女峰山を目指して
霧降のリフトが8月末で営業を終了する。ちなみに、終了までは無料開放らしい。
女峰山への長丁場を歩く場合には、この取っ掛かりの区間をリフトで楽できるのが大変大きなアドバンテージであると考えていただけに、自分も営業終了を惜しむ一人である。
終わりゆくリフトを惜しむ山歩きのプランを温めていたが、丁度Mixiの参加コミュでリフトを使って赤薙山へ登ろうという企画が立ち上がった。無論参加表明をしたものの、運が悪いといおうか日頃の行いが悪いのか、ずばりその日に限って体調不良で不参加となってしまった。
その後もどんどん日は過ぎていく。何とかリフトを使って思い出に残るような山行をしたいという気持ちが募るばかりである。
リフトの営業開始が朝の8時40分ということなので、頑張って1番の客となってもキスゲ平に9時。赤薙山ピストンで11時。数日前リフトの事業所に電話で問い合わせてみると、ここのところ大気の状態が不安定な為、早い日には午後1時頃に雷雨が発生しているらしい。
赤薙山ピストン案に傾きかけてきた頃にふと頭をよぎった。女峰山目指して行けるところまで計画したらどうかと。
ネットで調べてみると、コース途中の一里ヶ曽根(独標)というところが360度眺望で素晴らしいらしい。赤薙山から片道1.5時間というタイムが平均的なので、12時にキスゲ平帰着から逆算する。登りのリフトは諦めて、朝5時に第三リフト駐車場を出発すれば休憩を含めてもなんとかなるだろうという計画に落ち着いた。天候とコースの危険度次第では途中撤退の判断ありという前提だ。
計画通りに自宅を朝の3時半に出発。日光街道を北に折れ、登りのワインディングに差し掛かる頃になると空が白み始めた。朝の白い月がはっきり見えるので取り合えず今のところ天気は大丈夫だろう。
閑散とした第三リフト駐車場に到着する。朝焼けのオレンジのほの明かりの中準備をして予定通り5時にスタートすることが出来た。人の気配の無い登山道も既にヘッドライトがいらない位に明るくなってきている。
早朝の駐車場は閑散としている | まだ暗い登山道へ | 笹が濡れている |
笹道を登ると、やがて登山道は水路のような溝になり、にわかに足元が滑りやすくなってくる。途中シカ避けの柵を開けて第三リフト終点から朝日を眺めたが、荘厳なその光景にしばし感動。(下写真中)
登路に戻り再び高度を上げていくが、木漏れ日の朝日が鋭く差し込むのもまた美しい。
八平ヶ原分岐 | 第三リフト終点から | 朝日が眩しい |
リフトに乗れれば割愛出来るわけなので、言わばアルバイトともいえるこの区間。なるべく体力温存を決め込んで慌てずゆっくりと歩を進めるも、やはり結構汗を搾られる。
ポンッと飛び出すようにキスゲ平に到着すると、目覚めたばかりの風景が迎えてくれた。高い雲がかかり、平野は熱帯夜による霞が多いがまずまずの景色である。ベンチに腰掛けて、向かう赤薙山への稜線を見据えながら鋭気を養う。
キスゲ平(小丸山)到着 | 鳴虫山方面 | 今市市街地方面 |
朝の湿気をたっぷりと蓄えた笹の尾根を登っていく。ズボンの裾がすっかり濡れてしまってスパッツを忘れてきたことを後悔したが、登山素材なので乾燥が速い。泥が着くのはちょっといただけないが、涼しいから良しとしよう。
目指す赤薙山の上に沈み行く月が見える。朝の爽やかな青空があたりを支配し始めた。
いざ赤薙山へ | 笹が濡れていて裾が泥だらけ | 赤薙山と月 |
雲が切れて強烈な朝日が照り付けると、それまでのヒンヤリした空気が一変してじりじりと暑い夏道となってきた。あともう少し、笹尾根を過ぎれば涼しい樹林帯になる。
朝日を受ける影 | 笹原が輝いている |
今回で3度目の赤薙山だが、最後の樹林帯の登りがきついのは織り込み済み。だが、今日のコースを考えるとこの区間も体力温存が必要。細かいピッチで慎重に足を出すように意識しても、張り出した根にペースを乱され難儀する。
北側を巻く道に入り、山頂西側の肩に到着。まずは第一区間終了である。想定よりも少し体力を消耗している気がするが、今日はここからが本番だ。ザックを降ろして休憩を取り、西に広がる景色を眺めた。男体山や女峰山の南東尾根なのだろうか、綺麗に標高を下げる稜線、そして荒々しい崩落地。その雄姿がこれからの区間の厳しさを物語っているような気がした。
赤薙山西の肩 | 奥に男体山 |
まず目指すは一つ目のこんもりとしたピーク。現在地と標高差はさほど無いように見えるが、地図を見ると一旦コルまで降りた後に高さ50~60mの登り返しである。里山の縦走ならよくあるパターンだが、いざ進んでみると思いのほかきつい登りだ。所々岩交じりで手を使わなければ通過出来ない箇所もあり、どんどん体力が搾り取られていく。
一つ目のピークを過ぎると、次に待ち構える奥社跡(二つ目のピーク)に向けて更に厳しい200m近い標高差。思わず途中で歩を止めること数度。樹に囲われて何も景色の無い奥社跡にようやく到着。こんなに辛いのは久しぶりだな。今日はいつもに比べて多めに水を装備しているとはいえ、ザック重量はせいぜい10数kg程度である。まだまだテン泊など無理だなぁと思いながらも、山に登り始めた頃の辛さを懐かしく思い出した。
一つ目のピーク | 二つ目のピーク(奥社跡) |
女峰山南東稜が近づいてきた | 樹に囲われた奥社跡 |
奥社跡からはルートは北転する。枝越しに見える三つ目のピークに向けて再び高度を下げて、コルに着くとにわかに林層が変化した。立ち枯れの木が、さも昔からそこを守っているかのように立ちはだかっている。
流石にこのあたりになると深山の趣が深い。脚には厳しいが心持はますます清涼。一時的とはいえ、世俗をかなぐり捨てたような無我の境地で淡々と歩いて行けるのが単独行の良いところだと思う。
三つ目のピーク | コルから林層が変わる | 自然深き山道 |
三つ目のピークへ登りきると、穏やかな尾根道にシャクナゲの密生地が続く。ついこの間まで、花のトンネルで覆い尽くされていたのだろうと想像するに難くない。目を下にやると真新しい鹿の足跡が続く。これを追いかけながら進んでいくと、だらだらした登りの後に突然視界が広がった。目的地の一里ヶ曽根に到着である。
全体的に幾らかモヤが掛かっているもののまさに360度眺望だ。前回の女峰山ではガスの山頂で眺望はお預けだっただけに、今回の早発ちは「景色を見たい」というのも大きな理由であった。やんぬるかな、どうやら今日の山の天気は自分に味方してくれたようだ。
西側には珍しいアングルの女峰山が惜しげもなくその威容を放っている。ここからあそこに立つには目の前のガレ場を下りこの巨大な山塊に挑まなければならないと知った時、正直に呟いた。
後ろを振り返ると、超えてきたピークの先の赤薙山北側崩落地が大迫力。日光の山はかくも厳しくあったのかということを改めて実感する。
シャクナゲの薮 | やれやれ到着だ | 奇岩あり |
女峰山 | 赤薙山北側の崩落地 | 超えてきたピーク |
女峰山
軽く食事をして休憩をした後、時計を見て帰路を急ぐ。
戻り始めて30分もしないうちにガスが昇り始めてきた。あともう少し遅ければ360度の眺望を得ることは叶わなかったと思うと、登りの苦労が癒される思いである。
この頃、本日初めての登山者に出会う。女峰山を目指すのか。このあとも夫婦2組、単独2名と行き交う。長丁場コースなのでこの時間だとピストンはきついだろうし、志津側に車のデポでもあるのだろうか。いずれにせよ二千m超級のこの深い山域にこの人口密度の低さである。人気の夏山などは登山路が渋滞するなどよく聞く話だが、かくも密かに自然の中に深く抱かれながら歩けるのは山好きにとって至福の時ではあるまいか。
帰りも奥社跡への登り返しに少々汗を掻くが、先が見えているので気は楽だ。行きに踏まなかった赤薙山の山頂に近づくと沢山の人達の声声。
お別れリフトと年の数の標高の山。人気者の赤薙山頂上はそんなハイカー達でごった返していた。かろうじて写真一枚を撮り、一口の水で喉を潤すと早々に喧騒の山頂を辞した。
渋滞する樹林下りを抜けて笹尾根に出ると辺りはすっかりガスの中に埋もれていた。朝の景色が嘘のようである。
焼石金剛辺りまで下ってくると、リフトから散歩気分で登ってくる観光客が目につくようになる。中には運動靴はおろか小石で簡単に足を痛めてしまうようなお洒落な靴で歩いてくるお嬢さんも。
「午後から雷警報が発令される日が多いんですよ」と電話口で語ったリフト担当者の気苦労が偲ばれる光景であった。
誰も居ない朝日の中を出発したのが嘘のような賑わいのキスゲ平に到着した。行き交う誰もが半そで半ズボンにサンダル。小奇麗な街の装いである。そんな中でただ一人、泥だらけのズボンを履いて汗だくの格好。たった数時間前の出来事が到底嘘のようなそんな錯覚に包まれながら下りのリフトに揺られていた。
ガスが昇ってきた | 赤薙山は沢山のハイカーで賑わう | 朝の景色もガスに覆われている |
無料リフトで下山 |
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