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2010年12月 アーカイブ


2010年12月31日

干支の山、寅巳山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 2010年最後の山歩きは、干支のトラの名前を冠した寅巳山である。

 遠く東京や大都市からも登山ツアーがこの地方の無名な里山に訪れていたというのだから驚きである。2010年にもう一座県内で脚光を浴びたのは、標高2010mの赤薙山。こちらは栃木の主峰群とも言える日光連山の一角をなす名山であるから頷ける気がする。

 さて、ツアーハイカーはともかくとして、地元の里山愛好家としては押さえておきたい一座だ。3年前の初夏、田植えも終わり緑が全山を覆いつくす時期に一度登っている。この時はガイドブックに従い、南側の野鹿台団地裏から周回するコースを取った。

 今回はどう登るか。

 日光街道を西走する時にいつも思っていた。篠井にある雷電山から寅巳山、さらにその西側の浅間山までつないで歩いたら面白いのではないかと。
 地形図を精査すると、雷電山と寅巳山間は一旦車道またぎにはなるが、そのほかはなんとかルートを引けそうな気がする。今回は現地の偵察をまったくしていないが、雷電山も寅巳山も共に一度は歩いているのでなんとかなるだろう。

 まずは、雷電山の東の麓にある神社手前の駐車スペースに車を置き出発。前回に続き今回も此処を登山口した。

 前日(12月30日)に県内は寒波の影響で広範囲に降雪があり、篠井付近では車道でも日陰で2センチくらい積もっているところがあった。雪を纏った薮は今回が初めてだが、これもまた一興であろう。東側に目をやると、寒々とした朝の空気の中、先般登った篠井連峰に冠雪した様子が珍しい。

 神社裏からの取り付きは特に踏み跡も無く、左手の植林帯の急登を行くか正面突破で薮を突っ切るかの二択である。右手は薮が濃くて谷状になっているのでパス。

     
雷電山取り付きの神社前    神社に参拝後裏手から失礼    雪の薮だぁ

 薮を払いながら登っていき、左手の植林帯の斜度が緩むのを見計らってそちらへ移動。暫く登ると予定ルートと歩行進路が一致した。境界杭が出る頃になると踏み跡も明瞭になってくる。どうやら地元の人達の歩く道に乗れたようである。

 このコースで唯一珍しい露岩を通過して、程なく寅巳山の頂上へ到達。ここまでは順調である。

     
   境界杭を追う    岩の露出が珍しい

 石祠と小さな梵天が置かれた山頂を辞して、北西へと伸びる明瞭な尾根を伝う。一旦コルから360m級Pへ登り返す予定であったが、ここで本日一回目の進路角ミス。言い訳をするとすれば、地形図の三角点位置と実際の三角点位置が50m程違いがあったことである。これはログを見て後で判ったことだが、現地ではこの違いに気づかずに思い違いをしたのである。尾根の派生を見極められずに予定より50m近くも余計に高度を下げて谷に出てしまった。よく見ると上方に稜線が繋がっているのが見える。現在地をしっかり再確認して、眼前の360m級Pへ直登することにした。

 無事予定ルートに戻ると境界杭も現れほっとする。まだまだ修行が足りないようである。

     
寅巳山頂上       下山がなかなか難しい
     
コースミスで一旦谷へ    登り返す途中で    境界杭を見るとほっとする

 327mPまでは小薮がうるさいが、ルート的には難しくない。だが、327mPから先は北に一旦降りて更に西へというつもりであったが、薮があまりにも濃いのでこれは断念。薮の手薄な所を選んで車道へ向かって降下する。

 予期せぬコースアウトで思いのほか時間を費やしてしまったが、無事車道へ出ることが出来た。次は向かい側の寅巳山に取り付くのだが、薮が濃くて文字通り"取り付くしまも無し"といった感じだ。車道を少し北上して、薮が切れかかっている箇所から強行突破だ。

     
流石にこの先はギブアップ    この奥から出てきて    こちらから寅巳山へ

 薮に入るとすぐ旧い作業道が現れた。出来るだけコイツを利用して楽をしながら登っていくと、ほぼ目論見のコースに乗ることが出来た。尾根形も明瞭になってきたな、と思っていたら再び尾根派生を見誤りコースアウト。今回は向かうべき稜線間に急斜面があるので無理をせずに降りてきた斜面を登り返した。

 どうみても地形図と現場の状況が一致しない(少なくとも自分にはそう見えた)が、よく見ると赤テープが一本見えた方向に尾根が延びているではないか。いやはやルーファンは難しいものだ。自分はまだまだ観察力と洞察力に欠けているなぁと痛感した。

 薮を払いのけながらも高度を上げていくと、目指す稜線はますます明瞭。踏み跡も一時的にではあるが濃くなってくる。だが、すぐに次の薮が待っている。

     
枝を払いのけ稜線目指す    大分歩き易くなってきた    一旦穏やかなるも薮が待っている

 標高400m地点あたりまで到達すると、まだ薮は残るものの道形がはっきりしてきた。雷電山同様、山頂の少し手前にある岩を通過すると程なくして寅巳山頂上である。

     
樹間から雷電山    山頂まであと少し    これまた希少な岩

 三年前は山頂がすっかり緑に覆われていてまったく眺望が得られなかった。だが落葉のこの季節、うっすらと周囲の景色が見えるのが嬉しい。

 今日の薮歩きは木に積もった雪が解けて森の中は雨降り状態であった。今考えるとカッパを着たほうがよかたっかなと後悔しているが、何とかヤッケで歩き通してしまった。

 山頂で遅い昼食をとっていると、濡れた体があっという間に冷えてきた。コースミスの連続で予定時間も押している。どうやら今回の薮歩きは自分の負けのようである。体力も時間もまだ余裕はあるが無理は禁物。ここは潔く負けを認めて来るべき新年に雪辱を期待しようではないか。
 後半の浅間山への縦走を諦め、所用で近くまで来ている家内に電話をかけた。野鹿台団地へ降り立ち、迎えにきた家内の車に収容されて2010年の山歩きは幕を閉じたのである。

     
寅巳山へ到着    南側、日光街道方面    下山途中より浅間山越しに日光方面

概略コースタイム
駐車地発(10:42)-雷電山(11:12)-コースアウトの谷(11:27)-車道(12:01)-
二回目コースアウト(12:32)-寅巳山(13:04)-昼食休憩-行動再開(13:44)-
野鹿台団地着(14:08)

2010年12月26日

茨城県境尾根と大倉尾根(花瓶山)


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 八溝山から西へ県境をなぞっていくと、南に降りたところに花瓶山という変わった名前の山がある。
 下野新聞社の栃木百名山で紹介されている山だ。"かびんやま"と読んでしまいそうだが、"はながめやま"が正しい読みだそうだ。

 登山ルートはいくつかある。県東の山は林道が網羅されていてアプローチが容易だ。花瓶山も既出のルートは比較的短距離で山頂を踏むことが出来る。だが今回自分は、関の田和峠(廃道)、現在は峠下を貫通している茶の里トンネルより県境尾根を伝い山頂へ立ち、下山は大倉尾根を下って如来沢へ降りるロングルートを考えた。大倉尾根については地図読みコースとされてはいるものの、下野新聞百名山でもサブコースとして紹介されているので、メインは県境尾根の探索である。

 地図を眺める限り、県境尾根も大倉尾根もすっきりしていてわかりやすいだろうと高をくくっていた。だが実際に歩いてみるとなかなかどうして、道なき尾根を手繰るように進む手強いコースであった。ちなみに、道形がはっきりしていたのは花瓶山山頂から大倉尾根に至る僅かな区間のみであり、大倉尾根も踏み跡が濃いのはごく一部のみ。県境尾根に至ってはスズタケの薮の中にかろうじて通過痕を認めるのみ、他は総じて枯葉に地表を封印され、また、旧い倒木に覆いつくされた秘められた尾根であった。
 ちなみに5時間40分の行動でまったく誰にも会わなかった。山頂もハイカーが最近休んだ気配もあまり感じられず、よほど不人気の百名山なのだろうか。
 山頂や大倉尾根に数枚の道標を付ける「黒羽山の会」のプライベートコースのようなこの山域も、流石に県境尾根までは手付かずといった趣であった。

 県東の山は久しぶりである。というよりも、八溝山近辺で行ったことがあるのは花瓶山より西側にある御亭山ぐらいだ。宇都宮からだと2時間弱アクセスにかかってしまうが、いろいろと興味深いエリアでもある。特に花瓶山から北側は自然林が多そうなので、八溝山まで県境尾根を通しで歩くのを次回以降のネタとしたい。

 下山口である如来沢の砂利林道に自転車をデポ。続いて茶の里トンネル入り口近辺に車を駐めた。ここまでは過日の偵察の通りである。

 まず、駐車地脇にある廃道(トンネルの上)を進む。直ぐに峠に着くが、つい最近まで現役だった県境看板が廃れた道の中にあり痛々しいようである。

     
駐車地、車の奥は行き止まり    まず廃道を辿る    茶の里トンネル上

 峠脇にガードレールが切れた箇所があり、そこから林業の作業用ブル道(伐採用重機の為の荒く掘削された道)が斜めに延びている。ここより取り付き、手薄なところからまずは尾根筋に登り上がる。

 比較的新しいプラスチックの境界杭がほの暗い尾根に点々と続く。特に薮も無く綺麗な尾根である。

     
脇のブル道から取り付く    まず尾根へ    綺麗な尾根だ

 気がつくと鉄塔巡視路が近くまで伸びており、やがて鉄塔へ到達。伐採の木材搬出に使われた木道跡のような溝に沿って道形は続く。整備されているとは言えないが、次の鉄塔が高戸山の山頂脇にあるので巡視路として歩かれているのかも知れない。

 やがて、高戸山頂上へ到着。周りをぐるっと植林に囲われており、眺望はまったくないひっそりとした山頂である。陽が届かないので立ち止まると寒い。

     
境界杭が続く    鉄塔へ一旦出る    木道跡か
     
      展望は皆無

 高戸山から県境尾根は北西へ方向転換するが、このあたりになると幾分薮が出はじめてくる。丹念に尾根を探りながら登り下りしていくと北側の風景が枝越しに見えた。今日初めての明るい景色が目に沁みる。

     
少し薮がうるさくなってきた    こつこつと尾根を拾う    明るさが目に沁みる

 程なく、西側に180度眺望の伐採地に飛び出した(伐採地A)。

 宇都宮近辺からは、西の日光、北の高原山といったアングルが定番なのだが、此処からだと日光連山と高原山がほぼ肩を並べている様子が新鮮である。

 暫く進むとまた次の展望地である伐採地Bへ。こちらは北側180度の眺望がひらける。続けざまに贅沢な眺望である。真っ白に冠雪した那須岳がよく見えた。写真では白飛びしてしまって判らないのが非常に残念である。


伐採地Aより  日光連山と高原山

伐採地Bより  肉眼でははっきり見えた那須岳方面だが、白とびして写真には写らなかった

 伐採地Bからは、伐採境界のへりを進んでいく。この次のピークで尾根の乗り換えに失敗し、本日一回目のコースミス。倒木が山積みになっている箇所を下っていくとどうも様子がおかしい。この先どこまでも下っていきそうな雰囲気に気づき倒木に手足を絡め取られながらも一旦登り返す。もう一度落ち着いてGPSと地図を精査して、尾根を若干巻き気味に行くルートに乗ることが出来たが、ここは少し難しかった。

     
この伐採地上部を辿っていく    コースアウトした箇所   

 進むにつれて段々と広葉樹が目立つようになり明るい尾根歩きとなる。時折スズタケの薮が出るが薮の中のほうが踏み跡がはっきりしていて心強いものだ。
 落ち葉が積もった尾根は、ひたすら次の進路選択を迫られ続けているようで気が抜けない。分岐や尾根の派生がある度に進路を精査検討しながら進んでいくが、それでも幾度となくミスしかける。GPSの軌跡にも迷いがはっきりと出ているのが面白い。

 今まで歩いてきたルートファインディングコースの中では、かなりレベルが高いと感じられる地形の複雑さ。加えて、デジャブのように何度も現れる尾根の分岐とピークの登り下り。まるでリングワンデリングに陥っているのではないかと錯覚してしまうような変化に乏しい周囲の様子。

 単独で歩くことに慣れている自分でさえ、延々と続く道なきルートにいささか人恋しくなってきたのも事実である。実際には地図とGPSをまめにチェックしているので深刻な問題は皆無なのだが、標高はたかだか500mから600m程度なのに、この山深さと心細さは一体何なのだろうか。かくも味わい深き山域である。

     
広葉樹が出てくると明るくなる      
     
   笹薮だが踏み跡は判り易い   

 取り付きから歩き始めて3時間10分経過、やっと本日一つ目の道標にまみえる。山頂から大倉尾根へ繋がる道へ県境尾根が接合する箇所である。ここから山頂まではほんの僅かな距離だが、こことて道形不明瞭である。奥の高みを目指すとそこが山頂であった。

 北側の枝越しに八溝山が見えるほかは殆ど眺望も無し。南は植林の深い森に覆われている。

 県境尾根の後半はいささかシャリバテ気味で、途中何度も食事にしてしまおうかと思った。山頂まであと少しと粘ってきたものの、眺望はまったく得られずいささかがっかりだ。もっとも途中の伐採地で人知れぬ絶景を拝めたので良しとしよう。

 食事で鋭気を養ったのち、後半の大倉尾根へと向かう。

 地元の「黒羽山の会」の道標が掛かっているくらいだから有る程度整備されているのかと思ったが、一般のハイキングコースとは程遠い状況で、後半もまた兜の緒を締めてといった感じの緊張感溢れる尾根歩きが続く。

     
本日初めての道標、山頂近し       大倉尾根も薄い薮

 県境尾根に比べると間違えやすい箇所は遥かに少ない。たまに等高線が緩むと気が抜けないが、間伐された箇所が多く、また自然林との境界なので先の見通しが利いて気が楽である。

     
   こういう箇所が難しい    如倉乗越(にょーくらのっこし)

 だらだらとした下りで到達した如倉乗越からは急な登り返し。登りきった所は樹林に暗く囲まれた向山である。ここからが最後の高度下げとなるが、倒木の多い区間が続き、いささか歩き辛くなる。方角を外さないように慎重に歩きやすい箇所を拾っていく。

 樹林が切れて尾根の末端に青い草地が見える。沢音が聞こえる。ここを下りきると、突破困難な薮に突き当たった。下のほうに林道が見えたので付近の赤テープを追うと、草で自然に還りつつある作業道へ出ることが出来た。

     
   倒木で歩きづらい    最後の下り
     
廃作業道へ出た      

 林道を少し歩いて自転車の元へ無事帰還。暗い砂利の林道をガタゴトと走っていくと、伐採した木材を積み込んでいる人が見えた。この山域で今日初めて出合った人間である。

     
     

概略コースタイム
駐車地発(9:27)-鉄塔(10:01)-高戸山(10:15)-伐採地A(10:38)-伐採地B(10:44)-
花瓶山到着(12:45)-昼食休憩-行動再開(13:19)-如倉乗越(14:26)-向山(14:35)-
自転車デポ地(15:09)-自転車で移動-駐車地着(15:39)


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2010年12月19日

篠井富屋連峰縦走



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 ブログ仲間のQ造さんから篠井富屋連峰を歩かないかとお誘いを受けた。実際に顔を合わせるのは今日が初めてだが、集合場所のコンビニで待っていると、トランクのザックに荷物を入れている人あり。声をかけてみるとビンゴであった。

 さて、本日のコースは鬼山付近にパジェロミニをデポし、Q造さんの車で移動して子供の森から篠井連峰、富屋連峰へと縦走である。

 朝の、未だまばゆい光のもと、子供の森駐車場を出発。すぐ登山道に入ると、日差しが遮られピンと張り詰めたような空気の冷たさに身震いする。それもほんの僅か。歩を進めれば、たちまち体が温まりだしてくる。

 取り付きは男山直登コースを選んだ。谷詰めをして尾根に出るほうが効率的なのは判っていたが、やはり里山は初めに急登ありきが味わいだろう。

     
男山直登分岐    急登    枝越しの日光連山

 男山から榛名山へのピストン後、順序よく本山へ向かう。尾根の途中にある採掘口跡をQ造さんに教えていただいた。本山周辺は江戸時代から金やその他の鉱石が採取されていたということだが、斜面にぱっくりと口を開けたその様子を窺うと、穴の奥の闇に吸い込まれそうで不気味であった。

 本山に向けて更に進むと、南側の斜面を伐採した箇所へ出た。遠くから眺めると本山付近で広域に伐採されているなと常々思っていたが、大展望で半蔵山が大きく見えるのがハイカーには嬉しい。

     
   本山手前の採掘口跡    本山手前伐採地より

 本山よりの眺めは相変わらず素晴らしく、今日は好天も手伝い遠く那須まではっきりと見渡せる。やはりこういう低山は空気が綺麗な冬場が良いなと改めて認識する。

 山頂下にも採掘口跡があるという。Q造さんの案内で山頂西側の斜面を下りていくと、先ほど尾根で見たような割れ目がこちらにもある。もっと正確に言うと、本山山頂は大きな岩の上にあり、その岩が実は採掘されていたのだ。今まで数回山頂を踏んでいるが、教えて貰わなければまず気付くことは無いだろう。
 暗い採掘口を覗くと、結構深い感じがする。中がどうなっているのかは想像も出来ないが、いずれにせよある程度の規模の坑道や採掘された空間があると思うと実にミステリアスである。

 本山を後にして飯盛山方面へと進む。振り返ると、歩いてきた榛名山と男山が伐採地の向こうに良い形で並んでいる姿が見えた。

     
   本山直下の採掘口跡    榛名山と男山を振り返る

 せっかく稼いだ高度を惜しげもなく下げて一旦コルへ。中篠井への下山分岐を分けると、鉄塔脇から飯盛山への急登が始まる。4年前にこのコースを歩いた時は青息吐息であった。多少息はあがったが、今日は難なく登ることが出来た。

 少し時間が早かったが、残りの行程もまだ長い。飯盛山の山頂で昼食休憩をとることにした。
 葉が完全に落ちているこの季節は飯盛山も明るくて気持ちが良い。

 ここより富屋連峰へ向かう下りは、急斜面かつ足元が滑りやすくて強烈。ここを通過するのは今日で三度目だが、今回は比較的新しい頑強なロープが張られていて大助かりだ。最近はつとめてロープや鎖に頼らないで歩くようにしているが、此処だけは別格である。

     
静かな山道    飯盛山    急坂を下るQ造さん

 一旦舗装林道と交差して富屋連峰の縦走路に入る。ところが、ここでちょっと道間違い。というよりも、前回は方角を合わせて踏み跡を追っていったらコースに乗れたのに、今回は道形消失である。GPSを眺めても進路角は間違いない。目前の緩やかな斜面の小藪を突破すれば・・・などといつもの癖で考えていたら、車道まで引き返していたQ造さんが手招きをしている。
 戻ってみると、真新しい道標の矢印が道路沿いを指しているではないか。今日は人を案内するのだから、まず道標をちゃんと見ないといけない筈なのだが、まったく困り者の道案内人である。頭を掻いて反省しつつ車道を進むとやんぬるかな、ハイキングコースの入り口道標があった。

 特徴の無いだらだらした道を行くと段々と斜度がきつくなってくる。少し登り詰めた所にある大岩で道が方角修正をすると高舘山の西端に出た。ここから電車道のように真っ直ぐに山頂へ向かうが、僅かなこの距離が実に滑りやすい。粘土質の斜面に枯葉が堆積しているので、靴がうまくグリップしてくれない。

 小広い高舘山山頂は、4年前に比べると樹が茂ってしまったせいか眺望はいまひとつすっきりせず。
 先週鶏鳴山で会った人は、先ほど交差した車道に車を置き、早い時間に此処に登って朝食を食べてからのんびりと下山することがよくあると話していた。自分も次の春あたりは、ツェルトでも張り、陽が傾くまで一日中のんびり本を読んだりして過ごすのも面白いのではと思った。

 再び滑りやすい斜面をへっぴり腰になりながら下っていくと、やがて暗い植林帯へと飲み込まれていく。大網下山口方面への分岐を分けるあたりで一瞬樹林が切れるが、再び暗い森へ。僅かに登り返すと、一通過点として見落としてしまいそうな黒戸山の頂上である。

     
高館山手前大岩       黒戸山より来し方

 篠井、富屋の両連峰縦走もいよいよ大詰めである。ガイドブックでは残すところ兜山の一座のみ。今日はオプションで南東にある鬼山も登る。

 兜山と鬼山は、共に標高372mの三角点を有する。地形図では南側の372m峰が兜山、北の372m峰は無名とされているが、実際は国土地理院の誤記で、北側が兜山、南側が鬼山ということらしい。こういう珍しいケースの山を歩くのも、里山歩きの味わいでああろう。

 兜山はつい最近も散歩がてらに登った事があるが、前回無かった真新しいブル道が山頂直下まで作られていた。植林の山だからまったくもって致し方ない事ではあるが、ちょっぴり残念な思いである。

 オーラスの鬼山は道なしの直登である。もともとこの北斜面は自然林だが潅木も少なく難しい薮ではない。加えて充分に落葉しているのでコンディションはベストであろう。標高差約60mの直登であるが、よく眼を凝らすと縦横無尽にごく薄い踏み跡が交差している。動物が多い箇所でもないので獣道ではなくヒトが歩いた跡なのは間違いない。3年前に登った時とは明らかに雰囲気が違うのだ。登山ブームはこの超マイナーな山にも確実に届いているようであった。

           
     

今回歩いた篠井富屋連峰の全景

概略コースタイム
子供の森駐車場発(8:06)-男山直登コース分岐(8:21)-男山(8:52)-榛名山(9:12)-本山(9:44)-
中篠井下山口分岐(10:20)-飯盛山(10:42)-昼食休憩-行動再開(11:16)-車道交差(11:33)-
高舘山(12:06)-大網下山口分岐(12:20)-黒戸山(12:35)-兜山(12:56)-鬼山(13:15)-パジェロミニデポ地着(13:22)



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2010年12月12日

風雨雷山~笹目倉~鶏鳴山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 日光の山並みも日増しに白さを増し、遅い里山の紅葉も静かに終わりゆく。いよいよ里山逍遥の季節到来である。

 開幕第一座は先日偵察済みの鶏鳴山周回である。コースは、宮小来川より風雨雷山、笹目倉山と登り、北北西の尾根を辿り鶏鳴山南南東の815mPにて尾根を乗り換える。ここからはガイドブックなどに紹介されている周回コースで鶏鳴山へ至る。鶏鳴山からの下山は、山頂先の石祠のある展望地付近から新谷集落へ向け廃道化した地形図の破線を求めて落下傘のごとく下降。あとは林道へ拾われるという内容である。

 最近の山行は早起きが続いたが、今回は近場ということもあって比較的ゆっくりの出発であった。文句なしの上天気に気分も高揚する。

 黒川沿いに車を西走させ、眼前にピラミダルな笹目倉山の端麗な容姿が飛び込んでくると、思わず車を止めてカメラを向けた。

     
笹目倉の端麗な姿    まずは自転車をデポ    朝日を浴びて煙る畑

 新谷の鶏鳴林道終点(施錠されていて一般車は進入不可)に自転車をデポしたのち、日光市役所小来川支所へ車を駐めた。日曜の朝の静かな雰囲気が漂うなか、集落をそっと旅立つ。

 登山口は民家の裏手から。前回風雨雷山から笹目倉山に登った時に比べると若干薮っぽい感じだが、一歩踏み込めば道形も明瞭。里山特有の植林尾根の急登が始まる。

     
民家裏から失礼    登山口は少し薮    淡々と植林尾根を登る

 恐竜の背骨のような、長い長い尾根道の小ピークを超えていく。やがてこのコース唯一のビューポイントから見える鶏鳴山を眺めながら汗をぬぐい歩みを止めた。更にひと踏ん張りで、風・雨・雷のそれぞれの石祠が行儀よく三つ並ぶ風雨雷山である。今回は礼儀正しく鳥居をくぐって山頂を踏んだ。

     
鶏鳴山ビューポイント    風雨雷山   

 再び淡々と植林尾根を詰めていく。たまに急斜面になると踏み跡も掻き消されるが、ひたすら上を目指すべし。

 やがて見覚えのあるピークへ到達すると、そこが笹目倉山頂上である。

 前回は此処が目標点であったが今日は単に通過点に過ぎない。未だ全行程の半分にも満たないのである。

 一旦ザックを降ろして鋭気を養い、いよいよ今日のメインコースへと歩を進める。道標こそ無いが踏み跡も濃い北側の尾根道である。

 初めの急降下が終わるとあとは穏やかなアップダウンの連続だ。時たま樹林が切れて通過する陽だまりは、落ち葉の絨毯を踏みしめながら静寂の尾根歩き。

 ガイドブックは鶏鳴山から笹目倉までの尾根は読図力が必要としているが、なるほどと思った箇所があった。笹目倉からの登りでは支尾根に引っ張られそうになる所が一箇所だけあるが、他はさほど難しくない。逆に鶏鳴山から下ってくると、いかにも迷いやすそうな要注意分岐が二箇所あった。それだけに、山慣れたベテランさんには面白いコースだと思うが、区間に道標は皆無なのでやはり読図が出来る人かGPSが使える人でないと薦めることは出来ないであろう。

     
再び淡々と・・・    笹目倉山頂上    鶏鳴山への尾根
     
     

 途中、唯一東側に眺望が広がるポイントがある。先に進むと薄い薮が出てくるが、忠実に尾根を追うと薮が切れた所に濃い踏み跡が現れる。鶏鳴山から下ってくるとこの踏み跡は行き止まりに見えるが、脇の薮をくぐると先に進めるという按配だ。ここは初めてだと難しいポイントであろう。

 再び登りに転じ、815mPに到達すれば、分県別「栃木の山」にも紹介されている周回コースへと接合である。上のほうで熊鈴の音がしている。

     
唯一の眺望地より    少し薮っぽい    登りきれば815mP

 815mPでは埼玉から来たという単独者としばし会話を交わす。お互いこのマイナーな山域で人と遭遇したことに若干驚きを隠せない。

 ここからは一投足で鶏鳴山と思っていたが、やはりどうしてどうして、後半いくらか疲れも溜まってきたのかそうやすやすとは山頂へ到着とはいかないようである。

 途中賑やかにおしゃべりをしながら降りてくる4人組と挨拶をして947mPへ。枝越しに鶏鳴山の頂が見える。もう少しである。

 落ち葉でルートがよく判らない岩交じりの急斜面を慎重に通過し、登り返すとようやく三角点へ到達である。景色は男体山方面が若干で、眺望のメインディシュはこの先の石祠のある展望地である。

 展望地からの眺望は西側が胸のすくような日光方面の景色。東側は少し樹が邪魔だが手前の長畑や大沢の集落、古賀志山から半蔵山に至る稜線、篠井富屋連峰などもよく見える。

 先客の二人組男性ハイカーと食事を共にしながら、しばし里山談義に花が咲いた。

     
枯葉の絨毯       石祠の展望地にて

西側眺望

東側眺望

 食後のコーヒーが終わった頃には汗ばんだ体もすっかり冷えてきた。標高が千メートル近くもあると流石に空気がピリリと冷たいものだ。

 さて、新谷への隠された下山道はいずこに。下降予定地点あたりは薮になっていていまひとつはっきりしない。少し山頂方面へ戻った鞍部から植林帯を下降しながら様子を窺って尾根側にトラバースすることにした。

 下降開始予定点から僅か20m足らずの違いであったが、地形図で見る以上に急斜面であり、降りやすいところを拾いながら行くとどんどん進路がずれてくる。当たり前の事だが、下れば下るほど進路軸のずれは大きくなるのだ。目指すは手前の枝尾根の更に一本先の尾根筋なのだが、下りやすいルートを取るとなかなか一筋縄ではいかない。今こうして軌跡を眺めてみるとなるほど、枝尾根に阻まれてジグザグに蛇行している様子がはっきりと記録されている。
 枝尾根の終端とも言える岩の下を巻いてようやくトラバースに成功。目論見の尾根に復帰した。もっと早いタイミングで接合したかったのだが、降り初めの急斜面を安全優先で下降を先行させたこと、地形図には記載の無い岩が延々と行く手を阻んでいたのが原因で、ルートとしては若干不本意であったが、結果的にはまずまずの出来であろう。

 もっとも、最終的に接合した予定稜線の上方を眺めると綺麗に登っていく様子が見えるので、薮を嫌わずもうちょっとよく探せば尾根の「入り口」が見つかったのかもしれない。この点が若干残念ではあった。次回訪れる機会があったらこの尾根を登り詰めて検証しようと思う。

     
新谷に向けて下降開始    かなり急斜面    想定ルートから少々乖離

 樹林の急降下から抜け出した明るい緩斜面で小休止。若干のザレに足を取られながら尾根に取り付くと後は忠実にこれを追うだけである。踏み跡こそ無いが進むべき進路は明瞭。高度が下がり、やがて植林帯へ入るともう迷うことは無い。

 暫くして右に左に沢音が聞こえ出し、下山路も終盤であることを知る。

     
植林帯から一旦脱出    想定ルート復帰    再び植林帯へ

 尾根の終端で沢に接合すると、そこで廃林道に出会う。冷たい沢水で顔を洗うとまさに生き返った思いだ。緊張から解き放たれた思いで、背中に大きくのしかかる鶏鳴山と別れを告げるように最後の林道区間を歩き始めた。

 廃林道は部分的に薮化しており、斜面が崩落している場所も見受けられる。長らく使われていないようで自然へと還りつつあるといった趣だ。下って行くと現役林道としての姿が徐々に現れるようになってくる。

 今日は一体どのくらい歩いたのだろうか。一歩一歩、前に出す腿の筋肉がわずかに硬くなっている。きっといつもよりは疲れているのだろう。久しぶりの渾身の里山逍遥にすっかり昂ぶっていた自分を、冬の淡い午後の日差し溢れる林道終点が優しく迎えてくれていた。

     
自転車デポ地へ無事復帰    風雨雷山    鶏鳴山

概略コースタイム
小来川支所発(8:54)-風雨雷山登山口(9:04)-風雨雷山(9:47)-笹目倉山(10:18)-
815mP(11:30)-947mP(12:08)-鶏鳴山(12:26)-展望地着(12:36)-昼食休憩-
下山開始(13:20)-{植林地下降}-予定稜線接合(13:53)-廃林道出会(14:09)-
自転車デポ地(14:54)-{自転車}-小来川支所着(15:16)

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