白根山から金精峠周回
今年の夏は諸事情で山に専念出来なかったが、それでも夏シーズンのシメは白根山と決めていた。理想は湯元からのコースであるが、関東以北の最高峰を初めて踏むのには少し体力的に自信が無かったのでオーソドックスな菅沼からのアプローチとし、少し欲目を出して前白根山と五色山を踏んで金精峠から菅沼へと降りる周回コースとした。
金精トンネル脇に自転車をデポして湯元から登り、帰路を短縮することも検討したが、そういう「企画モノ」は次回以降として今回は真面目に白根山の面々を丹念に踏む思いで出発した。
最近すっかり慣れた早朝出発、いつも通りに夜明け前のいろは坂を駆け上り金精道路で高度を稼ぐと、夜明けの男体山を捉えようとするカメラマンの三脚がちらほら。自分も真似て一枚を収めた。
菅沼の駐車地に着くと既に沢山の車が並んでおり、各々準備と出発で慌ただしい雰囲気である。こんな早朝なのに流石に人気の名山は違うものだなと感心することしきり。一日の山行で行き会う人が多くても十数名、少ない時はゼロといったコースの多い自分としてはいささか違和感を感じないでもないが、今日のコースは体力的にはキツそうだが観光登山と割りきっているのでたまにはこういうのも良いだろう。
夜明けの男体山 | 早朝から登山者が一杯 | 名残の紅葉が早朝の青空に映える |
登りはじめは岩混じりの比較的急登。前方にも後方にもハイカーの声が聞こえる登山道も久しぶりだ。はやりの山ガールも沢山見かけるが、彼女たちの華やかなウェアと競わんばかりの「山ボーイ」も目を引く。メジャーな山では若者の多さも既に当たり前のことなのか、登山が中高年の専売特許でなくなったのは良い事だが、地味な服装で見るからにオヤジな自分がちょっと気恥ずかしくなったのも久しぶりである(笑)
座禅山を巻くようにして登り、斜度が緩んだ途端に目に入ったのが弥陀ヶ池とその向こうに毅立する白根山。よく紹介されるアングルだ。日陰になっている北のガレ場を白い氷雪のようなものが覆っていて美しい。
登り始めは岩を縫う急登 | 初冬の装い弥陀ヶ池から白根山 | 北斜面はうっすらと氷を纏っている |
登山口からここまで既に標高差500mを登っているので、里山や近郊低山なら山頂に達しているくらいの登高だが、ここから山頂がある眼前の巨大な隆起を目指して更に進むのだ。息を整えながら時折後ろを振り向くと、先程ほとりを歩いてきた弥陀ヶ池とその向こうに広がる登山口の菅沼が塩梅よく配置された風景は一幅の絵葉書のようでなかなか素晴らしい。
終盤のガレ場は、高度を上げるに従い斜面を氷が覆うようになり緊張を強いられる。しっかりと蹴り込んでいけばなんとかなるが、もう少し気温が下がって氷が締まってくると軽アイゼンが必要になるかもしれない。
苦労の末、外輪に登りつくと一挙に南の眺望が目に飛び込んできた。凍りついた荒々しい周囲の岩肌が凄い迫力だ。冷たく強い風が吹く周囲は十分な感動をもってして登山者を迎える。
弥陀ヶ池と菅沼、絶景也 | 終盤のガレ場は氷結で気が抜けない | 山頂手前の岩塔と西側眺望 |
草が氷結 | 山頂はこのピークを超えてその先 | 露出した岸壁が凍結している、凄い! |
山頂が見えた |
小さな外輪山に囲まれた中央にある突起のような岩峰が山頂である。気温は2度、日差しに助けられさほど寒さは感じない。山名板の写真(上中)に人は写っていないが実際は山頂に人がごった返していて長居はできそうにもない。この山域は携帯(au)の電波が届くので、記念にと家内に電話をかけてから山頂を後にした。
南側に降りていくと、形の良いシルエットの山が見える。錫ヶ岳であろうか。砂礫の中を降りていく風景もまたアルペンムードが漂う。五色沼を時折見降ろしながら岩場を一気に高度を下げていくとやがて森林限界に戻り避難小屋へと達した。
下山開始、正面は錫ヶ岳か? | 道標もアルペンムード漂う | 白根山避難小屋 |
前白根山へは避難小屋から続く稜線に乗るつもりであったが、せっかく来たのだからと思い、寄り道で一旦五色沼まで降りる。紅葉の季節もとうに終わっており、五色沼の周囲は寂寞とした初冬の雰囲気が漂っていた。湖岸で休憩をとり、水辺の踏跡を辿っていくと前白根山へ登り返す地形図破線道が続く。あまり歩かれていないようで道形も乏しく先行きがやや心細い。もっともいつも歩いている藪山に比べれば十分立派な登山道に思えるのだが、ハイカーの多いここ白根山エリアにしては若干ワイルドな道の部類に入るのではないだろうか。標高差約150mの登り返しは思いのほかきつく感じた。
苔むした岩や倒木の間を縫うようにしてよじ登っていくと、段々と空が開けてきてハイカーの声が遠く聞こえてくる。あと一歩あと一歩と頑張りながら足を進めてようやく稜線に辿り着いた。避難小屋から尾根に乗ればこの苦労も徒労となった筈と思うと疲れが倍増!まるで地獄から生還してきたような気分だ。草むらに腰を下ろし、しばし冷たい風に吹かれる。すぐそこの岩のピークを登れば前白根山の山頂である。
那須の朝日岳から茶臼岳を眺めるのとよく似た圧倒的な存在感。目の前に鎮座する形の良い白根山を見ながらゆっくりと食事休憩とした。初夏の頃から携帯していないガスバーナーが今日はザックに入っている。そう、冬の定番のカップラーメンとコーヒー。
前白根山もかなりハイカーの数が多いが、まだ時間が比較的早いので湯元から直接登ってくる登山者は通過点と考えているのか、長時間滞留する人は少ないので山頂は広い割には静かなものである。
白根山の勇姿を堪能した後は北にルートをとり、五色山を目指す。左手にはこれまた絵葉書のように美しい五色沼と白根山が目を楽しませてくれる。ガスが去来するたびに陰陽がもたらす湖面の変化が神秘的だ。
前白根山頂上 | 五色沼と白根山 | 向かうは五色山 |
前白根山より手前稜線と白根山を望む
南から昇ってくるガスが周囲を包み始める頃、五色山へ到達。ここより北西の稜線は笹尾根である。砂礫帯を歩き続けてきたせいか、笹道がことのほか優しく感じる。
笹尾根はなんとなく落ち着く |
国境平まで高度を下げると、もうすでに周囲はいつもの歩き慣れた樹林帯である。ガスに包まれた森を徐々に登り返していくと金精山だ。湯元方面の景色はガスで白く閉ざされている。
ガスで眺望ゼロの金精山 |
遠くから見ても尋常ならぬ迫力を持った金精山の笈吊岩は、ガスに巻かれた横からの眺めも異様に迫力がある。そんな金精山からの下りは数ヶ所ちょっとした難所があり、初心者の方はやめておいたほうが無難な所もあった。ロープが掛かっている所はなんとかなるが、昨今の地震や豪雨、従前よりのこの山域の崩壊活動で、中には頭を使わないと安全に通過できないような所もあった。
金精峠まで無事辿り着くと今日の山旅もほぼ終了となる。菅沼への下りは特に斜度が急な所もなく、かつては交通の要衝として荷駄が行き交ったのではないかと想像されるような古の息吹を感じるような道である。金精山からの下りで追い越した学生グループの賑やかな声も、もうここまでは届かない。後続も先行もまったく気配はなし。最後にはいつもの自分の山行に戻ったのだなと思ったら、向こうからカラフルな原色のウェアを纏った山ボーイ一名と遭遇。軽く挨拶を交わした彼もまた他人の出現に意外な様子であった。静かな登山を好む者なら互いの山行にGoodLuck!と心の中で呼びかけ、そして別れた。
金精峠は近い | 霧にそびえる笈吊岩が不気味 | 金精峠から菅沼へ下る |
概略コースタイム
駐車地発(5:55)-弥陀ヶ池(7:25)-白根山(8:25)-避難小屋(9:28)-五色沼(9:43)-
前白根山着(10:26))-昼食休憩-行動再開(11:08)-五色山(11:44)-国境平(12:07)-
金精山(12:30)-金精峠(13:14)-駐車地着(14:06)
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