小来川蕎麦「ほそで」と大芦渓谷
新そばと紅葉を楽しみに家内とドライブに出かけた。
蕎麦は以前から気になっていた小来川の最奥にある「ほそで」という小屋風の店である。少し集落寄りにある山家(やまが)や瀧茶屋は結構有名で、いつ見ても客が絶えない。場所的な事もあるだろうが、かなり奥まった「ほそで」はどちらかというとひっそりとした佇まいもあってあまり目立たない感じがする。だがネットで調べると案外評判が良い。土日のみ営業というのがいかにも農村レストラン然としていて興味深い。百聞は一見にしかず、まずは行ってみようと考えていた。
場所やメニューはこのリンクからスキャンしたリーフレットをご覧いただきたい。
小来川の集落を抜け、滝ヶ原峠に向かって走っていく。黒川添いに火戸尻山を回り込むようにして進路が北に変わり、暫く走るとやがてログハウス調の文字通り「山小屋 ほそで」に着く。ぱっとしない天気だが、逆にしっとりした感じが周囲と溶け込んでいるような妙に落ち着きのある佇まいである。
丁度昼飯時であるが、引き戸を開き中を窺うと閑散とした店内に客は居ない。少し不安にもなったが、囲炉裏に燃える火の匂いも中々に良い。
いかにも地元の主婦といったおばさんが注文を取りに来た。どことなく素人くささもあるが、むしろ家庭でもてなしをうけるような雰囲気もこの店ならではであろう。
蕎麦セットと名前はモダンだが、ありふれた素材の天ぷらは、蕎麦と食べ合わせるに充分かつ美味。中でも大根の天ぷらは意外な旨さに驚く。
肝心の蕎麦のほうはどうだろう。実は新蕎麦かどうかというのを聞くのを失念してしまったが、麺はコシがあって香りも香ばしい。自分的には結構高得点だ。そして蕎麦つゆ。これが実に素晴らしい。後を引かないさっぱりとした味わいにまず驚く。それでいてダシの本質は決して損なわれていない。大抵、ダシが勝っていたり塩辛さが勝っていたりするものだが、ここの店の「かえし」と「だし」の微妙なバランスが醸し出す味わいの深さは舌鼓を打つに値する。決してグルメや蕎麦通では無い自分だが、今まで食べた蕎麦の中でこのつゆは恐らくダントツトップの味わいであること間違いなしである。
2組ほど客が入ってきた頃には、あがりのそば湯も飲み干し「ほそで」を後にする。さぁ、後半は大芦渓谷の紅葉狩りだ。
滝ヶ原峠へ駆け上り、そこから南へ「河原小屋三の宿線」に入る。どうやらこの辺りは林層もさることながら幾らか時期も逸してしまったようで割と殺伐とした風景が続く。それでも段々と高度が下がってくると時折山腹を綺麗に覆う紅葉を見ることが出来た。
ほそで | 蕎麦セット大盛 | 河原小屋三の宿線より |
三ノ宿山の東側を通るこの林道が、やがて日光沢と平行するようになると周囲の樹々が賑やかな色づきで迎えてくれるようになった。そして日光沢が本沢と合流し東大芦川渓谷をなす地点、大滝に達する。いつもなら訪れる人もまばらであろう駐車スペースに沢山車が駐まっていた。
とはいっても10台にも満たない位だから大したことは無いのだが、行き交う車もまばらだっただけに此処だけぱっと賑やかな雰囲気がする。三々五々、撮影に熱中する人、静かな佇まいを楽しんでいる人。夏に来たときには葉に隠れていた大滝も、落葉の今ははっきりとその姿を見ることが出来る。紅葉は派手さこそないが、渓谷の美しさを感じるには充分なその風景を眺めながらストーブで沸かしたお湯で熱いコーヒーを飲んだ。
今年はあと何回紅葉を見るのだろうか。齢五十を目前にして、一体生涯にあと何回、いや何十回紅葉を見るのだろうか。妙にセンチメンタルな気分なのは滝の魔力なのか。古から、人知を越えた自然の営みに人々は畏れ癒されていくという。そんなことが少し身近に感じることが出来たそんな一日であった。
大滝 |
河原に降りる | 川中島の橋から |
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