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安蘇の山達アーカイブ


2013年02月24日

谷倉山、北面周回


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
谷倉山の過去の記事
  2010年4月25日 再訪、谷倉山
  2009年1月3日 ハイグレード里山 谷倉山(星野)
関連山行
  2012年2月26日 珠玉の薮尾根と大倉山

 谷倉山は南側の星野から登られることが多く、栃木百名山に選出されていながら今ひとつ地味な印象であまり訪れる人も多くないようだ。今回はそんなマイナーな山の、更にマイナーなルートである北面を周回することにした

 今回のテーマは破線道の追跡である。通常ルーファンで歩く場合は、多少薮っぽくても理論的に一番手堅い尾根を堅持して歩くのが自分のこだわりである。今回のように地形図に描かれた破線を追跡するのは初めての試みだが、周辺の破線道を見ると谷沿いに付いている場合が多いのが判る。歩き終えて思ったのだが、古い時代に山から木材を搬出する時に作られた溝を航空測量が道として判断して地図に描かれているのではないかという想像に至ったのである。

 下野新聞社「栃木百名山」のサブルートでは、星野から小山よし姫の墓地を経由して谷倉山の西に伸びる主稜線に突き上げるコースが紹介されている。自分もかつてこのコースを下りで使ったことがあるが、その時に地形図にあった南からの破線が尾根を超えて北に伸びていること。更にその先に林道が地図に描かれていることに興味を持った。もしかするとこのルートは古の交通の要衝だったのではないかと柄にもなく思索した。北面の破線部分だけでもトレースしてみたいという思いに駆られ、数度の偵察を重ねたのだ。
 更に、下山は谷倉山北側の展望地から北に破線を辿り、周回コースとした。振り返ると、登りの破線道はその痕跡すら見いだすことが出来ず、また下りのそれはひたすら木材搬出用と思われる溝が続くのみ。懐古へのロマンは植林地の歴史と現実の中に深く埋没しているようである。

 

 周回の帰着点付近、思川脇の少し広い所に車を停める。ここからはまず2km弱の車道歩きとなる。一旦思川を渡り、西へ川沿いの車道を進む。農道のような静かな道なので車は全く走っていないが、犬の散歩をする人数人と行き交う。人も犬もザックを背にする自分を皆珍しそうに見ている。一体どこへ、何をしに行くのかと思っていることだろう。

 寒沢橋で再び思川を渡り返し、日陰で寒々しい雰囲気の寒沢林道へと足を踏み入れた。

     
思川脇の駐車地    寒沢橋を渡る    寒沢林道へ

 暫くは林道歩きが続く。支線も沢山あるが、よく整備された本線をひとしきり進むとやがて終点へ到着。奥に続く薮が今日の取り付き点である。

 いきなり薮漕ぎの様相だが、よく目を凝らすと沢沿いに仕事の人の踏跡が付いている。しばらくこれを辿っていくが、やがて谷が詰まってくるといかにも歩きにくそうになってきた。今回は破線道をGPSのルートとして設定しているが、既に破線道が有るべき場所は到底往来可能な道があるとは思えないもう一本隣の谷にあるようだ。ここは無理に破線を追うのは危険、方角さえ外さなければ谷倉山の主稜線に間違えなく到達するのだから手堅く行くべきであろう。脇の斜面を直登し小尾根に乗りあげた。

     
林道終点、この奥から取り付き    暫く沢沿いに登る    尾根に乗り上げた

 455mPへ向かうコースから少し進路角が外れていることに気がつく。このまま455mPに方向修正をするより、トラバース気味に谷倉山主稜線へ向けて方向修正するほうが妥当と判断した。やがてジャングルのように枝が弦巻く緩斜面に出て見通しが効くようになった。弦をくぐって登って行くとその先に主稜線が見えてきた。

     
   ジャングルのような枝    谷倉山主稜線は近い

 たどり着いた主稜線を少し進むと星野方面への下山口を見る。文字の道標は無いが、ビニールテープで巻かれた矢印があるのみ。下野新聞社の本を見て歩くハイカーは此処を見落とすと苦戦するかもしれないポイントだ。星野から登って来た人には「谷倉山へ」の道標があるが、どうせ道標を建てるなら「星野方面へ」の下りの道標も併設すべきであると強く思うのだが。

     
星野方面の下山口      

 左右を杉に挟まれた防火帯のような尾根を進むと、ふっと明るい自然林に飛び出す。陽だまりは残雪も無くフカフカな落ち葉道。僅かな区間であるが穏やかな歩きを楽しむことが出来た。

 電波中継アンテナのある山頂はいつものことながら殺風景だ。三角点と山名板をカメラに収める時間が精一杯の滞在で、踵を返すようにして北側にある展望地を目指す。

     
明るい自然林    殺風景な山頂    展望地へ向かう

 展望地はかつて大規模に伐採が行われた斜面の頂点部分で、粟野の運動公園あたりを車で走行中に見上げるとよく見える箇所である。以前は下草もほとんど無く、絶好の昼食ポイントであったが、笹の丈が高くなってしまい好眺望が失われつつあるのが残念だ。それでも笹薮を嫌わず少し分け入ると相変わらずの良い眺め。谷倉山はこの景色を見るために登るといっても過言ではない。

     
笹が生えてしまった展望地    日光方面は雪雲の中    粟野の市街地、遠く古賀志山も見える

伐採地より

 暫く景色を楽しんだあと、東側にある林道へ続く稜線を少し偵察してみる。以前、大倉山からこの林道まで縦走した時に谷倉山のこの展望地を終着点として計画したが、体力気力切れで割愛したいきさつの尾根だ。笹薮だが、見たところ難しそうな雰囲気は無いので機会があれば歩き繋ぎたいものだ。

 尾根の固まりかけた残雪を脛くらいまで踏み抜きながら展望地へ復帰。まずは山頂の電波中継所から伸びる東電の電柱沿いの快適巡視路下りだ。途中プラスチックの階段もあるが、上に雪が付いているので却って滑りやすくて気を使う。表面がバリバリになった雪は、動物達の足跡も型を取ったようにしっかりと固まりつつある。

     
林道『真上男丸柏木線』へ降下する薮尾根偵察    送電線尾根を辿る   

 巡視路が一気に高度を下げようとする箇所に青ペンキの矢印が切り株に書かれている。少し下ってみたが明らかにコースアウト。どうやらここで巡視道とはお別れのようである。

 朝から強かった風もこの青ペンキの切り株付近では背後の山が全て受け止めてくれている。立派な景色があるわけではないが、轟々と唸り声を上げる強い風から、此処だけ静かなスポットを作ってくれているのだ。そんな優しい日溜まりは暖かな休憩地である。ためらうことも無くザックを置いた。

     
林道『真上男丸柏木線』       ここから巡視路と分かれる

 食事を済ませて再出発。巡視路は下に降りて行ってしまうが電柱とは少しの間お付き合い。それにしてもこんな山中によく電柱を建てたものと感心する。

     
先ほどの展望地を眺めながら昼食    今日はスタバのコーヒー    暫く林内の電柱を追う

 やがて電柱も自分の向かうべきルートから外れ、北東の稜線へと降りていってしまった。やがて、地図には記載の無い林道(真上男丸柏木線)へ到達するのだろう。だが、自分の追うべき破線路が向かう方角ははあくまでも北である。

     
よくこんな場所に建てたものだ    電柱とも別れを告げて尾根キープ    379mP

 植林地内の随所に付けられた溝は恐らく過去に木材搬出用に使われた木道であると思うが、これが蛇行しながら時には分岐をして複雑な地形を形成している。尾根形を拾い歩く有視界歩行だけではいささか心もとないので頻繁にGPSで方角を合わせながら進んでいく。もっともどこに引っ張られていっても思川沿いか東の林道に必ず拾われる地理なので心配は要らないが、計画ルートを辿れないのはルーファンとして目的を達成出来なかった事になる。

 379mPで尾根の乗り換えに成功すると、今度は真新しい倒木が行く手を塞ぐようになり歩き辛いことこのうえない。終盤の破線道は谷底にあるようで、もはやそこは伐採木の海と化しておりとても歩けたものでは無い。トラバース気味に下降したり、谷の薄い所を乗り換えしたりと徐々に高度を下げてようやく作業林道へと降り立つことが出来た。

     
木材搬出用の古い溝    破線を追うと谷へ到達    倒木が多くて降りるのが大変だった
     
林道『松崎滝の沢線』へ到達       駐車地へ戻る

 久々に「骨のある」コースを歩いたような気分に浸るが、車に向かう小路から思川の対岸に見える堂々とした稜線(無名三角点峰455.2mとその一帯)が目に入り、再びこの山域を歩かんという思いを新たにした。


概略コースタイム
駐車地発(08:37)-寒沢林道入口(09:01)-林道終点(09:25)-谷倉山主稜線(10:03)-
山頂(10:39)-展望地(10:47)-昼食ポイント(11:21)-昼食休憩-行動再開(11:56)-
379mP(12:15)-駐車地着(13:09)

2012年12月16日

三床山から金原山へ縦走

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※ニ床山~金原山は一般登山道ではありません。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
三床山の過去の記事
  2008年12月23日 素晴らしき里山 三床山

 三床山周辺は標高こそ低いが、所々岩塊が剥きだしていて松が多いが故に、見るからに眺望が良いだろうと思わせる雰囲気がある。地形図を眺めていると、一筆書きのように北北東の金原山まで伸びる尾根筋が見えてくる。枝葉の枯れ落ちたこの時期、ここを歩いてみたいという衝動を抑えることは出来なかった。

 事前偵察によりコースのフィニッシュは「林道長谷場閑馬線」の最高標高点の峠とした。そこへ折りたたみチャリをデポしてスタート地点の鹿島神社駐車場まで約10kmの自転車走行の後、車を回収するという計画だ。

 朝の8時過ぎに峠に着く。路側にワインレッドは少し目立つかもしれないが、どうか下山まで無事にそこに居てくれと願いながら自転車を括りつけた。帰りに走る峠の下り坂を、右に左にとパジェロミニのハンドルを切りながら車で鹿島神社へ向かった。たかだか10kmと考えていたが、車で走っても結構距離があるような気がする。下山後の疲れた足腰で大丈夫かと思う一瞬の杞憂も、この区間が殆ど下り一辺倒なのは調査済みであることを改めて思い出す。

 ハンターの軽トラが数台駐められた鹿島神社の駐車場に到着。軽トラの荷台にある檻の扉は開け放たれており、猟犬も主人も既に出発しているようだ。
 準備を整え駐車場から登山開始すると、のっけから狩猟注意の看板が目立ち、「この付近は人がいるから注意して狩猟しましょう」と書かれている。いささか穏やかな話では無いが、以前会ったハンターから猟場のことは聞いていたので登山道自体は安心である。

 猟場についてはあくまで聞いた話だが、一床山~ニ床山南方の谷、高松の西側が主エリアらしく、散弾銃で主に鳥を撃っているらしい。この辺りは足を踏み入れないほうが良いのは間違いない。前回もそして今回もこの谷方面からは発砲音を数発聞いている。

     
林道の峠に折りたたみチャリをデポ    この付近は人の出入りアリ    谷筋は罠もあるらしい

 きちんと整備された道標に従って山中に入ると流石に登山者達のエリアとなり、物騒な雰囲気もなくなる。序盤は傾斜の緩い落ち葉の山道が足に心地良い。

 それにしても今日の気温の高さはどうしたことか。まるで冬が何処かに出掛けてしまったような暖かさだ。ちょっと厚着をしすぎたせいか汗がいつもより多めに吹き出してくる。高度を上げ登山道に岩角が現れる頃、ふと立ち止まり汗を拭うと後ろ側の眺望がが開けてきた。遠く富士山が綺麗に見えている。

     
道標がきちんと整備されている    落ち葉をかさこそ踏みしめて    高度を上げて振り返ると富士山が見えた

 前回、三床山を訪れた時にニ床山から見た高松(330mP)方面の箱庭のような風景が鮮やかに記憶に残っており、次に歩く時は是非踏みたいピークと考えていた。今回はその高松経由で登っている。高松に近づくにつれ、邪魔な樹が少なくなって、三床山・ニ床山・一床山からなる三床三山の姿があらわとなった。改めて三床山山塊の景色の良さにしばし足を止めたのは言うまでもない。

     
高松付近から三床山    高松(303mP)    一床山とニ床山

 高松から一旦下って登り返すとニ床山である。360度好眺望の一床山まで足を伸ばそうかと思ったが、今日は長丁場なのでで出来るだけ体力温存をしたいところだ。ニ床山での小休止の後、再び三床山への稜線へ登り返し、赤テープの箇所から金原山への小ピークを繋ぐ山旅が始まった。

     
ニ床山へ寄り道    高松を振り返る    此処より登山道を離れる

 金原山へ向かう縦走路から見る三床山は丁度台形を真正面から見る感じで、山頂周りに生える落葉樹がさながら坊主頭のようで面白い。

 分岐点から暫くは道形もあり踏み跡も鮮やかであったが、いつしか落葉が全てを呑み込み、手の加えられていないありのままの自然林の尾根となっていく。葉の生い茂る季節なら手こずりそうな箇所も、むしろ楽しげな小薮となり里山シーズンの到来を実感しながら進んでいく。

     
北から見る三床山は坊主頭    木々の合間を縫って尾根形を追う    落葉期は藪も明るい

 振り返れば必ず視界に入ってくる個性的な三床山の坊主頭も随分小さくなってきた。途中、つつじ山、桜山とマジックでプラスチック板に書かれた山名板がかかる小ピークを通過する。この先、大姫山、天ヶ岳、林山、六地蔵峠も同じタイプの山名板が続く。どうやらこのルートの常連さんが居るようだ

 大姫山を過ぎると数少ない植林地境界を左手に見るようになるが、それも僅かでそこを過ぎるとまた落葉樹と松の混合林に戻る。

     
三床山が随分遠くなってきた    日向に石祠が二基、桜山    数少ない植林境界

 天ヶ岳付近になると、西沢や梅園の集落を挟んだ西側から伸びてきた稜線が段々間近に近づいてくる。見ると所々岩峰があらわになっており、あちらもなかなか変化があって面白そうな感じである。次回の三床山は是非向こう側の尾根を歩くことにしよう。

 今回のコースはルーファンのセオリー通りのピーク繋ぎである。安全を考えて当然巻くつもりは無いが、実際歩くと等高線で読み取れる以上にアップダウンが容赦無く感じる。落ち葉が堆積している急登は踏ん張りが難しくて思いの外体力を消耗していくものだ。たまに巻けそうな小ピークに出くわすとトラバースの誘惑に駆られるが、手堅く進むにはやはり愚直にピーク越えを重ねるべし。コツコツこなして行けばやがてゴールも見えるというもの。

     
一本西側の尾根も歩いてみたい    落ち葉の急登は思いのほか体力消耗   

 そんなポジティブシンキングも、いやはや足腰にはなかなか厳しいぞ。下ってはまた登り返しのエンドレス。

 天ヶ岳の先にはついたてのように見える高みがあり、その右手にに目を移すと伐採地がある。あそこまで辿り着いたら大休止で食事としよう。

 高松に立った頃から風が強くなっていたが、伐採地は南東に向かって開けているので西風が丁度尾根に遮られる。風の影響を殆ど受けない穏やかな日溜まりへやれやれと腰を降ろした。

     
あそこまでまた登り返すのだ    樹間に里が垣間見える    昼食の伐採地

 この時点で行程としてまだ半分強しか歩いていない。ルートミスなどをしてロスタイムをすると最後の自転車区間で日没を迎えるという事も考えられるので、休憩もそこそこに出発をした。

 この先は岩角が多く見られようになる。所々痩せて鋭敏な所もあるが落ち着いて通過すれば危険は無い。また、コースで唯一薮が繁茂している箇所があったが、潅木や草も落葉のこの時期は尾根歩きにちょっとしたスパイスを加える程度である。

     
岩が出始めるが巻くほどではない    綿々と続く尾根筋    唯一の薮箇所。大したことはない

 登っては下り、下っては登ることの繰り返し。山歩きとは本来そんなものだが、どうにかたどり着いたピークを踏むと、デジャブのようにその先に新たなピークが待ち構えている。後半は流石に体力よりも気力が削がれていくような気がした。
 小ピークを踏むたびGPSを出して現在地の把握OK、歩き出す前にコンパスで進路もOK。最近のルーファン歩きの中では完璧ノーミスなのだが、地形図を超えた"一体どこまで続くのだろう、この尾根は"と思わせるこの感じは一体なんだろう。

     
眼前のピークのその次が金原山    自然のままの岩頭を超えていく    真新しい石祠があった

 動物達の気配でさえ深く落ち葉に封印された尾根道は本当に美しい。この美しい尾根を歩けるのが、まさに冬場の里山の醍醐味なのだ。

 ようやく到着した金原山も、栃木の山紀行さんの山名板と、威厳ある太い三等三角点の標柱さえ無ければ今まで越えてきた静かなピーク達と何も変わらなかっただろう。

     
美しい枯尾根歩き       ようやく金原山へ到達

 長かった縦走路も、林道へ降り立てばようやくお終いである。ふと振り返ると、金原山のシルエットが枝の奥にどっしり構え、あたかも里山のラビリンスから脱出したような感にふと包まれた。

  
自転車の待つ峠へ帰着    下り坂を快走!

概略コースタイム

今回、残念な事にGPSのログ採取が行えなかった(ログ採取のスイッチ入れ忘れ)、故に、コースタイムをご覧になる場合は、記憶に残っている大まか時間になってしまっている点に注意されたい。

鹿島神社駐車場発(09:0)-高松(09:40)-伐採地で昼食休憩(12:10)-
行動再開(12:30)-自転車デポ地(14:30)-自転車走行-鹿島神社駐車場着(15:30)

2011年05月15日

大戸川源流を詰め熊鷹山系5座縦走



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
熊鷹山の過去の記事
  2008年5月4日 県境の山 熊鷹山

 4月末に敗退した大戸川源流リベンジ。今回は情報収集とGPSへのデータ入力、そして気力も万全の構えで臨む。
 コースは基本的に前回と同じ。1時間早く行動を開始し、朝の8時前に西沢駐車場を出発した。

 駐車場からの長い舗装林道歩きは、進むに従い心地よい新緑のトンネルとなっていく。ふと青空を見上げると、これから向かう沢ルートへの想いが自然と高揚してくる。
 白ハゲ口から沢沿いの登山道に入ると、そこは鮮やかに輝く新緑のエリアだ。三滝へのコース取りは体力温存で山コースを選びコツコツと高度を稼いで、滝の展望台に達する直前の分岐より氷室山方面へと向かった。三滝を高巻くようなこの道は途中十二山への尾根道を分けた後、沢へ急降下するといよいよ大戸川源流の谷詰めとなる。

 前回は三滝に到達する前に既に山コース途中で道を間違えてしまい、作業道をトラバースして川コースへ出るという大幅なタイムロスをした。間違えた地点を検分すると、よくもこんな所で・・・と一人山中で赤面するほどである。

     
白ハゲ口へ向かう林道    白ハゲ口より沢沿いへ   
     
田沼駅まで33Km!    炭焼き窯跡    十二山への直登分岐

 朽ちかけた古い橋を渡ると、まずは前回同様左岸を行く。一面落ち葉が敷き詰められたルートはすっかり踏み跡を消し去っているが、前回の撤退地点付近あたりで右岸に渡るべき赤ペンキがあった。沢の分岐は右を選ぶようにしていくと、再び渡り返して左岸を歩くようになる。立ち木に縦にくくり付けられた「宝生山へ」の道標が目立たず判り辛いが、これを見逃してはいけない。

     
古い橋で沢を渡る    左岸を行く   
     
靴が埋まるほどの落ち葉    沢を覆う新緑が眩しい   

 落ち葉と渓流のダークカラーにすっかり目が慣れた頃、ポツンと咲く一株のツツジ。紅紫の色合いが程よく緊張感を和らげてくれる。やがて旗川源流と越路館沢との分岐点に到達するが、ここにはしっかしりた道標があり安心だ。
 右の沢(越路館沢)を登っていくと橋やトラロープなどが出てきて安心感もあるが、此処に至るまでのコースの手付かず感からすると逆に違和感を感じてしまう。橋が無くても特に通過に困難は感じられないのだが、水量が多い時の事を考えてなのだろうか?

 やがて右手の氷室山から伸びる境界尾根が手の届く位の距離になってくる。何処から取り付くべきかと思案しながら進むと、やはり岩のペンキを見つけて尾根への取り付き点を知る。

     
ふと振り返るとツツジが咲いていた    旗川源流と越路館沢分岐    ちょっと下世話なロープと橋

 沢を渡ると再び目立たない小さな道標があるが、先ほどの岩の赤ペンキとこの道標を見落とすと、宝生山付近まで沢を詰め続ける事になってしまうだろう。後刻、氷室山と宝生山の間の稜線を通過中にたまたま下の方から無理やりよじ登ってきたハイカーに出くわしたが、このご夫婦に話を聞くとやはり最後の取り付きポイントを見つけられず、仕方なく宝生山に直登してしまったらしい。(それはそれで凄いとは思ったが)

 沢の対岸から境界尾根に向けてジグザグに登っていくと、視界が広がったその先にミツバツツジがあちこちに咲き誇る光景が広がってきた。閉塞感のある沢沿いから開放された気持ちも手伝って、その美しさに思わずため息をつかんばかりである。

     
尾根に登るとツツジが待っていた      

 尾根はよく歩かれた感じのしっかりとした道が付いている。登るに従い斜度が緩んでくると、宝生山からの県境尾根とあわせてすぐに氷室山神社へ到着した。神社裏の高みが山頂ということなので裏手をよじ登った。
 以前唐沢山で三角点が見つからずに神社の社殿の裏側を物色したことがあったが、その時家内に、「神様の後ろに侵入するなど不敬な」と言われたことをふと思い出した。だが、おおらかな宝生山の神様はきっと大目にみてくれるだろう。

 今回縦走する五座は熊鷹山以外は展望の期待は出来ないことは織り込み済み。山頂は小休止にとどめ、先を急ぐ。

     
氷室山神社       宝生山へ向かう

 宝生山も眺望は得られず。山頂では先述の沢から直登してきたご夫婦と、やはり後から登って来た別なご夫婦としばし会話する。越路館沢詰めや熊鷹山のツツジが話題となり一休みをした。

 宝生山から十二山への尾根道も実に穏やかである。点在するツツジや白ヤシオ、そして時折西側に拡がる足尾方面の山並みが清々しい。

     
   白ヤシオ?    足尾の山並みが見える

 やがて進路右手の樹間に根本山が見えてくると、程なく十二山へ到着。そろそろ腹も空いてきたことだしこの辺で食事にしようとザックを降ろすと、先ほど宝生山で一緒だった二組のご夫婦も少し離れた場所に腰を掛けて弁当を広げている。

 十二山の山頂もまた眺望は無いが、山頂脇にすこぶる枝振りのよろしいツツジが、ハイカーのアイドルよろしく得意げに咲いている。

     
根本山が見えてきた       枝振り良し

 根本山へは一旦西の稜線を辿ることになるが、それまでの尾根と何となく一味違った雰囲気の山道である。自然林に囲まれていた尾根筋に針葉樹が僅かに入り組み、植生が混合してきたのが原因だろう。
 依然として豊かな落ち葉に覆われた優しい山道は続く。南側には熊鷹山方面の稜線も見えるようになってきた。

     
根本山へ       向こうは熊鷹山方面

 丁目石を見るとまもなく十二山根本山神社へ達する。かつては登拝者で賑わったであろう一帯も、今は小屋も朽ちてややうらぶれた感じがする。
 神社を過ぎ、尾根より一段低い所に付けられた道から一旦稜線に上がり根本山を目指す登山道は、左手が植林地であり、歩き慣れた宇都宮近郊や鹿沼の山を歩いているような錯覚に一瞬陥る。咲き遅れのアカヤシオとその落花が、むき出しの土の登山道に淡い色合いを添えていた。

     
丁目石    十二山根本山神社    咲き遅れのアカヤシオ

 期待はしていなかったが、根本山もまた眺望は無し。山頂には賑やかなグループが昼食の宴たけなわといったところ。水を一口飲んで先を急ぐ。

 熊鷹山への尾根道も起伏の少ない散策路のような登山道である。時折現れるツツジを目で追う様にして進めば、あっという間に山頂へ。相変わらずの360度眺望、人気の山頂は沢山のハイカー達が入れ替わりたちかわりでごった返している。

 基本的に人口密度が高いのを好まない自分としては若干居心地が良くないが、今日のルートでは眺望はひたすら忍の字であったが故に、いつも昼食の時の為にと用意している珈琲と茶菓を此処までとっておいたのだ。良い景色を眺めながら飲むコーヒーはやはり旨い!

     
根本山への登り      


 眺望とコーヒーを存分に堪能した後は西沢方面へ下山開始である。山頂直下は僅かな距離ではあるが、ツツジのトンネルがことのほか美しかった。

     
   西沢方面下山口はツツジトンネル   

 高度を下げていくと、ミツバツツジに代わって朱色のヤマツツジが見られるようになってきた。落ち着いた色に見える花に明るい日差しが照りつけると、山の中では妖艶な輝きを放つから不思議だ。妙に存在感がある。

 やがて植生界を超え植林地を進むようになると、遠い沢音が段々と近づいてくる。沢に降り立ちわさび田の脇を抜けると林道の終点に出て山道は終わりとなった。

     
   植生界を過ぎる    林道終点に到達

 西沢駐車場に戻ってみると、朝、数台あった車は皆帰ってしまっている。どうやら自分がオーラスのようだ。やはり此処からだと三滝往復か熊鷹山ピストンがメインコースになるのであろう。自分のように7時間以上も掛けて大回りする者は珍しいのかもしれない。

 旗川源泉の名湧水として三本引かれているうちの一つ、蓬莱水(残る二つは上人の水と宝生水)を空いたペットボトル2本に詰めて持ち帰った。自宅でコーヒーを淹れて飲むとすっきりした味わいである。自然豊かな大戸川周囲の山が育んだ味わいと思うとまた格別である。

     
   駐車場は自分の車のみ    下水のような吐出口がちょっと気になるが味はよい

概略コースタイム
駐車場発(7:49)-白ハゲ口(8:28)-十二山への尾根分岐(9:00)-越路館沢分岐(9:42)-沢より離脱(9:58)-
氷室山(10:27)-宝生山(10:55)-十二山(11:44)-昼食休憩-行動再開(12:06)-十二山根本山神社(12:20)-
根本山(12:38)-熊鷹山(13:29)-コーヒーブレイク-下山開始(13:56)-白ハゲ口への分岐(14:19)-
植生界(14:43)-駐車場着(15:32)

2011年04月29日

久々の不発! 氷室山、途中撤退

久々の山行は、山を歩き出して2度目の完全敗退。

 メジャーな山だから道標も完備されているだろうとおっとり刀で入山したらとんでもないくわせもの。
情報入手と準備万端なら一応登山道の筈だから難しくはないんだろうに。

 全般的に道標が多く設置されてはいるものの、三滝へ至る通称「川コース」は道標に従うと道が消失するポイントあり。指し示す方向と逆側の赤ペンキを辿るとやがてコース復帰など、かなり登山道が怪しい箇所がある。おまけに行き会った登山者に聞いた情報が間違っていてタイムロスしたりと散々な結果であった。

 序盤から僅かな距離を進むのに何度も迷い、それでもいよいよ最後の谷詰めルートに乗ったかなと思えば、沢沿いの深い落ち葉で道形はまったく無し。予定時間を大幅に過ぎてしまい、行動続行を不可と判断し撤退することにした。

 これらの顛末を記事にしようかなとも思ったが、今現在やはり悔しい気持ちが抑えきれないものである。5月中に再訪し、この沢を詰め氷室山から熊鷹山までを必ず周回するぞと心に誓う。委細はその記事に委ねるとしよう。

待ってろよ!大戸川源流

2011年03月05日

不動岳


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 上永野にある不動岳。下野新聞百名山ではあるが、いかにも地味な雰囲気と人気の低さに天邪鬼な自分は妙に登校意欲を駆り立てられる、そんな山である。

 今回は塩沢峠を経て登る一般ルートを歩き、不動岳と北東にある613mP(雷電山)を踏む。下山は、雷電山から北西に伸びる顕著な尾根を辿って落合の集落へ着地するという計画である。このルートは尾根を忠実に追えばさほど難しくは無いが、一般路では無い為、ルーファンや悪路の経験者以外は通過しないほうが無難である。また、塩沢峠へ至る谷詰めの正規(?)ルートも一部不明瞭の場所があるため、山慣れない方は経験者の同行が好ましいと思う。

 ネット情報(多謝)通りに与州公民館に車を置かせて貰い出発をする。なるほど、ネットの不動岳記事で散見される犬の吼え声が随分間近に聞こえるではないか。この鳴声の主は、下山時の着地ポイントである長壽院の脇にある民家に飼われている2頭の犬である。
 地元の軽トラが通過したくらいで大騒ぎで鳴きたてるので、登山口に向かう自分は彼らからみれば立派な侵入者。朝から大いに吠え立てられた。ただ面白いのは鳴きながら尻尾を振っているのだ。口笛を吹いて好意を現すと鳴くのをやめる。とりあえずいつもと違った状況で吼えるなら番犬としては一応仕事をしていると評価される。過密した住宅地ではちょっとした騒音問題に発展しかねないだろうが、こののんびりした里では瑣末なことのようである。

 この元気な2頭の鳴声は遠く不動岳の山頂までにも到達する。今日の下山ポイントは彼らが待ち構えている場所の至近の薮から出てくる可能性があるので、下山時に大騒ぎになるのではないかと登る前からそれだけは憂鬱であった(^^;

 歩き出して暫くは舗装の林道を行く。マジックで書いたような素朴な手作り道標があった。途中、人が居るのか居ないのかよく判らないが、庵のような小屋が両脇に二軒ほどあった。週末の隠れ家として道楽でこんな所に住むのも一興だなとお気楽頭で進んでいくと、途中に「動物のフンに注意」という看板があった。肝心の箇所が色あせて見えなくなっている。謎掛けのようでなかなか飽きさせない道中である。

     
与州公民館に駐車    色あせゆく手作り道標    正解は(フン)に(注意)

 やがて舗装が切れ、枝打ちされた杉の葉が堆積したフカフカの林道となる。はじめ沢沿いだった道も沢底を歩くようになってくると、放置された倒木が邪魔になってきた。

     
植林地の林道を行く    放置倒木で荒れだす    谷を詰める

 沢の水が消え、枯れ沢になる頃には倒木が更に激しく折り重なり、歩き辛いことこの上ない。確か右手の尾根に登ってしまえば早晩ルートに戻れるだろうと考え、若干急ではあったが側面を直登した。この時、地図を見て現在地の確認を行わなかったのが実は失敗。30~40mくらいの標高差を登り詰めてGPSを見たらびっくりした。途中で谷の分岐を一本見落として少し南側に入っていたのだ。従って、尾根を乗り越してまた北側の谷へ戻らなければならないという事態になってしまった。
 落ち葉が堆積していて滑りやすい。神経を使いながらじりじりと下降していくが、この乗り越し迷走で思いのほか体力を消耗した。このクラスの山で最近筋肉痛になることは無いが、これを書いている今、太ももの痛みがこの時の瞬発力を物語っているようである。

 復帰した谷も状況は同じで、相変わらず歩き辛い荒れ沢である。上を窺うといよいよ谷が詰まろうかというあたりで、今度はGPSと地図で念入りに現在地を確認してから右手の尾根に取り付く。このルートは地形図の破線ルートそのものだが、定まった踏み跡は無い。決して一般登山道では無いだろう。山の経験が浅い人は注意したい箇所だ。

 尾根に取り付くとよく踏まれた道が現れた。下手のほうに行くともしかしたら先ほど気がつかなかった分岐があって実はこちらが正解ルートだったのかもしれない。このあと山中で出合った数人に尋ねると、一様に「道が判らなかったので谷から尾根に直登で取り付いた」と証言している。件の尾根を下ってみれば判ることだが、今日の自分の予定では帰りに此処を通らない。

     
歩き辛いことこの上なし    谷を詰めきる前に右手の尾根へ    よく踏まれた道が現れた

 尾根の心地よい陽だまりで心が安らぐ。一休みして歩きだすとすぐにトラバース状に登っていく。再び植林帯の中を進んでいくと、首の欠けた地蔵様と佐野方面の山塊が目に飛び込んできた。塩沢峠に到達である。

 首かけ地蔵の背中に続く稜線を辿れば高原山から尾出山へと勝道上人の修験道である。いつかこちらも歩いてみたいものだが、今日はここから南へと不動岳を目指す。西側の谷からは、鹿なのだろうか。枯葉を踏む足音がこちらを窺っている。

     
塩沢峠へ到着    峠より北進すれば高原山へ   

 不動岳までの尾根道は、広葉樹の穏やかな道。それまでの暗澹たる谷詰めが嘘のような快適さである。あの苔むしてじめじめした谷を我慢した者のみが御褒美で歩ける明るい尾根である。不動岳に近づくと尾根が痩せてくるが、特に岩で難儀するとかそういうこともなく、また左右に木が生えているので通過に特に困難もない。

     
暫くは穏やかな尾根道が続く       この先尾根が更に痩せるが問題は特に無い

 雷電山の分岐を見て、ほんの少しで不動岳の山頂である。この時期は枝越しに幾らか景色を覗くことが出来るが、春先から葉が生い茂ればまったく景色の無い山頂となるだろう。それは途中の尾根も同じことで、この山は冬場以外は薦められないだろう。

     
雷電山への分岐点    不動岳山頂   

 山頂は景色も良くないので早々に撤収。雷電山に向かうべく踵を返す。

 雷電山に向かう尾根もまた自然林で、途中のコルなどは木もまばらで実に長閑で良い雰囲気だ。

     
640Pとの間のコル    雷電山が見えてきた    640mP

 640mPからは少し急な下り。高度を下げ過ぎでは無いかと気を揉んで地図を出そうと足を止めると、今日一番の好眺望ポイントから日光連山が見える。男体山が一部部分しか見えないアングルが新鮮だ。

 残りの僅かな登りを詰めればそこが雷電山の山頂である。石祠と小さな金属製の鳥居があった。毎年三月の下旬には麓の集落の講があるというが、今はまだ特に新しい造作や飾りも無くひっそりとした感じである。

 食事の準備に取り掛かっていると、不動岳の山頂で逢った単独の男性がやってきた。歳の頃は自分より一回り若いくらいだろうか。彼は不動岳の南尾根を辿って下山を試みるも途中でルートが不明になり断念。1時間40分もロスタイムして山頂に登り返したという。山頂で休憩を取る彼を残して自分が雷電山に先発したというわけだ。
 話によると東京から電車に乗り、途中ヒッチハイクをしながら登山口にやってきたという。一週間前も隣の山塊の尾出山と高原山に登ったということだが、地元のハイカーでも渋好みのこのエリアに毎週通っているのだからよほど静山が好きと見える。

 「東京なら奥多摩とか山梨あたりに良い山が一杯あるのではないですか」と尋ねると、そういう山は人が多くて行く気がしないという返事が返ってきた。その点は自分も同意できるが、東京から遠路はるばる、しかもヒッチハイクまでして北関東の寂れた山を歩くというのは静山歩きも筋金入りだなと思った。

     
コース唯一の眺望箇所    雷電山頂上   

 東京のハイカー氏は行動食よろしく慌しくカレーパンを齧ると手帳になにやら書き込むと直ちに出発していった。下山路は・・・

 なんと、躊躇することなく北西尾根を降りていったではないか。自分も今日のメインコースと考えていた情報が少ないこのルートを良くぞ遠方から歩きに来たものだ。ますますもって奮っている。

 さぁ、地元代表として負ける訳にもいかない・・・というのは冗談だが、自分も出発。

 雷電山から伸びる尾根は北西と北東の2本。麓まで顕著に伸びる北西の尾根が今日の下山メインコースとなるが、先ほど既に先発されてしまって答え合わせが済んでいるような心持なのが少し残念である。

 初め急な下りだが、斜度が緩んでくると時折松の老木が点在する自然の趣が深い尾根となる。

 標高400m地点で眺望が急に開け、不動岳と塩沢峠を結ぶ稜線をはっきり見渡すことが出来る。この地点からの尾根の選択が少し難しかった。事前の地形図検討では、真北に下りる案と少し東に振って降りる案。真北は斜度もきつく下のほうに薮が見える。先行者はどちらに降りたか判らないが、ここは手堅く東向きを選択した。初め不明瞭だった尾根形も進むに従い段々と鋭敏なルートとなっていく。所々積もった落ち葉で足元が滑りやすいので神経を使うが、GPSを見てももはや進路に間違いは無い。その証拠に件の犬達の鳴声が向かう先からよく聞こえてくる。この辺りで道迷いをしたら犬の鳴声を目指して歩けばよいという訳だ(笑)

     
北尾根にとりかかる    松の老木が点々と続く    尾根終盤の急降下


400m地点より塩沢峠~不動岳間の稜線を望む

 下るに従い段々薮っぽくなってきたが、我慢して尾根をキープしていくと長壽院の庫裏の脇にある荒地に着地。元気な二頭の犬に盛大に迎えられたのは言うまでも無い。

  
最後は多少薮っぽいが尾根キープで進行    長壽院の右奥に着地

概略コースタイム
与州公民館発(9:14)-コースミス(9:57)-リカバリ復帰(10:21)-谷から稜線へ(10:55)-
塩沢峠(11:08)-不動岳(11:55)-雷電山(12:23)-昼食休憩-行動開始(13:03)-
400m眺望地(13:36)-300m地点でGPS電池切れ(13:51)-与州公民館着(推定14:00頃)

2010年11月14日

深高山と石尊山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 深高山石尊山。地図で眺めると、サツマイモに良く似た丁度真ん中を走る尾根にあるこの二つの山。起伏の少ないこの尾根を一度歩いてみたいとかねてより思っていた。

 いつ登ろうかと思いながら2年程経過して今日に至るが、歩くならのんびりとした気分で・・・と考えていたところ、Mixiの山歩き企画のお誘いを受けて参加させていただくことにした。

 山行計画は、猪子トンネル入り口より深高山と石尊山を踏み、石尊山西側の展望広場で昼食。ピストンで下山である。
 主催者の「なおべぇ」さんにお願いして、昼食後に本隊と離脱してそのまま西に下山。麓の石尊神社にデポした自転車で猪子トンネル側まで帰還することにした。

 集合時間に遅れないよう余裕を見て出発したら、少し早めに到着してしまったので、ガイドブックなどにも紹介されている鶏足寺を訪れた。かつては広大な敷地に多数の伽藍を擁していたようだが、消失再建で規模縮小した今もなお、当時の雰囲気がどことなく漂う寺である。また、寺から見える石尊山が如何にも里山然としていて良い景色だ。

     
鶏足寺より石尊山      

 集合場所にメンバーも揃い、林道奥から伐採切り出しのブル道のような急斜面をまず登っていく。工事中で閉鎖されいる林道が蛇行して山道の脇を通る。やがてその林道からも離れ、間伐の植林帯の小尾根を登り詰めるとそこが猪子峠である。
 道標を見た瞬間、千人ヶ岳の下山時に此処よりトンネル西側へ降りた記憶がよみがえってきた。鬱蒼とした猪子峠からは、巻いて登って尾根を乗り換えて、最後の尾根道は電車道。山頂の深高山へ近づくにつれ傾斜も緩やかとなっていく。

     
猪子峠       枯葉の登山道

 深高山頂上は南がいくらか開けているがスッキリした眺望は得られない。先客のグループが大休憩の途中であったので我々もザックを置いて各々エネルギー補給タイムとなった。

 深高山から石尊山までの尾根道は起伏も殆どなく、歩きやすい。カサコソと膝に優しい枯葉の道を、ザックがリズミカルな足音に揺れていく。里山の晩秋は、派手さこそ無いが、静逸にして真っ盛りといった風情である。

     
   落葉の明るい尾根道    里山の秋

 石尊山もまた眺望は得られず、その少し先にある展望広場で食事になった。大きなテーブルを囲んで食事をしているとまるで遠足のようだ。天気は生憎の曇り空だが、雨の心配は無い高雲りのもと、のんびりとした時間を過ごす。

     
   眺望もひっそりと    石尊山先の見晴らし広場

 食事後は本隊から一旦離脱し同行の「せろーG」さんと西側の岩尾根を下っていく。見晴らし広場の直ぐ下には自転車をデポしてきた石尊神社の奥社があり、眼下に里の景色が見渡せる。浄水施設のようなものや、掘削した様子が痛々しく少し残念であるが、ふもとの集落は長年に渡ってご神体に見守られてきたのだろう。そんな地元の人達の篤い信仰により年に一度、梵天が奉納されるという。

     
石尊神社奥宮       奥宮の眼下

 ごつごつとした岩尾根をひたすら降りて、植林帯へ吸い込まれればもう下山も終わりである。「ここより女人禁制」の大きな石碑を通過すると、下に石尊寺の屋根が見えてきた。

 さぁ、後は猪子トンネル出口まで6キロ強、標高を+100m稼ぐ自転車漕ぎが待っている。

     
石尊山の西は岩尾根    かつては女人禁制の神域    自転車で駐車地へ戻る

 前回太郎山下山の裏男体林道で使った折りたたみ自転車があまりにもプアな性能だったので、安物ではあったが新車を調達して今回はその実地初走行である。
 新車の軽快間もあって、前半はなかなか快適な走行。だが、いよいよ斜度がきつくなる終盤は青息吐息。口数も殆どなくなり、6段ギアの一速でもついにギブアップである。力強く自転車を漕ぐ「せろーG」さんの背中がコーナーの向こうに吸い込まれると、もはやこれまで。潔く自転車を降りて押し歩きである。
 トンネル手前で何とか最高標高点まで登り詰めると、後は極楽の下り坂。あっという間に駐車地に到着した。今日一番の難所はこの区間であった。

           
本隊帰還     

概略コースタイム
駐車地発(10:32)-猪子峠(10:48)-深高山(11:59)-休憩-行動再開(12:19)-石尊山(12:58)-
展望広場着(13:11)-昼食休憩-行動再開(14:16)-石尊寺(14:53)-自転車-駐車場着(15:26)

2010年04月25日

再訪、谷倉山



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --


 春がどんどん通り過ぎていくというのに、ここ一ヶ月ほどなかなか山行予定と天気とスケジュールが噛み合わない。今回見送ったら今年はもうおしまいにしようと半ば諦めかけていた。だが予報とおりの期待を裏切らない快晴に多少の心残り(パソコンが故障してしまった)に、文字通り「万障繰り上げて」今期薮山の締めくくりの谷倉山を歩くことにした。

 谷倉山は昨年(2009年)の正月に、下野新聞社の"栃木百名山"ルートで登りにてこずったのが記憶に新しいが、登路の険しさとはうって変わって穏やかな尾根の印象が忘れられなかったのである。
 前回はガイドブック通りに谷詰めで登り、尾根半ばから谷を降りて周回をするといったルートであったが、今回はぐるりと外周の尾根を周回することにした。南端の神社からの取り付きはネットでの明確な情報を自分は見ておらず、また偵察も行ってはいない。だが、すぐ三角点(198.5mP)があることなどからあまり心配はしなかった。むしろその先の緩やかな尾根道が薮で覆われているのではないかと気になった。だが、その心配もことごく霧散することをこの後知ることになる。

 星野遺跡の所にある駐車場に車を置き、一旦車道で来た方向へ戻る。菜の花も綺麗に咲き、鯉のぼりが元気に泳ぐ風景はまさに春爛漫である。県道の大きな道路に出るとすぐ脇にある神社、「村社星宮神社」が今日の取り付き地である。

     
粟野より谷倉山    菜の花と三峰山    ここが今日の取付となる

 よく手入れされた鳥居をくぐり、短い階段を登るとすぐに社殿があった。裏手を見渡しても急斜面の土手ばかりでとても登れそうも無い。だが、右手の青々とした薮の下をよく見ると踏み跡発見。これを追うと、ジグザグ2回程度であっけなく尾根突端に到達である。今になって思えば今日のコースの最大の難関にして激薮であったが僅か数分でクリアという拍子抜けでもあった。

     
うぅむこれは手強い    踏み跡アリ    尾根突端に出ればこっちのもの

 すぐに198.5m三角点。続いてしばらくダラダラとした感じで小薮がうるさいが高度が上がるにつれ、まるで整備された登山道のように歩きやすくなってくる。

     
198.5mP    次の登りまで少し辛抱    尾根に乗ると快適!

 等高線の緩いピークは往々にして予定線から外れそうになるが、それでも上へ上へと歩きやすいルートを選びながら行く。時折比較的新しい靴跡があるが、よく見ると何かを掘り起こした跡が周囲に見られる。金になる植物の株でもあるのだろうか。ここを歩くのはそんな山師か自分のような物好き位らしい。取り付きの198.5m三角点からはずっと人工物のかけらも無い静かな山旅である。348mPで一息ついて更に進む。

     
コツコツと上を目指す    何か採掘した跡が    348mP

 348mPから先はにわかにツツジが増えてくる。花はまだほんの少しであるが、葉の色の鮮やかさがひときわ目に染みる。あと半月もしたらきっと見事なツツジのトンネルになっているだろうに。

     
   ツツジの多い尾根   

 465mPで赤く塗られた石の境界杭を見る。上の木の枝には今日初めて見る赤テープがあった。北側に明瞭な踏み跡が続いている。恐らく林道から登ってくるのだろう。

 ここからコースは真東になる。正面に谷倉山を見据えて進めばよいのだが、目指す山頂はまだまだ遥か彼方。地図ではそんなに距離が無いはずなのに実際その場に立ってみるといかにも山はスケールが大きい。人間って奴も山に比べれば遥かに小さな体なのに、こんなに遠くまで、そしてあんな所までよく歩いて行けるものよと感心する。

 465mPからの谷倉山主稜線は明るく開けており心地よい。薮山なんてどこへやら、綺麗な植林の並びはまるで街路樹のようだ。

     
465mP    目指す谷倉山    遊歩道並み

 尾根を詰め切ると、そこに電波塔施設があり裏手に殺風景な山頂三角点がある。一応踏儀礼として踏み、すぐさま踵を北北西の伐採地に向けた。前回は日陰の北斜面の深い霜柱を踏みしめながら歩いたが、今日はうって変わって暖かな春の陽気。運ぶ足も軽やかである。

 ザックを下ろして、伐採地の切り株に腰かけてから風景を一望。いつものランチに取り掛かる。奥日光から鹿沼の山並み、古賀志山、篠井富屋連峰まで、日頃慣れ親しんだフィールドがすべて見通せるのが嬉しい。高い山から見る迫力あるパノラマも素晴らしいが、この景色も自分にとっては値千金である。

     
相変わらず殺風景な山頂    伐採地よりパノラマ    日光方面
     
粟野から上がってくる建設中の林道    散り行く桜もまた美しい    後方より展望地

 一旦山頂まで戻り、残りの半周をスタートする。昨年這い上がってきた枝尾根の分岐を懐かしみながら今回は南下を続ける。真新しい間伐の枝や丸太が片付けられていないので歩きづらい。地形が隠されているので、えてして尾根形を見失いがちだが少し辛抱しながら丹念に歩いていこう。

 集落に向かってほぼ真東に伸びる尾根に乗り換えると段々と不明瞭な区間が多くなってくるが、引き込まれるような尾根も無いのでまさに電車道のようなもの。途中から木材搬出用の溝も出てくるがこれもかまわずに進路キープに努める。

 標高250m地点で本日唯一の道標を発見する。梵天山?見晴台?、一体それは何処にあるのだろうか。果たしてこの道標の前後はハイキングコースと言えるのであろうか?かつては整備されていてビューポイントがあったのか。大いなる謎である。


     
樹林帯を下る       はて梵天山とか見晴台は何処に

 下のほうへ行くほど踏み跡が錯乱して誘惑されそうになるが初志貫徹。GPSをこまめにチェックして薮をくぐり民家脇に無事フィニッシュ。

 帰宅してGPSのログを見て驚いた。今回は想い描いた通りにほぼ完璧に歩きとおせた事。薮納めに相応しい結果に大満足である。本当はこの周回尾根が、実は相当に地図通りに素直な実に懐の深い奴で、始終自分の進路を見守っていてくれていたのに違いない・・・とも思ったのである。

     
木材搬送溝を嫌って進路は薮    民家脇に無事到着    星野の里と谷倉山

概略コースタイム
駐車場発(9:03)-取付地(9:13)-198.5mP(9:24)-348mP(10:04)-465mP(10:30)-
山頂(11:07)-伐採地着(11:13)-昼食休憩-行動再開(11:50)-493mP(12:29)-
339mP(12:52)-集落(13:21)-駐車場着(13:25)

2009年11月28日

岳ノ山と大鳥屋山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 ガイドブックを眺めていて、自分としては何となく影の薄い岳ノ山大鳥屋山。H君の復帰二弾に選んだのだったが、いざ歩いてみると意外や手強いルートに「これはミスチョイスかな」と思いながらも、なかなか面白い展開に。

 互いの住まいの関係で、県北はH君、県南は私と車当番が決まっている。今回は久々のパジェロミニのタンデムドライブである。天気は文句なしの快晴。ここのところ調子が良いのでいよいよ悪天候コンビも返上か。

 葛生から秋山に向かって車を走らせ、「五丈の滝」の案内板の所を入っていくとすぐ駐車地へ着いた。市で設置したというトイレ併設の駐車場(5~6台可)だ。どうやら五丈の滝を観光資源と捉えているようで、滝展望台までは遊歩道として整備が行き届いていた。

 落ち葉が降り積もる舗装林道もやがて砂利道になり、突き当たった所に五丈の滝案内図がある。ここからは登山道である。

 よく整備された道を登って行き、寄り道するように一旦谷に降りた所に滝展望台がある。ベンチなどもあしらえてあるが、これらは長い間観光客に使われた感じがしない。展望台から写真を撮った(下写真中)が悲しいかなカメラ写りがしょぼい。実際は奥の方から手前へ文字通り五丈になっていてなかなか素晴らしい風景である。

 登山道へ戻り、更に進むと滝見の松あり。現在は無惨にも枯れ果て往時の立派な姿の見るべくも無い。

     
林道終点から五丈の滝を目指す    五丈の滝    滝見の松は無惨に枯れ果てている

 滝見の松を過ぎると、それまで整備されていた登山道はにわかに植林地内の作業道となるが、そこそこに手入れもされておりあまり暗い雰囲気が無い。

 途中炭焼き釜の跡があったが中を覗くと何やら人間の残した食べ物の容器がある。動物が持ち込んでいるようだが、少し悲しい気持ちになった。

 沢の水流が途切れ枯れ沢に添って登る頃になると途端に踏み跡が不明瞭になる。事前の資料でも谷詰めは間違い無い。GPSにも予定線を引いてあるので時折方角を確認しながら枯葉に覆われた踏跡を辿っていく。途中の赤テープが実に頼もしい。

 山頂の南側は岩が露出しており、層状に重なる珍しい岩が見える。複雑な地殻の動きがあったのだろうか。

     
植林地を登る    炭焼き窯跡らしい    層状の岩が珍しい

 岳ノ山の肩尾根直下はかなり急登だが、ジグザグが明瞭。最後にトラバースするあたりで再び踏跡が薄くなる。もっともここまで来れば枝越しに稜線が見えているので心配は無い。

 尾根に出るとテプラで作った道標があった。梢越しに北側の山並みが見えて尾根に辿り着いたことを実感する。

 少し登るとそろばんが奉られた祠があった。何か由縁があるのだろう。

     
踏み跡も密かに    尾根に出た    そろばんが奉られている

 程なく岳の山の山頂へ到着。眺望は北側が枝越しに僅かだが、日溜まりの小広いスペースはなかなか心地よい。

     
岳ノ山頂上    男体山が見える   

 小休止で再出発。

 「そちらではないですよ」と先に休憩していた単独の男性に声を掛けられた。
よく考えもしないで、広い緩い尾根につい足が吸い寄せられる悪い癖がまだ抜けていないようである。あやうく山頂から西に延びる尾根に向かうところであった。

 コンパスを出すと、成る程針路は真南である。はて南に道はと見るとジェットコースターのような下りがあるではないか。

 いや、これは大変だなとH君と顔を見合わせながら落ち葉で滑る足元に注意をしながら降りていく。段々岩も多くなってきて細いロープも何本か垂れている。痩せピークを越えるとまたガクンと落ち込む。

 岩に突き当たると、行く手は蟻地獄のようなすり鉢状の谷が口を開けていた。先ほどからGPSで方角はしっかり捕捉しているがこれでは先に進めないじゃないか。おいおいマジかよと思って岩の切れ目を這い上がるとその先にまた厳しい下りが続いている。

     
痩せ尾根続く    強烈な下り    足元注意!

 緊張を強いられた下りもやっと緩くなり一安心だ。振り返ると岳ノ山が枝越しに見える。約100mの急降下であった。

 624Pへの登り返し、そして大鳥屋山直前の100m以上の登り返しには結構汗を掻く。途中、多少広く不明瞭な箇所もあるが針路は明確にして単純。624P付近から下の標高域は植林地になっているようだ。

 コツコツと最後の登りをこなすと東西に長い山頂へ到着した。先ほど岳ノ山で道を教えてくれた男性が腰を降ろして静かに食事中である。広い山頂に景色は全く無い。樹に囲まれて薄暗い中に一等三角点の太い標柱が存在感を誇示している。

     
降りてきた岳ノ山    大鳥屋山へ向かう尾根    大鳥屋山一等三角点

 山頂の少し西側に小日向方面の集落がうっすらと見える日溜まりで食事とした。今日は珍しく予定時間より多めに掛かってしまったので流石に腹ペコである。

 H君はあまり食欲が無さそうなので尋ねると、登りがきつかったですとのこと。今日は休憩時にストレッチを励行していたようで脚の付け根の痛みはまだ大丈夫そうだ。下りきるまで痛みが出ないと良いのだが。

 正直、あの強烈な下りにH君を連れてきた事を後悔したが、聞いてみると案外本人も楽しんで降りてきたようだ。よしよし、着々とハイカーとして育ってくれている模様。

 帰路は一旦鞍部に戻り、木にただ白いテープが巻かれただけの分岐を下る。鬱蒼とした植林地の中をトラバース続きで実に無駄のない仕事道を下っていく。湿った空気が顔にまとわりつく。吐く息が白い。温度が低いのだろうか。やがて沢音が聞こえ、空から光が届くようになってきた。林道はもうすぐそこである。

  
日溜まりで昼食    分岐から下山

概略コースタイム
駐車場発(9:48)-林道終点(10:00)-滝展望台(10:13)-岳ノ山肩尾根(11:18)-岳ノ山頂上(11:25)-
624P(12:14)-大鳥屋山頂上(12:52)-昼食地着(12:55)-昼食休憩-再出発(13:35)-
下山分岐(13:49)-林道出会(14:15)-駐車場着(14:34)

2009年02月11日

廃れゆく里山 寺久保山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今週末の土曜日は久々に休むことが出来るのだが、無情の雨予報である。数日前まで傘マークが出ていた11日の予報が晴れマークに反転したので、最近歩き不足のH君を伴って佐野の寺久保山(てらくぼやま){357.3m}へ登る事にした。

 山に登るようになってからは、もはやお馴染みのアクセス路であるいつもの国道293を使い、葛生・佐野へと車を走らせる。晴れマークだった筈の天気は、何やらどんよりとした雲に覆われている。時折り気をもたせるように日が差しかけるが、どうにもこうにも雲に軍配が上がってしまのが少し悔しい。

 駐車地である雷電神社への道に少し迷った。着いてみると県外ナンバーの先客ハイカーが丁度出発したところである。少し戻った所にハイキングコースの案内板があるので、そこまで行き案内板の指示に従い進む。

 古びた社の雷電神社脇の登山口(薮山の取り付きレベル)を見つけるのに少々手こずった。登り始めは、靴跡が千々に乱れる斜面を進んで行く。すぐにつづら折れの作業道が出てきて、暫くすると尾根に出た。

 尾根に乗ると両脇が広葉樹の自然林で冬枯れが明るい。植林地のような暗さこそ無いが何となくコースが荒れている。今回のコースの下山ルートである東側尾根は写真に収めなかったが、この西側の尾根と比べると更に荒廃が進んでいる。

 放置されたままの自然倒木が随所に目立つ。要は手入れが全くなされて居ないのだ。特に東側尾根は、初めの急降下のロープ場といい、下の方は山馴れしていない人にとっては到底ハイキングコースには見えない程の悪路になっている。行政側で案内板を掲げているのなら最低限の整備をするか、或いは不用意な入山を防ぐ為に案内板は撤去した方が良いのではと思う。

     
ハイキングコース案内板    雷電神社脇の登山口    コースは荒れている

 それでも上部の方へ行くに従い歩きやすくなってきた。山頂まであと僅かという地点で、谷を詰めてくる不動ノ滝コースと道を合わせる。道標の下の「もう少し」の落書きが可笑しい。

 山頂は眺望は全く無し。かつては北側が伐採されていて視界があったようだが、もはや山頂は小休止の場に過ぎなくなってしまっている。給水していると、山頂西側の塩坂峠方面より、単独の女性と男性が一名ずつ現れる。女性はスタスタと雷電神社方面へと去っていき、男性はこの後、我々の後ろを歩く。

 こんな廃れた雰囲気の山なのに今日は4人もハイカーに遭遇している。実は隠れた人気なのだろうか(^^;

 山頂から北に一旦下り、東側に転回するように道が回り込むと明るく開けたポイント、「見晴台」に到着である。コース随一の眺望ポイントで食事は此処と決めていた。駐車地で先発していた2人組男性が既に陣取って食事中であった。その脇に我々もザックを降ろしてお湯を沸かし始める。

     
不動ノ滝コースと合流    山頂    見晴台

 相変わらずどんよりとした空模様が残念ではあるが、雨の気配が無いのが救いであろう。せめて開けた眺望を楽しむべし。

     
見晴台より南側眺望     

 見晴台からの下りは、始め岩場の急斜面でフィックスロープを頼りに降りていく。あまり岩場が得意でない自分だが、最近ロープの箇所になると「3点支持3点支持」と唱えながらなるべくロープの世話にならないように努めているせいか、さして苦労せずに降りる事が出来た。
 振り返るとH君はいつものように難儀しているが、とにかく安全第一だからゆっくり確実に降りてくれば良いというものだ。

 一直線の尾根下りは、一旦202mPを越えて更に下りきった般若峠から南西の寺久保集落へ進路変更する。民家の屋根が枝越しに見えると田んぼの脇に飛び出して無事下山終了である。

     
寺久保山    里に熊    駐車地より寺久保山方面

 帰りに「出流原弁天池」に立ち寄る事にした。名前は以前から知っていたが、なかなか単独で此処目当てで来ることも無いので今日はまさに好機である。

 水が綺麗という事で有名だが、覗き込むと実に清澄である。泳ぐ鯉たちも何故か寒々としているが、真夏に見ればさぞ爽快だろう。ほとりの売店で、揚げたての佐野名物のいもフライを味わいながら本日の山遊びは終了である。

     
出流原弁天池    水が清澄    売店に寄り道して
  
いもフライを食す      

概略コースタイム
駐車地発(9:56)-登山口(10:05)-山頂(11:18)-見晴台着(11:32)-昼食-
見晴台発(12:12)-202mP(12:45)-般若峠(12:57)-駐車地着(13:19)

2009年01月03日

ハイグレード里山 谷倉山(星野)

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 永野にある谷倉山(やぐらさん){599.4m}。以前星野自然村を訪れた際に、ずんぐりとした三峰山とは正反対のたおやかな雰囲気のこの山に心惹かれた記憶がある。その後三峰山へ登った際 も、何時かは・・・と思って眺めていた。そんな思い入れのある山を新春山行第一弾として歩く事にした。

 星野自然村駐車場へ車を駐めて集落を抜けて行く。いつ来てものんびりとした雰囲気のあるエリアだが、まだ三が日ということもあり、一層静かな空気が辺りを覆っている。柚がたわわに実っていたり、よく手入れされた南天が目に鮮やかな家々を巡りながら進むとやがて日当たりの良い畦脇の道へと出た。


     
星野自然村駐車場    柚実る集落    南天が鮮やか

 田の横に伸びる林道から眺める三峰山もこれまた長閑。田植えが終わった頃、真夏の青田、秋の稲穂が垂れる時期にも同じ場所で三峰山を眺めて見たいとしみじみ思う。

 林道を更に進むと植林地へ入りそれまでの光は一気に失われるが、綺麗に枝打ちされた箇所はそれでもなかなか清々しいものだ。

     
長閑な里と三峰山    林道を進む    綺麗に枝打ちされている

 今回は「栃木百名山」{下野新聞社}で案内されていたコースを往路に取ったのだが、なるほど説明通りに林道終点に近づくにつれ倒木などで道が荒れ出してきた。

 林道終点に到達すると、これまた説明通りでもはやルート不鮮明。「栃木百名山」では谷を詰めていくように書いてあったので、薮の先に続く沢筋を追わないでここで左右どちらかに逃げれば失敗に繋がる可能性は高い。

 こんな事もあろうかといつにも増してGPSの設定ポイントを多めに入れてきたのだが、目先のルートを考えるのに精一杯でちょっと役不足の感もある。とにかく谷を詰めるのは間違い無いので、薮を分けて進んでいくと所々に赤や青のテープが出てきた。これを追いつつ更に無い知恵を絞りつつ牛歩のルート取りである。

 暫くすると行く手に沢を塞ぐ岩が現れた。岩の割れ目から水が出ているので、上部に水を溜めているのだろうか。ここはネットで他の方の記録があったので左を巻く。巻くといっても道がある訳でなく斜面をを直登しなければならない。あまりに斜面が急なので、爪先で足場を確保しながらゆっくりと確実に進むしかない。

 一つめの岩を何とかやり過ごし一旦沢に復帰するも、先ほどよりは小振りだがまた岩と薮が行く手を塞いでいる。斜面の上の方を見ると赤テープが一つ目に入ったので意を決して斜面を登っていった。「45度はあろうかと思われる急登」という表現が他の方のサイトにあったが、実際誇張では無い。局所的にはそのぐらいあるだろう。そのあとも赤テープを追いながら急登に次ぐ急登。柔らかい林床もまた砂利混じりの急斜面に負けず劣らず滑りやすい。踏み込みが出来るのが唯一安全確保の道と知り、一歩一歩確実に。きっとアイゼンを付けた雪道の歩行もこんな感じなのだろうかと。

     
段々荒れてくる    急登急登    ご覧の通り

 標高490mあたりまで頑張って登り進むと、左手にトラバース状に伸びる踏み跡に合流した。右手(東側)にも幾らか伸びているので本来のルートはもう少し東側だったのであろうか。しかし地図の等高線を見る限りどこを通ってもあの沢を詰めてしまえば大差は無いだろう。

 予定していた肩尾根とは逆方向なのは承知していたが、緩やかに登るこのトラバース道を辿っていくと明るい尾根に飛び出した。南の方に少し眺望がある。緊張の難所通過後なのでこの明るさが嬉しい。GPSを出して見るとどうやら枝尾根に出たようで、目指す肩尾根へと赤テープが続いている。
 夏場ならかなり薮っぽい感じだが、今の時期は枯れ枝を払うだけで済むので助かる。この尾根を登り切ると境界尾根である肩尾根に出た。ここからは踏み跡もしっかりしており不安感は全く無い。山頂まであと少しだ。

     
尾根に出て一安心    尾根を乗り換えて    もう少し

 電波塔の施設を囲っているフェンスを回り込むようにして山頂へ到着。上を見上げると塔が偉容を誇っている。その脇にひっそりと三角点と山名板があった。眺望は全く無い。

     
寂しい山頂    電波塔が主役    山頂はおまけ?

 山頂がこんな感じである事は既知だったので、早々に後にして北側の展望地へ向かった。

 北側は塔の巡視路になっており、よく整備されている。山頂まで延々と麓から電柱が伸びているので若干興ざめだが、日陰で背の高い霜柱をザクザクと踏みしめながら下っていくと、広く伐採された展望地へ飛び出した。

 後で判ったのだが、粟野の街から大越路へ向けて車を走らせていると、左手に目に入る伐採された高みが実はここだったのである。あそこに登ったらさぞ景色がよかろうにと何時も思っていたものだ。

 眺望は男体山からぐるっと南東まで、180度とまでは行かないが結構なパノラマである。雲に覆われ日光連山の雪景色は今一つであるが、東側の雄大な景色を眺めながら予定通りここで食事をすることにした。

 廻りを見ると微かに雪が残っている。朝晩の冷え込みで少し吹っかけたのであろう。北の山々からちぎれてきた雪雲の残骸が太陽を覆うと、一気に気温が下がり、陽光が戻ると暖かくて心地よい。眼下に広がる景色も、そんな雲のいたずらで美しくその表情を変える。至福のランチタイムである。

     
伐採地より      
     
      僅かに雪が残っている

 食事を終え一旦山頂まで登り返し、電波塔脇にある赤リボンと青リボンの所を分け入ると西北西の尾根に入ることが出来た。以前は此処に道標があったらしいがどこにも見あたらない。

 登路の緊迫感溢れる状況に比べるとこの西尾根は極楽である。くるぶしまで埋まりそうな落ち葉の絨毯をサクサクと踏みしめながら、しばし鼻歌交じりで進んでいく。

 ここまで1枚とて道標の無かった往路だったが、この平坦な尾根に1枚だけ古い手作りの道標があった。あまり意味が無い場所の設置だが、やはりほっとするものだ。

 難しかったのは「栃木百名山」のルート図に従ってどこで谷に降りるかだった。GPSに入力した予定下降点あたりで下を窺ったが、踏み跡やテープの類も無く、フリールートで降りていくにはいささか自信が無い。このまま尾根を辿って465P,348Pと巡って降りるのもアリかなと思いながら進んでいくと、はっきりと赤テープが下に向かって降りていく箇所があり、ここから下降を開始した。

 登りの45度斜面ほどは荒れていないし踏み跡も比較的はっきりしている。所々テープが消えかかるが多少目を凝らせば踏み跡を探せるし、追っていけばまたテープが出てくる。比較論だが、登りのルートに比べればこちらのほうが数段マシだろう。

 一旦降りきると突如道標あらわる。小山芳姫(おやまよしひめ)の墓へという案内が、今降りてきたルートの隣の谷を示している。

     
サクサク尾根道    ここで尾根とお別れ    突如現る道標

 こんなしっかりした道標があるならもう道は間違い無かろう。安心も手伝い、寄り道で芳姫の墓を目指し道標の示す方向の沢を登り始めた。

 こちらもルートは荒れ放題。夏場は薮に閉ざされ到底通行不能だろう。70m位登り返した所にひっそりと芳姫の墓はあった。小山芳姫についてはWikipediaに詳説(伝説の項をご覧いただきたい)を譲るが、要は南北朝の戦乱さなか、粕尾城に居る夫に食糧を持って行った道中で殺害されてしまった芳姫を哀れんだ地元の人が、江戸時代に墓を建てて祀ったということである。

 芳姫の墓の右手の方を見ると先ほど降りてきた箇所の赤テープが風になびいている。登りにこちらのルートを取る場合は一旦芳姫の墓を目安に登り、ここから右手に登れば良いだろう。

 先ほどの分岐まで戻り、更に下って行くと段々と傾斜が緩くなってきた。沢を左に右にと渡り返していくと先に林道が見えてきた。やれやれ安全圏に戻って来れたようだ。振り返ると「よしひめの墓この先」と書いた木の柱が立っている。

     
行く先は荒れ放題    小山芳姫の墓    林道出合箇所

 後は草だらけの林道を進むのみ。ガードレールがあったりするが、往来も無いのに随分整備されている。

 やがて「地層探検館」前に出て見ると「小山芳姫の墓へ」の立派な標識が立っているでは無いか。しかも途中まで林道有りとも書いてある。そういえば先ほどのガードレールは整備の一環だったのか。途中で草が張り出して車一台がやっと通れる道。終点も一台駐めたらそれだけで一杯になってUターンもままならない道へ、よく案内板を出しているものだ。また、車を置いた後も、普通のハイキング路とは到底言い難いようなルートなので、せめて「危険が伴うので軽装での見学はお断り」等の文言は一言添えて欲しかった。自分のように、里山遊びのついでに立ち寄るのならどこをどう通っても仕方が無いが、一般の方にも見学を促す道標だからこそ、栃木市教育委員会には猛省して頂きたいと思う。山の経験のない人が、こんな道標を見て気軽に入ってくるならここは充分に危険なエリアである。

     
ガードレールが必要か?    探検館前    同左

 探検館脇からすぐに集落へ出る。はずれにある田んぼの畦に駆け上り、いましがた歩いて来た谷倉山を一望すると、彼方に電波塔のアンテナが見えている。幾つかある枝尾根を眺めながら、次回は谷で苦しむよりルーファンで尾根歩きだなと一人ほくそ笑んだ。
 南の三峰山には日が隠れようとしている。まだ3時頃だというのに星野の里を夕方の空気の冷たさが包み始めていた。

     
谷倉山    三峰山に日が沈む   

概略コースタイム
駐車場発(9:51)-林道終点(10:25)-急斜面へ(10:40)-枝尾根(11:24)-肩尾根(11:35)-
山頂(11:46)-展望地着(11:53)-昼食休憩-展望地発(12:50)-山頂(13:11)-下降点(13:40)-
芳姫の墓道標(14:00)-芳姫の墓(14:11)-林道出合(14:30)-地層探検館(14:41)-駐車場着(14:54)

2008年12月23日

素晴らしき里山 三床山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 2008年の登り納めは、県南の佐野にある三床山(みとこやま){334.9m}を歩く事にした。

 三床山は県内の山を紹介したガイドブックには紹介されていないが、インターネットの山関係のサイトやブログを読むと結構登られているようで、300m程度の里山なのに変化に富んだコースで好評を得ている。

 田沼の先から国道293号を離れて梅田湖へ向かう県道に入る。目指す鹿島神社へのルートをハンディGPSに入力してきたのだが、曲がる場所の道が細くてしばし迷う。田んぼ道の傍らで話をしていた地元の老人達に尋ねると、この先を真っ直ぐ行けば良いとのこと。車一台分の幅の農業用道路を言われた通りに進むと、鹿島神社の広い駐車場へと辿り着くことが出来た。

 駐車場に先客は無し。今日はH君とこの山域を独占か?と思っていたら、四駆車がやってきて中から首に発信器を付けた犬が降りてきた。鳥獣保護区の看板があるのに一体何を撃つのだろうか。続いて出てきたハンターに「これから登山ですか?」と尋ねられた。

 三床山から一床山まで縦走して神社西方より帰ってくる旨を告げた。ハンター氏も「安全にやります。上の方は行かない」とは言っていたものの、一抹のは不安はぬぐい去れない。尾根を歩いている時、時折聞こえた銃声が終始気になっていた。

 登山口やルートの要所は最近道標が整備されているようで、鹿島神社の左手の林道を進むと登山口を間違える心配は皆無である。

     
鹿島神社駐車場    鹿島神社    登山口は明瞭

 出尾根コースを選び、榊のトンネルのような道を登っていく。傾斜のゆるい穏やかな登りである。右手のゴルフ場からプレー中の人の声が聞こえる。

 一つめのピークに着く頃には榊も無くなり、樹林の尾根歩きとなる。ピークからは、ついたてのような三床山への登りが待ちかまえている様子がよく見える。一旦鞍部まで下ってここで一息だ。

 ネット情報で一様に書かれている急登は、なるほど素晴らしくキツイ。初めのうちは何とか普通に登れていたが、後半は段々両手も総動員での登りとなる。地図を見る限り、今日の登りのハイライトはここ一ヶ所ということが判っていたので、辛い登りだが案外気楽である。

 あまりに急な直登なので踏み跡も千々に乱れる。赤テープを追いながらも自分の歩きやすいルートを捜して何とか山頂の肩まで辿り着いた。振り返るといつの間にか南に景色が広がっていて滲んだ汗が心地よい。

 二床山方面への尾根道を分け三床山へ。三角点の埋め込まれた場所の少し先に山名板が掛かっている。明るい日差しを受けた石洞の向かう先は、刈り払われて景色が良い。南以外は少し樹が邪魔になって眺望はすっきりしない。

 山頂で一休みした後、北へ続く道を少し追ってみた。展望岩があるという事であったが、少し下りすぎる感じもしたので退却だ。

 先ほどの分岐まで戻りいよいよ一床山までの縦走の始まりである。情報ではこの尾根歩きが景色も歩きも楽しいらしい。

     
出尾根コースへ    榊の道を進む    三床山三角点
     
三床山頂上    南東の風景    二床山への分岐

 分岐から暫くはトラロープが張られた急降下。だが一旦下りきれば後はのんびりとした尾根が続く。途中幾つものピークを越えていくが、右に左に景色が広がり、時には行く手を阻む岩が出現してそこを巻いていく。また、気持ちの良い日溜まりの落ち葉を踏みしめて進んだりと、なかなか変化に富んでいて面白い。

     
一床山への連なり    岩が出てくる    日あたりの良い尾根歩き

 後ろを振り返ると、今降りてきた三床山が大きい。また前方には303mピーク(高松)がどっしりと横たわっている風景もまた素晴らしい。

 やがて、高松へ向かう尾根との分岐を過ぎると次のピークが二床山だ。鼻歌交じりのピーク越えが続いていたので気付かずに通り過ぎてしまいそうになる。

     
後方の三床山    高松(303m峰)    二床山

 二床山を後にして、次の岩を登り切ると素晴らしい360度眺望が迎えてくれる。一床山頂上だ。

 正真正銘の360度眺望である。廻りを集落などで囲わているが、どちらを向いても遮ることの無い景色はやはり素晴らしいの一言。
 三床山に登る場合、二床山経由で高松から下山する人が多いと言うが、この好眺望の一床山を外すのはあまりにも勿体ないと断言出来る。

     
好眺望の尾根歩き    一床山頂上    同左

     
一床山からパノラマ      
     
     

 ここのところ、H君との山行は天気に恵まれなかったが今日は良く晴れ渡っており、溜飲を下げる思いの好天だ。話によれば富士山も見える事があるというが、流石に前日の雨で空気中の水蒸気が多いようで霞んで遠望は効かない。それでも、いつもの数倍は美味しいコーヒーを飲み終えて山頂を後にした。

 山頂から下り始めるとすぐに岩が無くなり樹林になる。次の道標がある分岐(西入の頭)から西側の275mPへ寄り道をするつもりだったので、少し薮っぽい所を入っていった。

 一旦下りきった暗い鞍部から先ほどの三床山直登を彷彿させるような急登で小ピークに立つ。相変わらず南面は景色が良い。続く275mPへは等高線には現れない起伏があるようなので取りあえずここで撤退とした。

 尾根を降り切ると、後は標高差の緩い湿地帯のような所を東へ向かえば良いのだが、どうやら一ヶ所間違えてしまったようで、南寄りの林道へと入ってしまった。概ね方角は合っていたのだが、ここは途中にある「二床山・高松」方面へ一旦北進すべきだったとうのが帰宅後のGPS軌跡で判った。

 間違えた林道は途中で途切れるも、何とか鹿島神社の方角を目指しているとやがて古い作業道が出てきた。これを辿っていくと途中で駐車場が見えたが、そのまま回り込むように道は南下を始める。これは強行突破しか無いだろうということで、深い薮地の薄手の所を探して進んでみることにした。

 初めうちは何とかなったが、やがて深い枯れ薮に阻まれる。犬の足跡が奴の背丈のトンネルへ点々と続いている。流石にここは無理だ。辺りを何箇所かトライしてみたものの、一帯は湿地になっており進めば進むほど泥沼が深くなってくる。

 結局諦めて元の作業道で南下を続けるが、一行に鹿島神社側の道路に出る気配が無いので、思い切って傍らの小川の川幅が狭い所を狙って無事車道へ出た。後は随分遠回りした車道をテクテクと歩く。二人とも体中植物の種だらけである。今日一番の難所だったねと話しながら駐車場へ戻る道の先、三床山が集落を静かに見守っているようだった。

     
   ここで間違えた    行く手を阻む薮
神社南方より右手三床山

概略コースタイム
駐車場発(10:00)-急登前鞍部(10:21)-三床山(10:47)-北側探索から復帰(10:58)-
二床山(11:33)-一床山着(11:50)-昼食休憩-一床山発(12:39)-西入の頭(12:51)-
西側小ピーク(13:01)-西入の頭(13:17)-尾根降りきる(13:44)-湿地帯強行突破失敗(14:06)-
車道復帰(14:23)-駐車場着(14:32)

2008年11月09日

晩秋の尾出山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 どうにもこうにも山行と晴天が噛み合わない。もう半ば諦め気分だが、雨が降らなきゃいいやということでH君との2人山行と相成った。
 土曜日より日曜の方が若干天気快復の見込みアリという情報に心が動かされる所など、少し解脱しきれていない感もあるが(爆)、眺望二の次でも面白いのではと腹案していた鹿沼の山奥、上永野の尾出山(おでやま){933m}へ向かった。

 細い県道を進んで行くと、やたら熊注意とシカ注意の看板が目に付くようになる。そのうち路側に猿が2頭いるのを見かける。人家もまばらな奥地ならではの風景である。やがて川久保の集落を過ぎたあたりで砂利道の寺沢林道へ進入。ギアを四駆に入れた。

 寺沢林道は、今年の春に家内と永野の「たろっぺ茶屋」へ蕎麦を食べに来た時についでに足を伸ばして偵察済みである。今回の登山の駐車地も既に把握しているので安心だ。

 車3台程度の駐車スペースに駐めると、既に県外ナンバーの夫婦連れが準備を終えて歩き出すところだった。少し手前の路側にも1台駐まっていた。こんな天気なのに隠れファンが居るものだ。

 駐車地から暫くは砂利の林道を登り徐々に高度を上げていく。パジェロミニなら結構上の方まで上がれそうな感じだが、下山ポイントのことを考えると止むを得ない。

 林道歩きも馬鹿にならないものだ。そこそこに汗が滲んできてやれやれ終点まで到達。いよいよここから登山道である。

 尾出山への手製道標がくくり付けてある左手が、ガイドブッック等で紹介されているいわゆる正規ルート。他にも、林道から真っ直ぐ樹林に吸い込まれるようにして登っていく方にもワープロ書きの「周回コース」なる紙が木にくくりつけられていた。ネットで調べて見ると、「新コース」と言われているこちらは、峠(嶽ノ越)を経由せずに尾出山の山頂から南西に伸びる尾根を行くような感じである。後から地形図を眺めて見ると、谷を詰めて急登する正規コースより「新コース」の方が気分が良さそうであるが、情報不足故今回は見送る事にした。

 さてさて正規コースだが、スタート直後いきなり左側沢へ落ちそうになるトラバースルート。道幅は狭いというよりも殆ど無いに等しい部分もあり、きわどい箇所は流石にロープが張られているが、先ほどの車の主達も皆通行に難儀して渋滞している。沢へ滑落すればタダじゃ済まない位の高度差はあるので慎重に通過する。こんな時滑りやすい落ち葉は仇になるものだ。

     
林道終点からの取付地    沢沿いのトラバース    同左

 緊張のトラバース区間をクリアすると、今度は鬱蒼とした植林地を右手に見るようになる。左手の沢と合流すると、道は谷を詰めていく感じになる。不明瞭感が強いルートだが、谷の終点からは上手の峠へ直登に近い登りとなった。ここまで後ろのグループとダンゴ状態で登っていたものの、急登の途中で後ろから来た健脚夫婦に先を譲る。

 峠(嶽ノ越)へ着くと右手は尾出山へ、左は高原山への縦走路へとそれぞれ伸びる。禁猟区の赤い標識だけが目立つ静かな場所である。

 ここから上へ行くと段々と広葉樹が増えてくる。所々紅葉が見られ、木の切れ間から見える周囲の山々も同じ標高付近は色づいている。今回は紅葉を見たいという腹づもりもあったので、まずは満足である。

 山頂が近づくにつれ急登の連続で、更に所々に岩が目立つようになってくる。岩の背を乗り越して登って行くのが本来のルートのようであるが、鎖やロープも無く、岩登りの経験のある人で無いと難しいかもしれない位険しい箇所が多い。巻道が必ずあるのだが、こちらもまた厳しい状況で、時には直登、しかも滑落すると下は深い谷という箇所がところどころにある。この山は危険ゾーンが多いので、よほど山慣れしていない人以外は単独で歩いてはいけないだろう。

 「勝道上人修行 第二宿堂跡」の碑と小さな石祠の建つ山頂へ到着。さにあらん、こんな峻険な山ならさぞハイレベルな修行になったことだろうよ、と思いを馳せて(笑)食事とした。あまり景色の良くない山頂だが、明るい感じのする場所である。

 広い山頂に3グループが前後して到着し食事となったが、出発は我々が一番遅くてビリっけつ。僅かでも人が居なくなると実に静かな山頂である。気温も恐らく10度は割っているのだろうか、指先が冷たい。もうすっかり冬の気配である。

     
峠(嶽ノ越)    紅葉がちらほら    尾出山頂上

 先ほど息を切らしながら登って来た急登のピストンだから今度はジェットコースター状態である。そのまま谷に突っ込んで行ったら夜になって熊の餌食になってしまうのがオチなので慎重に次ぐ慎重で歩を進める。やがて下の方に先ほどの峠が見えてきて一安心だ。

 峠から825mピークへは標高差にして80m程度の登り返し。いつも食後の登り返しを歩くたびに、もう少し食べる量を減らしておけばよかったと後悔するものだ。額に汗を滲ませ息も絶え絶えに825mピークへ。何やら山名板が。何々「山田山」だとな。地形図に表記が無いのでこれはアウトだが、山田さんの気持ちも解らないでもないので、まぁよしとしよう。

     
   きつい下り    825mピーク

 この825mピークで後ろを振り向くと、今降りてきた尾出山の鋭い円錐形が樹幹越に大きく見える。なるほど峻険である。登り下りが大変だったのも頷ける。

 この辺からは緩やかな気持ちの良い尾根道が続く。降り積もった落ち葉が膝に優しい。サクサクと踏みしめる音も軽やかである。

地形図で、大久保の頭と記載がある平坦地あたりにシカよけネットが張ってあった。一部倒れてしまっている箇所もあるので事実上機能していないような気もするのだが、西側の谷から鹿が往来をするのだろうか。

     
振り返ると尾出山    木の葉を踏みしめて    シカよけネット

 大久保の頭から一旦転げ落ちるような下り、そして高原山へとまた登り返し。この辺は道がかなり不鮮明な箇所もあった。特に高原山直下付近では枝を払いながら登っていく箇所もあった。
 四方を木に囲まれた高原山(たかはらやま){754m}もまた静かな佇まいである。

     
西側眺望    シカの食害    高原山

 さあ、いよいよここからは下りオンリーである。辛かった登りからやっと解放される。山頂から歩き出すと、すぐ東側の眺望が開けた。向かう186号鉄塔から伸びる送電線が、更に下の下山通過点である185号鉄塔、そして向かい側の山の彼方まで伸びているのが見える。

 186号鉄塔に到着すると、遠く二股山や鳴蟲山、そして石裂山の山並み。手前には谷倉山が見える。今日のコースは後半なかなか良い景色に出会えることが出来る。天気も相変わらずどんよりとはしているが、雲も高いので案外遠望が効くようである。 

 186号鉄塔より鉄塔巡視路を下ることになる。よく整備された巡視路だ。それまでの難所の数々が嘘のような快適さである。

 ジグザグの下りを続け、やがて沢音が聞こえてきた。沢に一旦降りて対岸をよじ登るとそこに林道があった。登りに通った所とは別の林道であるが、これを降りていけば良いようである。やれやれ今日のコースはなかなか充実していたねとH君と話しながら歩いて行けば、向こうにパジェロミニの待つ駐車地が見えてきた。

     
186号鉄塔より    同左    駐車地へ帰還

概略コースタイム
駐車地発(9:26)-広場(9:40)-林道終点(10:00)-峠(10:36)-尾出山着(11:36)-
昼食休憩-尾出山発(11:53)-峠(12:25)-825mピーク(12:46)-高原山(13:28)-
186号鉄塔(13:44)-185号鉄塔(14:09)-林道出合(14:26)-駐車地着(14:32)

2008年05月04日

県境の山 熊鷹山

-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 熊鷹山(くまたかやま){1168.6m}。いつか行くぞ行くぞと思っていた。でも付近に不死熊橋という地名があったりでどうもクマくさい(どんなだ?)感じがしてビビッテいた。最近、「北関東のクルマで行く山歩き」みたいな本を見ていたら結構人も沢山登っているようだし、ツツジの季節は良いということらしいという事を知った。

 今回は久々のH君登場。鞍掛尾根以来1ヶ月半のブランクはいかなるや。

 

 葛生から国道293を離れ、県道をひた走り小戸川添いを登る林道へとパジェロミニを進める。途中から完全な砂利道となり久々のオフロード走行が楽しい。道路脇を流れる小戸川は気持ちの良い渓谷になっており、夏などは避暑がてらここを目当てに訪れても良いかもしれない。

 砂利道になってからかなり登った頃にようやく終点の駐車ポイントに到着。広場には既に7~8台の先客あり。途中の林道も結構山深い感じがしたので、これで車が1台も駐まっていなかったら先日の丹勢山の再来かとビビッていたが、どうやら今日はそんな心配は無さそうである。

 駐車地の奥にある細い道から山に入ると小戸川上流の渓谷が清々しく我々を迎えてくれた。

     
駐車地    奥が登山口    滝が美しい
     

 所々にある幾つもの滝を見て、沢を右に左にとまたぎながら岩のゴロゴロとした道を登っていく。紅葉の時期もまたこの渓谷は素晴らしいことだろう。

 暫くすると沢沿いにわさび畑が見られるようになる。こんなに細々と作っていたのでは自家用にしかならんだろうと思っていると結構上の方までわさび畑は続く。地元の特産品なので勝手に獲るべからずとの注意書きもあった。
 わさびは水の綺麗なところでないと育たないものだ。昔子供の頃父親に連れていかれた山行の折り、青梅線の沢井という駅の周辺でわさび畑をよく見た事を思い出した。東京都とはいえども当時はかなり自然が豊富な場所だったのだ。

 この沢添いの道は、幾多の滝以外にも下の写真にもある夫婦杉のように見るものも多く、登る者を飽きさせない。

     
わさび畑    夫婦杉    黄色と緑が映える

 途中、丸岩岳への分岐点を過ぎ更に滝を幾つか見ながら登っていくと、やがて道は笹原となり熊鷹山への尾根を目指すようになる。沢の音もすっかり消えて山の静寂が戻ってきた。広葉樹で明るい斜面を登り、汗ばんできた頃振り向くと、帰路に通過する丸岩岳だろうかその手前の1084mピークだろうか。山の姿が大きい。

 決して斜度はきつくはないが、じわじわと脚にくる登りだ。後ろのH君も久々の山行なのでかなり登りに苦戦している。途中何度か息を整えながらようやく熊鷹山の主尾根に突き上げた。
 鳥居をくぐり最後の一頑張りで山頂へ到着。登山口から数人のハイカーとすれ違ったが、山頂は10人程度の先客で賑わっていた。

 櫓(写真撮るの忘れた)に登って見ると評判通りの360度パノラマ。生憎雲が厚い為スッキリとした眺望は無かったが、それでも充分見応えのある景色である。これは是非とも真冬の空気の澄んだ季節に登って見たいと思った。無雪のタイミングなら車のアプローチも登山道もなんとかなりそうだ。

     
沢を離れ笹原を登る    尾根に突き上げ山頂へ    熊鷹山頂上

     
山頂よりパノラマ      
     

 山頂で食事をしている間も数グループの往来があり、なるほど人気の高さを実証している。廻りの話を聞いている、大戸川添いにアプローチして三滝のほうから登って来る人も結構いるようだ。櫓下に設置されている案内板を見ると、三滝から十二山経由、あるいはちょっと頑張って氷室山から廻ってくるコースも考えられる。この山域も楽しみである。
 山頂周辺はツツジの木が沢山ある。残念なことに開花まではもうちょっと、あと1週間位かかるのであろうか。いずれにせよ咲き揃えばかなり綺麗なことだろう。

 さて、後半戦は登ってきたほうへと一旦戻り、尾根づたいに丸岩岳へと縦走だ。起伏の緩やかな尾根道にミツバツツジが所々迎えてくれて気持ちの良い縦走路である。

     
案内板    丸岩岳への縦走路    ミツバツツジ

 丸岩岳(まるいわだけ){1127m}の手前は幾らかの登り。緩やかな道ですっかり弛緩した足腰にムチを打ちながらやり過ごすとそこは山頂。樹に覆われ眺望は無いが広い笹原で気持ちがよい。

 笹原の急斜面を降りるとまた所々にミツバツツジが見られる。鼻歌交じりの長閑な下山だ。

     
丸岩岳頂上    笹の急斜面を下る    ツツジが迎える下山路

 高度を下げていくと徐々に林層が変わってくる。突然針葉樹の尾根に突き当たったと思ったらビニールテープで通せんぼ。右の斜面を赤テープに誘導されながら降りていく。微かに沢の音が聞こえてきた。

 杉ヒノキの急斜面を降りていくと、朝通った分岐点へ到着だ。帰りは滝の一つ一つを丁寧に見ながら降りていく。ふと目を落とすと路傍の新芽が若々しく輝いている。そんな春の楽しい山行であった。

     
ここは行き止まり 右下へ    分岐点へ到着    新芽が眩しい

概略コースタイム
駐車地発(9:15)-丸岩岳分岐(9:45)-沢から離れる(10:29)-主尾根突き上げ(11:04)-
熊鷹山頂上着(11:15)-昼食休憩-山頂発(11:39)-1084mピーク(12:04)-丸岩岳(12:22)-
丸岩岳分岐(13:23)-駐車地着(14:02)

2008年02月23日

修験者の山 三峰山

 まだ栃木の山に登ることに縁が無かった頃、星野遺跡公園に遊びに行ったことがある。お椀を逆さまにしたようにどっしりと構える山が、公園に展示されている縄文式藁屋根の風景に妙に似合っていた記憶があった。これが今回登る三峰山(みつみねさん){605m}である。

 砂利が綺麗に敷き詰められた御嶽山神社隣接の駐車場に車を駐めて、神社境内から里宮へ進む。社殿脇の石段から今日の登山はスタートだ。

 車でも無理すれば上がれそうな林道を歩いていくと左手の清滝不動に着く。白装束をまとった修験者が滝に打たれるさまが目に浮かぶようだ。道はここから荒れ出していよいよ山道然となっていく。

     
里宮右脇から登山道    社殿と山と畑    清滝不動

 普寛霊神の立派な社に到着する頃にはうっすらと汗をかき始めた。右手の道はと見ると、石祠が急な斜面に沢山安置されており、そこを進む我々もまさに修験者の心もちである。

 ベンチのある御嶽大神御岩戸入り口で一休みをする。見上げると殆ど垂直な感じで鎖が下がっている。鎖の上に上がれば岩戸の中が覗けるのだろうが、高度もありとても取り付く気にはなれない。

 コースはここから右に巻いていくと眼下に星野の里が見渡せるようになる。

     
普寛霊神の先    まさに修験の場    御嶽大神御岩戸

 右側が切れ落ちたトラバース気味な道を慎重に進むとまた樹林に吸い込まれていく。枝打ちが徹底されたよく管理されている樹林は、ピリリとした山全体が持つ信仰の雰囲気に似合っている。
 ようやく上に明るさが見えてきた。尾根に出てみれば、稜線の日溜まりに残る残雪が楽しい。そんな明るい尾根の先は奥ノ院である。

     
枝打ちされた美しい樹林    やっと明るい尾根に    奥ノ院

 奥ノ院からの眺望は西側に少し開けているが、他は微妙に枯れ枝が邪魔していて今一つだ。三尊立像のおでこのシワがリアルで可笑しい。三人の神をもう少し個性豊かに表現したらよかったのに・・・なんて言ったらバチあたりかな。

 奥ノ院から一旦少し戻り、尾根沿いに三峰山方面へ向かう。傾斜の緩い軽快な尾根道を歩き極楽気分。でも楽なのはここだけ。この後は足場の悪い急降下と登り返しが数回続くことになる。
 前半の奥ノ院までのルートは路傍の石祠や社殿の数も沢山あり信仰色が色濃い。ある意味賑やかだったが、いつもの低山の風景にすっかり戻ってきたこの尾根にもふと気が付くと足元に神様が祀られている。

     
三尊立像    鼻歌交じりの快適尾根    あちこちに神様が

 杉や檜の落ち枝が積もった急斜面は思いの外滑る。上から見ると滑りそうも無さそうな所でスルッといくのでなかなかに油断が出来ない。おまけに残雪が所々アイスバーン状になっている箇所もあり、ますますもって厄介である。

 尾根の途中から南側にロープが張られ、立ち入り禁止の看板が所々に立てられている。吉澤石灰工業の採掘現場になっているのだ。昼頃に発破があると書いてあったが、山頂到着直前の11時50分丁度に辺りを轟かすズドンという音が聞こえた。
 子供の頃父親に連れられて歩いた奥多摩の山で何度か発破の音は聞いた事があったが、こんなに近くで聞いたのは初めてだ。

 幾度かの登り返しに汗をかきながらようやく山頂へ到着。山頂は木に囲まれて全く眺望は無い。西側の立ち入り禁止のロープの向こう側に石灰採掘場が痛々しく広がる。あいにく霞がちのため遠景もいまいちだが、まぁよしとしよう。午後から低気圧が接近してくるという予報の通り、風がにわかに強くなってきた。樹に覆われた山頂は逆に日溜まりとなり暖かなランチタイムを楽しむことが出来た。

     
ロープの向こうは立入り禁止    三峰山頂上    山頂南側

 山頂から御嶽山神社に直接降りていく道もまた険しい。こちらもまた滑りやすいことこの上も無し。わざわざ道を外して斜面を直接歩いたほうが格段に歩きやすいところもある。

 それまで下ってきた谷沿いのルートが突然険しくなり怪しい感じがした。今回は樹林が深くGPSも先ほどから衛星の補足が困難で殆ど役に立たない。地図とコンパスで頭をひねっているとH君が右手に寂しそうにぽつんと付けられている赤テープを発見。導かれるようにしてトラバース気味のヤセた道をやり過ごすとそこに浅間大神が祀られている。
 ここからはハシゴとクサリとナイロンロープで慎重に降りていく。降りてしまえば、先ほどの谷筋と合流する。ハシゴを面倒がる人達が谷を直接降りてくるので、歩かれた感じが少し残っていて引き込まれそうになったのかもしれない。

     
山頂南側    厳しい下り    浅間大神

 浅間大神を過ぎると幾らか厳しさも和らいできた。いよいよ緩やかになるとほどなく林道に出会う。遠く向こうの山並みに続くが如く見える真っ直ぐな道は、それまでの緊張の連続であった一日を慰めるように穏やかであった。山中にH君と私のしりもちの置きみやげがあった事を知る者は、どこかでそっと見ていた神様以外には居るまい。

     
やれやれ林道だ    確かに30分は無理かもね    駐車場が見えてきた

概略コースタイム
御嶽山神社発(9:10)-奥ノ院(10:42)-三峰山頂上着(12:08)-昼食休憩-頂上発(12:34)-御嶽山神社着(14:09)


今回は衛星の捕捉状況が極めて不良であり、軌跡の採取も不正確な結果となってしまった。

2007年12月09日

仙人ヶ岳

 足利にある仙人ヶ岳{663m}にH君と登ってきた。

 安蘇の山々は、前日光や県央の古賀志山、篠井富家連峰などとまた違った低山の趣を持っているような感じがする。宇都宮からだと少し登山口まで距離があるのでつい敬遠しがちだが、聞けば仙人ヶ岳は人気があるようなのでまずは安蘇山塊の第一歩として選んだ次第である。

 不安定な気候の時期も終わり、今日もバッチリと快晴な冬の一日の始まりである。田沼までのR293は単調なドライブ。それでもこう天気が良いとこれから臨む山域の事で心が躍る。田沼からは国道に別れを告げて県道を何本か乗り継ぐ。昨晩の雨でしっとりと濡れた峠を越えて猪子トンネルをくぐると登山口の岩切に到着だ。

 10台程度は駐められるであろう無人の?有料駐車場はほぼ満車。路側にも数台駐めてあったのでこちら側の並びに駐める事にした。時間は10時少し前だったので地元の早立ち組はとっくに入山している様子だが、我々の後にもまだ車が入ってきたのでやはり人気の山のようである。

 駐車場脇にある鳥居が登山口になるようだ。あちこちに私有地であることを告げる張り紙がしてある。先日登った鶏鳴山も私(社)有地であったが、山一つを所有するというのも豪気な話だ。もっとも最近は急増するハイカーの為に、山域が荒らされたり山火事が発生したりするのでオーナーも気が抜けないのは事実。山を愛する者として深く自重をして楽しませて頂きたいと思う。

 今回のルートは岩切から谷を沢添いに詰め、熊の分岐に登り上がり仙人ヶ岳山頂往復。熊の分岐からは南東に延びる尾根を辿って猪子峠経由の周回コースである。事前のガイドブックによると、仙人ヶ岳山頂は眺望は期待出来ず、後半の尾根に好眺望ポイントが多いということだ。

 登り初めは清らかな沢を左へ右へと、少し朽ちかけてたわみ加減の丸木組の橋を何度も渡っていく。色の褪せた葉が一面に積もる沢のよどみは、紅葉の鮮やかな時期にはさぞかし素晴らしい渓谷模様を描いているのだろうと容易に想像出来る。

 生不動尊の社殿、マンガン採掘抗跡(金網で囲われている)などを見ながら徐々に高度を上げていく。地元小学校の子供達が作った標識があり、よく見てみるとなかなか面白い。ちなみに下写真右はちょっと見づらいが「左へ行くと迷います」。作業道に引き込まれないように注意を促しているのだが実に明快!

     
登山口    生不動尊    左に入るべからず

 沢音も消えかけて幾らか勾配が急になってくると子供達の次のメッセージだ。「難所! ゆっくりいけば大丈夫」。なかなか気の利いた標識だ。もっとも、尾根に登り上がるこの急登区間は我々の脚力では自然と"ゆっくり"になってしまったが(笑)

 今回のコースではここが一番キツイのは解っていたので、やれ登れそれ登れと頑張って熊の分岐へ到着。最後のほうはトラロープなども掛かっていた位なのですっかり足元ばかり見ていたが、ふと振り返って見ると樹木越しに南北の視界が明るく開けだしている。峠でまずは一休み。

     
晴天哉    ここから急登    熊の分岐

 熊の分岐からは稜線伝いに西側に見える仙人ヶ岳に向かい、最後の尾根を詰め上がる感じの登りになる。地形図通りに最後の一登りをこなすとそこは山頂から続く東の肩。広い平坦地に掲げられた子供達のメッセージは「ここは山頂ではありません」。山頂はここから僅か西側にあった。

 だだっ広い山頂は確かにガイドブックの通りあまり眺望が良くない。落葉しているのである程度の景色があるが、どうも中途半端な見え方でいささか不満である。丁度冷たい北風が強く吹き始めてきたので記念撮影をして早々に山頂を後にした。今回は下山路に好眺望ポイントが多いので、食事はあらかじめ山頂を外して取ることを計画していたのだ。

 山頂から先ほどの熊の分岐までピストンで戻る。登りではあまり意識しなかったが実はかなり固い岩地の道であり、下りだと結構膝に負担が掛かっていた。この後辛い状況になるとはこの時点では未だ予想だにしていない。

 熊の分岐の日だまりでお弁当を広げている中年女性3人組の前を通り過ぎ、ピークを2つ3つ過ぎるとパッと視界が東側に開ける。伐採ですっかり視界が広がったここからは眼下に松田川ダムを従え、左手に赤雪山、向かうは遠くに筑波山、右手はこれから下りていく尾根が綿々と続く。今日の昼食ポイントである561mピークに到着だ。
 この後も尾根沿いに何箇所か眺めの良い場所があるが、食事をするならば絶対に此処だと断言して良い。素晴らしい景色と昼食を堪能し食後のコーヒーでくつろいでいると先ほどの中年女性3人組が、こんな景色の良いところがあったんじゃない、と悔しそうに通り過ぎて行った。

     
山頂と思いきや・・・    仙人ヶ岳頂上    561峰の眺望に見入るH君
     
561峰より赤雪山    561峰より    同 左

 561mピークからは変化の多い尾根が続く。初めのうちは左手に松田川ダムが見え隠れする。途中からは右手の仙人ヶ岳や南側の深高山方面が迫る景色が楽しませてくれる。所々に露出している岩場も歩きに変化があって楽しい。
 途中のピークに"宗の岳"などという(下写真右)山名板が掛かっていた。地形図に名前が載っていないので勝手に命名されたのか、それとも由来があるのかな。

     
      ??宗の岳??

 ガイドブックやネット情報で指摘されている難所の「犬帰り」へ到達。先ほどの中年女性3人組が往生している模様。一人だけは無事下りた様子だが、残り2名は引き返して巻道を行くようだ。我々も無理をせずに巻道を下りていく。

 普通、岩場の巻道というと文字通り岩の廻りをグルリと回っていくパターンだが、ここの岩はかなり巨大であり、巻道もジェットコースターのように下って、岩の根元を大きく回ってまた登り返すようになっている。下りもそうだが登りもかなりキツイ。ようやく犬帰りの反対側へにじり登ると、確かに6~7m位の垂直に切り立った崖だがしっかりとした鎖もあり、ホールド箇所も多そうだ。巻道の急な登り降りと天秤にかければ岩を下りた方が楽なのかなとも思った。

     
岩尾根の急なアップダウン    コメントが一言欲しかったなぁ    犬帰りの正体

 犬帰りの巻道を下っている最中、膝に何となく違和感を感じていた。それでも息を切らして巻道を登りきった時、違和感が現実の痛みに変わってしまった。

 どうやら下りで足を出す特定の角度のみで左足の関節が痛むようだ。面白いことに平坦な所や登りは全く痛まない。はじめのうちは左足をかばって右足に力を入れて歩いていたが、それでも容赦なく岩質の山道のアップダウンは続く。ついに右の太ももが悲鳴をあげだした。このままだとつるのは時間の問題。下山路はまだ先が長い。ここで動けなくなっては困る。取りあえず道ばたに座り込み足を伸ばして太ももマッサージをしていると、先ほど追い抜いた例の中年女性3人組が「なかなか(下に)着きませんねぇ」と我々に声を掛けながら通り過ぎていった。長丁場の尾根にバテてしまったとでも思われているのだろうか。こちらはもう少し深刻な状況なんだけどねぇ(笑)

 痛みをだましだまし、みるみるうちに歩行ピッチが落ちてきた。まるで傷痍軍人のような心持ちである(超大袈裟)。こうなると、とにかくこれ以上のダメージを受けないように慎重に確実に下山するしか無いのだが、後ろに控えるH君の存在が大いに頼もしい。また、尾根からの素晴らしい景色にも励まされながら歩を進めていく。

     
岩の向こうは石尊山    昼食場所の561Pを望む    猪子山

 長い尾根道もようやく終端に達し、ここからは下り一辺倒である。痛む膝をかばいながら段々と樹林の中へ吸い込まれるように深く下りていく。まだ太陽の高い時刻だとういのに薄暗い猪子峠に到着だ。道を岩切方面へ折れると、程なく向こう側にアスファルト路が見えだした。やれやれ無事下山が出来たが、今回はちょっと苦労した山行でもあった。

     
ここからやっと下り    逆コースなら登山口    右手より下山してきた

膝のその後

 宇都宮まで約2時間車を運転し、自宅へ着いて車から降りた瞬間は痛みでにわかに動けず。その場で少しほぐして何とか歩く。
 明らかに筋肉痛と異なるが、念のため入浴後に関節の廻りに消炎湿布を張る。膝の代わりに酷使した太ももも勿論バッチリ張った。

 翌朝月曜日。布団から立ち上がると、何だ全然平気じゃないか。でも階段を下りるとやはりかなり痛む。下りるときのある一定の角度に関節が曲がった時だけの痛みだ。会社の階段の登り降りはかなりキツイ。何とか一日仕事を終えて、帰り際に整形外科(スポーツ整形外科)で診て貰おうと思っていたが、気のせいかほぼ痛みが治まってきたような気がする。仕事も忙しかったので取りあえず様子見とした。

 火曜日は名古屋まで日帰り出張だ。駅などで階段の登り降りの多い1日になる。朝自宅の階段での感触では大丈夫そうな感じであったが、実際東京駅で階段を下りるとやはり痛みがあり、東京の気ぜわしい人達の歩行リズムから遅れをとってしまって若干意気消沈する。やはり昨日病院で診て貰えば良かったかな・・・・と。

 それでも、帰りに名古屋駅で階段を登り降りする頃には随分と良くなってきた。下りの姿勢でも痛みが殆ど出ずに無理なく関節が曲がるようになってほっとする。まだまだ完璧という感じでは無いが、自然治癒力が自分にも残されているのだなと安堵の気持ちだ。何はともあれ今日の段階ではここまでであるが、もう少し予後を観察しないといけない。

 今回の敗因は、下りの早い段階でストックを使わなかった事にあると思う。ただでさえ固い岩質のそれも急斜面。思いおこすと、滑るまいとして左足を無理な体勢で多く出していたような気がする。初めからストックでバランス補助をする、あるいはもう少しペースを落として歩いていれば良かったと反省しきりである。
 下りのペースについては殊更私が早い訳では無いが、後ろから来るH君がストックを出して、彼自身の安全ペースを固守する姿を私も見習うべきであった。彼も初心者だが、私とてさほどの違いも無い。ましてや基礎体力に劣るのは私の方である。とにもかくにも山は故障や怪我をしては何にもならないところなのだから。

お騒がせの膝のその後2

 水曜日(12日)にはほぼ全快とでも言えるような感じで、階段の上り下りも違和感が無くなってきた。「喉もと過ぎれば・・・」ではないが、職場の給湯室から見える古賀志山を見てはうずうずしてしまう自分って懲りない奴!


概略コースタイム
駐車地発(9:50)-熊の分岐(11:03)-仙人ヶ岳山頂(11:40)-熊の分岐(12:05)-
561mピーク着(12:24)-昼食-561mピーク発(12:43)-犬帰り(13:33)-
猪子峠(15:10)-駐車地着(15:30)

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    季節の移ろいと自然の姿に心惹かれるブログ主さんの記事は、山好きな人ならきっと共感することと思います。自分も長い間隠れファンでしたが、この度相互リンクさせていただきました。
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  • PIAN PIANO.
    バイク仲間であり山仲間のなおさんのブログ。ブログ名のPIAN PIANO.(ピアン ピアーノ)は、イタリア語で「あせらず、ゆっくり」という意味だそうです。

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