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2009年01月 アーカイブ


2009年01月25日

薮をかき分け雨乞山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 最近やたらと仕事が忙しい。この景気低迷の時代に仕事が有るというのは幸せな事かも知れないが、「有りすぎる」というのも困ったものである。30代の頃も猛烈に忙しかった時期はあったが、当時は仕事で燃え尽きた感があり家では脱力していたものだ。最近は忙しくともどこか余力を残す知恵がついたようで、これをずるいと言うか賢いというか、50歳を目前にしてもまだどちらかはっきりとは判らないものである(^^;

 で、まぁ普通なら日曜くらい家でゆっくりといった所だが、日頃クヨクヨする時間の多い中高年にとって黙々と汗を流すのは精神的にも大いに結構。だが、ジムに会費を払ってマシンの上でハムスターみたいな真似事は性に合わない。やはり自分は山である。

 寒さもいよいよ本番を迎える"薮山の旬"、日曜の午後に地図に山名も無くば、ルートも不明な雨乞山(あまごやま){360m級}へ向かった。

 雨乞山は、かねてより新里街道を日光方面に車で向かう際に、その形の良い姿が気になっていた。また、男抱山からも西に、その鋭敏なピークが認められ、あそこに立てないものかと思っていたところ、ブログ仲間のけむぞうさんが先日歩かれたのが刺激になり、是非自分もと思い立ったのである。

 鞍掛山へ向かう道の石鳥居のある手前、少し左側にスペースが膨らんでいる所に車を置く。ここから田んぼのあぜ道を失礼させていただき、チェーンで封鎖された舗装林道を進んで行く。

 真新しい砂防ダムがあったり、なかなか整備が行き届いた感じの植林地は奥に行くとやや荒れてくるが、まだ舗装道路はしっかりしている。あらかじめ地図で検討しておいたポイントから薮が生い茂る斜面へ取り付いた。道も踏み跡も皆無だが、標高にして30m~40mも登れば尾根筋に出る筈だから何とかなるだろう。

 序盤は伐採された緩斜面なので楽に登れた。そのうち薮と倒木が出てくると斜度も手伝ってなかなか手強くなってくる。安全で体力を消耗しないコース取りは案外難しいものだ。

     
舗装林道入口    ここから左へ取り付く    行く手を阻む薮

 尾根に出てみると鉄条網が稜線伝いに張られている。隣が射撃場なので(今は使われていない感じがする)危険防止の為に立ち入り禁止のようだ。手入れがされていないで数箇所破れている所もある。下を窺うと、射撃場方面に下っていく踏み跡が微かにあるので往来があるようである。

 尾根も容赦の無い薮に覆われているが、なんとかストックで払いながらやり過ごす。やがて現在伐採が進行中のエリアになり、薮とは一旦お別れになった。

     
尾根上に鉄条網が    尾根上も薮が    植林地を登る

 チェーンソーを使って上手に椅子とテーブルがあしらえてあったり、真新しい切り株があちこちにあるところを見るに、平日に作業員の方が作業している様が目に浮かぶようである。
 稜線を段々登り詰めていくと鉄条網も無くなり雰囲気も明るくなってくる。西側に枝の合間から見える鞍掛山のシルエットが大きい。

 最後の電車道のような登りを終えると、そこが一つめのピーク。西峰である。景色はかろうじて枝の合間に西側北側が少しといったところだ。

     
きこりの休憩所    鞍掛山が見える    西峰

 西峰から一旦鞍部に降りるのだが、薮に覆われていて尾根筋がよく見えない。少し南に下る方向に踏んだ感じがあるのでこちらを辿る。方角をロストしないようにトラバース気味に降りると古い作業道に出会う。少し先を見ると鞍部より若干下げた南側に続いているのが見えたので、そこまで進み再び尾根に取り付き直す。やたら棘の多い薮なので難儀した。今日はこんな薮なのに軍手を忘れた事を大いに後悔する。取り付いた尾根から西峰への踏み跡がばっちりと付いていたので、やはり入り口を見落としたのだ。

 ここからは案外しっかりした尾根道が続くが、中央峰(雨乞山)直前の急登はなかなかきつい。枝や根を頼りに息き切らせながら登り切ると、やや明るいもののそこもまた眺望に乏しい。山頂の北側は結構鋭敏に切れ落ちていて凄みがある。

 中央峰から南東への高度下げが難しかった。踏み跡は深く落ち葉に覆われていて、とにかく安全に行ける所を選んで進むといった感じで気が抜けない。難しかった箇所をやり過ごし、鞍部前の小ピークで再び薮に隠された尾根筋を見過ごす。よくよく見ればはっきりとわかるのだが、若干巻くのだろうなどと勝手な想像で踏み跡の濃い方を辿るとどんどん高度を下げていくので間違いに気付いた。リカバリして、薮をほんの少し掻き分ければ今度は軽快な尾根道である。なかなか一筋縄ではいかないが、メリハリが効いていて楽しい山歩きである。

     
西峰から再び鞍掛山    中央峰(雨乞山)    軽快な尾根道

 東峰(333mP)への登りは案外平穏。もう一息という所で岩が見えてきた。そこから眺望があるのかと期待をしながら登るも、ここもうっすらと南の雲雀鳥屋方面が見えるのみ。

 東峰からはの下りは特に迷うポイントも無い。一番東側の四つ目の展望峰へ向かう中間点を下山ポイントと考えていた。ところが、様子を伺うとかなりの激薮でちょっと手に負えそうも無い。展望峰まで行ってその先の尾根を降りられなかったら戻るしか無いかぁと腕時計に目をやりながら進んでいく。

 鞍部では北側から作業重機用の砂利林道が上がってきている。と、同時に樹に赤テープが巻き付けられていてにわかに人の手の入った気配が濃くなってきた。それまで野生の中を彷徨うようにして歩いてきたせいか少しほっとしたのも事実である。

     
東峰直下の岩    岩から雲雀鳥屋方面    展望峰手前鞍部

 一登りして展望峰へ到着。パッと東側に開けた眺望が目に眩しい。今日のご褒美にしばし休息だ。

展望峰より宇都宮市街

 さぁ、下山はどうしよう。先ほどの鞍部まで降りて薮を突破しようか。南の尾根はどうだろうと偵察すれば、赤テープが続く。良く踏まれているし、手堅くこちらだなと即断だ。{薮はちょっと食傷気味}(^^;

 深い落ち葉に転びそうになりながら降りていくとやがて車道の向こうにパジェロミニの姿が見えてきた。けむぞうさんコースでどんぴしゃ着地成功!

     
茗荷沢寄りにて    手前展望峰,左奥鞍掛山   

概略コースタイム
駐車地発(13:19)-林道から取り付き開始(13:34)-尾根(13:43)-東峰(14:08)-中央峰(14:37)-
コースアウトで約10分ロスト-東峰(15:00)-展望峰(15:17)-駐車地着(15:38)

2009年01月18日

パジェロミニ、雪上を舞う

 パジェロミニのタイヤをスタッドレスに履き替えた。去年中古で車を買った時に前オーナーが2シーズン位使っていた使用品ではあったが、まだ柔らかさも残っているし山もある。本格四駆にスタッドレス。念の為にチェーンもオークションで安く手に入れたので是非雪深い所を走って見たいと思っていた。

 幸いにしてというか何と言おうか、土曜日の出張開けで流石に今日は「休山日」である。「雪を見に行こう!」と家族を誘いいざ出発。

 空はどんよりと曇っているがまぁいいか。途中川治温泉にある名物コロッケを囓りながら段々と廻りに雪が目立つR121を北進す。かつて、スキーで足繁く通った頃は、三依あたりを過ぎれば路面も圧雪だった記憶がある。昨今は雪が少ないのか、除雪がしっかりしているのか、四駆どころかノーマルタイヤでも楽勝の道である。

     
川治名物のコロッケ屋さん    安住アナも来た?    田島道の駅

 R352を尾瀬方面へ左折すると流石に行き交う車がめっきり減りいよいよ圧雪状態になる。本日の目的達成かと嬉々としてハンドルを操ることしばし。イージーセレクト四駆とスタッドレスはなかなか快適快適。

 と、その時である。緩い右コーナーで「あっ!」と前輪がグリップを失った。

 道路左の雪の壁に車は吸い寄せられるようにして流れる。二駆車での雪上スリップは何度も経験しているので、こういった状況では為す術が無いことは瞬時に感じ取れた。駄目かなと思っても反射的にハンドルを右に切る。すると、踵を返すが如く車体は右へ反転。おぉー、今度は対向車に突進だ。慌てて左に切れば、またガードレールへ突進。

 結局左右に数回振られても事なきを得る。

 四駆だって滑る時は滑る、というのは良く言われる事だが、まさにその通り。だが、あの状況でハンドルを切った方向に進行方向が切り替わる所は流石。結局四駆に助けられたのは事実だが、四駆を過信した5速の約50km/hで走行の慢心も事実。

 しかし、先行車はもっとスピード出ていたが皆大丈夫なのか。途中で車から降りてみると、「アチャー。これはスケート場だね」、皆命知らずだ。

 ドリフトしまくりの我が車内が恐怖体験ゾーンだったことは言うまでも無い。映画の特撮並に凄かったんだから。対向車の方にも、「突然不幸が舞い込みそうになった」恐怖感を味あわせた事は深くお詫びしたい。

 で、その後は4速で40km/hをキープ。気持ちは二駆車でそろりそろり。後ろから来る車は軽トラだってお先にどうぞ。背中の山猫が泣いてるぜ、だってオイラはサバンナ育ち。

 てな訳で、雪道堪能しまくりのドライブだったのだが、なんかすっきりしない。おぉ、直結四駆モードを試していなかったぜ。おし。次は手軽な所で奥日光か? などと、まだまだ懲りない自分であった。

     
     

2009年01月10日

羽賀場山からお天気山へ

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 前日は平野部も雪の予報ではあったが、気温が高かったせいか街の中は冷たい雨が降った。

 今月はもう仕事で土曜日はすべて埋まっている。H君との初山行をどこにしようかと前日の夜ぎりぎりまであれこれ迷った。雪が降ったら古賀志山辺りに雪見登山も良いだろうと考えたが、空振りの雨。分県別「栃木県の山」をめくっていて手が止まったのが羽賀場山の頁だ。羽賀場山~お天気山への縦走はアップダウンや岩尾根も多くかなり手強いらしいが、休みが二日続くから体力的なダメージは構わんだろうという判断でこのプランに決定した。
 羽賀場山(はがばやま){774.5m}もお天気山(天気山、天久山とも言われている)も地形図に山名表示は無い。一等三角点の羽賀場山。少し手前のピークである777mに三角点があるも、山頂は一つ離れたピークのお天気山。この2つの興味深い山を巡る山行となった。

 朝起きて見ると意外な事に深い霧に包まれている。天気予報を幾つか見ても日中は晴れるという予報だ。霧の晴れる時間を考え、H君との待ち合わせを30分遅らせて出発したが、鹿沼の7-11に立ち寄る頃にはまばゆい日差しが戻ってきた。どうやら良い山遊び日和のようだ。

 長安寺の駐車場に車を駐めて出発。駐車場脇にも鉄塔巡視路の登山口があるが、長安寺の名物である「岩ヒバの階段」を登って行こう。

     
長安寺駐車場    長安寺山門    岩ヒバの階段

 長安寺本堂右手の納屋脇から入るとすぐに駐車場から上がってくる道と合わせる。植林地内の巡視路を黙々と登っていき、ダウンのジャンパーを脱いでザックにしまう頃になるとすぐ尾根に出た。

 行く手には2つの鉄塔があるので、巡視路として整備されているから歩きやすいことこの上も無し。最近ガサガサした山ばかり登っているので、まるで「遊歩道」のような気楽さである。

 やがて一つめの鉄塔に到着。樹林の中で皆無だった眺望も、ここから東側に開ける。電線が向かう次の鉄塔は、先日登ったかまど倉ルートの始めにあった鉄塔である。ちょっぴり感動的だ。

     
尾根に出る    一つめの鉄塔    右奥にかまど倉

 鉄塔を後にして再びよく整備された巡視路を進む。淡々と高度を上げていき、次に視界が開けた鉄塔からは南西側に眺望が拡がる。光から閉じこめられた植林地歩きのこのコースは、たまに見える景色のありがたさが乾いた喉を潤す水の如しである。

 ここから伸びる電線も、この地域でひときわ目立つ赤い鉄塔。そう、鳴蟲山のあの巨大鉄塔へと続いている。あの鉄塔から展望した、堂々と、そして荒々しく拡がる羽賀場山とお天気山を今歩いているのだ。

     
再び植林地の尾根    二つめの鉄塔    横根山方面

 標高500mを過ぎた辺りから日陰に所々シャーベット状の雪が残っている。動物以外の踏み跡は見られないので、恐らく前日の雨がここではみぞれだったのであろう。

 いろいろなサイトで指摘されていた迷い易い尾根の分岐を左折する。「羽賀場山」の山名板が掛かっていた。無論道標として掛けている訳だが、せめて矢印を付けるなどして欲しい所だ。(下写真中)

 この分岐から先は北側の景色が時折見え隠れし、岩もちょくちょく顔を覗かす尾根となる。北側に形の良い山が見えてきた。地図を見る限り笹目倉山か石尊山のようだが、ちょっと自信が無い。

     
雪が僅かにある    尾根を左折    笹目倉山(だと思う)

 浅雪の笹道を進むと次のピークが羽賀場山の山頂らしい。あと一踏ん張りだ。

 小広い山頂は樹に鬱蒼と囲まれていて展望は全く無い。ここまで登って来る間も殆ど眺望も無し、山頂もこれでは人気が無いのも頷けるというものだ。そんな静かな山頂では、ひときわ大きな三角点石が一等三角点を誇っているようにも見えた。

     
羽賀場山が見えてきた    一等三角点がある山頂   

 そろそろ正午という時間だったが、出発も遅かったし、この山頂では食事をする気分にもなれないので先を急ぐ事にする。

 親切にもお天気山下山口のバスの時刻表がくくり付けられていたり、ちょっと下世話かなかとも思ったが、長安寺に車を置いて上大久保バス停から車まで戻るコースを歩く者にとっては非常にありがたい情報であることを、このあと我々も下山後身に染みて思うことになる。

 さて、山頂からも淡々と尾根歩きは続くが やはり他サイトで指摘されていた二番目の要注意分岐をチェックし忘れて直進してしまう。痩せ尾根でやたらと斜度がきつくなってきて雪付きの量も増えてきた。おかしいなとGPSを見てみるとやはり北の尾根に入ってしまったようだ。

 どこに分岐があったのだろうと注意深く戻ると、南西方向に急降下する道があるでは無いか。樹林に落ち込むような急傾斜にジグザグの踏み跡が付いている。ぱっと見た目にはルートらしからぬ感じがするから要注意だ。羽賀場山から西側はあまり歩かれていないようで、慎重に行動したいエリアである。

     
ご親切に    尾根は続くよどこまでも    屋号なのか?

 このルートのアップアダウンのきつさは覚悟していたが、なるほど、なかなか歩き応えのあるコースだ。小ピークからの下りはフィックスロープがちょくちょく出てきて一気に下ってまた登り返しの連続。せめて777mPまで行ってから昼食をと考えていたが、大休止も兼ねて途中の日溜まりピークで昼食とした。

 冬型の気圧配置で日本海側や高山では大雪なのだろう。こんな日は1000m足らずの里山でもえらく強く冷たい風が吹くことを、以前群馬県境の仙人ヶ岳でも経験したことを思い出した。時折冷たい北風がごうごうと音を立てて吹き抜けるのを我慢すれば、日差しはそれなりに暖かい。景色は今一つすっきりしないがまずまずのランチポイントだった。

     
枝越しの北側    日溜まりで昼食    同左

 この後も急下降と急上昇を繰り返し777mPへ到着。7が三つ揃ったこのピーク。きっと縁起担ぎの人が何か山名板のような類のものを付けているに違いないと思っていたのだが何の事は無い。プラスチックの赤い小さな三角点があるのみでちょっと拍子抜けしてしまった。

 777mPからバージンスノー(一応)で輝く尾根を渡り、北北西の急斜面を雪に注意しながら一旦鞍部まで降りると、後はお天気山までの最後の登り返しとなる。

     
ロープを下るH君    777Pからお天気山    雪の尾根を進む

 登りの途中で右手の樹が途切れた所から見える笹目倉山だと思われる山はやはり恰好よい。

 これが最後の登りとばかり力を振り絞り、とうとうお天気山へ到着した。やれやれここまでかなり長丁場だったような気がする。

 山頂の平坦地を囲む雑木は落葉しており、この時期は案外景色が良い。ガイドブックでは眺望無しと書いてあったが、少し北側にある場所からの日光方面と西側の眺めは文句なしだ。スパルタンな縦走であった今日一日のご褒美に相応しい。
 三角点が無いので地図上の標高を知ることは出来ないが、手元のGPSによると標高は784mとなっていた。(誤差補正後の読み取り値)

     
再び笹目倉山(だと思う)    お天気山頂上    かなり古そう
     
      鹿沼市街方面
     
雪の山頂    前日光の稜線    日光方面

 素晴らしい眺望に後ろ髪を引かれる思いだが、時計を見るともう3時になろうとしている。下山を急がねばならない。
 山頂にある説明板には上大久保バス停まで2時間と書いてあった。エェー。2時間?事前の複数情報では1時間だった筈なのに。これではバスに間に合うどころか下山しきる前に日没を迎えてしまう事になってしまう。最悪ヘッドライトの使用もやむなしと覚悟を決めて歩き始めた。
(注)結果的には1時間程度で下山出来たが、途中厳しい下りが続くので安全を見て2時間と書かれていたのだと思う。

 前半の下りが急降下なのは知っていたので、まずは慌てずに確実に。フィックスロープを何本か繋いで、しょっぱなの厳しい下りをやり過ごすと行く手を阻む巨岩が現れる。(下写真左)
 右側がおおよそ6~7mはあろうか、すっぱり垂直に切れた姿はなかなかの迫力だ。この岩の間を縫うようにして進むと、程なく石祠だけがひっそりと佇む二の宮だ。祠の向かう先、どんな人がどんな願いでこの厳しい山奥へ祠を建てたのだろうか。

 更に下って行き、一の宮へ登り返す鞍部からは道標に従い樹林の闇の中へと吸い込まれるように降りていく。ここも始めはフィックスロープが続く急降下の連続だ。ひとしきり降りてふと上を眺めると、一の宮の実体であろう露岩がおどろおどろしくも暗い樹林の中に張り出している。

     
巨岩の間を進む    二の宮の石祠    ここから樹林を下る

 途中一ヶ所踏み跡が乱れている箇所があった。斜面を荒々しくえぐりながら下の方へ向かう比較的新しい踏み跡は、樹の白ペンキの矢印を追っているようだ。もう一方の踏み跡は山を巻いて僅かに上に登っている。さぁ、思案のしどころ。GPSを出して少し下って見ると下山口の方向には向かっているようだが、明らかに予定のルートから外れている。前回、川化山からの下山時はほぼ同じ状況で強行突破したが、まだ200m以上も標高差があるし、時間ロスで日没を迎えると致命傷になりかねない。ここは手堅く、よく踏まれた方を進むべし。

 進めば無事に安定ルートへ復帰。黙々と進むと沢音が聞こえてきて下山も終わりに近い事を知る。やがて斜度も緩くなり作業道を進み、平坦地になると最後はバスの時間が気になり小走りだ。

 バス停に着いて時刻表を見ると4時11分のバスが丁度5分前に出たばかりで、次のバスまで1時間以上間がある。稜線に居た時に「間に合わなかったら3キロ歩いて行こう」と言っていたのに、いざ間に合わないと悔しいものだ。しかし慌てて下山して怪我でもしたら一大事。こうして無事に降りて来れたのだがら良しとしよう。
(注)実際には約3.5Km

 今日の山行の締めくくりとして、夕日に染まるお天気山を眺めながらのんびりと車道を歩いた。大芦川のほとりに差し掛かる頃には、夕餉の支度の煙たなびく集落を見る。こんな時間にこんな所を歩くのも滅多に無いことだろう。
 ひときわ高いところにある長安寺の建物が見えてきた。羽賀場山稜線の上には大きな満月が昇っていく。すっかり体も冷えてしまった。一体今日はどれくらい歩いたのだろうか。早く帰って熱い風呂に入りたい。寒風が吹きすさぶ車道歩きはことのほか辛いが、今日一日の充実した山行を振り返ればさほど足取りも重くはない。こうしてH君との新年初歩きは想像以上のハードな山行となり幕を閉じたのである。

     
夕日に染まる天気山      

概略コースタイム
駐車場発(10:24)-鉄塔一つめ(11:04)-鉄塔二つめ(11:34)-羽賀場山(12:18)-昼食地着(13:12)-
休憩-昼食地発(13:57)-777mP(14:28)-お天気山(14:56)-二の宮(15:15)-
一の宮手前分岐(15:25)-上大久保バス停(16:16)-駐車場着(17:07)

2009年01月03日

ハイグレード里山 谷倉山(星野)

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 永野にある谷倉山(やぐらさん){599.4m}。以前星野自然村を訪れた際に、ずんぐりとした三峰山とは正反対のたおやかな雰囲気のこの山に心惹かれた記憶がある。その後三峰山へ登った際 も、何時かは・・・と思って眺めていた。そんな思い入れのある山を新春山行第一弾として歩く事にした。

 星野自然村駐車場へ車を駐めて集落を抜けて行く。いつ来てものんびりとした雰囲気のあるエリアだが、まだ三が日ということもあり、一層静かな空気が辺りを覆っている。柚がたわわに実っていたり、よく手入れされた南天が目に鮮やかな家々を巡りながら進むとやがて日当たりの良い畦脇の道へと出た。


     
星野自然村駐車場    柚実る集落    南天が鮮やか

 田の横に伸びる林道から眺める三峰山もこれまた長閑。田植えが終わった頃、真夏の青田、秋の稲穂が垂れる時期にも同じ場所で三峰山を眺めて見たいとしみじみ思う。

 林道を更に進むと植林地へ入りそれまでの光は一気に失われるが、綺麗に枝打ちされた箇所はそれでもなかなか清々しいものだ。

     
長閑な里と三峰山    林道を進む    綺麗に枝打ちされている

 今回は「栃木百名山」{下野新聞社}で案内されていたコースを往路に取ったのだが、なるほど説明通りに林道終点に近づくにつれ倒木などで道が荒れ出してきた。

 林道終点に到達すると、これまた説明通りでもはやルート不鮮明。「栃木百名山」では谷を詰めていくように書いてあったので、薮の先に続く沢筋を追わないでここで左右どちらかに逃げれば失敗に繋がる可能性は高い。

 こんな事もあろうかといつにも増してGPSの設定ポイントを多めに入れてきたのだが、目先のルートを考えるのに精一杯でちょっと役不足の感もある。とにかく谷を詰めるのは間違い無いので、薮を分けて進んでいくと所々に赤や青のテープが出てきた。これを追いつつ更に無い知恵を絞りつつ牛歩のルート取りである。

 暫くすると行く手に沢を塞ぐ岩が現れた。岩の割れ目から水が出ているので、上部に水を溜めているのだろうか。ここはネットで他の方の記録があったので左を巻く。巻くといっても道がある訳でなく斜面をを直登しなければならない。あまりに斜面が急なので、爪先で足場を確保しながらゆっくりと確実に進むしかない。

 一つめの岩を何とかやり過ごし一旦沢に復帰するも、先ほどよりは小振りだがまた岩と薮が行く手を塞いでいる。斜面の上の方を見ると赤テープが一つ目に入ったので意を決して斜面を登っていった。「45度はあろうかと思われる急登」という表現が他の方のサイトにあったが、実際誇張では無い。局所的にはそのぐらいあるだろう。そのあとも赤テープを追いながら急登に次ぐ急登。柔らかい林床もまた砂利混じりの急斜面に負けず劣らず滑りやすい。踏み込みが出来るのが唯一安全確保の道と知り、一歩一歩確実に。きっとアイゼンを付けた雪道の歩行もこんな感じなのだろうかと。

     
段々荒れてくる    急登急登    ご覧の通り

 標高490mあたりまで頑張って登り進むと、左手にトラバース状に伸びる踏み跡に合流した。右手(東側)にも幾らか伸びているので本来のルートはもう少し東側だったのであろうか。しかし地図の等高線を見る限りどこを通ってもあの沢を詰めてしまえば大差は無いだろう。

 予定していた肩尾根とは逆方向なのは承知していたが、緩やかに登るこのトラバース道を辿っていくと明るい尾根に飛び出した。南の方に少し眺望がある。緊張の難所通過後なのでこの明るさが嬉しい。GPSを出して見るとどうやら枝尾根に出たようで、目指す肩尾根へと赤テープが続いている。
 夏場ならかなり薮っぽい感じだが、今の時期は枯れ枝を払うだけで済むので助かる。この尾根を登り切ると境界尾根である肩尾根に出た。ここからは踏み跡もしっかりしており不安感は全く無い。山頂まであと少しだ。

     
尾根に出て一安心    尾根を乗り換えて    もう少し

 電波塔の施設を囲っているフェンスを回り込むようにして山頂へ到着。上を見上げると塔が偉容を誇っている。その脇にひっそりと三角点と山名板があった。眺望は全く無い。

     
寂しい山頂    電波塔が主役    山頂はおまけ?

 山頂がこんな感じである事は既知だったので、早々に後にして北側の展望地へ向かった。

 北側は塔の巡視路になっており、よく整備されている。山頂まで延々と麓から電柱が伸びているので若干興ざめだが、日陰で背の高い霜柱をザクザクと踏みしめながら下っていくと、広く伐採された展望地へ飛び出した。

 後で判ったのだが、粟野の街から大越路へ向けて車を走らせていると、左手に目に入る伐採された高みが実はここだったのである。あそこに登ったらさぞ景色がよかろうにと何時も思っていたものだ。

 眺望は男体山からぐるっと南東まで、180度とまでは行かないが結構なパノラマである。雲に覆われ日光連山の雪景色は今一つであるが、東側の雄大な景色を眺めながら予定通りここで食事をすることにした。

 廻りを見ると微かに雪が残っている。朝晩の冷え込みで少し吹っかけたのであろう。北の山々からちぎれてきた雪雲の残骸が太陽を覆うと、一気に気温が下がり、陽光が戻ると暖かくて心地よい。眼下に広がる景色も、そんな雲のいたずらで美しくその表情を変える。至福のランチタイムである。

     
伐採地より      
     
      僅かに雪が残っている

 食事を終え一旦山頂まで登り返し、電波塔脇にある赤リボンと青リボンの所を分け入ると西北西の尾根に入ることが出来た。以前は此処に道標があったらしいがどこにも見あたらない。

 登路の緊迫感溢れる状況に比べるとこの西尾根は極楽である。くるぶしまで埋まりそうな落ち葉の絨毯をサクサクと踏みしめながら、しばし鼻歌交じりで進んでいく。

 ここまで1枚とて道標の無かった往路だったが、この平坦な尾根に1枚だけ古い手作りの道標があった。あまり意味が無い場所の設置だが、やはりほっとするものだ。

 難しかったのは「栃木百名山」のルート図に従ってどこで谷に降りるかだった。GPSに入力した予定下降点あたりで下を窺ったが、踏み跡やテープの類も無く、フリールートで降りていくにはいささか自信が無い。このまま尾根を辿って465P,348Pと巡って降りるのもアリかなと思いながら進んでいくと、はっきりと赤テープが下に向かって降りていく箇所があり、ここから下降を開始した。

 登りの45度斜面ほどは荒れていないし踏み跡も比較的はっきりしている。所々テープが消えかかるが多少目を凝らせば踏み跡を探せるし、追っていけばまたテープが出てくる。比較論だが、登りのルートに比べればこちらのほうが数段マシだろう。

 一旦降りきると突如道標あらわる。小山芳姫(おやまよしひめ)の墓へという案内が、今降りてきたルートの隣の谷を示している。

     
サクサク尾根道    ここで尾根とお別れ    突如現る道標

 こんなしっかりした道標があるならもう道は間違い無かろう。安心も手伝い、寄り道で芳姫の墓を目指し道標の示す方向の沢を登り始めた。

 こちらもルートは荒れ放題。夏場は薮に閉ざされ到底通行不能だろう。70m位登り返した所にひっそりと芳姫の墓はあった。小山芳姫についてはWikipediaに詳説(伝説の項をご覧いただきたい)を譲るが、要は南北朝の戦乱さなか、粕尾城に居る夫に食糧を持って行った道中で殺害されてしまった芳姫を哀れんだ地元の人が、江戸時代に墓を建てて祀ったということである。

 芳姫の墓の右手の方を見ると先ほど降りてきた箇所の赤テープが風になびいている。登りにこちらのルートを取る場合は一旦芳姫の墓を目安に登り、ここから右手に登れば良いだろう。

 先ほどの分岐まで戻り、更に下って行くと段々と傾斜が緩くなってきた。沢を左に右にと渡り返していくと先に林道が見えてきた。やれやれ安全圏に戻って来れたようだ。振り返ると「よしひめの墓この先」と書いた木の柱が立っている。

     
行く先は荒れ放題    小山芳姫の墓    林道出合箇所

 後は草だらけの林道を進むのみ。ガードレールがあったりするが、往来も無いのに随分整備されている。

 やがて「地層探検館」前に出て見ると「小山芳姫の墓へ」の立派な標識が立っているでは無いか。しかも途中まで林道有りとも書いてある。そういえば先ほどのガードレールは整備の一環だったのか。途中で草が張り出して車一台がやっと通れる道。終点も一台駐めたらそれだけで一杯になってUターンもままならない道へ、よく案内板を出しているものだ。また、車を置いた後も、普通のハイキング路とは到底言い難いようなルートなので、せめて「危険が伴うので軽装での見学はお断り」等の文言は一言添えて欲しかった。自分のように、里山遊びのついでに立ち寄るのならどこをどう通っても仕方が無いが、一般の方にも見学を促す道標だからこそ、栃木市教育委員会には猛省して頂きたいと思う。山の経験のない人が、こんな道標を見て気軽に入ってくるならここは充分に危険なエリアである。

     
ガードレールが必要か?    探検館前    同左

 探検館脇からすぐに集落へ出る。はずれにある田んぼの畦に駆け上り、いましがた歩いて来た谷倉山を一望すると、彼方に電波塔のアンテナが見えている。幾つかある枝尾根を眺めながら、次回は谷で苦しむよりルーファンで尾根歩きだなと一人ほくそ笑んだ。
 南の三峰山には日が隠れようとしている。まだ3時頃だというのに星野の里を夕方の空気の冷たさが包み始めていた。

     
谷倉山    三峰山に日が沈む   

概略コースタイム
駐車場発(9:51)-林道終点(10:25)-急斜面へ(10:40)-枝尾根(11:24)-肩尾根(11:35)-
山頂(11:46)-展望地着(11:53)-昼食休憩-展望地発(12:50)-山頂(13:11)-下降点(13:40)-
芳姫の墓道標(14:00)-芳姫の墓(14:11)-林道出合(14:30)-地層探検館(14:41)-駐車場着(14:54)

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