。とても同じ速度で登っては行けない。後ろに気を遣ってくれているのは充分にわかるのだが、何せ呼吸が上がって来るといただけない。序盤からこれでは後々もっと迷惑を掛けることになりそうなので堪らず呼吸調整の休止を申し出た。

 他のメンバーはと見ると、平静と会話を交わして呼吸の乱れなど微塵も見られない。大したものだ。メンバーがよほど鉄人なのか、それとも自分の心肺が極端に弱いのか。十中八九後者であることは疑いの余地も無い。日頃の登山では完全に自分のペースでしか登らないので今まで少し楽をしすぎたのかもしれない。

 この後も何度か緊急停止(笑)をお願いし、とうとう先頭でペースメーカーになってしまった。一度乱れてしまった呼吸は僅かな負荷でまた大きく波打つ。それでも何とか18号鉄塔へ到着してやれやれ一休みだ。

 天気は予報通りの曇。雲は少し高く、雨の心配は取りあえず無さそうだ。鉄塔の鉄骨越しに僅かな景色が見える。総じて眺望はあまり得られない山である。その代わりに、標高を上げながら変わっていく林層の変化が楽しい。秋にはきっと紅葉に抱かれながら、そして冬枯れの梢越しの景色も良いだろう。

 18号鉄塔からは小さなピークを越しながら比較的緩い斜面が続く。落ち葉の絨毯の道は脚に優しい。17号鉄塔への巡視路を分けたポイントからは山頂直下をほぼ直登気味に登っていく。これがまたキツイ。今まで経験した中では鞍掛山のクサリ場急登か鶏岳の9合目から上と良い勝負。

 流石に緊急停止の連続では申し訳ないので先に行って貰う事にした。あくまで鉄人な我が相棒達は淡々とペースを崩さず力強い登りで上を目指して行く。

     
18号鉄塔より唯一の眺望    鉄塔下で記念撮影    山頂直下の急登

 一人でトライアスロンでもやってきたかのような荒い息つかいで山頂へ到着。いつもは山名板だけがが静かに迎えている山頂だが、今日は仲間の笑顔がそこにある。

 若見山(わかみやま){1126m}の山頂は地図通り割と広い空間の中にあり、鋭いピークではないので周りの樹に風景が阻まれている静かな山頂であった。

 山頂から南東へ延びる尾根を一旦下り、17号鉄塔の直下で昼食となった。ここもかつては刈り払いがされて景色が良かったようだが、木々の成長が著しく残念な事に眺望は得られなかった。

 総じて景色には恵まれなかったが、単独や2人山行の多い自分にとってはなかなかに楽しい一日であった。惜しむらくはもう少し力を付けて(少なくとも心肺力は改善したい)メンバーのペースを乱さないように歩ければ良かった。うぅ~む。ここは一念発起してスポーツジムでも通うか(汗)

     
若見山頂上    17号鉄塔で昼ご飯    本日の軌跡

概略コースタイム
駐車地発(9:50)-18号鉄塔(10:20)-巻道分岐(10:57)-山頂(11:18)-17号鉄塔着(11:44)-
昼食休憩-17号鉄塔発(12:26)-巻道(12:33)-巻道分岐(12:43)-駐車地着(13:30)

2007年10月07日

ミツモチ山

-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 ここのところずっと雨の週末続きで、晴れても休みとの折り合いが付かずくすぶっていたのだが、ようやく秋の好天行楽シーズン到来。アウトドアな身にも心躍る季節がやってきたようである。

 家内を山に連れ出す企ても今回で4回目を迎えるが、今日のお山はミツモチ山{1248m}
高原山塊の端に鎮座するこの山は、県民の森側からもイージーにアクセス出来るハイキングコースとして子供達の遠足等にも親しまれているという。

 県民の森キャンプ場に車を置き、ガイドブックに従い登山道を少年自然の家方面へと進む。よく整備された気持ちの良いハイキング路だ。さすがに県が力を入れて整備しているだけのことはある。最近自分が登る機会の多い藪山とは天と地の差。まるで都会の中を歩いているような安心さである。駐車場に停まっていた他の車の主達は既に山へ向かってしまっているのだろうか、キノコ取りの2人組男性を追い抜くと静かな山道となる。

 体が温まり少し汗ばんで来る頃に第一展望台に到着。展望台にぽっかりと抜けるとそこにはアスファル道路が見える。ここまでは車が普通に上がってこれるのだが、この先は砂利の林道になり、暫くは山の中を歩くも、後半は林道に付かず離れずの串刺し登山路となっていく。

 家内はいささか拍子抜けした様子で、「ここまで車で来ればよかったのでは」。
帰りにピストンになってつまらないと説明したら納得したようだ。

     
道はしっかり整備されている    第一展望台より    安全安心な登山道

 第一展望台から第二展望台までは気持ちのよい山道を登っていくが、第二展望台からはジグザグに蛇行する砂利の林道を串刺しするように登山道が続いていく。場所によっては砂利道をそのまま歩く区間もあり、いささか飽きる区間だ。

 斜度的にはまったくもって緩慢路。呼吸も乱れる事無くのんびりと歩ける感じだが、水平距離は結構ある。日頃歩き慣れない家内の立ち止まる回数が段々増えてくる。

     
第二展望台    第二展望台より    林道を出たり入ったり

 最後まで林道と付かず離れずの状態でついに山頂直下の林道最高点に到達。山頂まであと70mの道標有り。
笹を分け入り一登りでミツモチ山頂上到着だ。木組みの展望台があるが、唯一の南面の眺望も眼前の木が伸びており今ひとつ。食事は林道の南側にある展望ポイントで取ることにした。

 展望ポイントには「ミツモチ山頂」の標識がある。地図上の山頂は明らかに先ほどの展望台地点なのだが、確かに眺望的にはこちらのほうがふさわしい気もするがこれってアリか?

 何はともあれ昼食休憩だ。天気予報通りに午後から若干雲が出だしてきて眺望は今ひとつだが、それでも気持ちのよい景色に今日も食事がうまい。先ほどまでじんわり汗ばんでいた体にすっかり秋めいた風が冷たい。

     
ミツモチ山頂上    展望ポイント    展望ポイントより矢板方面

 帰りは途中まで往路を下り、キャンプ場方面への別コースを辿った。こちらは林道の絡みもなく純然とした登山道だが、コース初めはよく目を凝らさないとルートの判別がしづらいような笹藪漕ぎ。通る人が少ないのだろうか。

 地形図を見る限り等高線が込んでいたので登りに使うのは家内がきつかろうと考えていたが、地図に示されている通りのジグザグ路故、さほどのきびしさでも無い。あまりにジグザグなので気短な人が笹藪の中に付けたショートカットも頻繁に出現。たまにそちらを利用しながら進んでいく。

 ジグザグの降下区間も終わり、帰りコースの半分も過ぎた頃だろうか、一つ尾根を超えた向こう側あたりから犬の吠え声が聞こえてくる。それも一頭ではなく複数だ。人間が連れていれば良いのだが、もし野犬の群れにでも遭遇したら厄介だなと多少緊張する。吠え声はあまり移動している様子も無く、また我々も彼らに近づいている感じもしないので取りあえずほっとした。

 禁猟期間に面倒を見きれなくなった猟犬を山に捨てていくハンターが居るという話を聞いたことがある。犬は元々単独では生活出来ずに必ず集団を形成する。そんな犬たちが寄り添っても不思議は無いだろう。ただ、文明の中で育った彼らが果たして自然の中で生き延びることが出来るかどうかは少し疑問が残るところだが、野生化とはこういったことかもしれない。

 往復約8Kmの山行も、県民の森の舗装路が見えてきてなんとか終了だ。後半は若干足元がおぼつかなくなってきた家内も、舗装路に出たときは歓喜と安堵の声をあげていた。

     
林道の最高点    紫の花が綺麗    笹深い下山路

概略コースタイム
キャンプ場駐車場発(11:00)-第一展望台(11:31)-第二展望台(11:54)-山頂(13:03)-
眺望ポイント着(13:10)-昼食休憩-眺望ポイント発(13:32)-下山路分岐(13:52)-キャンプ場駐車場着(15:03)

2007年06月16日

高原山最高峰 釈迦ヶ岳へ登る

 前回敗退の高原山へ向かう。

今回は、中間テストを控えて勉強にいそしむ娘は参加不能。家内は娘を置いてはゆけぬということで、単独で向かうことになった。

 前回の家族ハイキングは大間々駐車場から八海山神社往復という距離的にも超お手軽コースの予定であったが、悪天候故の敗退。
 今回は自分だけなので、剣が峰から大入道経由で廻ってみようか。いや折角だから往復3時間を頑張って釈迦ヶ岳(しゃかがたけ){1795m}まで足をのばしてみよう。

 八方ヶ原といえばこの時期ツツジが有名である。一面のツツジの海原を期待して行ったのだが、小間々周辺はもう既に見頃が過ぎてしまっていた。
 駐車場は今の時期相当に混雑するという事前情報を警戒して、朝7時半頃には既に小間々駐車場に到着した。結構な台数が既に停まっており、なおかつ皆さん行動を開始しているようである。見れば大部分県内ナンバーなので常連さんなのか。

 車内で朝食をとってしばし休憩。身支度を調えいざ出発だ。遊歩道を使って大間々へと向かう。
 大間々手前から林を抜けると一体に広がるツツジ。樹々に覆われた遊歩道歩きから解放されたことも手伝って、鮮やかなツツジの花を楽しむことが出来た。

 大間々駐車場に到着したのは8時40分頃だが、既に駐車場は満車。後で調べて解ったのだが、ツツジを見るのならここからミツモチ山へ向かうのも良いらしく、これは是非来年の家族企画に採用しよう。

 それにしても今日は風が強い。しかしながら空には雲一つ無いピーカンである。実は、昨晩から続くこの強い風の原因は解っていた。
 大型の低気圧が東海上に去りつつも、外輪の気圧が混んでいる部分が未だ本州上に残っているからである。日曜になれば低気圧は完全に去り高気圧に支配される予報天気図を見ていたので、風の事だけ考えれば今日より明日という判断だが、まぁヤセ尾根で吹き飛ばされそうだったら今回も敗退すれば良いだろうと思った。
 結果的には翌日に残る疲れを考えると、土曜日決行が正解だった。だがこれはあくまで結果論。(筋肉痛の日曜日にこれを書いている)

 駐車場からしばらくは砂利林道(車両は進入禁止)をのんびりと歩く。時折老夫婦が花の写真を撮っていたりとなかなかのんびりした雰囲気である。見上げれば真っ青な空に緑の筆を下ろしたようなきらめき。気温も丁度良いし、風さえ無ければこれほどのハイキング日和は無い。

 程なく登山口に到着し、入山ノートに記帳してここからが山道である。今回の山行で思ったのだが、山としての深さやそれに付随する危険度は流石にそこらの里山より一枚上手。しかしながらコースの整備度(道標や道そのもの)はさすが高原山は一流である。最近は、道標などろくに無いあるいは全く無い、そして踏み跡が薄いとか厚いとかそういったところを登っていたので、こうも潤沢に標識が設置されているとさながらカーナビで走って居るような感じである(笑)

 整備と言えばもう一つ思ったのが、特に後半の剣が峰~大入道~小間々間の笹道。昨シーズンに登山道に生い茂った笹を丹念に刈り取り、ハイカーが誤って笹の中に迷い込まないよう配慮されている。これもまた日頃藪山にいそしむ自分にとっては過剰サービスという気がしないでもないが、確かに足元を凝視しての笹漕ぎは危険かつ道迷いの原因なのは火を見るより明らか。作業に携わる地元関係者に大いに感謝である。

 初めは緩やかだった登りもややきつくなってきて、上に明るさが見えてきてエイヤと更に一登り。眺望良好な尾根筋に到着。大間々駐車場から八海山神社に向かうこの南側のルートの名前は「見晴らしコース」。なるほど、コース名の期待を裏切ることなく見事な眺望風景が迎えてくれた。後から来た初老夫婦が大きく息をつき腰を下ろして休憩を始めた。つられて自分もザックを降ろしてしばしの休憩。

 ここで家内にメールを入れようと試みるが、圏外だったりアンテナが2本立ってみたり、でも通信そのものは不能。いつもの低山なら大抵の所で携帯は使えるのだが、流石に眼下の集落からこちらへの指向性の電波は無いようである。このあとも幾つか街が見えるポイントでも発信を試みたが何処も駄目。連絡が無いので家内が気を揉んでいるのではと、行動中少しそれが気がかりだった。事前に解っていれば説明していたのだが。

     
大間々のツツジ    青空に映える緑    見晴らしコースより

 八海山神社へ向かう見晴らしコースはあまりにも景色が素晴らしく、所々足を止めたくなるほどだ。先ほどから見えている釈迦ヶ岳を目指して更に進むと程なくガレ場が始まり、遠くに小祠が見えてきた。あれが八海山神社{1539m}。

 神社の周りは岩だらけ。あたりを遮るものも無く眺望も良い。更にケルンなども積んでありアルペンムードが漂う。ここから来た道を戻るもよし、林間コース(北側の尾根のコース)を使って帰るのも、家族ハイキングや日頃山には行かない人にとってはうってつけのコースになるのではと思うことしきり。

 八海山神社を後にして更に進むと、少し道が静かな感じになる。適度な斜度のコースを黙々と登っていくとそこは矢板市最高地点{1590m}。木々に覆われ眺望は無い。
 この先、帰路の剣が峰~大入道コースにもこういったピークが幾つかあるが、いずれも眺望は無い。先ほどの見晴らしコースの景色があまりにも素晴らしかった故少し物足りないような気がした。

     
これから向かう釈迦ヶ岳    八海山神社    矢板市最高地点

 矢板市最高地点より高度を下げて剣が峰分岐へ。剣が峰は帰りに寄ることにしてそのまま西へ進むと更に高度が下がっていく。ここからが釈迦ヶ岳往復のコースに入った訳だが、道に不明瞭などというのは微塵も無し。しかし、流石に急峻なエリアにふさわしく、北側の谷は深く切れ込んでおり道が痩せている箇所もある。私などのようなビギナーハイカーが言うのもおこがましいが、初めて訪れる方は充分に注意をして通行されたい。地形図をご覧になれば解るが、落ちると一発で50m以上は滑落しそうな感じである。もっとも危険箇所にはロープを張って注意を促したりと、この辺も関係者の配慮はぬかりが無い。

 切れ落ちた区間を注意しながらやり過ごすと、今度は結構な急登区間が待ち受けている。トラロープに助けて貰いながら登るこの辺になると流石に疲労もピークになって来た。喘ぎ喘ぎ休み休み登って行く。止まる度に高度計を見ても稼いだ高さはまだ20m、やっと30m。

 ヘロヘロになりながらようやく登り切ると鶏頂山からの登山道と合流する分岐へ到着。釈迦ヶ岳山頂へはあと一歩の筈が、脚が進まずここでも立ち止まる。さぁもう一頑張り!

     
樹の切れ間から北側    剣が峰分岐    釈迦ヶ岳直前分岐

山頂到着。

苦しかった登りの疲れも一瞬にして吹き飛ぶような素晴らしい風景に暫し立ちつくす。流石は一等三角点を有する高原山の盟主。

 宇都宮市内からは日光男体山と共に高い山のシンボルとして慣れ親しみ、いつも「見」ていた山。今まさにその山頂に立っているという感動!

 相変わらずの強風で、遮るものの無い山頂はちょっと辛いものがあったが、皆さん枯れ笹の中で腰を下ろしてランチにいそしんでいる。これに習って適当な場所を陣取るとあら不思議。あんなに強い風も笹に覆われて風は殆ど感じない。

 雄大な景色を見ながらの昼飯は最高だ。コンビニのおにぎりもここではとびきりのご馳走である。非常時用にキープしてある氷入りの水筒からよく冷えたお茶を一杯飲む。あぁ極楽だね。
 その後、枯れ笹のベッドに横たわり青空を眺めながら一休み。こういった場所がある山頂は貴重である。

     
釈迦ヶ岳山頂より鶏頂山    枯れ笹特等席でランチ    南側眺望

 贅沢な時間を過ごして、さぁ気を引き締めて後半のコースへ。
 先ほど喘いで登った急登も、下りは慎重にも慎重を重ねてゆっくりと降りていく。登りではまったく気が付かなかった白く清楚な花が美しい。(恥ずかしながら名前解らず。どなたか教えてください)

     
南側眺望    中岳    白く清楚な花

 先ほどの切れ落ちた危険地帯を再びやり過ごし、その後登り返して剣が峰{1540m}。
 剣が峰もはその峻険な名前とは裏腹な小広い静かな頂である。眺望は全く無い。きつい下りで多少腿が痛くなってきたのでクールダウンを兼ねてザックを降ろし、しばし静寂を楽しむ。

 ここから大入道へ向かう尾根は、穏やかな道が続く気持ちの良い道である。全体的に下り基調だが、若干の登り返しが釈迦ヶ岳往復で疲れた体にムチを打つ。

 北西方向にぞびえる明神岳や前黒山を木立の合間に見やりながら進んでいくが、相変わらず風が強く、山をごうごうと鳴らしている。聞こえて来るのは山のうなりとセミ(山セミ?)の降りかかるような鳴き声のみ。時折遠く聞こえるヒグラシの声が何故か懐かしく感じる。
 尾根から西側山域につながる深い谷を見ていると、到底人が入り得ない険しさがある。あそこにはクマでもイノシシでも、本来有るべき姿の自然がきっとあるに違いない。そんな事を考えながら歩いていた。

     
剣が峰(たぶん)    剣が峰    大入道へ向かう尾根道

 あと少し、と気持ちを引き締めてどうにか大入道{1402m}へ到着した。この時点で既に山道を10km以上も歩いているので疲労は当たり前である。自分の体力では釈迦ヶ岳往復を抜いた位がベストかな?と思った。

 大入道でもまた腿のクールダウン。今回から持参の筋肉疲労用瞬間冷却スプレーを吹き付ける。周囲に人気が無かったのでズボンを下げてパンツいっちょで、太ももにもシュッと一吹き。
 冷たいのは良いのだが本当に筋肉痛に効いているのかしらん。まぁ気休めで無いよりましだろう。冷たいのは間違いないから。
 よくマッサージをしてほぐれてきたら、さぁ出発。最後の下りを注意しながら降りないと。ここで怪我などしたらつまらないからね。

 冒頭にも書いたように、よく手入れされた笹の間のコースを降りていく。途中沢を横切るあたりでちょっと道が散逸する感じがあっても、岩にデカデカとペンキで矢印が書いてあったりと実に親切である。

 最後の沢(桜沢)を横切り一登りすると小間々キャンプ場が見えてきた。ゴールはもうすぐ。あとは平坦な林を抜けるとそこは駐車場だ。
 7時間以上にもわたる山行も無事終了。急いで家内へ無事メールを入れた。

     
大入道    今回のGPS軌跡   

追記

 今回はコース中常に日差しが差し込んで衛星の補足が可能、かつザックへのGPS受信機の取り付け位置の改善が功を奏し、ほぼ完璧な歩行軌跡を捉えることが出来た。
(上写真右)
剣が峰~釈迦ヶ岳間で一部谷側に軌跡が飛んでいるがこれは測定誤差。ここに落ちたら死んでます。

 また、新たに購入したザックも、歩き始め1時間位は肩紐に違和感を感じたものの、程なく慣れてしまって、逆に腰の部分のしっかりしたベルホールドが思いの外軽快な背負い心地になるということを実感した。更に、今回初めて着た汗を溜めない新素材のアンダーウェア。激安店の安物だが、なかなかの高機能。従来なら汗で下着がベットリ濡れて嫌な思いをしたものだが、こいつは快適そのものだ。新素材の進歩に驚いた。山やスポーツだけでなく、これからの夏場に向けて日常生活での着用も良いのではと思う。

追記その2

 今まで当ブログを読んで頂いていた方にはちょっと違和感があるかもしれないが、従来の「ですます」調から「である調」へと今回から書き方を変えることにした。
 理由はいろいろとあるが、「ですます」調の表現力って案外難しいのではと最近気づいたのが最大の原因か。


概略コースタイム
小間々駐車場発(8:05)-大間々駐車場(8:40)-登山口(8:50)-尾根上(9:25)-八海山神社(9:50)-矢板市最高地点(10:00)-剣が峰大入道方面分岐(10:14)-鶏頂山分岐(11:37)-釈迦ヶ岳山頂着(11:40)-休憩・昼食-山頂発(12:18)-剣が峰(13:24)-大入道(14:26)-一本目の沢(15:02)-桜沢(15:15)-小間々駐車場着(15:22)

2007年03月17日

鶏岳

明日から彼岸入り。そしてそろそろ息子の引っ越し準備が忙しくなってくるので、最後にもう一登り。

息子と共に鶏岳(668m)へ行ってきました。

朝目覚めるとなんとなくどんよりとした天気。NHKの天気予報を見ても晴れマークは夕方から。
これは諦めたほうが良いかな・・・と思案しながらウエザーニュースを見てみると、9時頃から晴れマーク全開ではありませんか。
実際8時過ぎには西の方から青空が広がってきたので、さあ、準備にとりかかります。

自宅からいつものように宇都宮北道路を快調に飛ばし船生街道へ。
先日登った篠井連峰を横目に見ながら船生街道へ入り、途中佐貫石仏へは曲がらず鬼怒川の南側を西へ(この道はじめて)。
大渡橋を渡り西古屋の集落を目指し、そこから林道西前高原線へと入って行きます。

林道を暫く上ると、程なく登山口看板発見。
先客が1台駐車しており、小さな車ならあと2台くらいならなんとか置けそうなスペースが道の脇に作られているのですが、乗っていった1BOX車だとちょっときつい。
もう少し上の方はどうだろう、と車を進めましたがやはり状況は変わらず。
やっとのおもいでUターンして登山口まで引き返し、なんとか路側に駐めることができました。
車利用の場合は、出来るだけ小さな車種で行かれることをお勧めします。

    

(写真左)西古屋の集落からの鶏岳。名前の通り特徴的な山容です。
(写真中)林道入り口。舗装路ですが、思わずオフロードバイク欲しくなってしまう風景
(写真右)登山口


登山口の階段を登ると、すぐに気持ちの良い山道に変わり、まさにハイキング気分で進んで行きます。
道は一本道で、迷う要素は皆無。枝道は登り初めの一カ所だけあります。道標こそありませんが、見た目も一目瞭然。あとは電車道のように一直線です。
また、4合目より設置されている合目表示板があるので安心して登って行けます。
いくらか登りが急になってきて息も弾んできた頃、現れました!八合目からの岩場急登!

    

(写真左、中)緩やかな尾根伝いの登り
(写真右)八合目の岩場急登直前のメッセージ


見た目以上に足場がしっかりしているので、トラロープに助けられればさほどの難所でないのですが、場所によってはゆうに40度は超えているかもと思われるような急登。呼吸が大いに乱れて途中4~5回は立ち止まってしまいました。
いや、ホント辛かったです。いつもはさほど感じないザックの中のたかだか2L程度のカップラーメン用のお湯の重さをじんわり感じてしまった程ですから┐(´~`)┌

ヒーコラしながらどうやら登りも終わり、一旦山頂南側ピークに辿り着くと後はほんの僅かな緩い登りで山頂へ到着!
西から南へ広く開けた眺望が迎えてくれました。
あ、それから先客の3人組(後で聞いたら茨城から来たそうな)が既に一休み中。

    

(写真左)八合目より岩場急登。トラロープが誘導してくれます
(写真中)九合目は、ハーハーゼーゼー。辛い辛い
(写真右)山頂に着きました


  

(写真左)山頂北側から高原山方面
(写真右)西側日光方面

    
山頂よりパノラマ

写真でご覧の通り、高い所の雲が多少多いものの、眺望的にはまずまず。
先日の篠井連峰の本山からは男体山さえ見えなかったので、今日は上出来です。
絶景をおかずに例のごとく昼食タイムです。

麓の集落で吠えている犬の鳴き声が、どこか長閑に聞こえてくる程のんびりした時間を愉しんだ後、山頂を後にしました。

帰りはピストンコース故、慎重に先ほどの急登箇所を降りていきますが、今日の写真、いくらか雰囲気が伝わるでしょうか。



行きは登りづめ、帰りは下りっぱなしで流石に膝が笑い出してきたなと思ったら何とか無事に登山口に到着です。
帰路は来た時と逆向きに林道を走り、鶏岳をぐるりと巻いた感じで半周し、南へ戻る道へと合流し里へ下って行きました。

西前高原林道は、途中東古屋湖方面へ分岐していますが、その先はまだまだ舗装が続きそうな気配故、この先の区間も是非走ってみたいものです。
夏場のバイクの避暑走行にはうってつけのコースかもしれませんよ。


概略コースタイム
登山口(10:50)-山頂(11:40)-山頂発(12:20)-登山口(12:50)

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