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2011年11月 アーカイブ


2011年11月13日

静かなる明神ヶ岳

 

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 山仲間の"なおさん"から薮山に行かないかと誘いを受けた。薮山とはいえ『栃木百名山』で紹介されている山だから、自分が冬場に徘徊している本当にごちゃごちゃした里山の薮とは風格の違う立派な薮山である。

 計画では、湯西川にある明神ヶ岳持丸山のダブルヘッダー。明神ヶ岳は『栃木百名山』で紹介されている"経験者向コース"のマゴリ沢からのルートでは無く、最近の山行記事で目にする機会が多い滝倉橋からの最短コースである。
 首尾よく明神ヶ岳を終えた後は登山口を移動し、持丸山は『栃木百名山』コースで手堅く片付けるという段取りである。

 最終的に同行する顔ぶれが揃うと、ルーファンや薮漕ぎのことよりもメンバーの屈強な足並みについていけるかどうかという事のほうが専らの心配事になり、見事当日はその予感が的中するのであった。

 道の駅湯西川で待ち合わせた面々は2台の車に分乗し、明神ヶ岳の取り付き地である滝倉橋へと向かう。K249から林道に入ると車の往来は一切無途絶え、路駐する軽四駆車を2台見た限りである。道路は舗装されていて快適だが、路面に落葉がうっすらと積もっていて深山の静けさが感じられる。

 滝倉橋脇のスペースに駐車する。橋の傍らに、寂しげに垂れ下がる少し色褪せた赤い布が下がっている所が取り付き口である。

 一歩足を踏み入れると、踏み跡はかなり濃い。十分に歩かれており、道形が伺える。多少拍子抜けした感もあるが、問題は急登だ。登山道として整備されている訳ではないので、ルートは尾根の真芯を探るような最短直登である。少し湿って土が露出している所は滑りやすく、草木に掴まりながら登っていく。屈強の我がカモシカ軍団はペースを落とさず涼しい顔。これについていくのもなかなか骨が折れるが、まだまだこの時点では自分も負けてはいない。やがて辛かった急登区間が終わると、痩せ尾根に吹き抜ける風が心地良い。第一弾のアルバイト苦行からはとりあえず開放されたようである。

     
薮山な雰囲気を醸し出す登山口    草木に掴まりながら急登    尾根に乗れば心地よし

 南東に伸びる尾根もまたじりじりと高度を稼ぐので決して楽ではないが、それでも取り付きの急登に比べれば鼻歌まじり。1159mP、1361mP、金剛ゾネと進む。稜線の薮は噂ほどは濃くなく、足元の道形もはっきりしているので迷う事はまったく無い。むしろ鋭敏な痩せ尾根であるが故にコースミスのしようが無い区間である。金剛ゾネを過ぎるとシャクナゲが少しうるさくなってくるが、花季に訪れればルートに絡みつくように繁茂するシャクナゲの花もまた一興であろうと思いを馳せる。

     
1361mP先の金剛ゾネ    シャクナゲと笹の小薮    山頂が近づく

 1400m級ピークで進路が北東に切り替わるが尾根の派生が交差するこの辺りが道迷いの一番可能性が高い箇所と踏んでいた。だがこれも杞憂に終わり踏み跡は依然として明瞭である。
 双耳の1400m級ピークから一旦高度を下げたコルからはコース髄一の南側眺望が拡がる。傍らには「ヨガッタァ」と記された板が掛かっている。どいういう由来の命名かは知らないが、決して見通しが良いとは言えないこのルートで唯一景色が"良かったぁ"とでも訳せばピタリかななどとも思った(^_^)

 ヨガッタァ近辺からは丈の低い笹が足元を覆う。尾根形はほぼ消失し踏み跡も千々に乱れるが、赤テープを追わなくても登り易い所を登るべし。容赦の無い急登は本日のアルバイト第二弾である。

 傾斜が緩みすわ山頂かと思いきや、二段腹の山頂手前のテラス。一息いれて数十mの標高差をやっつけると、とうとう山頂へ到達することが出来た。

     
山頂手前のコル    山頂まで標高差200m一気登り   

 山頂は樹がなければ、360度素晴らしい山々が望めるであろうロケーションでありながら、実際には日光連山方面がかろうじて見えるだけである。山頂奥からは、東の方角に雲に隠れた高原山が少し見えた。

 マゴリ沢ルート方面に目をやると、南東の真下にある1550m級Pがこんもりと妖しくも立ちはだかっている。なるほど、こちらのルートはちょっと見た限りではかなりハードルが高そうな雰囲気だ。

 山頂で鋭気を養った後は早速下山にとりかかる。先程登りに喘いだ笹の急斜面も下りは視界が広がり快適である。多少滑りやすい所は笹の中を降りれば自然とブレーキが掛かって楽でよい。

     
遠く女峰山の尾根が大きい    『栃木百名山』ルート方面は密やかに    下山は雰囲気が良い

 ヨガッタァからは再び痩せ尾根を辿り、往路に気づかなかった1159mPの板などもカメラに収めながら進む。取り付き口への急降下は、想像通り容赦なく膝を責めぬく。滑りやすい足元をかばい余計に力が入って、登りより下りのほうが疲れる山道というのも珍しいだろう。

     
葉の落ちた季節ならでは    金剛ゾネ付近の唯一の露岩    1159mP

 無事に滝倉橋に降り立った一行は、晩秋の趣深い静かな堰堤で昼食とした。水面に浮かぶ落葉が美しい。

 ひと時の休息の後、車に乗り込み次なる目的地である持丸山登山口を目指す。

 上坪の集落からダート林道を暫く行くと突然の倒木が行く手を遮っている。単独なら車を置いてそこから先は徒歩となる事態だが、6人で力を合わせれば倒木撤去もたやすいものだ。

 林道終点の鉄塔巡視路を示す黄色ポールが登山口となる。樹脂製の階段があつらえてある道を辿り、古い木橋で沢を跨ぐとその先に階段が続く。
 登り始めるとどうにも調子が出ない。もともと階段とはあまり相性が良くない自分だが、どうやらそれだけでは無いようだ。確実に明神ヶ岳で消耗しているのだ。依然衰えることを知らぬカモシカ軍団の背中も今度ばかりはどんどんと小さくなっていく。どうにか114号鉄塔に着くが、一息入れたところで劇的な快復もありそうにない。

 鉄塔より先は巡視路も途切れ、自然林豊かな山道となる。体力に余裕がある早い時間に来れればかなり素晴らしい山歩きとなるだろう。だが、今の自分には短時間で山頂周回の薮尾根に到達し得る体力はお世辞にも残っていないようだ。

 このままのペースで、下山を待たずに日没を迎える訳にはいかない。自分はリタイヤするが、皆で山頂を踏んできて欲しいと伝える。メンバーに申し訳ないという気持ちと、日没が迫る状態でこのままチームの機動力を低下させる訳にはいかないという思いの交錯する決断である。

 「またいつかリベンジしましょう」

 山頂を共に諦めてくれた一行の、明るい声に大いに励まされた山行の締めくくりであった。

     
滝倉橋のPへ到着    鉄塔巡視路より持丸山を目指す    古い木橋を渡る
           
114号鉄塔より高原山方面      

概略コースタイム

《明神ヶ岳》
滝倉橋発(8:03)-1159mP(9:05)-金剛ゾネ(9:54)-ヨガッタァ(10:20)-明神ヶ岳(10:52)-
行動再開(11:08)-ヨガッタァ(11:24)-金剛ゾネ(11:48)-1159mP(12:14)-GPS電池切れ、滝倉橋着は13時頃


《持丸山》
駐車地発(14:44)-114号鉄塔(14:57)-撤退地点(15:27)-駐車地着(16:16)

2011年11月03日

三依の山、芝草山

 

 五十里湖周辺にある山は、今まで足を踏み入れることが無かった。
 何か特別な理由があるとかそういったことではないのだが、この山域にある1000m級の幾つかの地味な山が「栃木百名山」で紹介されているということは心の片隅にいつも残っていた。

 中には藪に閉ざされて容易に山頂を踏ませてくれそうも無い山もあるが、今回の芝草山はほぼ一般ルートとして紹介されている山である。そんな芝草山に登ろうというMixiの山仲間にご一緒させていただくことにした。

 序盤はよく踏まれた鉄塔巡視路をジグザグに登っていく。少し高度を上げると植林地から林相が切り替わり広葉樹の自然林となる。控えめでちょっと物足りなげな色づきを見せる枝ぶりも、この奥まった静かな山には案外ふさわしいような気がする。

 34号鉄塔へと続く巡視路に別れを告げ、痩せ尾根に乗れば枝越しに見える向こう側の谷に広がる浅い色の錦秋もまた目に優しい。

 やがて第一のピークである"大岩"に至る。衝立のように立ちはだかる露岩はおどろおどろしい雰囲気である。左巻くように進むと何やら長いロープが垂れ下がっている。地形図を眺めると、もう少し大トラバースして1194mPの先の鞍部まで行ってしまえばこのリスキーな区間をパス出来るのではと思ったが、結構高度感があるこの"ロープ場"は適度なスリルも楽しめて、芝草山の名所と言っても良いだろう。事実、ロープを登り切った大岩の岩テラスからは東側の胸をすくような眺望がご褒美で待っているのだ。

 形よく聳える山頂への最後の登りは電車道のような急登である。狭いが落ち着いた雰囲気の山頂からは、高原山方面や遠く田代山方面も望むことが出来る。天気は今ひとつであったが、遠くの山々が冠雪した冬場にまた登ってみたいと思う一座であった。

 下山は往路のピストンである。いつもなら黙々と一人歩きの自分だが、紅葉に負けないようなメンバーの明るい声に染まった下りもまた良いものだなと思った。

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 
登山口   豊かな自然林
 
大岩直下のロープ場   山頂
 
山頂より東側   田代山方面
 
やっと覗かせた青空に映える   遠く高原山を望む

概略コースタイム
グループ山行で時間調整を行いながら行動したが、トータルではほぼ標準CTではなかろうか。


駐車地発(9:34)-33号鉄塔(10:14)-巡視路より離脱(10:22)-大岩岩頭(11:02)-山頂(11:42)-
昼食休憩-行動再開(12:49)-大岩下部(13:29)-巡視路接合(14:05)-33号鉄塔(14:09)-駐車地着(15:04)

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