岩崎尾根5峰を巡る
赤岩山の北側に点在する岩崎尾根のピーク群。文挟方面からは古賀志山の前衛として横たわるこの山々もつい先日、けむぞうさんや『栃木の山紀行』さんが歩かれている。両サイトの情報に基づきプランを練っていざ出撃である。
偵察でお馴染みの岩崎観音脇に車を置いてスタート。はじめの320m級Pまでは、破線の古い道を辿るつもりだったが、どうも地図上の場所には存在しない。ちょっと山側に入って見ると作業道の跡のようなところがあったので追ってみると民家にぶつかる。山側は岩になっていて進めない。仕方が無いのでアスファルト道路に戻り少し北に進むと右手に林道のような道が入り込んでいる。GPSを見ると正解のようだ。測量後に道が変わっているのだろう。
右手にざっくりと削られた痛々しい斜面を見る頃になると、砂利道も落葉で深く覆われるようになる。
林道入り口 | 山が削られている | 出だしは順調 |
途中2箇所分岐があるが、地図の破線通りに進んで行き、北側から谷を詰め始めるとにわかに薮っぽくなってきた。先日の盗人岩でのイノシシ遭遇もあった事だし、それにここはイノシシの好きな谷。ザックの熊鈴のネジを締めて音が鳴るようにした。静かな森に鈴の音が響く。
地図に書いてある道は標高300m手前あたりで事実上消失。最後は適当に直登して尾根に出るとすぐ脇にある320m級Pへ到着した。今日の第一ステップクリアである。
上に行くと薮がでてくる | 320m級P |
次なる目標の359P方面に向かうには一旦コルに降りての登り返しになるが、320m級Pから降りる道形も途中で怪しくなりだしてきた。歩きやすそうな所を選んでコルを目指し降りていくと、向かう先にはっきりと尾根の形が見える。これを追って行けば良いわけだ。
静かなピークに登りかえすと、石祠が待っていた。この辺りは若干岩っぽい感じだが、特に問題は無い。
一旦コルへ | 木漏れ日が気持ちよい | 359P手前のピーク |
東へ進むと程なく359Pへ到着。大小の石祠が並んでいる。傍らには、今は朽ちてしまったが元は石仏か何かだったのか。物言いたげに石の塊が鎮座している。
大きなほうの石祠を見ると建立が明治云年とある。最近見たこの手の石祠としては比較的新しいほうかもしれない。
359Pに並ぶ石祠 | 元は何だったのだろう | 明治云年 |
359P周辺からは、尾根の踏み跡が随分濃くなってくる。明るい林を進んでいると、メジャーコースを歩いているようなそんな錯覚さえ感じる程穏やかな尾根だ。
次なるコルから408.8Pの標点ピーク目指して再び登り返していくと、忽然と大きな岩が完全に行く手を阻む。なるほど。これが、けむぞうさんが手を焼いた岩だな。
しばし観察。左(北)は巻けない。行ったら岩を越える以上に危なそう。正面突破はどうだろう。一つめの岩はなんとかクリア出来そうだが、その上はどうなるか保証無し。破綻する可能性はかなり高いだろう。右(南)は若干急斜面だが、明るいまばらな広葉樹林である。ルートも自由度が断然高い。けむぞうさん同様こちらを行くのが賢明だ。
GPSを出して位置関係を正確に確認する。下り過ぎないように、可能な限り尾根に早期復帰を念頭に置いてスタートしようとしたその矢先。
進むべき方面から、「ざくざくざく」と歩く音が。人か?、イノシシか? 蹴落とした落石が転がっていくのが見えた。確かに居る。
今回は姿形を見ることは無かったが、必ずといっていいほど最近は動物に逢っている。もっとも、こんな人が滅多に入らない所は元々彼らの領域なのだから仕方が無いだろう。侵入者はこちらなのだから。
少し躊躇したが、足音は聞こえなくなったので鈴を手でじゃんじゃん鳴らしながらトラバース開始。左手は結構デカイ岩場で地図には記載の無い崖地である。上のほうに所々暗い割れ目が口を開けているが、先ほどの足音の主がそこに入ったのでは無いかと想像するとぞっとする。長居は無用である。岩が切れたすれすれの所を狙って急登急登。
小岩と薮が若干行く手を阻むが、こちらは難なくクリア。程なく頂上から伸びる尾根に合流して一安心である。思い返すと今日一番の難所と言って良いだろう。
明るい尾根 | 408.8P手前の岩が阻む | 南に巻く |
苦労して踏んだ408.8Pからは、西側の眺望がある。枝越しではあるが日光方面や今しがた歩いてきた359Pも良く見える。ピーク真西の下が先ほど突き当たった岩のあたりのようだが、上から眺めても登ってくるのは相当難しそうに見える。
また、ピークから北東に延びる尾根方面に踏み跡があるが、こちらは『栃木の山紀行』さんが登ってきたルートである。359P方面から来てこの岩を巻くなら350m地点あたりで北東の等高線が緩い所をトラバースしてピークの北東尾根を目指すのもアリかも知れない。しかし、かなり大回り。南を巻くのは傾斜があって多少疲れるが距離は少しで済む。岩穴の住人が許可してくれればである。
苦労して踏んだ408.8P | この真下が行く手を阻んだ岩 | 通過してきた359P |
次の目標点である444Pとの中間点にある鉄塔が見えてきた。この辺りは南に景色が開けるポイントがあり気持ちよい。鉄塔脇まで降りると尾根道は一旦激薮へ吸い込まれるが、シノ薮で漕ぎやすいので強行突破。薮が切れると一旦巡視路に出たが、これを追うと下って行ってしまいそうなので、適当に左手の尾根を目指して再度シノ薮に突入すると、薮の向こうに尾根筋が再び現れる。
登り詰めた444Pは、埋まりかけた石祠が一つだけ寂しそうにポツンとある。ここから東に少し降りた辺りが岩場の好眺望ポイント。ここで昼飯休憩とする。
鉄塔脇のシノ薮へ突入 | 444Pの石祠 | 444P先の展望地より |
左(東)側を見ると、盗人岩方面から先日通過した494P、鞍掛尾根と古賀志山の北面、そして眼前の赤岩山稜線が右(西)へなだらかに下っていく。日頃歩いているエリアを違った角度からパノラマで見ることが出来て感動である。
北東にこんもりとした小高い392P(地元名、牧場山)が見える。下山はあそこを越えて北の集落へ抜ける予定である。
赤岩山を裏(北)側から | 左下は392P(牧場山) |
展望地直下の岩は、『栃木の山紀行』さんの指摘通り若干足つきが悪いが、下が切れ落ちていたりしていないので、気を付ければ問題無いだろう。体の小さな人や岩が苦手な人は北側の急斜面から巻いた方が確かに無難かもしれない。
岩は二段になっていて、ここをクリアするとまた凡庸な尾根道になる。帰路に北進する分岐を通過して東進すると枝の切れ目から猪倉山と高原山が見えた。数少ない北側の眺望である。
383Pへは『栃木の山紀行』さんルートで巡視路をチョイス。一旦北にトラバースして北北西の尾根から338Pへ向かうルートだ。巡視路分岐でそのまま尾根を直進してもよさそうな雰囲気があったが、上の方が少し薮っぽかったので取りあえず行きはこちらを登る事にした。
展望地直下の岩場 | 383Pへ向かう途中で高原山方面 | 巡視路をチョイス |
巡視路途中に木橋で補強している箇所があった。果たして補強する必要がある程の荒れ具合なのだろうかと疑問に感じた。これは想像だが、巡視路の本来の用途からすると、重い荷物(測定器具や工作機械類)を担いで歩くのではないのだろうか。歩きやすいに越したことは無いのだろう。
何も無い383Pから西の尾根を使って、先ほどの巡視路分岐を目指す。踏まれた感じが途切れると尾根はやはり薮に阻まれている。北に逃げると、すぐ先ほどの木橋の所へ出た。
補強する必要があるのか? | 何も無い383P | 帰りは尾根+薮少々 |
先ほど通過した392Pへの分岐点で給水休憩をしていると、行きには気付かなかった地面に描かれた矢印が目に入った。(下写真左)
まだ真新しい感じがするが、こんな所を歩く物好きは自分以外にも居るものだ。地面の痕跡に親近感を感じてしまう。
ここからルートは、392Pを乗り越す形でひたすら北進することになる。地図を見る限り向こう側の鉄塔までは尾根も顕著であるので迷うことは無いだろう。
歩き出すと、確かに尾根を見落とすことは無さそうだが、所々濃い薮があったり踏み跡も不鮮明になる所があり一筋縄ではない。とにかく我慢で尾根キープである。
コルから、見上げるような392Pへ登り返すとここもまた何も無い静かなピークである。地元名を牧場山と言うらしいが、由縁を知りたいものだ。子供の頃に林間学校で行った清里の飯盛山が丁度こんな外観であったことをふと思い出した。そういえばあの辺りは放牧地だったっけ。そうそう、栃木のハイカーとして忘れちゃならないのが篠井富屋連峰の飯盛山。あそこも見事にお椀を逆さにしたような姿だ。
最近歩いた人アリ | 薮だが尾根は外さず | 392P(牧場山) |
392Pからは鉄塔めがけて急降下だ。踏み跡も千々に乱れて皆自分の歩きやすい所を選んでいる模様。傾斜が緩くなると次はまた濃い薮が待ち受けている。だがこれをやり過ごすと、パッと開けた鉄塔基部へ到着する。
392P北の厳しい下り | 鉄塔手前でまた激薮 | 256号鉄塔 |
256号鉄塔からは、東側に盗人岩の鉄塔、西は日光連山と手前に408.8Pの北尾根が見える。振り返ると鉄塔の脚枠越しに今降りてきた小高い392P。ここは、今日のコースでは2番目の眺望であろう。
盗人岩の鉄塔が見える | 今降りてきた392P |
鉄塔から先は巡視路下りになる。想定していたコースは東隣の尾根だったが、この巡視路の行く先は先日の偵察で確認済みだったので、素直にこちらを歩いた。今日は緊張感みなぎる山行であったが、肩の荷を降ろしたように何も考えずに黙々と歩くことが出来た。
やがて沢音が聞こえてきて舗装林道へ出会う。集落から先は通行禁止のロープが張られていて(不法投棄対策)、一般車は入って来れないこの林道を少し歩くと、偵察で見覚えのある集落へ戻ってきた。向こうの畑で腰の曲がった老婆が作業中だ。ほぼ宇都宮市と言って良いほどのエリアなのに、約4時間半ぶりに人に出会った訳である。
さぁ、後は駐車地まで2キロちょいの車道歩き。宇都宮市内は桜が開花したというが、この辺はまだ梅が盛りだ。農家の庭先の見事な枝振りの梅の向こうに見える男体山の姿などを眺めながら、ぶらりぶらりと行こう。あ・・・、ちょっと腿が痛いかな? 緊張から解き放されたせいか、軟弱な足腰はやはり相当疲れていたようである。
里山シーズン終盤。今期構想中の歩き残しはあと2箇所である。
巡視路出口 | 舗装林道を北進 | 集落へ戻ってきた |
概略コースタイム
駐車地発(10:06)-320m級P(10:39)-359P(11:10)-440.8P岩手前(11:32)-440.8P(11:47)-
鉄塔(12:03)-444P(12:10)-展望地着(12:16)-昼食休憩-展望地発(12:52)-
分岐(13:13)-383P(13:29)-分岐(13:47)-392P(14:03)-集落へ(14:33)-駐車地着(15:05)
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