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2012年08月 アーカイブ


2012年08月31日

鏡ヶ沼から須立山と三本槍岳


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今年の夏に登る県北の山。三回目は那須岳の主峰である三本槍岳を目指す。

 ルートとしては茶臼岳からの尾根通しや三斗小屋温泉からが栃木側からは一般的だ。比較的行程が長いこのルートは三本槍をより那須の奥座敷たらんとしている感があるが、福島側の大峠からアプローチすると手軽なハイキングコースになってしまう。観光客が容易に山頂を目指せる茶臼岳周辺とは一線を画した裏那須の静寂を手軽に愉しむことが出来るのだ。栃木側からの車のアクセスには時間を要するが、そんなことを補って余りある程の素晴らしい山域である。

 今回は林道の終点まで車を入れる。林道大峠線のダート部分は最後の僅かな区間だけであるので車を選ばず向かうことができるが、林道最終地点手前は流石に四駆車の領域となる。前回の大倉山の時には一般の駐車スペースに止めたが、今回は様子が解っていたので終点までパジェロミニを進める。終点には今日の一番乗りのようである。

     
今日は林道最終地点に駐車    すぐ分岐    まだ薄暗い中を進む

 車止めの先にある登山道を進むと程なくして左手に向かう分岐があり、鏡ヶ沼の道標に従い笹の道へと入っていく。高い枝の先には青空広がっているようだが、まだ早い時間の登山道には薄暗さが残っている。

 笹が刈り払われた緩い道を進むとやがて荒れた涸れ沢を登るようになる。一旦辺りが開けると、まるで箱庭のように端正に配置された鏡ヶ沼と背後に控える須立山が目に入った。

     
途中から荒れた涸れ沢を登る    須立山が見えてきた    鏡ヶ沼と須立山

  鏡ヶ沼から先は急登区間だ。虎ロープの助けを借りながら細かく息を調整して徐々に高度を稼ぎやがて稜線へ到達。

 秋を思わせる稜線の涼やかな風に急登の疲れを癒され、東側には雲海、西には眼下の鏡ヶ沼と遠い会津の山々、すぐそこに堂々と横たわる流石山から三倉山への稜線。すでに贅沢な眺望を得られて大いに満足である。
 須立山へは歩く人が少ないのだろうか、何の問題も無い一本道だが若干左右の潅木がうるさいところも趣が良い。この潅木の張り出しはこのあと三本槍への登りにも終始しているので、やはりハイカーの往来より枝の成長のほうが優っているのだろう。

 程なく須立山の山頂に立つ。北側を三本槍岳の巨体に圧倒される以外はなかなか立派な眺望である。特に目を引くのが真北に突出している旭岳(赤崩山)、そして三倉山方面。旭岳(赤崩山)の右手に目をやると、以前バイクで悪戦苦闘しながら通過した甲子林道の擁壁が一直線に山腹を走っている。 

     
尾根から    東側は雲海   
     
例の凶悪な甲子林道が見える    北北東方面あの山並みの向こうは猪苗代湖か?    流石山から三倉山

 先ほど鏡ヶ沼から突き上げた峠まで戻り、いよいよ今日の登りも本番。三本槍岳を目指す。潅木のトンネルを所々潜りながら登り、一箇所だけあるガレ場を慎重にトラバースすると草丈も低くなってくる。同じ位の高さの三倉山方面が鮮やかに見渡せるようになるとすぐ山頂に到着である。

     
三本槍岳へ向かう    潅木のトンネルをくぐっていく    ガレ場が一箇所だけある
     
大倉山~三倉山の稜線が同じ高さになってきた    山頂へ到着    茶臼岳が間近に見える
     
遠く日光連山と白根山    北西方面    今日のクールデザート

  
鏡ヶ池、須立山、赤崩山    下山路からは終始流石山が大きい

 評判に違わない360度方位の好眺望を独り占めで楽しんでいると、茶臼岳方面から熊鈴の音が聞こえてきて間もなく今日初めてのハイカーと出会った。

 栃木と福島の県境の峰々は分水嶺のいただきでもある。日光の高い山に夏登るとよくわかるが、日の出と共に暖められた湿度の高い空気は霧となり関東平野側から徐々に押し上げられて二千メートルの峰々をも超えていくのである。
 山頂より大峠を目指して下山を開始した。下っていく稜線も南の谷から押し寄せてくるガスに支配されつつあった。稜線を超える風もいくらか強く、この暑い夏に天然クーラーの中を行くのは誠に快適である。これから頂上を目指す親子と交差するが、彼らが山頂を踏む時にガスが切れていれば良いのだが。


概略コースタイム
駐車地発(6:17)-鏡ヶ沼分岐(6:22)-鏡ヶ沼(7:05)-峠(7:29)-
須立山(7:41)-峠(8:01)-大峠からの尾根と接合(8:36)-三本槍岳(8:52)-
行動再開(9:28)-1826mP(9:46)-1524mP(10:32)-大峠(10:38)-駐車地着(11:08)

2012年08月24日

県境の栃木百名山、帝釈山と台倉高山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 北部県境の山、今回は帝釈山林道の馬坂峠を起点として帝釈山台倉高山のピストン山行とした。

 最近の山行の定番スタイルとなる三時半起床、四時出発。早朝の鬼怒川温泉街を抜け川俣大橋に差し掛かったのが五時半過ぎだから、ここまで一時間半かかったことになる。効率的に行くなら土呂部から田代山林道に入ってすぐショートカットして馬坂林道へ入るべきなのだが、前日に日光土木事務所に聞いたところ、土呂部先で雨による崩壊箇所がある為田代山林道へは馬坂林道からなら入れるという。馬坂林道の出だしは川俣湖畔部を縁取るように道が付いているので、距離があって走る為には楽しくて良い。だが、今回のように先を急ぐとなるとショートカットの効く土呂部からのルートを使いたかった。さて、一番重要な馬坂林道と帝釈山林道も気を付けないとゲート閉鎖があるかも知れない。こちらも管轄の日光市栗山総合支所に問い合わせたところ、やはり土呂部には抜けられないが檜枝岐までは通過可能だという事を聞いて安心して出発した次第であった。

 馬坂林道をパジェロミニで走るのは二回目。前回は紅葉をやや逃した時期の家内とのドライブであった。今回はゆっくりと林道や風景を愉しむ訳でなく淡々と車を進める。湖畔の区間を過ぎて馬坂沢沿に差し掛かるとようやく夏の明るい日差しが降り注ぐようになってきた。朝の冷たい空気がまさに灼熱の日差しで呼び起こされつつあるといった感じだ。

 馬坂峠に近づくにつれ路面が荒れて走りにくくなってくる。日常生活で丘サーファーならぬ通勤2駆車の我がパジェロミニは、久々に4駆へギアチェンジされて水を得た魚のよう。もっともこの時点では下山後に起こる車の異変には気づく筈も無し。快調に帝釈山林道を走らせ、目的地の馬坂峠へと到着した。

 馬坂峠は綺麗な小粒の玉砂利が敷き詰められ、丁寧に駐車線ロープまでもが引かれた駐車場がある。真新しいトイレもあり、素晴らしく(お金をかけて)整備されており、更にこの先の檜枝岐に抜ける区間も砂利道とはいえフラットなので四駆車ならずとも注意すれば問題なく走行出来るような道が続く。比べると栃木県側は度々通行止めになるのも頷ける内容だ。宇都宮からだと川俣から悪路を承知で四駆で来るか、あるいは檜枝岐経由で大回りするか、いずれにせよアプローチに難儀なエリアであることは間違いない。

     
帝釈山林道       馬坂峠駐車場は整備されている

 先着は車一台。既に出発している。自分も支度が終わるとまずは帝釈山側へと進む。

 今回も『冷たいもの』を用意してきているのだが、帝釈山ヘはオーバースペックな物はベースキャンプよろしく車中に残置していけるので楽である。

 登りだしから木の階段。所々途切れるがかなり上の方まで続いている。後ほど登る台倉高山も途中に同じタイプの木製階段が設置されている。里山によくあるような歩きづらい階段では無く、足運びを合わせやすいところが好感が持てる。部分的に直登に近いこの最短ルートならではの整備である。

 木々の中をひたすら登っていき、もうすぐ山頂かと思うと突然ぱっと眺望が開ける。山並みの目覚めから間もない大パノラマにしばし立ち尽くす帝釈山の山頂である。文字とおり360度眺望であり、朝の澄んだ空気が凛とした雰囲気で景色をより一層引き立たせている。尾瀬や日光、高原山までもが全て見渡せるこの贅沢さ。眼下に拡がる谷は絨毯を敷き詰めたような豊かな広葉樹の森である。紅葉に彩られたよく晴れた朝にまたこの山頂を踏んでみたいと思った。

     
まずは帝釈山へ    こういう木の階段が多い   
     
燧ヶ岳    白根山    日光連山
     
高原山と男鹿山塊    北側の福島の山並み    これから向かう台倉高山方面

 登ってきた道を慎重に下り馬坂峠へ。途中一組の中年夫婦と出会う。先を行く御主人のほうは若干息があがっている様子だが後ろの奥さんは至って元気な様子。「早いですね」と言葉をかけられて交差した。

 帝釈山登山口の正反対にある箇所が台倉高山の登山口である。やっつけ仕事のように帝釈山をピストンしたせいか若干疲労が感じられるが今日の本命はこちら。ただ、ここのところ大気の状態が不安定にて連日の雨雲レーダーを観察する限り午後1時には下山したいところだ。あまりゆっくり登るわけにもいかない。

 馬坂峠から三段田代までの主たる登りの区間から先は地図の上では尾根通しである。稜線を外して巧みに小ピークを巻きながら進むこのルートは、木の中を進むので尾根を歩いているという感じがあまりしない。もっともこの時期は暑い日差しから守ってもらえるので楽といえば楽。今のように林道が無かったら、アクセスが難しく滅多に人が入ることが出来ないであろうこの山域は深山の趣が色濃い。

     
馬坂峠から最スタート       樹が不思議に寄り添っている

 登りが一段落すると2033mP付近の三段田代で眼前が開けた。小さな湿地帯であるがこの時期は水は枯れ果て白い小さな花が咲いている。森の中を歩いてきたせいか青空が目にしみる。強い日差しを仰いだ後、目深に帽子をかぶり直した。

     
三段田代    苔むす倒木の道    摩訶不思議な古木

 実際の距離よりも心持ち長く感じられた尾根筋歩きも、左手の樹が途切れだし遠くの山並みが見え始める頃、忽然とラスボスのような山頂の姿を見るとその行程の終わりが近い事を知る。鋭敏な三角錐のその姿は、さほど大きくもないが「深山の果てに鎮座まします」という雰囲気に満ちているようなそんな神々しさのようなものを感じたのは自分だけであろうか。

 山頂からの景色はガイドブックでは360度と言われているが、実際は何本か邪魔な木の背が高くて今ひとつすっきりしない。おまけに日光連山も上部にガスが掛かっているようだ。単純に眺望だけを考えると、ほぼ同じアングルで遮るものの全く無い帝釈山のほうが上のように自分は感じた。もっとも、台倉高山の魅力は先程から書いているようにルートの山深さにあると言ったほうが正確かもしれない。

     
山頂がやっと見える       会津駒ケ岳
     
白根山もより大きく    高原山は雲に隠れるも手前の明神ヶ岳    真ん中奥が帝釈山、その右手が田代山方面

 もう少し日差しが優しければ山頂でとりたかった昼食だが、少し下った木陰で休憩とする。前回は冷やしうどんと沢山の蓄冷剤や凍らしたジュースなどで重いザックに苦労したが、今回は最小限に留める。それでも冷やしプチトマトは程よい酸味で喉を通る度に元気が湧いてくる逸品だ。

 木陰に流れ込む涼気にうとうとと昼寝でもしたい心持ちだが、午後の天気が気にかかるところ。再度山頂へ行き、風景を堪能して下山の途についた。

 下山路では登って来る年配夫婦と単独者一名とすれ違う。北側の空に黒いものが幾らか見え始めているのに、彼らが滑り込みセーフで下山できることを願うばかりであった。

     
三段田代にて       下山路

 やれやれ無事に馬坂峠へと帰還すると次の瞬間己の目を疑った。

 パンクしている。

 長年車に乗っていろいろな所を走ってきたが、パンクを経験するのはこれで二回目だ。一回目は、金欠の学生の時に乗っていた古い車。いかにもといった感じのボロボロのタイヤであった。
 今回は、朝方の馬坂林道と帝釈山林道でよほど負荷が掛かったのだろう。特に訝しがることも無いが、とにかく下山後の疲労した体にタイヤ交換はやはりムチ打つような辛さだ。

 兎にも角にも今回の山行は、ハードな林道走行もパンクも全部セットで山登りだったのだなと考えるとふと苦笑い。文字通り山あり谷ありか。

 見上げると空はいよいよ暗さを増してくる。遠くかすかに雷鳴も聞こえる。さぁ、雨に追われる前に峠から降りよう。

     
なんとパンク!       馬坂峠のトイレはソーラー発電でハイテク

概略コースタイム
馬坂峠発(7:05)-帝釈山頂上(7:48)-馬坂峠着(8:26)-
鹿の休み場(9:15)-三段田代(9:43)-台倉高山頂上(10:42)-昼食休憩-
行動再開(11:03)-三段田代(12:10)-鹿の休み場(12:35)-馬坂峠着(13:07)

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