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2010年10月 アーカイブ


2010年10月24日

林道ツーリングと田代山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 バイク仲間であり山仲間でもある"なおべぇ"さんからお誘いが来た。

 「バイクで林道を走って田代山に登りませんか?」

 田代山は栃木と福島の県境に位置している。山頂に広大な湿地帯を擁し、そこから雄大な景色を望む事が出来る有名な山である。僅かな残雪を残す初夏から湿原を花が覆い尽くす時期は特に人気のスポットで、栃木の登山者としては一度は訪れてみたいと思う山でもある。

 最短コースは猿倉登山口から標高差+600mを2時間で登り、1時間半で下ることが出来る。登山道は良く整備されていて迷うような所もなく、山歩きとしては大変お手軽と言えるのだが、登山口までのアプローチがなかなか大変なのである。

 栃木県側からは、栗山から土呂部を経て砂利林道を延々と走ることになるが、場合によってはこの林道が閉鎖されることもあるらしく、通行が楽な福島県側から向かうとなると宇都宮から大回りになってしまって大変時間がかかる。

 今回の企画はそんなプローチの大変さも、栃木側からの正攻ルートをバイクの林道走りをで楽しんでしまおうという、バイク+山、一粒で二度美味しい的なものである。

 大笹牧場に朝7時半集合を目指す。昨日まではずっと天気が予報が良かったのに、日曜日朝の予報は曇りのち雨と一転。家を出ると東の空は恨めしい朝焼けのオレンジである。日光街道を西走していくと、時折気まぐれのように雲間から射す日差しがもどかしい。太陽と雲の駆け引きはどうやら今日は雲の優勢のようだ。後は雨が降らないことを祈るばかりである。

 今市から小百を抜けて大笹牧場へ向かう。牧場への裏道のようなこのルートは、観光ルートとしてのデフォルトである「旧霧降有料道路」が無料化された今もなお自分のお気に入りコースである。鄙びた感じがするこの小百ルートこそ峠を越えるという実感を味わえるからだ。

 朝の冷たい空気に山ズボンがちょっと厳しかった。上半身は初冬レベルのウェア構成なので寒くは無い。だが下半身はちょっと見当違いであった。普段バイクに乗っていても、真冬以外はGパンで走ってもさほど寒くはないものだが、山ズボンは機能的に風通しや速乾性が優れておりこれが仇になってしまう。要は風通しが良すぎるのだ。

 さてさて、大笹牧場で3名の同行者(なんと往年のレプリカバイク、NSR250で林道を走るという猛者が一名)が集合して出発する。自分は下半身が辛いのでバイクカッパのズボンを履いて走り出した。

 大笹牧場から栗山へ降り、土呂部から田代山林道へとバイクを進める。ダート入り口で一旦休憩としたが、既にこのあたりも葉が美しく染まっていて目を楽しませてくれる。

 休憩箇所でもう一名の参加者と合流し、ダート区間は各自フリー走行となった。林道ビギナーの自分は大人しく景色を楽しみながら進むべし。

 林道からの眺めは素晴らしく、自然林の織り成す紅葉もまさに盛り。県境の山並みもまた素晴らしい。以前パジェロミニで走った事がある田代山林道であるが、やはり風を感じて走ると景色も一層際立って見えるものだ。

     
ダート入り口で休憩    林道からの眺めは素晴らしい   
     
     

 車での参加組と登山口で集結し、約20名のパーティとなる。我らがグループ以外にも沢山のハイカーが登っていく様子から、この山の人気が伺い知れる。

 巨大な熊鈴、鈴というよりもはや鐘といったほうが正解かな。登り始めの一箇所と、その先にもう一箇所に設置されている。賑やかに鳴る鈴の音を、この山深いいずこで熊が聞いていたかは知る由も無し。

     
登山口へ集結    登山開始!    これだけ人が多いと熊もさぞ喧しかろう

 登山道は一本調子の登りで、結構斜度がある。歩き慣れない人はきついかもしれないが、道が荒れて歩き辛いなどということとはまったく無縁で、各自のペースを維持すればさほどてこずることも無い筈だ。

 小田代まで登ると暫くは平坦で楽が出来る。その後に最後のアルバイト区間を登りきれば雄大な山頂湿原が待ち構えている。

     
一本調子の登りも一休み       気持ち良い湿原歩き

 空は相変わらずどんよりとしているが高曇りで遠望は思いのほか利く。尾瀬の山並みがしっかりとその全容を見せてくれていたのは嬉しかった。湿原の草花はもはや冬支度へと一足先に向かったようだが、一面の枯れ模様もそれなりに見ごたえのある情景であった。正直に告白すれば、やはり花が咲き誇る時期に・・・と思ったが、それは次回の楽しみにとっておこう。

 避難小屋前で所狭しと昼食タイムとなった。こんな大人数で山ご飯を食べるのは小学校の遠足以来40年ぶりくらいかな?
参加者の方が重い荷物を担ぎ上げてふるまってくれたホットケーキ。中年親父に気さくに話しかけてくれる若者達に触れ、久しぶりに人のぬくもりを感じる事の出来る山行であった。

     
避難小屋前で食事    ホットケーキをご馳走になった    下山路も景色が良い

概略コースタイム
登山口発(10:08)-小田代(11:23)-田代山周遊道(11:50)- 弘法大師堂着(12:07)-
昼食-行動再開(13:06)-周遊道終点(13:21)- 登山口着(14:43)

2010年10月16日

大間々より西平岳


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 一週間も経たない内に山に行けるのもなかなか贅沢なことであはあるが、紅葉を逃したくないという思いから何処に行こうかと思案した。日光の太郎山と白根山はまだ登ってないので丁度紅葉と合わせたいところだが、この時期大渋滞必至のいろは坂超えはどうも気乗りしない。

 そうだ!高原山へ行こう! とひらめく。
 那須の時同様、リンゴさんの情報がヒントになったのは言うまでも無い。

 宇都宮から県道63を北上。玉生から更に県民の森へ。クネクネ道を快適に走るが、いつ走ってもこの道は通行量が少なくて快適だ。やがて快晴の大間々駐車場に着くと既に10数台の車が停まっていたが、那須のような狂気的な込み具合とは別世界である。

 支度を終えて、ザクザクと砂利の道を歩き出した。今日の予定は見晴らしコースで釈迦ヶ岳まで、更に足を伸ばし中岳、西平岳をピストンし、時間と体力にお釣りがあれば鶏頂山も廻ってしまうという欲張りなものである。

     
快晴の大間々駐車場    駐車場より大入道方面   

 登山口から展望の良い尾根にを伝う「青空コース」を登るのは今回で三回目になるが、一度目は三年前の六月で、八海山神社に至るのも結構疲労困憊。あの時は釈迦ヶ岳の下山に大入道経由で小間々に降りたのだから今考えてみると体力的に無謀だったとも言える。
 二度目は今冬、スノーシューで八海山神社を目指した時。慣れていなかったせいか、雪道が相手となるとやはり通常の倍近く疲労するような気がした。
 そして今回の三回目は、あっけないほどたやすく取り掛かりの区間を登ることが出来た。自分のようなビギナーにとっては、時間をおいて同じコースを歩くのは脚力の向上が実感出来て大変嬉しいものである。

 稜線の木々は既に落葉してしまっていて、もはや初冬の趣である。それでも所々にまだ赤い葉を付けた木々が山肌に遠く見えて地味ながら秋の美しさを精一杯見せてくれているようでもある。

     
稜線は既に落葉    正面、鶏岳   
     
八海山神社より       樹間より明神岳方面

 景色の無い剣が峰はパスして、尾根を乗り換えるような感じで釈迦ヶ岳方面へと廻り込んでいく。途中の痩せ尾根通過も、三年前は多少腰が引けていたような記憶があるが、今ではすっかり落ち着いて通過出来るようになった。
 山頂直下の標高差約200mくらいの急登は流石に今回も息が切れるが、それでも以前のボロボロになりながら登っていた自分が懐かしい程だ。

 登山道で後続者先行者は数人しか見なかったが、流石人気の山だけに山頂には既に数十人の登山者が休憩中である。自分にとって今回釈迦ヶ岳は通過点なので先を急いだ。

     
落葉    笹道を登る    釈迦ヶ岳より鶏頂山

 釈迦ヶ岳山頂より笹の間を南西に抜けると眼下に続く急降下とその向こうの中岳、そして厳しい下りの途中から北側に見えるどっしりとした鶏頂山に目を奪われる。大間々からだけではなく、旧鶏頂山スキー場からも釈迦ヶ岳に登ったことがあるが、今まで歩いた箇所と雰囲気がかなり異なる。いわば奥座敷のような趣きが自分は一発で気に入った。

 ジェットコースターのように鞍部まで一気に降りると、今度は岩交じりの中岳へよじ登っていく感じ。トラロープが何箇所か下がっているも岩の間を縫うようなルートなので骨が折れる。だがなかなか荒々しくて変化があってよろしい。

 そろそろ上が見えてきたかなと思ったら、何も眺望の無い中岳山頂。山名板のみの静かな山頂である。

     
中岳への下りから鶏頂山    中岳   

 中岳から西平岳に向かう下りもまた荒々しい。コースも不明瞭な上深く堆積した落ち葉が先行者の足跡をかき消す。というよりも、釈迦ヶ岳より先行者後続者はまったく無し。実に静かな行程である。

 時々樹にくくり付けられた赤リボンやコースの足元に半分朽ちかけている道標を見ると心強くなる。もっとも、この区間は足跡が薄いであろうことは事前に予見出来ていた。先日失態の那須のように観光客然としてではなく、藪山歩きと同じくらいの警戒レベルで行動しているので心の迷いは無い。

 間もなく西平岳山頂手前のザレ場に到着。単独の登山者が一名、岩に腰掛けて眼前の雄大な鶏頂山に向かって食事中であった。あまりにも深山故に心細くて鳴らしていた熊鈴のネジを慌てて緩めて音を消した。喧しい鈴の音は、一人静かに雄大な景色を楽しんでいた彼にとってきっと迷惑であったろう。

     
   中岳を振り返る    西平岳山頂直下のザレ場

 西平岳の山頂はこのザレ場のほんの少し先にある。先ほどから南からガスが上がり始めていて山頂はまったく視界が利かなくなっている。写真を一枚撮ってすぐ先ほどのザレ場に戻って自分も食事にすることにした。
 食事を終えたら鶏頂山の写真を撮ろうと思っていたが、ガスが見る見る昇ってきて撮影する頃には大分鶏頂山の光が失われしまったのが残念である。

 先客の登山者が腰をあげて釈迦ヶ岳方面へ向かうと今度は自分一人の番になった。こうして目の前の大きな鶏頂山と谷一つを挟んで向き合っていると実に雄大な気持ちになってくる。時折谷のどこかから鹿の甲高い鳴き声が聞こえてくる。ガスの動きが早くて山肌に射す光の去就が忙しい。まるで大自然の寸劇を見ているようである。

     
      ザレ場より鶏頂山

 すっかり体も冷えてしまったので撤収することとしよう。

 帰路もまた原始の山道のような中岳を超えて一旦下がりきると釈迦ヶ岳への突き上げるような登り返しが待っている。流石に一気には登れず、少し登っては一息ついての繰り返し。

     
   釈迦ヶ岳への登り返し    登りこたえあり

 釈迦ヶ岳山頂に着くと、もはやガスが掛かっていてほとんど眺望は無い。それでも時折南の景色が切れることがあり、これを楽しみながらおやつを頬張り第二の休憩。後はひたすら往路を帰るのみ。朝はあんなに天気が良かったのに、ガスというより低い雲に覆われ出した山道は急に薄暗くなってきた。

     
   鹿の食害    岐路に見る矢板市最高点方面

 八海山神社に立つと風が冷い。秋というよりどことなく寂寞感を含んだ初冬の雰囲気が漂っている。真冬にスノーシューで此処まで登ってきた事がふと思い出される。

 帰路は林間コースを抜けて行った。驚くほど至近に、また遠く離れた箇所で鹿の鳴く声が林間に鋭く響く。鈴を鳴らしながら闖入する者に警告を発しているのであろうか。ここはオレ達の縄張りだぞ・・・と。

           
鹿の鳴き声が始終聞こえた     

概略コースタイム
駐車場発(8:25)-八海山神社(9:25)-剣ヶ峰分岐(9:50)-釈迦ヶ岳(10:57)-中岳(11:25)-西平岳(11:44)-
ザレ場(11:46)-昼食休憩-再出発(12:08)-中岳(12:33)-釈迦ヶ岳(13:02)若干休憩後-
八海山神社(14:50)-駐車場着(15:59)


2010年10月11日

那須の紅葉巡りは辛~い一日



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
今回はログ収集が出来なかった為、予想ルート

 春の花と秋の紅葉を迎える頃は、山歩きをする者にとって楽しみな時期である。これがなかなかタイミングが難しく、相手が自然だけにベストコンディションで山に行けるとは限らない。ましてや未だ現役として社会人生活を送る者として、思い立った時に山へ向かうことが出来る身分では無い。本当は多少の悪天なども気にしなければよいのだが、どうも天気がすぐれないと腰があがらないという贅沢な気持ちが実は障害だったりするのである。

 結局他人の山行報告を読んだり、天気に一喜一憂したり、さらに野暮用などにも逡巡しているうちに花も紅葉もいつしかすっかりその盛りを過ぎてしまうという繰り返しであった。そんな優柔不断な自分にいつも舌打ちしていたのだが、今年は違う。

 ブログ仲間のリンゴさんが、一週間程前に色づき始めた那須の風景を紹介していたのを見た翌週、連休最終日はなんと好天予報である。自分もいよいよ燃え盛る景色にまみえることが出来そうだ。
 那須と言えば紅葉で有名なのは姥ヶ平だ。去年は沼ッ原から白笹山へ登り南月山経由で姥ヶ平へ降りたが、紅葉はいささか盛りを過ぎていた。それでも感動的であったことは記憶に新しい。

 今回は沼ッ原より直接姥ヶ平へ登り(このコースが普通らしい)、紅葉を堪能した後は牛ヶ首から朝日の肩、熊見曽根、隠居倉へと向かう。下山は三斗小屋温泉から沼ッ原へと周回するコースである。

 ここ数日TVなどで那須の紅葉が盛りを迎えたことが報じられていたことに加え、土曜日から体育の日までの三連休の前半二日は雨予報で外出を控えていた人達が一斉に繰り出すのだから、駐車場も混雑を極めることは想像に難くない。予想通り、沼ッ原に着いたのが朝の7時前だというのに既に駐車場は満車であった。少し離れた未整地の駐車場へなんとか駐めることが出来たが、いやはや流石に紅葉のメッカだけのことはある。すれ違った登山者から聞きかじった話によると、峠の茶屋側の第一駐車場は深夜の2時半には既に満車になったらしい。登山口に近い場所にすんなりと車を停められただけでもありがたや。

 姥ヶ平へ向かう道は駐車場の左奥を行けばよいのだが、以前白笹山を登った時に脇に分岐していくショートカット道の存在に気づき、地図に明瞭なこの裏道を歩いてみたいという衝動にかられた。GPSにはこのラインを入力していなかったのだが、往来は少なくとも地形図に道が記入されているくらいだから踏み跡探索は容易だろう。コース途中の難所は地図を見る限り無さそうである。だがこの後、この判断により辛い藪漕ぎを強いられることになるとはこの時点で予想だにしていなかった。

 その如何にも怪しげな分岐には道標の類は無いが、GPSで見ると地図とピッタリ一致しているので間違いは無い。最初のうちは若干荒れた感じのガレ道だが、進むに従い段々と草が生い茂るようになってくる。だが足元の道形は未だ明瞭である。ストックで草を払いながら軽快に進んでいくと、やがて広い湿地帯のような所へ出た。この時点で道形も踏み跡も消失しているが、依然としてGPSを見ると進路と道はシンクロしている模様である。登山道でさえ喧騒に包まれているというこの那須で、まったく閑散としたこの荒野はまるで別世界のようだ。

 いよいよ進路が閉ざされてきたので、まずは行く手を阻む笹薮の丘に一考する。見渡す限り踏み跡すら見つからない。いや、あってもこの背丈ほどの笹では見分けもつかないだろう。ここを突破すれば登山道に合流するのは明らかである。GPSで進路を決めるが、どうにも勾配がきつく難しそうなのでストレートは諦めて若干巻きながら進んで行った。背丈を完全に越える藪は過去に古賀志山で経験しているが、あの時は尾根を忠実に下るだけだったので比較的簡単だった。だが今回はなかなか手強い。しなる笹を分けるのに力が必要なのと、地面が見えないが故に斜面への感が狂うのであろうか、思いのほか体力を消耗するものである。右に左へと千々にルートを取りながら進んでいくが一向に登山道に近づかない。直線距離にして僅か百m程度しかないのにである。これが見通しの良い植林地やせめて腰高程度の藪なら簡単なのだが。

 どうにかこうにかトラバース状の踏み跡に接合し、これを追ってやがて登山道に合流することが出来た。ほっとして登山道を登り始めたのも束の間、ここでもまた大きな間違いに気付くことになる。

 どうにも様子がおかしい。あれほど人が多かった筈なのになぜか登山者の姿がまばらである。改めてGPSを取り出して見たら唖然とした。どうやら日の出平への道を登っているようだ。それも標高にして100m近くも。「コース変更」が一瞬頭をよぎったが、初志貫徹すべし。泣く泣く来た道を下った。

     
まずは薮??    別世界である    地図通り湿地がある

 沼ッ原から三斗小屋温泉分岐をへて姥ヶ平へ向かう銀座コース(自分で勝手に命名)のハイカー渋滞に並びながら歩いていると、先ほどまで笹藪と格闘していたのが嘘のようである。既に一座登り終えてきたような心持だが、まだやっと今日の出発点に立ったようなものである。

 徐々に高度を上げていくとみるみる葉の染まり具合が美しくなってくる。茶臼岳と姥ヶ平のお決まりコンビショットは予想を裏切らずに目に鮮やかである。人が多いのはこの際辛抱するしかないか。

     
全山燃ゆる       姥ヶ平より茶臼岳

 牛ヶ首へ登る途中、振り向いて姥ヶ平を見る回数が多いのは決して疲れているからではない。ご覧の通りのすばらしい紅葉が青空に映えているからだ。

 ロープウェイからやってくる観光客で賑わう茶臼の鉢廻りから峰の茶屋までを通過し、朝日岳方面へと向かう。こちらもクサリ場などは大渋滞だ。だがここから先はガスが掛かっていて眺望は得られそうにもない。

     
姥ヶ平を上から    朝日岳から鬼面山への稜線    朝日の肩より

 熊見曽根分岐より隠居倉方面への稜線に分け入ると途端にハイカーの数が少なくなり、落ち着いた趣になってきた。三本槍方面は向かう人の姿が多いのに、こちらはあまり人気が無いようである。それでも景色はなかなか素晴らしい。ガスで生憎北の景色は無かったが、剣が峰西側の谷の紅葉が丁度見頃となっている。自分にとっては何よりも静かなのが一番である。

 緩やかな起伏を幾つか超えて霧深き隠居倉山頂へ到着。360度眺望が望めるということだが、今日は残念なことに全方位ホワイトアウトしてしまっている。数組のハイカーと共に自分もザックを下ろして軽食小休止とした。

     
熊見曽根への稜線    剣が峰西側の谷    隠居倉山頂

 隠居倉からの下山路は三斗小屋温泉へ向けて下るが、こちらの谷間もまた人知れず燃える紅葉が素晴らしい。


 途中、ぽつねんとある噴気口を通過してしばらく下ると、程なく温泉宿の屋根が見えてきた。山小屋を考えれば不思議もないが、かくも山奥によくも建てたものよと思う。かつて会津への荷駄が行き交う交通の要衝として賑わい、数件の旅館が存在したとういう。当時の会津中街道は沼ッ原より北進して麦飯坂を越えた後、三斗小屋宿を経て東進して三斗小屋温泉へ。ここより再び北に進路を取って大峠を越えて会津へ入るというものであったという。いくら切り開かれていたとは言え、今日(こんにち)のハイカーの山遊びとは違い、かくも山深き場所が商業の動脈であったことを考えると感慨深いものがある。

 宿の水場で顔を洗い喉を潤してさっぱりした後、足元の古びた道標、「沼ッ原へ至る」を見て進む。ここで本日2度目の失敗。他に道らしい道も見当たらなかったのと、地図をよく見ていなかったのが敗因である。西へ西へと下るルートの途中、件の大峠への分岐を見た時にもっと早く気づくべきであった。15分も下った頃だろうか、やはりGPSを見て愕然。やれやれ三斗小屋の旧宿場方面へ降りてしまっているようだ。流石に足取りが重くなってきたが、まだまだ余力充分と自分に言い聞かせ、カラ元気で温泉へ復帰。

 南へ下る道など何処にあるのだろうと見渡していると、宿の居並ぶ真ん中あたりに大きな道標があるではないか。ヤレヤレである。

 三斗小屋温泉からの山道は、はじめのうちは平坦な下りで心地よい散策気分。また、既に午後になっているのにまだまだ登ってくる人も多い。見るからに今晩温泉に投宿するような雰囲気の高齢者夫婦も多い。連休も過ぎた山峡の鄙びた温泉の静かさは如何ばかりか。考えるだけでも溜め息が出そうになる贅沢さだ。せめて休日でよいから泊まってみたいと切に思うのであった。

     
隠居倉から西へ下る    静かなる紅葉    三斗小屋温泉
     
うまい水であった      

 三斗小屋温泉から沼ッ原までは道標のタイムで約1時間半。一旦沢を跨ぐので、かなり高度を下げた後登り返しをして沼ッ原~姥ヶ平ルートへ接合する。今日は道間違えのお陰?で随分登りの標高差を稼いだ気がするが、案の定終盤に疲れが出て来た。朝、藪漕ぎで体力を消耗した後に間違えて登ってしまった日の出平コースへの分岐を見た時に、ふとGPSを見ると、おやおや、「ログ採集のスイッチが入っていない!!」事に気がつく。

 悪いことは重なるものだ。いや、別に怪我をしたとか本格的に遭難したとかそういうことでは無いのだが、今日は全てにおいてツイて無い。いや、本当は全て自分が不注意だっただけなのである。メジャーな山域という気の緩みからか、地図をよく読まずにGPSも進路に迷ってから出す。コンパスを出して精査もしない。ないないづくしであった。FKDに買い物に行った時、地下駐車場で自分の車を何処に置いたか判らなくなることがあるが、あれと同じくらいに情けない結果であった。

 まぁ良いだろう。今回は勉強させて貰ったことにしよう。次回は全力でこのメジャーな山域を歩いてやろうと強く胸に秘めるのであった。

     
古は会津への通過点    立派な道標、流石那須!    白笹山とパジェロミニ

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  • PIAN PIANO.
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