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2008年02月 アーカイブ


2008年02月23日

修験者の山 三峰山

 まだ栃木の山に登ることに縁が無かった頃、星野遺跡公園に遊びに行ったことがある。お椀を逆さまにしたようにどっしりと構える山が、公園に展示されている縄文式藁屋根の風景に妙に似合っていた記憶があった。これが今回登る三峰山(みつみねさん){605m}である。

 砂利が綺麗に敷き詰められた御嶽山神社隣接の駐車場に車を駐めて、神社境内から里宮へ進む。社殿脇の石段から今日の登山はスタートだ。

 車でも無理すれば上がれそうな林道を歩いていくと左手の清滝不動に着く。白装束をまとった修験者が滝に打たれるさまが目に浮かぶようだ。道はここから荒れ出していよいよ山道然となっていく。

     
里宮右脇から登山道    社殿と山と畑    清滝不動

 普寛霊神の立派な社に到着する頃にはうっすらと汗をかき始めた。右手の道はと見ると、石祠が急な斜面に沢山安置されており、そこを進む我々もまさに修験者の心もちである。

 ベンチのある御嶽大神御岩戸入り口で一休みをする。見上げると殆ど垂直な感じで鎖が下がっている。鎖の上に上がれば岩戸の中が覗けるのだろうが、高度もありとても取り付く気にはなれない。

 コースはここから右に巻いていくと眼下に星野の里が見渡せるようになる。

     
普寛霊神の先    まさに修験の場    御嶽大神御岩戸

 右側が切れ落ちたトラバース気味な道を慎重に進むとまた樹林に吸い込まれていく。枝打ちが徹底されたよく管理されている樹林は、ピリリとした山全体が持つ信仰の雰囲気に似合っている。
 ようやく上に明るさが見えてきた。尾根に出てみれば、稜線の日溜まりに残る残雪が楽しい。そんな明るい尾根の先は奥ノ院である。

     
枝打ちされた美しい樹林    やっと明るい尾根に    奥ノ院

 奥ノ院からの眺望は西側に少し開けているが、他は微妙に枯れ枝が邪魔していて今一つだ。三尊立像のおでこのシワがリアルで可笑しい。三人の神をもう少し個性豊かに表現したらよかったのに・・・なんて言ったらバチあたりかな。

 奥ノ院から一旦少し戻り、尾根沿いに三峰山方面へ向かう。傾斜の緩い軽快な尾根道を歩き極楽気分。でも楽なのはここだけ。この後は足場の悪い急降下と登り返しが数回続くことになる。
 前半の奥ノ院までのルートは路傍の石祠や社殿の数も沢山あり信仰色が色濃い。ある意味賑やかだったが、いつもの低山の風景にすっかり戻ってきたこの尾根にもふと気が付くと足元に神様が祀られている。

     
三尊立像    鼻歌交じりの快適尾根    あちこちに神様が

 杉や檜の落ち枝が積もった急斜面は思いの外滑る。上から見ると滑りそうも無さそうな所でスルッといくのでなかなかに油断が出来ない。おまけに残雪が所々アイスバーン状になっている箇所もあり、ますますもって厄介である。

 尾根の途中から南側にロープが張られ、立ち入り禁止の看板が所々に立てられている。吉澤石灰工業の採掘現場になっているのだ。昼頃に発破があると書いてあったが、山頂到着直前の11時50分丁度に辺りを轟かすズドンという音が聞こえた。
 子供の頃父親に連れられて歩いた奥多摩の山で何度か発破の音は聞いた事があったが、こんなに近くで聞いたのは初めてだ。

 幾度かの登り返しに汗をかきながらようやく山頂へ到着。山頂は木に囲まれて全く眺望は無い。西側の立ち入り禁止のロープの向こう側に石灰採掘場が痛々しく広がる。あいにく霞がちのため遠景もいまいちだが、まぁよしとしよう。午後から低気圧が接近してくるという予報の通り、風がにわかに強くなってきた。樹に覆われた山頂は逆に日溜まりとなり暖かなランチタイムを楽しむことが出来た。

     
ロープの向こうは立入り禁止    三峰山頂上    山頂南側

 山頂から御嶽山神社に直接降りていく道もまた険しい。こちらもまた滑りやすいことこの上も無し。わざわざ道を外して斜面を直接歩いたほうが格段に歩きやすいところもある。

 それまで下ってきた谷沿いのルートが突然険しくなり怪しい感じがした。今回は樹林が深くGPSも先ほどから衛星の補足が困難で殆ど役に立たない。地図とコンパスで頭をひねっているとH君が右手に寂しそうにぽつんと付けられている赤テープを発見。導かれるようにしてトラバース気味のヤセた道をやり過ごすとそこに浅間大神が祀られている。
 ここからはハシゴとクサリとナイロンロープで慎重に降りていく。降りてしまえば、先ほどの谷筋と合流する。ハシゴを面倒がる人達が谷を直接降りてくるので、歩かれた感じが少し残っていて引き込まれそうになったのかもしれない。

     
山頂南側    厳しい下り    浅間大神

 浅間大神を過ぎると幾らか厳しさも和らいできた。いよいよ緩やかになるとほどなく林道に出会う。遠く向こうの山並みに続くが如く見える真っ直ぐな道は、それまでの緊張の連続であった一日を慰めるように穏やかであった。山中にH君と私のしりもちの置きみやげがあった事を知る者は、どこかでそっと見ていた神様以外には居るまい。

     
やれやれ林道だ    確かに30分は無理かもね    駐車場が見えてきた

概略コースタイム
御嶽山神社発(9:10)-奥ノ院(10:42)-三峰山頂上着(12:08)-昼食休憩-頂上発(12:34)-御嶽山神社着(14:09)


今回は衛星の捕捉状況が極めて不良であり、軌跡の採取も不正確な結果となってしまった。

2008年02月16日

残雪の笹目倉山


-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 車2台で離れた拠点間を結ぶ縦走コースをと以前から考えていたその第一弾、宮小来川より風雨雷山を経て笹目倉山、黒川へ降りていくコースを歩く事にした。

 少しのんびりしたスタートで、9時にH君と宇都宮市内で待ち合わせる。右手に古賀志山を見ながら西へと車を走らせる。正面に見える日光連山の冠雪もスッキリ晴れた青空に映えて一段と美しい。

 板荷を過ぎ、道が黒川に近づいてくる頃、正面にこれから登る山、笹目倉山(ささめくらやま){799.9m}のキッチリとした正三角形が目に飛び込んできた。ピラミダルな、とよく言われるがまさにその通り。

 間もなく今日のコースの着地予定地点、左手に清流園のお店(清流園は廃業してしまっているようだ)がある所にパジェロミニを駐めた。H君の車に乗り継ぎ、再び西へと向かう。
 程なく右手に、「笹目倉山 新登山道」の大きな看板出現。以前からこの道を通る度に気になっていたのだが、最近の流行のルートはこちらかららしい。この新ルート入り口のすぐ隣にも古くからある天善教の直登ルートがあるが今回はいずれもパスする。

 宮小来川にある日光市役所小来川支所にH君の車を駐める。事前に支所に連絡をしており快諾していただいた。ちなみに支所内には休日診療所も有り、まさに地域の生活に密着している施設のようである。

 支所から5分程歩き「鍛冶屋のカヤ」の案内の場所を折れて集落を越えて行く。最後の民家の右手からいよいよ山道である。

 鬱蒼とした植林地をガンガンと(ホントはそんな勇ましくなく休み休み)登っていく。典型的な里山の急登。いやはや容赦の無い登りだ。約一月ぶりの山行なので体がついて行かない。先日降った雪がザクザクと残っているが、高度を上げるに従い段々と一面の雪道になっていった。靴が潜り込まない程の深さと適度な堅さがあるので気にせず登っていく。だいぶ高度を稼いだかなと思った頃に北側に少し眺望が開けた箇所から鶏鳴山の大きな姿が伺える。

     
宮小来川からのアプローチ    残雪を踏みしめながら    鶏鳴山

 登り詰めればまたその先に登りが、そんなことを何度か繰り返しようやく風雨雷山へ到着。雪の鳥居をくぐれば、行儀良く並んだ三つの石祠がお出迎えだ。周囲を樹に囲まれまったく眺望の無いひっそりと静かな山頂。一息入れて再出発。雪の中の急登は続く。

     
風雨雷山    行儀良く石祠が3つ    雪の中の急登は続く

 標高が上がるにつれ雪が柔らかくなってきた。溶けてきているのではなく「溶けていない」のである。雪に靴がめり込む。折からの急斜面で、踏ん張る力がいつもよりも沢山必要なのでかなりバテバテだ。この程度で疲れているのだから冬山登山など到底無理な体力である。
 滑って仕方がないという程のものでは無いが、軽アイゼンを装着すればもう少し快適に登れるものなのであろうか。帰ったら早速軽アイゼンの購入を検討しよう。

 ルートは単純明快な一本道で迷うことはほぼ無いと思うが、それでもコース唯一の道標を見、後方にこれまた西側方面では唯一、されど樹間越しの日光連山を垣間見ながら更に登り詰めると笹目倉山頂。

 こちらも風雨雷山同様樹に囲われており眺望は全く無い。冷え冷えとした雪の山頂には幾枚もの山名板が賑わっているそんな中、天善教奥の院の社殿がどっしりと構えている。

     
山中唯一の道標    これまた西側唯一の眺望    笹目倉頂上

 ガイドブックやネット情報で、ここまでのルートは眺望皆無ということを知っていた。昼食は東側へ降りていくルートの途中に景色の良いポイントがあるらしいので、そこいらでと考えて山頂を後にする。

 山が三角錐のように険しいので、下りもまた厳しい。それでも天善教への道を分け、平成16年に新設されたとされている清流園ルートを進むと段々と南側の眺望が開け出してきた。日差しが充分に差し込むこちら側は、さっきまでが嘘のように雪が見あたらない。適当に道ばたに腰を下ろして食事にしようかと思案しながら歩いていると、ひときわパッと開けたポイントにあつらえたように切り株の椅子が3つ並んでいる。ここで食べずして何処でという好タイミングである。地図を見れば正面南側に見えるのは羽賀場山~777mピーク~お天気山の稜線のようだ。

 往路のハードな登りの疲れを、コース随一の好眺望で癒やして再出発。程なくすると、東へ向かう尾根への入り口に×印の細工がしてある。ここでふと思ったのが、今日の本来のコースである山頂から真東へ伸びる尾根伝いの下山路が見つからなかった事。新・分県登山ガイド(山と渓谷社)によれば山頂から東に延びる境界線上の尾根を進み徐々に境界線から離れ清流園管理道路に沿って下山するように案内されているが、そもそも山頂から東側は明らかに道は今歩いているコースしか見あたらない。積雪で見えなかったのかもしれないが、本で紹介する位のルートならばもう少しわかりやすい目印などが欲しいところだ。また天善教への分岐点も山頂直下の境界線上にあるとされているが、実際には数十m南へ高度を下げた場所に存在する(GPSで確認済み)。{新・分県登山ガイドの恐らく誤記と思われることについては後述}

 そんな訳で、ここの×印の先を東に尾根伝いに進めば地形図と相談してもほぼ予定のルートになるのではと考えたが、少し偵察をしてみると目前の急峻なピークを回避するには足場の悪そうなトラバースを強いられそうな感じなので、ここは無理をせずに踏まれたコースへと戻った。南に下りるこちらのコースは本来予定外ではあったが、事前検討段階からこちらのルートを使うことも考えていた為、状況は把握出来ていたので安心だ。

     
羽賀場山~お天気山の稜線    切り株で昼ご飯    この先危険

 急な斜面にジグザグに付けられた登山道は片側が切れ落ちている。道幅は50センチ足らずのところもありなかなか気が抜けない。途中横根山方面が綺麗に見渡せるポイントがあった。方塞山の電波塔が肉眼でも良く見える。

 道は厳しいがそれでも雪の斜面を降りることを考えれば極楽である。暫くすると下の方に広場と仮設トイレのようなものが見えてきた。何やら資材のようなものも置いてある。先ほど笹目倉山頂からピストンで下山していった2人組男性が、缶詰やら何やら広げてランチの真っ最中のようだ。

 広場まで降り立つとそこは金採掘口跡であった。新・分県登山ガイドの地図で示された場所とこれまた大きな食い違いがある。
 ここから先は木製のガードレールがあつらえてある砂利林道ともう一つは廃道化した林道の二手に分かれる。先ほどの食事中のハイカーに話を聞くとどちらも下で合流するらしい。砂利道を歩くのも嫌だったので廃道の方を選ぶ。冬なお背の高い枯れ草が邪魔をするこちらは、夏場はちょっと手の付けられないルートになるだろう。

 広場のところにあった採掘口から幾らか下げた所にまたもう一つ採掘口がある。下に綺麗な地下水が流れており、少し厳かな感じもする。ここから下は暫く人も歩いていないようで、日陰は降ったままの雪が残っている。幾らか堅めにはなっているものの、足跡の全くない雪をサクサクと踏みしめていくのは気持ちの良いものだ。ふと見ると何やら小動物の足跡が点々と続いている。

 再び背の高い枯れ草の海をやり過ごすと立派な休憩場が忽然と現れた。新旧の林道もここで収束する。

     
横根山方面    金採掘口跡    右手は林道、正面の廃道を降りてきた

 休憩所もそうだが、この清流園ルートは清流園の園長である渡辺久次さんが個人的に開拓整備しているという事らしい。ほぼ下山を終える地点には、自ら整備した滝や宿泊施設等なども見られ、川柳のようなものもあちこちに掲示されていて面白い。どうやら山好きが高じて開発に傾倒してしまったようである。お陰で快適かつ安全な登山を我々は享受出来るので感謝せねばなるまい。

     
立派な休憩所    久次の滝    他にもたくさんある

 登山口の派手な案内板からは暫し車道歩きだ。本来、新・分県登山ガイドの地図通りに歩けばパジェロミニをデポした地点に降りる筈だが、若干離れた場所に出てしまった。

 ここでもう一度、新・分県登山ガイドの誤記について検証してみよう。

1.天善教コースの分岐点の位置が実際の場所と違う
2.紹介されている山頂以降の記述は全て今回歩いた南南東へ降りてくるルートの内容と全く同じである。従って地図で示された山頂から東の尾根を辿るルートについての記述でない事は明らか。
3.ガイドブックに記されている下山地には清流園は存在しない。今回自分が車を置いた地点(清流園)は約300m程西へ離れた所にある。
4.案内にある清流園登山口の大きな標識は、今回歩いたルートの下山(登山)口である。

 つまり、新・分県登山ガイドに記されているコース内容の紹介文は今回我々が歩いたルートそのものであるが、地図がまったくもってデタラメであるということだ。ガイドブックもきちんとした検証を行っているとは限らないということをまさに体感してしまった訳だが、やはり最終的には自分で総合的に判断するしかない山の厳しさを再確認した次第だ。

     
いつも気になっていた登山道口    清流園は閉店したらしい    無断だが車を置かせて貰った

★番外編★

 比較的大柄なH君を窮屈なパジェロミニで小来川支所まで送り届けて解散。まだ時間も早いし、折角ここまで来たのだからと西へ車を走らせ滝ヶ原峠を越えた。標高が840m程もある峠の上は、笹目倉山頂同様やはり気温が格段に低い。ここから見る雄々しい日光連山はいつ見ても圧巻だ。

 日光市内から宇都宮市内に戻る時にいつも通る県道22号線(通称新里街道)は、途中で鞍掛山から半蔵山の中間地点をトンネルが貫いている。この鞍掛トンネルの開通により今市方面から宇都宮へと往来する車は随分と便が良くなったという。その理由はトンネルが開通する前はここを通るには旧道の峠道を通るしか無かった為である。

 いつもなら迷わずトンネルを走るのだが、すぐ隣の鞍掛山周辺の残雪状況も気になったので、偵察がてらすっかり荒廃し始めている旧道を進んでみた。

 深さこそは無いものの、しっかりと積もった雪道はもの好きな車(自分もそう)か、あるいは不法投棄の輩が付けた跡なのか。幾筋かのタイヤ痕が有るのみで深く静まり返っている。いくらか除雪されたとしても、この峠を冬場越えるのが大変であったことは想像に難く無い。下りのアイスバーンはテカテカで、たまらず4駆のローレンジにギヤを投入。歩くより遅いスピードで日の翳り始めた峠を降りていった。

     
滝ヶ原峠下より    雪深し 鞍掛峠   

概略コースタイム
小来川支所出発(9:57)-登山口(10:07)-風雨雷山(11:11)-笹目倉山頂上(11:59)-
昼食ポイント着(12:23)-昼食休憩-昼食ポイント発(12:55)-金採掘口跡(13:13)-
休憩所(13:37)-車道(14:03)-駐車地着(14:12)

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