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今市鹿沼の山達アーカイブ


2012年02月26日

珠玉の薮尾根と大倉山



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースは全て一般登山道ではありません。参考にされる場合は必ず自己責任でお願いします。

 まだまだ雪遊びの時期だと思っていたのに、土曜日は湿った春の雪が宇都宮に降った。やがてみぞれから冷たい雨に変わってしまったが、メッシュ予報を見ると日光や県北も雨予報だったので果たして山の状態や如何に。良い状態でないのは想像に難くない。そんなこともあって、今季まだ履いていなかったスノーシューの予定を取りやめて、薮歩きの腹案を実行することにした。

 今回のお題は粟野と西方(にしかた)の境界にある大倉山と、その東西に伸びる尾根歩きである。この尾根筋は標高こそ300m~500mと決して高くは無いが、宇都宮西中核工業団地から累々と西へ伸長し、谷倉山を超え遥か前日光方面まで稜線をなしていく、その端緒の部分になる。

 もう既に何回偵察を重ねたことだろうか。林道『真上男丸柏木線』に入り、通過痕がまったく無い綺麗な雪の路面にパジェロミニを進める。つづら折れを重ねて峠が近づくと、低い所に発生したガスが覆う風景が拡がる。まるで雲海のようで美しい景色である。

     
バージンスノー    後方に綺麗なタイヤ痕    雲海たなびく

 林道の最高標高点、峠に自転車をデポした。此処が今日の徒歩によるゴール地点となり、下山後は林道を一気に駆け降りて車のデポ地である真名子集落まで約9Kmのサイクリングとなる。
 基本的に下り一辺倒なので体力消費は殆ど無いはずだが、一箇所だけ標高差50m程度の峠超えが待っているのがやや心配の種である。

 今回真名子集落から目的の尾根に到達するにあたり、過去の偵察で数ヶ所候補を検討していた。随分悩んだ末に選出したポイントだがさてどうなることだろう。
 取り付き地の裏手は墓地でここが一番楽に侵入できそうな雰囲気であったが、流石にバチあたりな感じがしたので少し外して横手から取り付く。駐車地脇の寺を城郭のようにぐるりと囲んだ187mP付近は想像通り激しい薮で、薮慣れした自分でもかなり手強い。

     
こちらへ駐車させていただいた    この少し奥のほうから取り付く    序盤は想像通りの檄薮

 足元を見ると小動物の獣道が縦横無尽に走っており、動物達がやすやすと通過している模様。残念ながら人間が通過するには薮の高さが足りない。時折ふと途切れてほっとすることもあるが、すぐにまた泳いで進むような薮が待ち構えている。

 187mPからしばらく東に進む。北側眼下には取り付きに最適と思われたポイントがあるが、こちらは行き止まりの道に民家が一軒、私有地の雰囲気が濃厚なのでパスしたのだ。飼い犬が敏感に反応して吠え立てる。姿は見えぬが、遥か頭上の稜線で薮を払いのける侵入者に敏感に反応しているようだ。

 目論見の地点で進路を転換して一旦谷に降りる。枝尾根に取り付いて主稜線へと詰めていく。高度を上げるに従い段々と薮も薄くなり歩きやすくなってきた。

     
たまに緩むも行く先容赦無し    薮は続くよどこまでも    幾らか薄くなってきた

 主稜線に突き上げてみると、どうやら滅多に歩かれていないようで、道形の形成はほぼ無し。踏跡の痕跡も獣道程度である。あるがままの姿に静置されている自然林の尾根は荘厳で美しい。歩けるのは今の時期しかないだろうが、初夏の候、むせ返る程の新緑で埋め尽くされた光景を想像するのもまた楽しい。

     
尾根に乗ればすっきり    自然林の尾根は美しい    左手にもう一本の稜線が見える

 途中の小ピークで一箇所進路ミス発生。全く正反対に進んでしまった。眼下の集落が視野に入ったのですぐ気がついて登り返したが、この後は小ピークに至るたびに、GPSで現在地の確認を行って地形図とコンパスで進路精査を慎重に重ねる。地形図で見ると一見簡単そうな尾根筋だが、踏み跡がまったく無いので正確な方角取りと尾根形探しが重要。ぼっとしていると、微妙な派生尾根に引き込まれてしまう可能性が非常に高い。

 大倉山の山頂手前、標高差約100mの区間は右手が植林帯、左手がうるさい薮となる。潅木あり笹薮ありススキありとバリエーションに富む薮の急登をこなすと山頂の南の肩へ到達。真名子の集落や歩いてきたルートが良く見渡せるので気持ち良い。天気予報では晴れマークだったのに一向に日差しが出てこないのが残念ではあったが、こんな薮山だけに展望が開けると嬉しいものである。程無く一投足で山頂へ到着した。

     
道なき尾根を詰める    山頂手前で再び薮がうるさくなる    珍しい笹薮
     
ススキは意外と歩きやすい    登ってきたルートが一望    山頂

山頂より478mP方面

 山頂の北西方面は広大な伐採地となっており独特の景観が形成されている。広々とした開放感溢れる眺望は、見通しの効かない薮道をコツコツ登ってきた者にはかなりありがたい。しかしながら、丸坊主にされてしまった山を見るのは実は悲しい事なのだ。

 昼食をどうしようかと思ったが、遠く見える谷倉山、そこに至るルートにもまだキツイ登りがありそうだ。もう少し進んでからにしようと決めた。

 山頂から一旦真西へ急降下。眼下の伐採地のヘリ沿いにコルを目指す。その向こうには樹に覆われた478mPが小さいながらも毅然としてそびえる。標高差は殆ど無いが、途中のアップダウンは地形図で見るより遥かにありそうな気がする。この先のルートもなかなか骨が折れそうである。振り返ると台形状の大倉山は頭頂部が岩に覆われていたことを知る。実はこの岩がこの後のコースの鍵となるのだ。

     
これから向かう478mP    大倉山山頂    伐採地脇を登る

大倉山を振り返る

 伐採地より離れ、再び自然林の尾根を進んでいくと行く手を大岩が遮るようになってくる。到底超えられそうにない岩は右に左にと巻き、目を凝らすと獣達が巧みにルートを形成しているところはそれに従う。大倉山から西の領域はそれまでとは一線を画した荒々しい岩尾根なのである。

     
伐採用ブル道の模様が面白い    再び自然林の尾根    巨岩が尾根を遮る

 緊張感溢れるルーファン(ルートファインディング)と、連続する岩場処理。精神的にも疲れが溜まってきたのでそろそろ大休止が必要だろう。478mP一つ手前の470m級Pにザックを降ろし昼食とした。梢越しに見える谷倉山の伐採地がだいぶ大きく見えてゴールに近づいた事を改めて実感する。

     
次々と岩が出てくる    突拍子も無く社有地の杭    昼食の470m級P

 再スタート後の478mP手前も再び巨岩が行く手を遮る。右手は垂直の壁になっておりなかなかの迫力だ。とても巻くどころの話ではない。左手はやはり獣道が上手に巻いている。ネットで見たレポートもここを通過した人はみな獣道の巧みさに感動しているが、自分もまったく異論は無い。

     
谷倉山伐採地がだいぶ近くなってきた    再び巨岩、左手を巻く    右手は巻くどころではない

 一つ岩を超えた向こう側にピンクリボンを発見する。とかく人の気配が希薄なこのコースでピンクリボン見ると、やおら加勢を得たようで心強い気がする。薮好きな者の足跡ありやと思うと愛おしいものである。
 478mP末端は岩頭になっており、見はらす先には更に進むべき500mPに至る道無きルートが全貌をさらけ出している。

 岩頭からは下巻きながら急降下。尾根形が不鮮明なのでコンパスで決めた方角を外さず一気にコルを目指す。やがて薮に阻まれた小ピークを過ぎると岩尾根は姿を消していく。

     
赤テープ発見!    478mPから向かう500mP    岩よりはましかな?

 500mPに近付くとしだいに稜線の幅が広くなる。左手が植林帯、右手は自然林。足元は薮も無くすっきりと歩きやすい。昨日の雪が少し残っていて多少滑りやすいが、ここまでの経路の緊張感からすればとてつもなく穏やかな並木道である。登りつめた所にあるひっそりとした500mPから下降すればようやくゴールが見えてきた。

     
500mP手前は一変しておだやかな登り    ひっそりと500mP    ゴールが見えてきた

 当初計画ではこの自転車のデポ地から車道を挟み、更に谷倉山を踏んでフィニシュとするつもりだった。この林道の峠から谷倉山へのルートは林道が工事中の頃より是非にと思っていたのだが、今回は体力気力切れということで次の機会にゆずることにしよう。地形図を眺めていると、谷倉山近辺は実にいろんなコースが考えられるエリアなのだ。この箇所を歩く日もそう遠くない将来にきっと訪れることだろう。

 さあ、残りは自転車で駐車地まで帰るのみ。ずっと下り坂だからお気楽なものだ。快適なサイクリングを楽しんで行こうではないか。
 途中の小さな峠超えは序盤こそ元気に漕いで進むも、すぐ脚が廻らなくなってくる。降りて押したほうが断然早い。それでも下りに転じれば爽快そのもの。頬を切る風は思い切り冷たいが、心の中に温めていたルートを歩き通せた充実感が体中を巡り少しも寒さを感じることはなかった。

     
谷倉山はスタミナ切れで次回    自転車が待っていた    車の回収へ約6Kmのサイクリング


概略コースタイム
駐車地発(7:43)-187mP(8:01)-主稜線へ合流(8:45)-286mP(9:28)-大倉山(10:43)-
470m級P(11:41)-昼食休憩-行動再開(12:16)-478mP(12:40)-500mP(13:55)-
林道接合自転車デポ地(14:10)-自転車-駐車地着(15:11)

2012年01月03日

二股山東尾根

120103route.gif
-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
二股山の過去の記事
  2009年12月6日 二股山西稜
  2008年10月19日 一日に二度登った?二股山
  2008年3月22日 二股山と鳴蟲山

 2012年の歩き初め。直前まで何処にしようか迷っていたが、やはり腹案を一つづつクリアしていこうと考え、二股山の東尾根を登ることにした。

 二股山はここ数年篤志の方が登山道や道標などを整備されているようで、定番コース(一般登山道)が確立しつつある。西側の待居から林道を進み谷沿いに登るルートがもっとも明瞭なコースであり、マイカーアプローチの場合は一般的だろう。此処以外にも南側の加園、東の下沢や中坪からのコースが以前からあったが、道標がしっかりと設置されたお陰で一般ハイカーもより安全に歩けるようになってきている。

 自分の二股山は今回で4回目になるが、前回は一般コースではなく西側の山頂に連なるピーク群を辿る西尾根を登った
 西尾根ルートは思ったよりもアプローチが容易で、藪も殆ど無く所々に手製の道標も見られた。意外に登山者の足跡が濃いコースであった。

 今回の東尾根はネットで見る限り一例の報告があるだけで情報は少ない。自分は加園登山口駐車地からのアプローチで行動するが、取り付き予定箇所を見るとどうにも藪が濃く難しそうだ。過去数回の偵察でおおよそのあたりは付けてあるのだが・・・

 おなじみになった加園登山口に車を駐めて林道を戻る。左手に目指す東尾根の431mPが突出している。稜線沿いの杉木立の並びを見ると地形図の等高線の込み具合が見て取れるようだ。

 目論見の尾根末端手前は藪が濃いのでパス。少し薄手の箇所から入っていくが、谷を一つ挟んだ斜面をとりあえず登っていく。少し高度を上げて谷が浅くなったところでGPSを見て進路修正、トラバースして予定の尾根線に乗る。あとはこの尾根をひたすら追っていけば良い。植林地だが倒木や薄い藪もあり、斜度も地形図通りでなかなか手強い。

     
目指す431mP    ここから取り付く    多少薮あるも概ね良好

 登るにしたがい落ち葉の堆積は滑りやすく、容赦の無い急登にあらがうには木から木へ渡るようにして登るしかない。やがて上の方に岩が見えた。滅多に登山者を迎える事のないであろうその岩は神々しくも見える。その脇に寄り添うようにして辿り着くと、西尾根の414mPが枝越しに大きく見えた。

     
岩場    西尾根の414mP    急登は続く

 急登に喘ぎながらゆっくりと進む。尾根形が更に鋭くなるとようやく斜度が緩んだ。一旦濃い藪に出るが、ここは左側に少し逃げる。すぐ東側が見渡せる眺望地(431mP手前のピーク)に飛び出した。この眺望地は、西尾根を登った前回、下山時に道草をした時に見つけた箇所だ。

 眺望は東側。基本的には二股山の山頂から見える景色と大差ないが、山頂とは標高差が130m程度あるので微妙に見え方が違う。優劣は付けがたいが、ほとんどのハイカーが知らないこの眺望を眺めているという、その充足感に自分が満たされていたのは確かであろう。

     
尾根形が明瞭に    濃い薮は一箇所    小広い東側眺望地

東側眺望

 431mPより高度を下げると、やがて加園から登ってくる登山道と合流。ここからは一般登山道を歩くことになる。南がよく見渡せる途中の展望台からは、前回の西尾根(下写真左)、今回の東尾根(下写真中)がよく見える。

 一投足で南峰に到着した。落葉期の今は日光連山の見通しがよいので爽快だ。

     
登山道展望台より西尾根    今回登ってきた東尾根    南峰より

 いつ来ても緊張するコルへの急降下、そして北峰へよじ登る。以前無かったロープが下がっていて楽に登ることが出来た。さぁ、景色を眺めながら食事としよう。

 NHKの電波中継所の前が伐採されており丸裸になっている。このパラボラアンテナは、此処より直線で18Kmある会社の屋上からもはっきりと認識することができるので、かねてより気になっていたのだ。

     
北側は落葉していて眺望よし    NHK電波中継所周囲が伐採されていた    下山路の背戸山(368mp)

山頂(北峰)より東側眺望

 北峰よりの眺望をゆっくりと楽しんだ後は、下沢に向けて中継所の送電線沿いに下っていく。途中にある背戸山(386mP)はかつて山城だったらしく、切通しや土塁などの遺構が所々に見られる、篤志の方の手により、ほうぼうに設置された標識でその存在を知ることが出来る。いつしかコースが送電線から離れると、踏み跡が薄くなったり急斜面が出てきたり、意外と野趣溢れるルートになりなかなか面白い。

 もう眺望は無いだろうと思っていたら、背戸山手前で北側が望める箇所があった。岩を頂きに冠するかまど倉、送電鉄塔の向こうには羽賀場山からお天気山に続く山並み、その麓に田畑が拡がる里の風景である。

     
送電線沿いを降りる    意外に野趣溢れるコース    背戸山手前眺望地より

 計画では背戸山から南東に尾根を降りる予定でであったが、少し藪が濃い感じがしたので無理せず素直に道標に従い登山道を降りた。

 堰堤のある下沢周回コース起点から延命地蔵のある集落へ出ると、後は駐車地までの車道歩きである。確信犯で途中ショートカットをしたが、明らかに私有地と思われる所を通過してしまったのは若干反省が必要であった。このショートカットが本日大一番の藪こぎと相成り、たっぷり汗をかきながらも無事駐車地へ復帰した。

     
   落ち葉で情緒溢れる下山路    下沢周回コース起点

概略コースタイム
駐車地発(9:07)-取り付き地点(9:14)-岩(9:37)-431mP手前眺望地(10:08)-
加園登山道と合流(10:17)-南峰(10:56)-北峰(11:08)-昼食休憩-
行動再開(11:52)-背戸山(12:49)-車道(13:19)-駐車地着(14:23)

2010年12月12日

風雨雷山~笹目倉~鶏鳴山


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 日光の山並みも日増しに白さを増し、遅い里山の紅葉も静かに終わりゆく。いよいよ里山逍遥の季節到来である。

 開幕第一座は先日偵察済みの鶏鳴山周回である。コースは、宮小来川より風雨雷山、笹目倉山と登り、北北西の尾根を辿り鶏鳴山南南東の815mPにて尾根を乗り換える。ここからはガイドブックなどに紹介されている周回コースで鶏鳴山へ至る。鶏鳴山からの下山は、山頂先の石祠のある展望地付近から新谷集落へ向け廃道化した地形図の破線を求めて落下傘のごとく下降。あとは林道へ拾われるという内容である。

 最近の山行は早起きが続いたが、今回は近場ということもあって比較的ゆっくりの出発であった。文句なしの上天気に気分も高揚する。

 黒川沿いに車を西走させ、眼前にピラミダルな笹目倉山の端麗な容姿が飛び込んでくると、思わず車を止めてカメラを向けた。

     
笹目倉の端麗な姿    まずは自転車をデポ    朝日を浴びて煙る畑

 新谷の鶏鳴林道終点(施錠されていて一般車は進入不可)に自転車をデポしたのち、日光市役所小来川支所へ車を駐めた。日曜の朝の静かな雰囲気が漂うなか、集落をそっと旅立つ。

 登山口は民家の裏手から。前回風雨雷山から笹目倉山に登った時に比べると若干薮っぽい感じだが、一歩踏み込めば道形も明瞭。里山特有の植林尾根の急登が始まる。

     
民家裏から失礼    登山口は少し薮    淡々と植林尾根を登る

 恐竜の背骨のような、長い長い尾根道の小ピークを超えていく。やがてこのコース唯一のビューポイントから見える鶏鳴山を眺めながら汗をぬぐい歩みを止めた。更にひと踏ん張りで、風・雨・雷のそれぞれの石祠が行儀よく三つ並ぶ風雨雷山である。今回は礼儀正しく鳥居をくぐって山頂を踏んだ。

     
鶏鳴山ビューポイント    風雨雷山   

 再び淡々と植林尾根を詰めていく。たまに急斜面になると踏み跡も掻き消されるが、ひたすら上を目指すべし。

 やがて見覚えのあるピークへ到達すると、そこが笹目倉山頂上である。

 前回は此処が目標点であったが今日は単に通過点に過ぎない。未だ全行程の半分にも満たないのである。

 一旦ザックを降ろして鋭気を養い、いよいよ今日のメインコースへと歩を進める。道標こそ無いが踏み跡も濃い北側の尾根道である。

 初めの急降下が終わるとあとは穏やかなアップダウンの連続だ。時たま樹林が切れて通過する陽だまりは、落ち葉の絨毯を踏みしめながら静寂の尾根歩き。

 ガイドブックは鶏鳴山から笹目倉までの尾根は読図力が必要としているが、なるほどと思った箇所があった。笹目倉からの登りでは支尾根に引っ張られそうになる所が一箇所だけあるが、他はさほど難しくない。逆に鶏鳴山から下ってくると、いかにも迷いやすそうな要注意分岐が二箇所あった。それだけに、山慣れたベテランさんには面白いコースだと思うが、区間に道標は皆無なのでやはり読図が出来る人かGPSが使える人でないと薦めることは出来ないであろう。

     
再び淡々と・・・    笹目倉山頂上    鶏鳴山への尾根
     
     

 途中、唯一東側に眺望が広がるポイントがある。先に進むと薄い薮が出てくるが、忠実に尾根を追うと薮が切れた所に濃い踏み跡が現れる。鶏鳴山から下ってくるとこの踏み跡は行き止まりに見えるが、脇の薮をくぐると先に進めるという按配だ。ここは初めてだと難しいポイントであろう。

 再び登りに転じ、815mPに到達すれば、分県別「栃木の山」にも紹介されている周回コースへと接合である。上のほうで熊鈴の音がしている。

     
唯一の眺望地より    少し薮っぽい    登りきれば815mP

 815mPでは埼玉から来たという単独者としばし会話を交わす。お互いこのマイナーな山域で人と遭遇したことに若干驚きを隠せない。

 ここからは一投足で鶏鳴山と思っていたが、やはりどうしてどうして、後半いくらか疲れも溜まってきたのかそうやすやすとは山頂へ到着とはいかないようである。

 途中賑やかにおしゃべりをしながら降りてくる4人組と挨拶をして947mPへ。枝越しに鶏鳴山の頂が見える。もう少しである。

 落ち葉でルートがよく判らない岩交じりの急斜面を慎重に通過し、登り返すとようやく三角点へ到達である。景色は男体山方面が若干で、眺望のメインディシュはこの先の石祠のある展望地である。

 展望地からの眺望は西側が胸のすくような日光方面の景色。東側は少し樹が邪魔だが手前の長畑や大沢の集落、古賀志山から半蔵山に至る稜線、篠井富屋連峰などもよく見える。

 先客の二人組男性ハイカーと食事を共にしながら、しばし里山談義に花が咲いた。

     
枯葉の絨毯       石祠の展望地にて

西側眺望

東側眺望

 食後のコーヒーが終わった頃には汗ばんだ体もすっかり冷えてきた。標高が千メートル近くもあると流石に空気がピリリと冷たいものだ。

 さて、新谷への隠された下山道はいずこに。下降予定地点あたりは薮になっていていまひとつはっきりしない。少し山頂方面へ戻った鞍部から植林帯を下降しながら様子を窺って尾根側にトラバースすることにした。

 下降開始予定点から僅か20m足らずの違いであったが、地形図で見る以上に急斜面であり、降りやすいところを拾いながら行くとどんどん進路がずれてくる。当たり前の事だが、下れば下るほど進路軸のずれは大きくなるのだ。目指すは手前の枝尾根の更に一本先の尾根筋なのだが、下りやすいルートを取るとなかなか一筋縄ではいかない。今こうして軌跡を眺めてみるとなるほど、枝尾根に阻まれてジグザグに蛇行している様子がはっきりと記録されている。
 枝尾根の終端とも言える岩の下を巻いてようやくトラバースに成功。目論見の尾根に復帰した。もっと早いタイミングで接合したかったのだが、降り初めの急斜面を安全優先で下降を先行させたこと、地形図には記載の無い岩が延々と行く手を阻んでいたのが原因で、ルートとしては若干不本意であったが、結果的にはまずまずの出来であろう。

 もっとも、最終的に接合した予定稜線の上方を眺めると綺麗に登っていく様子が見えるので、薮を嫌わずもうちょっとよく探せば尾根の「入り口」が見つかったのかもしれない。この点が若干残念ではあった。次回訪れる機会があったらこの尾根を登り詰めて検証しようと思う。

     
新谷に向けて下降開始    かなり急斜面    想定ルートから少々乖離

 樹林の急降下から抜け出した明るい緩斜面で小休止。若干のザレに足を取られながら尾根に取り付くと後は忠実にこれを追うだけである。踏み跡こそ無いが進むべき進路は明瞭。高度が下がり、やがて植林帯へ入るともう迷うことは無い。

 暫くして右に左に沢音が聞こえ出し、下山路も終盤であることを知る。

     
植林帯から一旦脱出    想定ルート復帰    再び植林帯へ

 尾根の終端で沢に接合すると、そこで廃林道に出会う。冷たい沢水で顔を洗うとまさに生き返った思いだ。緊張から解き放たれた思いで、背中に大きくのしかかる鶏鳴山と別れを告げるように最後の林道区間を歩き始めた。

 廃林道は部分的に薮化しており、斜面が崩落している場所も見受けられる。長らく使われていないようで自然へと還りつつあるといった趣だ。下って行くと現役林道としての姿が徐々に現れるようになってくる。

 今日は一体どのくらい歩いたのだろうか。一歩一歩、前に出す腿の筋肉がわずかに硬くなっている。きっといつもよりは疲れているのだろう。久しぶりの渾身の里山逍遥にすっかり昂ぶっていた自分を、冬の淡い午後の日差し溢れる林道終点が優しく迎えてくれていた。

     
自転車デポ地へ無事復帰    風雨雷山    鶏鳴山

概略コースタイム
小来川支所発(8:54)-風雨雷山登山口(9:04)-風雨雷山(9:47)-笹目倉山(10:18)-
815mP(11:30)-947mP(12:08)-鶏鳴山(12:26)-展望地着(12:36)-昼食休憩-
下山開始(13:20)-{植林地下降}-予定稜線接合(13:53)-廃林道出会(14:09)-
自転車デポ地(14:54)-{自転車}-小来川支所着(15:16)

2010年05月16日

月山とリベンジ夫婦山

月山 夫婦山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 昨年に続き2度目のこの二座。今回はMixiの企画に参加させていただき午前中はグループで月山、午後は単独で夫婦山に登ることにした。

 先週月山へ登った人のアカヤシオ情報によると、「もう少し」という事であったので、今回は見頃を迎えるのではないかという期待が膨らんだ。だが一足遅かったようで今年も見事に外れ。それでも遅咲きの株で、ほんのりピンクに染まった頂上付近を楽しむ事ができた。

 集合場所の栗山ダム前駐車場に少し早めに着いてしまったが、身支度を整え眼前の雄大な赤薙山方面をしばし眺める。正面奥に霧降道路の六方沢橋がよく見える。去年の丁度今頃であった。赤薙山から丸山に抜け、途中の六方沢橋の真後ろで咲き誇るアカヤシオの群生に出会ったことを思いだした。

 メンバーが集合し、西尾根からいよいよ取り付く。しばらくは急登だが、高度を上げるとやっとお目当てのアカヤシオがちらほらと見かけられるようになってきた。しかし、既に落花したり色が褪せてしまっている。どうやら見頃は先週の半ば辺りだったようである。

     
栗山ダムサイドより赤薙山    西尾根のアカヤシオ   

 狭い月山の山頂は続々とハイカーが訪れる盛況ぶりだ。皆一様にアカヤシオを悔しがるのもいささか滑稽であるが 、まぁ花とはそんなものであろうと思えるのが登山の懐の深さではないかと妙に納得したりする。

 下山は北尾根をダムに向かって直滑降。急登に喘ぐ人達を尻目に快適に高度を下げてあっという間に下山終了。今回登った西尾根は若干距離が長いが、去年登りに使ったもう一本のルートである北西尾根に比べると北尾根は地図の上ではさほど違いが無い。それなのにどうしてこんなにあっけなく感じたのだろうか。謎である。

 ダムサイトで各自お弁当を広げる。小春日和といった言葉のほうが似合いそうな、爽やかなそよ風吹くランチタイムに暫し歓談の花が咲いた。

     
月山頂上    笹の道を下る   

 さて、午後の部は去年登路に手こずり大薮漕ぎを余儀なくされた夫婦山のリベンジである。

 例の「入山者は自己責任で・・・」の看板からスタートする。いきなり一面の笹薮のお出迎えだが、序盤は甘っちょろい甘っちょろい。去年洗礼を受けているので全然動じずに足元のルートを探りながら進んでいく。

     
夫婦山は相変わらず道不明    目を引くツツジの大きな株    どこまでも笹薮が続く

 コースで数少ないランドマークである二本の松に到達して、まずは一安心である。去年は往路にこの松を見ずして、ルートを南に外して薮の中をトラバースしていたのだから今年は上出来である。(というか素直に歩けばあまり迷わないのかもしれないが)

 二本の松から少し進んだ辺りで周回コースの分岐点がある。去年下山時にこの分岐を見ていたので、踏み跡濃いこの先を直進すれば山頂からの南西尾根に続くであろうと確信していた。今回はここを登ることに決めていたのである。

 方角的にはここしか無いので外れるはずは無い。こつこつと笹の中の踏み跡を追って登っていくと、やがて稜線の笹原と、そして取り残されたようにポツンと佇む大岩の姿が目に入った。どうやらルートに間違いは無かったようだ。

     
絶好のランドマーク    稜線まであと僅かのひと漕ぎ    大岩

 一体いつから霧降の山々を見守り続けていたのだろうか。その孤独な岩の上によじ登り、自分もまた壮大な風景に挨拶をする。

 大岩から先は穏やかな膝丈の笹尾根となる。なだらかに登り、振り返るたびに変わっていくパノラマを見るのが楽しい。

     
大岩より雲に隠れる女峰山    稜線は穏やかな笹尾根    大岩方面を振返る

 少し冷たい風で笹がざわめく静かな山頂に足を投げ出し、ザックに忍ばせておいた氷入りの水筒で喉を潤した。眼前には先ほど仲間と登った月山が惜しげもなくその全容を見せている。
高原山から赤薙山までの、この雄大なパノラマを独り占めできる贅沢さ。至福の一時だ。





 下山は、去年登りに使ったルートを降りるべく、山頂から踏み跡かすかな笹尾根を東へ下る。南西にトラバースする地点は覚えていたのだが、ここで進路角を確認せずに濃い踏み跡を追って失敗した。
 徐々に登っていくのでおかしい。一旦少し薮を下ってみるが、結局屈強な薮包囲網にあえなく撃沈。蜘蛛の巣に絡め取られたような感じで降参である。そのまま薮を強引に登り返して笹薮に出ると上に山頂が見えた。

 体力も往路ピストンの担保もあるのでもう一度トライすべし。今度はGPSとコンパスと地図で精緻にルートを吟味する。よくよく見ると、有るじゃないかこんな所に踏み跡が。でもこれって犬猫目線じゃないと気がつかないよなぁ、などなどぶつぶつ一人文句を言いながら2回目の夫婦山は再びお山の勝ち。夫婦山よ、次回こそスッキリ歩いてやるぞ!

     
夫婦山より月山    唯一の目印は枝のコンビニ袋    下山もまた厳しィ!

概略コースタイム
《月山》

ダムサイト駐車場発(9:11)-西尾根取付(9:37)-1230m級ピーク(10:08)-月山頂上(10:37)-
ダム湖畔(11:22)-ダムサイト駐車場着(11:57)


《夫婦山》

駐車地発(13:14)-二本の松(13:28)-分岐(13:33)-大岩(13:42)-山頂(13:59)-
休憩後出発(14:14)-トラバース分岐1回目(14:20)-再び山頂(14:29)-
トラバース分岐2回目(14:35)-分岐(14:51)-駐車地発(15:09)

2010年05月05日

石裂山



-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 連休最終日は鹿沼の奥座敷とも言える石裂山へ登ってきた。

 石裂山は急峻な岩場コースが沢山あり危険と聞いていたので長い間敬遠していたのだが、漏れ聞く所によると梯子等の整備がよくされているので、慎重に歩けばそのへんの藪山より遥かに安全だという。

 最近は岩場にも慣れてきたので決して苦手では無いが、あまり好きなほうでも無い。だがこの山の面白さは岩場渡りのコースにあるということなので、今日は覚悟しての入山である。

 駐車場に着くとほぼ一杯の車にびっくり。流石人気の山は違う。脇のコース案内板もすっきりと判りやすい。加蘇山神社を拝んで巨木脇の裏門をくぐって登山道に入った。

     
周回コース案内板    加蘇山神社を拝んで入山    鄙びた社殿奥の巨木

 暫くは瀬音も涼しげな清流脇を登っていく。神域なので登山道脇には巨木が並び、滝修行が出来そうな小ぶりの滝が出現する、まさに信仰の山なのである。

 木立が切れて、向かうべき稜線が見える頃になると一気に初夏のような日差しが照り付ける。あっという間に額に汗が滲んできた。

     
別社    心地よい清流脇を登る    向かう稜線

 月山から降りてくるコースを合わせる分岐を過ぎて暫くすると沢音も徐々に遠のき、やがて天然記念物の千本かつらが忽然と姿を現す。推定樹齢1000年ということだから、平安時代からそこにあったと思うと感動もひとしおである。

     
周回の分岐点    天然記念物の千本かつら   

 段々と斜度がきつくなってくる頃、眼前に長い梯子が現れた。行者返しの岩である。先行する2パーティが休憩をしていたので自分もザックを置いて水を口にした。こういう暑い日は木陰が本当に助かる。

 先行パーティが出発したあと、ゆっくり後ろから写真を撮らせていただいた。メンバーのレベル差があるようで、結構通過時間が掛かっている。し
かし、ここからはいわゆる危険ゾーンなのでお互い慎重に行きたいところだ。

 行者返しの岩をクリアすると、まもなくコースから一旦外れる感じで右手に伸びる奥社への梯子がある。先行者の後を追い登ってみた。

     
   行者返しの岩    奥社への梯子

 奥社の御本体は、岩洞にひっそりと静置されていた。コースが今のように整備されていなかった時代は此処へ来るのもかなり険しい修行であった事を思うに難くない。

 さて、奥社の梯子を下りてルートに復帰するといよいよ傾斜がきつくなってくる。岩の根がにょろにょろと張り出したコースは日光の鳴虫山を思い出す。此処ははルート幅が狭く、かつ岩の間を縫うように進むぶん険しさが感じられる。

 過去にこの周回コースで死者が出ているということなので、あちこちに危険を喚起する案内がある。確かに山を始めたばかりのまだ脚力がおぼつかないような中高年が、人気の山というだけで歩いてはいけないと思わせるには充分納得出来るコースである。特に足が滑りやすい雨の日や凍結が考えられる冬場は要注意であろう。

     
奥社、御本体    草の根うねる登山道    慎重に行けばそれほど危険ではないのだが・・・

 元来取り付くしまもないような急峻な所にコースが付いているが故に、難所には梯子等も設置されているので助かる。というかこれらが無いと、まともに先に進むことも難しいだろう。

 最近あまり斜度のきつくない山ばかり登っていたせいか、終盤の急登はいささか難儀する。尾根に這い上がると道標の向こうに穏やかな山道が続くのが見えてほっとしたのも束の間。今度は長い梯子の下りが待ち構えていた。

     
この階段が無いとかなりキツイかも    山頂尾根は穏やか    長い梯子の下りがある

 梯子は東剣ノ峰と次のピークの両方にあるが、後者のほうが高度差も大きい。いざ下ってみると、これは高所恐怖症の人はまず無理だなと思った。逆にこういう岩場好きな人にはスリル満点で楽しいことであろう。万が一足を滑らすとまずいので慎重に下っていった。

 程なく北に伸びる登山道から一旦寄り道をするような感じで石裂山の山頂へ到着した。さほど広くない山頂からは西側だけに眺望が広がり、左奥には横根山の大きな姿が横たわっている。

 写真を撮り山頂を後にすると、程なく月山へ到着。山頂尾根付近はちらほらピンク色の花びらが見られたが、月山の頂きでは綺麗なアカヤシオが迎えてくれた。

 先行の3人組と、途中追い越してきた2パーティが後からやって来て人口密度が俄かに高くなってくる。山でこんなに沢山の人と一緒に食事をするのも実に久しぶりである。

 ここ数日の陽気なら流石にカップラーメンももう終いだなと思い、今日はバーナー(ストーブ)は家に置いてきた。脇でストーブを使って袋ラーメンを作っている人が居たが、自分など冷たいソーメンでも持って来たかったと思う程である。

     
眼前の石裂山    山頂より西側眺望    月山
     
アカヤシオが綺麗だ    夕日岳方面    このシリーズいろいろある

 月山からの下りは、はじめ急坂。地図の破線である旧登山道のある尾根の途中から谷へと降りる。かつては直進して尾根通しで歩けたようだが、今はトラロープで遮られている。近場の里山なら踏み込んでしまいそうな良い雰囲気の尾根だが、たかだか800m程度とはいえ、岩を纏った急峻なこの山を甘く見てはいけない。ここはおとなしくハイキングルートを辿るべし。

     
   つい直進したくなるがそちらは廃道    リング状の鎖に修験者の面影が

 谷を下っていくと如何にこの山が岩で筋肉質であるということが周囲の風景でよく判る。また、高度を下げていくと神社の植林地のようでもあるが、伐採されて放置された木が苔むす風景も何処か荘厳なものがあった。

     
とにかく岩だらけの山    伐採後に苔むす    県外ナンバーも多い

概略コースタイム
駐車場発(9:44)-周回分岐点(10:14)-行者返しの岩(10:37)-山頂尾根(11:10)-
石裂山頂上(11:44)-月山(11:58)-昼食休憩-出発(12:16)-廃道分岐(12:29)-
周回分岐点(13:05)-駐車場着(13:29)

2009年12月23日

紫雲山縦走


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 東武日光線、板荷駅の両側に聳える山。西側にあるかまど倉から川化山を『白雲山』、東側を『紫雲山』と呼ぶらしい。

 水墨画に登場してきそうなこの呼び名は実にふるっていて良いではないか。山は三角点にのみあらず、名もないピークにも貴賤は無いと思う。要はそこに立った人がどういう気持ちなのか、そこを眺める人がどう感じるかということであると思う。そんな人々の心が山の名前になっているのだろうと思いたいところだ。
 実際に白雲が掛かっていたからそう呼ばれたのかどうかは知る由も無いが、板荷の駅前から眺めると、対としての紫雲というのは興がありさもありなんという雰囲気である。

 昨年、白雲山の東端である川化山から向かい側の紫雲山を眺めた時、地図で見た如くの形の良い独立連峰としての姿が目に焼き付いていた。2万5千分の1地形図にはいずれも山名表記の無いピーク群であるが、その中核として472.9m三角点峰の次石山(つげいしやま)を擁する紫雲山縦走を今回は試みる。

 紫雲山はちょうどサツマイモを南北に配したような感じで、基本的に他の山群と交わりのない独立連峰である。地元の人はともかく、あまり歩かれている様子も無くいささか情報不足であるが、僅かなネット情報を参考に昨年から地形図に想定ルートを引いては穴の開くほど眺めていた。そして、唯一の懸案事項である駐車地にメドが立ち決行に至ったのである。

 ポピュラーなルートは平野の集落から林道を辿り次石山の東尾根を使うコースとなるが、これだと紫雲山を歩いた事に成らない。自分の目標は紫雲山縦走なので、あくまで南端(本当は住吉神社から登れば良いのだが、こちらはルートが読めなかった)から北端の小倉城山までとこだわった。

 縦走の最終到達点である小倉城山付近は最近「みどり税」で整備がされたようで、車数台の駐車スペースが確保されている。ここに車を駐めて紫雲山南端である辺釣にある登山口までの第一区間6キロは、物置から引っ張り出してきた折りたたみ自転車に託す事になる。

 折りたたみ自転車はタイヤが小さくて漕いでもなかなか効率良く進んでくれない。徒歩よりは遙かに速いが、ザックを背負ってえっちらおっちらと進むのもなかなか容易でないものだ。2輪に跨ると、習慣で右手をちょいと捻れば勝手に進んでくれると錯覚してしまうが、今日の動力はどこまでも自分だけである。

 登山口である鉄塔巡視路に着いた頃にはうっすらと汗が滲みだしていたが、休んでいると汗が冷たくなってくるので、即登山開始。まずは良く整備された巡視路を辿り226号、227号と鉄塔巡りである。

     
今日の相棒    226号鉄塔巡視路入口    226号鉄塔

 227号鉄塔より430m級Pの岩を纏った勇姿が見える。紫雲山の背骨は岩でかなり筋肉質なようである。

 ここで気になったのがGPSの軌跡と地図上の鉄塔位置。というよりは電線の位置。
 鉄塔の箇所でGPSに保存したポイントと地図上の電線交差箇所が約30m程度離れているのだ。鉄塔の下は空が充分に見渡せる所なので衛星捕捉には全く問題が無い。殆どの三角点を踏む時はほぼ誤差5m以内で測位出来ているので、30mというのはやはり地図が間違っているとしか言いようが無い。

 航空測量なのだから一番判りやすい構造物だと思うが、さて真実や如何に。そんな事もミステリーにしておくと山登りもまた一層楽しいものである。

     
穏やかな稜線    227号鉄塔    430m級P

 227号鉄塔から先はほぼ歩く人が途絶えた雰囲気があり、道は心細くなるも尾根は明るく広い。鞍部から登り返す頃になると自然のまま放置された感の急登が待っているが、いまだ歩きやすく、やがて樹林の中の御嶽山へとたどり着いた。石祠が2基あり、信仰の篤さが感じられた。

 今日のコースは恐らく人には遇わないだろうと思っていたが、途中で地下足袋姿に柄の長い草刈り鎌を手にした年配の人に出くわしたのにはビックリした。聞けば、子供の頃良く登った山だが懐かしいので久しぶりにやってきたという。下にある林道に車を置いて東側の斜面を直登してきたらしいが、とても自分はあんな斜面を登る勇気も体力も無い。山遊びとは見受けられないその感じからして、恐らく何かを"採取"しているのではないかという雰囲気であった。

 御嶽山からは北北西に針路を取り鞍部へ向かう予定でいたが、尾根線から少し西側に針路を振らないと鞍部には着かない。トラバースを考えたが、思いのほか樹林が深く傾斜もきつい。少し下ってから下を見ると林道の終点から廃道が目指す鞍部まで上がっているのが見えたので、遠回りだが安全なルートを行くことにした。

 先ほどから犬の声が聞こえてくる。野犬だと厄介だなと思っていると右手の谷の下の方に、恐らく100m近く離れていただろうか、白い犬が居るのが見えた。あちらも突然の侵入者に驚いた様子で、こちらの姿を窺っている。口笛を吹くと尻尾を揺らして明らかに友好の雰囲気で鳴いているのを見て安心した。

 程なく、別な谷方面からやはり犬の声と発砲音が聞こえてきた。白い犬はこちらの事をすっかり忘れたように、急峻な山腹を上手にトラバースしながら去って行った。

 知り合いのハンターに聞いたことがあるが、発砲は常に谷に向かってするようである。人が歩く可能性のある稜線に打ち上げることは原則しないらしい。だから猟犬は谷間を縫い歩くのであろう。そして鳥追いの猟犬は決して人間には襲いかからないらしい。ただやはり猪や熊猟用の犬は気が荒いそうである。まぁそうでないと勤まらないだろう。

 標高差にして100m程も下っただろうか、小さな山なら下山もおしまいの雰囲気だが、下りきる直前に目的鞍部までどうにかトラバース出来ないかと窺ったが、結局足が踏み出せないまま林道終点まで降りきってしまってから、僅かだが廃道を登り返した。

     
御嶽山    御嶽山より北に下る    平野からの林道終点

 暫く穏やかな登りを進むと、右に広い仕事道が下に向かって伸びており、左は微かに巻く雰囲気の踏み跡、そして前進は430m級Pへの直登である。左から巻いたとしても地図の等高線を見る限り楽に登れる保証は全く無い。方角に狂いはないのでこの直進ルートで正解の筈である。等高線に対し電車道のような直登は、時として斜度がゆうに40度近くもあるだろうか。休み休み確実に高度を稼いで行く。ピークまであと僅かという辺りで岩が出てきて周囲の木が消えた。人の多い山なら過保護なトラロープが数本垂れ下がっていてもおかしくないような箇所であるが、頼る物の無いここはあくまで三点支持に注力すべし。あまつさえ、行く手を阻む薮がいっそう気力を奮い立たせる。薮岩ルートなのである。

 ふと登るのをやめて後ろを振り返ると、そこには絶景が拡がっていた。こういう孤独な山行で絶景を目の当たりにした瞬間は、ことのほか感動が深いものだが、今日はコースの難しさも手伝っていつもより格段に大きい気がする。さながら天下でも獲ったような気分になりしばし悦に入る自分であった。

 赤岩山の西側の張り出しが良く見える光景はかなり珍しい。脈々と伸びる鞍掛尾根もよく見える。

     
430m級P手前の岩薮    来し方の御嶽山    赤岩山から鞍掛尾根

 430m級Pへよじ登ると、そこは幼松の密集する薮であった。以前山火事があったらしく、大きな木はことごとく消失して今まさに再生の途にあるようで自然の成せるがままの感がある。あと数年もすると通過困難な薮になってしまうかもしれないだろう。

 ピークは平坦になっているが北側は比較的火事の影響が少ないようである。この辺から西側の眺望も開けて二股山やかまど倉から川化山のいわゆる白雲山が見渡せる。

     
幼松の薮    火事の跡が痛ましい    二股山とかまど倉

 430m級Pからの下降は、倒木などが乱れており踏み跡も不鮮明で歩きづらい。方角に注意しながら進むと、再び明瞭な尾根筋が現れてきた。落ち葉で滑りやすい急登を凌いで登りきるとそこが次石山の頂上である。

 意外な事に別な登山者が居た。話を聞くと平野から東の尾根を登ってきたそうだ。どちらに行かれますかと尋ねられたので、小倉城山まで縦走しますと答えると、しばらく考えた後に自分と同じ北を目指して発って行った。どこか途中で平野方面へ抜けるルートを知っているのだろうか。

     
枝が邪魔だが男体山    こんなピークを幾つも越える    次石山三角点

 山頂の東側にある岩塔は有名で、その勇姿を見るのがこの山の醍醐味と言っても過言ではないだろう。だが、今日は先が長いので岩塔見物は次回、平野集落から登る時の為にとっておく事にした。樹間からちらっと見えた露岩がくだんの岩塔なのだろうか、凄い迫力だ。

 山頂からは静かなる尾根道を行く。次石山の南側は険しい領域であったが、北側はうって変わって穏やかである。だが、穏やかではあるがコース取りは難しい。歩きやすい踏み跡を追っていたら気が付かないうちに尾根の乗り換えに失敗。350m付近まで降りた時点でようやく気づきトラバースを試みるも、谷が深く断念して登り返した。進むべき尾根がぼんやりと向こう側に見えたあたりで再びトラバースを試み、無事ルートへ復帰することが出来た。

 雷電山の山名板がかかっているピークに到着する。景色はさほど良くないが石祠のある小広いスペースには、此処までの緊張感溢れる時間を解き放ってくれるようなそんな安心感が漂っていた。先ほどから少し風が出てきたので立ち止まると寒い。ザックをを降ろして一枚羽織ってから昼食とすることにした。

 食事をしながらふと上を見ると古ぼけた梵天が木に括り付けてある。地元の人はどこから登ってくるのだろうか。このひっそりとした頂に人々が賑わう様子を思い浮かべることがどうしても出来ないが、やはり此処も間違いなく信仰の場所なのだ。

     
岩塔方面    静かなる尾根道    雷電山

 雷電山より若干東向きに尾根は湾曲する。途中の鞍部から北に針路を変えなければならないところが難しかった。今回歩いている稜線は鹿沼市と日光市(旧今市市)の市境界線上にある。この難しい北転箇所は勿論GPSに入力済みであるから、ポイントへの到達は把握していた積もりだった。丁度岩場を越えた辺りから北へ向かう形になるが、見るとそちらに踏み跡は全く無い。向かいのピークに登りかけて、上から眺めてもやはり歩ける雰囲気が無い。

 幸いにして樹間に北側の372mPにある赤い鉄塔がよく見え、これを目指すならば僅かだが谷を降りるのもやむなしと考え植林地に足を踏み入れる。とにかく鉄塔を目指す角度を維持しながら降りていくと、いつの間にか左手に稜線が有ることに気が付いた。要は鞍部からの微妙な尾根の派生を見抜く事が出来なかったのである。GPSや地形図を頼りにしていても最後には"そこが歩けるかどうか"は自分の目で見て足で感じ、そして「感」のようなものもなければならない。要は『山を読む』という行為が不可欠なのだが、自分はまだまだ経験不足なのを痛感した次第である。

 無事鉄塔に着くと、塔脚からはすっきりとした西側の眺望が拡がり、しばしの休憩に心身共に癒やされる。笹目倉の羽根を拡げたような綺麗な三角錐。その右には頑丈な佇まいの鶏鳴山がある。そして男体山も奥にどっしりと控えている。

 電線が向かう先はかまど倉方面。その右手に連なる白雲山の右端には川化山も見える。

     
どこまでも岩混じりの稜線    赤い鉄塔より    笹目倉山、鶏鳴山、男体山

 いつまでも眺め続けていたいと思う眺望を後にして、裏手を登るとそこが372mP。鉄塔巡視員の忘れ物であろうか。五徳フォークが木にねじ込まれているのが可笑しい。

 次のピークで東へ90度方向転換だが、流石にここはうまく尾根を乗り換えることが出来た。やがて八方館跡に着けば此処からは下山地まで整備済みのエリアである。小倉城山に到着すると、やれやれ緊張感からようやく解き放たれてザックを肩から降ろした。

     
372mP       小倉城山

 小倉城山の山頂付近は遺構で複雑な地形をしている。大谷の多気山の南面を歩いた時も感じたが、山城ならではのいろいろな細工を施す為にこのようになってしまったようである。山城といえば、ここから見える猪倉山(猪倉城)や大沢の板橋にある城山(板橋城)もそれぞれ歩いていると遺構が確認される山城である。かくも至近距離に山城が点在しているところから、当時の勢力間の緊張が垣間見えるようだ。

 小倉城山からの下山は良く整備された丸太組みの登山道を下っていく。気負いはすっかり抜けてしまったが、こんなところで怪我をしてもつまらない。最後までしっかり歩こうと自分に言い聞かせて降りていった。道路が見えパジェロミニの姿が目に入った時に、縦走が無事終わらんとするのを実感出来たのである。

 長かった。コースが難しかった。だが、実に変化に富んだ味わい深い山旅を堪能させて貰った紫雲山。仰ぎ見てしばし佇む。

 さぁ、後は自転車を回収するのみ。冬の日は短い。幾らか蔭って気温も下がってきたが、深い充実感が心の底から沸き上がってくるのを止めることが出来なかった。

     
猪倉山が見える    駐車地に無事到着    板荷駅前の案内板

概略コースタイム
《自転車》
駐車地発(9:26)-住吉神社(9:46)-登山口着(10:00)


《登山》
登山口発(10:05)-226号鉄塔(10:17)-227号鉄塔(10:29)-御嶽山(10:44)-林道出会(10:54)-
430m級P(11:28)-次石山(11:54)-コースミス気付く(12:11)-登り返しで尾根復帰(12:20)-
雷電山着(12:37)-昼食休憩-再出発(13:19)-赤い鉄塔(13:50)-八方館(14:23)-
小倉城山(14:37)-駐車地着(15:05)


2009年12月06日

二股山西稜


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 いよいよ里山シーズン到来である。

 緒戦を何処にするか思案するが、ネタは沢山ある。取りあえず古い順番から暖めていた計画をこなしていこう。
 さて、栄えある第一弾は鹿沼の二股山である。昨年の10月には自主トレもどきの一度下山して登り返しという、体力の無い中高年にあるまじき行動をとった山だが、その時にまじまじと眺めて心惹かれる思いがあった西稜歩きが今回のテーマである。

 加園の集落から田んぼ脇の細い未舗装路を進むと約1㎞くらいで二股山の釜が入り登山口に突き当たる。ここから谷沿いに登り二股山の南東尾根に続くコースは、昨年と同じで今回も下山で使う。

 林道終点にある駐車ポイントから今回の想定取り付き点までは数百m程集落側に戻ることになる。途中すぐの所に「西尾根方面」という道標があったが、見ればこちらも薮の中の赤テープを追うような感じである。今回どうしても取り付きが難しかった時の代案として考えていた414mPダイレクトコースが此処になるようだが今日はここを歩かない。

 今回のルートは352.6m三角点に、このピークの北東緩斜面からのアプローチであるが、傾斜が緩いが故に手強い薮が鎧のように植林地をガードしている。取りあえず植林帯に入ってしまえばあとは方角修正すればよいだろうと考え、薮の薄いところからいざ侵入である。
 昨日の雨で草が濡れている。久しぶりに付けたスパッツの効果も絶大だ。

     
駐車地    西尾根道標あるがこちらはパス    薮の薄いここから取り付く

 若干の下草をやり過ごすと、幸いにして直ぐに植林帯へ入ることが出来た。シダなどが少しうるさいが気にするほどのものでもなく、所々に横たわる古い倒木を跨ぎながら軌道修正を繰り返した。

 やがて、等高線では微かにしか読み取れない谷が出現するが、少し高巻きしながらも目標の352.6mP三角点を目指した。

     
すぐ植林地へ    等高線で読み切れない谷がある    谷を高巻きして更に上へ

 再び地図では想像もつかないような尾根形が出てきたが、方角に問題が無いのでこれを登って高度を稼ぐ。三角点稜線までもう少しというあたりで直登状態になるが、ふかふかの落ち葉で滑りやすい。上方には岩が出てきたのでこれを巻きながら稜線に辿り着けば、荒い息で大きく汗を拭った。

 尾根の上は踏み跡こそ殆ど感じられないが、まばらな広葉樹で明るい雰囲気がある。

 一旦南端まで行ってみたが、どうやらここから真東、あるいは真南に向かうルートがありそうな気がする。

     
尾根形が出てくる    直登気味になり岩が出る    尾根の南端

 南端より踵を返し落ち葉を踏んで緩やかに登っていくと、そこは352.6mの三角点ピークである。R・Kさんの標高を記した板がかかっていた。
 ここからは北西にルートを取る。支尾根など迷い易い要因は皆無である。山仕事の人が残した痕跡はたまに見ることが出来るが、それ以外に往来の気配は殆ど感じられない。

 西側集落が良く見えるあたりから眼前の大きなピーク越えで再び汗をかいた。とにかく落ち葉で足元がとられやすく、急斜面になると歩くのが大変だ。雪道のツボ足ではないが一歩一歩蹴りこんで行かないとズリ落ちてしまいそうである。堪らずジグザグのルートを付けながら登って行ったが、こうして登山道は出来て行くのだろう。

     
352.6Pへ向かう    352.6mP(三角点)    西側の集落

 一旦大きなピークを越えると次のピークである414mPが更に大きく立ちはだかる。鞍部からの登り返しが結構キツイ。またしてもジグザグルートのトレースを付けながら登るが、途中木のあるところで休憩出来るように、次はこの角度でまずはそこの木の所までといった塩梅である。

 何度か足を取られながらもピーク付近に着くと、真新しい道標が掛かっており、釜が入り登山口から登ってくるコースと合流した。先ほど見た薮のリボンコースはどうやらここに出てくるようである。414mPの南斜面で急登のアルバイトを強いられるのが嫌な人は、登山口から此処に登るのが省エネの西尾根攻略かも知れない。だが、自分としては今回の計画の貫徹として、南側の352.6mPから繋いでこそ価値ありと考える。

     
向かう414mPが見える    414mPへの登り    釜が入り登山口からの西尾根ルートと合流

 414mPは何も無いが、古くラベルの剥がれたリポDの空き瓶が枝に逆さに刺さっているのが目印になっている。

 木々に閉ざされ、静かに息を潜めているような佇まいの414mPを後にして、北西の鞍部から登り返すと双耳峰の410m見晴らしピークである。直下に岩があり細いロープが巻いてあるも、万が一滑落すると西側はスパッと切れ落ちているが故にただでは済まないだろう。ここは躊躇せずに東側を巻いた。

 414mP以南はまったく手つかずの感があったが、北側は所々整備されている。赤ペンキありロープあり、そして何より踏み跡がしっかりしている。

     
リポD瓶の414mP    414mP双耳峰手前の岩    414mP双耳峰

 明るい尾根を鼻歌気分で進み、再びキツイ登りで最後の一汗をかく。ようやく二股山北峰から南西に伸びる幅の広い尾根に届いた。

 ここまでくればハイキング気分である。やがて一般コースとも合流し、程なく北峰に到着した。

 過去2回登った時はいずれも山頂である南峰で食事をしたが、他にハイカーも居ないので今回は狭いが景色の良い北峰で食事とした。それにしても今日は人の気配が全く無い。前半の西尾根はともかく、一般コースや山頂では過去2回とも少なくとも4~5人は逢っているのだが今日はゼロである。

     
明るい尾根    二股山北峰より    雲に霞む筑波山

 昼食後に南峰に渡るが、相変わらず強烈なキレットだ。登りに新しいロープが張られている。今までのロープは何処か危なげな感じがしたが、整備に携われた方々には感謝の念で頭が下がる思いである。

 山頂からは日光方面も僅かに眺望あるも、生憎男体山と女峰山が雲に覆われているのでぱっとしない。

 ここからは南に向かって展望地経由で下っていく。迷いそうな箇所には道標やロープが張られており整備の充実さを感じた。

     
南峰登りに新設ロープが    南峰(二股山頂上)より    丁寧にロープが張られている

 所々落ち葉で踏み跡が不明になる箇所もあるので、初心者には少し手強いかもしれない。多少馴れた人なら、プチルートファインディング的な要素があって楽しいだろう。

 植林帯に入って尾根の急降下の後、谷に向かって一旦西向きにトラバースする箇所の分岐を直進すると431mPに至ることが出来る。今回は寄り道としてこのピークに向かい、更にそこから南に伸びる尾根方面の偵察を考えていた。

     
   落ち葉にルートも不明瞭    431mPへ寄り道

 431mPまでは特に障害も無いが、灌木が所々に生えており、あまり人の往来は感じられない。それでもピーク先には、東側に開けた伐採地跡というにはあまりにも狭い範囲だけ樹が切り倒された眺望地が一箇所ある。なんの為に樹を切ったのか判らないが、山仕事の人の愉しみなのだろうか。足元に焚き火の跡も確認できた。

 分岐へ戻り一般ルートを通り駐車地へ無事帰着した。帰り道に、車窓より南尾根から林道へ抜けるルートを眺めるが、かなり深い薮や急斜面があってとても手が付けられないような雰囲気がある。しかし、宇都宮中心部から真西に見える二股山の堂々とした山姿を頭に浮かべると、この南陵歩きも外せない。次なる二股山の課題としての思いを胸に膨らませるのであった。

           
431mP先の展望地より     

概略コースタイム
駐車地発(9:52)-西尾根南端(10:26)-352.6mP(10:32)-414mP(11:00)-410m見晴らし(11:10)-
二股山北峰着(11:51)-昼食休憩-行動再開(12:31)-二股山頂上{南峰](12:42)-
431mPへの分岐(13:11)-偵察最深部(13:19)-分岐へ復帰(13:29)-駐車地着(13:48)

2009年04月19日

今期薮の歩き納め、城山周回


-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 宇都宮市内もすっかり葉桜となってしまったが、ツツジも咲き始めて彩りの絶えぬ本格的な春の訪れが感じられるようになってきた。昨秋から歩き始めた里山の薮フィールドも、最近は春の兆しが感じられる。草花や昆虫、小動物。そこは本来の主役達の場所にこれから還って行くのである。

 今シーズンの薮山歩き納めとして選んだのは、今市の大沢にある城山である。城山は板橋城跡として今市では知られた場所だが、以前は比較的寂れていて暗い雰囲気があった。だが、昨年山頂に東屋を設置するなどして大幅に整備されたようである。登山道もしっかりとした道標のあるルートが北側と東側にそれぞれ付けられており、ハイキングコースとして充分に楽しむことが出来るので、家族連れなどで訪れるの良いだろう。

 さて、それではそのような整備された山が何故今回の薮歩き納めの対象になったかというと、実は正式ルートの無い城山の南側尾根を端から歩き、さらには山頂から派生する尾根を辿り、東にある384mP(石ざき山)を目指して周回をするというのが今回の狙いである。城山の整備された山頂は"昼飯"を食べるためのレストポイント設定だ。

 いつもより遅めに自宅を出発し、先日登った観音寺山の脇を車で通り過ぎてさらに西走する。板橋地区に入ると、大沢駅方面に向けて北に延びる道があるのでこれを行くと板橋トンネルがあるが、このトンネルの手前に最近城山への東登山口の真新しい道標が設置されている。脇に入って車2台程度のスペースへ駐めた。

 此処から直接城山を目指すことも出来るが、今回は尾根の南端から周回をする為、一旦車道を使って移動をすることになる。先ず初めは田畑の間に挟まれた長閑な砂利道を歩く。先日の大平山のような初夏の陽気と違って今日は幾らか涼しい。

 車でここまで来る道すがら、あちこちの田んぼに満々と引かれた水面(みなも)を見てきたが、春の忙しい時期を迎えているようで農家の方の姿が目につく。目的の取り付きポイント脇でも農作業中の人が居た。集落の中の何気ない場所だけに、少し後ろめたい気持と恥ずかしさも手伝って一気に取り付きエイヤと尾根によじり登る。息が切れた。

     
駐車地からのんびり南下    ここから取り付く    尾根に出た

 尾根に出ればすぐに280.1mPへ到着。標点と「栃木の山紀行」さんの"火の用心プレート"あり。

 一旦高度を下げて次の小ピークでまた下げて、いずれも鞍部(という程では無いが)は周辺の田畑と殆ど標高が変わらないので、ここまでは小さな丘を乗り越えてきたような趣である。薮は多少あるが、山を歩いているというよりは近所の草むらを散歩しているような感じのほうが強い。

 2つめのピークを越してからは徐々に高度を稼いでいくが、道形は全くといって良いほど無い。時折古い作業道が交錯するが、尾根を意識した道筋は無く、踏んだ雰囲気もかなり希薄である。下の写真のように何処もこんな感じだが、単調な地形に助けられ、多少曖昧な状況でも落ち着いて角度を変えると(自分の立ち位置をずらして)尾根は実によく見えるという事を実感する事が出来た。

     
280.1mP      
     
     

 359mPを越える頃になると、尾根も痩せてきてだいぶ明瞭になる。暫くすると天狗岩に到達した。

 天狗岩には立派な案内板と説明文が掲示されており、どうやら山頂からここまでが整備済みハイキングルートらしい。説明文には、この先(南側)は地元の人の案内無しに入らないほうが良いとされていた。然りである。

 この天狗岩を通過するとすぐ畳石へ、そして東からの登山道を合わせて一登りすると山頂へ到着である。

     
   天狗岩    畳石

 山頂の真新しい東屋で食事をしていると、先ほど畳石付近で対向した女性ハイカー3人組が賑やかに戻ってきた。ご婦人方も東屋で弁当を広げ、孫の話などに花が咲く。あまり賑やかなのは得意ではないが、往路の孤独なルートを歩いたせいか心地よい賑やかさである。

 山頂の眺めは、以前から良好だった南東側に加え、西側も木が切られて大分すっきりした。何本か切り残しているのは防風か何かの為であろうが、ちょっと中途半端で残念な気もする。

     
下板橋からの道と合わせる    立派なあずまやが出来た山頂    南東の眺め

 南東側はこれから向かう384mPの石ざき山と、その後ろに控える先日登った観音寺山。右に目を転じると鞍掛山から古賀志山の連なり、更に右を眺めればこれまた先日歩いた岩崎の峰々も見渡す事が出来る。まさに今期の薮山をおさらいするような眺望である。

     
これから向かう石ざき山    古賀志山    岩崎の無名峰群

 西側は、鶏鳴山からぐるりと今市の市街地までを望むことが出来る。遠く日光の山並みは、春霞の向こうに閉ざされており残念である。やはり冬場の晴れ渡った日にもう一度登ってみたいところだ。

     
鶏鳴山       今市市街

 昼食休憩を終えて再スタート。駒乗り馬場まではハイキングコースの階段を降りる。本当にこんな急峻な所まで馬で上がって来れたのかどうかは疑わしいが、いにしえの馬は強靱な足腰を有していたのか。それを捌く乗り手も相当な強者だ。

 此処から先は、山頂より派生している尾根に乗らなければならない。奥の方の木を見ると一定の勾配で先端が下がっていく箇所がある。上を見るとやはり山頂付近の薮から降りてきているので間違いなく目的の尾根であろう。ハイキングコースを外れ、慎重にトラバースしながら高度を下げて尾根に合流した。

 乗った尾根は既に若芽が支配しつつある領域で、来る者を拒まんとする意志さえ感じられる。とにかくここは我慢で尾根キープである。GPSも地図も頻繁に出して自位置の把握に細心の注意を払いながら進む。特徴的な地形の変化を見たら直ちに地図と照合をした。見通しの利かない薮はこのようにナーバスにならざるを得ないが、目的通りに歩けた時の達成感はあまりあるものがある。

     
駒乗り馬場    駒乗り馬場より尾根筋へ   

 板橋トンネル直前のエリアは殊の外薮も濃く、一部複雑な地形にも翻弄されながが苦戦を強いられる。トンネルの真上の古道を見て一安心するが、向かい側のそびえるような山腹を越えて進んでいくと、山中に寂しく佇む古仏があった。穏やかな表情のこの石仏の辺りは、かつて人々の往来があったのだろうか。

     
   名前を付けたくなる巨石    山中に佇む石仏

 その石仏を後にして368mPを通り過ぎると、古い社に覆われたもう一体の石仏があった。付近には特に登路も見られないが、やはり古道に往来が有った頃にはお参りする人もいたのだろか。今は山仕事の人のみぞ知る秘やかな場所となっている。

 地図では一見複雑そうに見えたが、思惑的中と言おうか、思った程の難しさも無くととうとう384mP(石ざき山)へ到着することが出来た。

 山頂は全く眺望無し。SHCカワスミさんの青い山名板と「栃木の山紀行」さんの"火の用心プレート"があるのみだ。ルート捜しにいささか気疲れもしてきたので、荷を降ろして小休止である。携帯が通じるので家内に足跡メールを入れる。

     
こちらは社に    振り返れば城山    石ざき山頂上

 山頂からは一旦同じ道を戻り、途中から西へ向かう尾根へ乗り換える。赤テープや岩に描かれたペンキの類は今日は一つも見なかったが、唯一尾根の分岐点に一つだけ淡いピンクのリボンが付けられていた。

 西の尾根もまた薮が濃くなり薄くなりと連続するが、明るい雰囲気で思わず足取りも軽くなる。灌木に混ざり、ミツバツツジがはっとするような鮮やかさで咲いていた。

     
今日唯一の赤リボン    西の尾根は明るい   

 最後の小広いピークから里へあと一息の下りだが、偵察で見たとおりの激しいシノ薮である。最後の最後で薮漕ぎならぬ薮泳ぎとでも言いたくなるような所を数十メートルも進んだだろうか、やれやれ脱出である。

     
最後のピーク    最後の最後の激薮    やれやれ脱出

 穏やかな里の雰囲気を湛えた風景の向こうには、水張りを待ちわびている田を見下ろす城山の姿があった。

     
城山を望む    同左    駐車地へ帰還

概略コースタイム
駐車地発(10:51)-取り付き(11:07)-280.1mP(11:17)-359mP(11:57)-天狗岩(12:03)-
城山頂上(12:14)-昼食休憩-山頂発(12:50)-板橋トンネル横断(13:26)-368mP(13:42)-
石ざき山(14:15)-小休止-再出発(14:25)-西尾根分岐(14:33)-里へ(14:52)-駐車地着(14:59)

2009年01月10日

羽賀場山からお天気山へ

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 前日は平野部も雪の予報ではあったが、気温が高かったせいか街の中は冷たい雨が降った。

 今月はもう仕事で土曜日はすべて埋まっている。H君との初山行をどこにしようかと前日の夜ぎりぎりまであれこれ迷った。雪が降ったら古賀志山辺りに雪見登山も良いだろうと考えたが、空振りの雨。分県別「栃木県の山」をめくっていて手が止まったのが羽賀場山の頁だ。羽賀場山~お天気山への縦走はアップダウンや岩尾根も多くかなり手強いらしいが、休みが二日続くから体力的なダメージは構わんだろうという判断でこのプランに決定した。
 羽賀場山(はがばやま){774.5m}もお天気山(天気山、天久山とも言われている)も地形図に山名表示は無い。一等三角点の羽賀場山。少し手前のピークである777mに三角点があるも、山頂は一つ離れたピークのお天気山。この2つの興味深い山を巡る山行となった。

 朝起きて見ると意外な事に深い霧に包まれている。天気予報を幾つか見ても日中は晴れるという予報だ。霧の晴れる時間を考え、H君との待ち合わせを30分遅らせて出発したが、鹿沼の7-11に立ち寄る頃にはまばゆい日差しが戻ってきた。どうやら良い山遊び日和のようだ。

 長安寺の駐車場に車を駐めて出発。駐車場脇にも鉄塔巡視路の登山口があるが、長安寺の名物である「岩ヒバの階段」を登って行こう。

     
長安寺駐車場    長安寺山門    岩ヒバの階段

 長安寺本堂右手の納屋脇から入るとすぐに駐車場から上がってくる道と合わせる。植林地内の巡視路を黙々と登っていき、ダウンのジャンパーを脱いでザックにしまう頃になるとすぐ尾根に出た。

 行く手には2つの鉄塔があるので、巡視路として整備されているから歩きやすいことこの上も無し。最近ガサガサした山ばかり登っているので、まるで「遊歩道」のような気楽さである。

 やがて一つめの鉄塔に到着。樹林の中で皆無だった眺望も、ここから東側に開ける。電線が向かう次の鉄塔は、先日登ったかまど倉ルートの始めにあった鉄塔である。ちょっぴり感動的だ。

     
尾根に出る    一つめの鉄塔    右奥にかまど倉

 鉄塔を後にして再びよく整備された巡視路を進む。淡々と高度を上げていき、次に視界が開けた鉄塔からは南西側に眺望が拡がる。光から閉じこめられた植林地歩きのこのコースは、たまに見える景色のありがたさが乾いた喉を潤す水の如しである。

 ここから伸びる電線も、この地域でひときわ目立つ赤い鉄塔。そう、鳴蟲山のあの巨大鉄塔へと続いている。あの鉄塔から展望した、堂々と、そして荒々しく拡がる羽賀場山とお天気山を今歩いているのだ。

     
再び植林地の尾根    二つめの鉄塔    横根山方面

 標高500mを過ぎた辺りから日陰に所々シャーベット状の雪が残っている。動物以外の踏み跡は見られないので、恐らく前日の雨がここではみぞれだったのであろう。

 いろいろなサイトで指摘されていた迷い易い尾根の分岐を左折する。「羽賀場山」の山名板が掛かっていた。無論道標として掛けている訳だが、せめて矢印を付けるなどして欲しい所だ。(下写真中)

 この分岐から先は北側の景色が時折見え隠れし、岩もちょくちょく顔を覗かす尾根となる。北側に形の良い山が見えてきた。地図を見る限り笹目倉山か石尊山のようだが、ちょっと自信が無い。

     
雪が僅かにある    尾根を左折    笹目倉山(だと思う)

 浅雪の笹道を進むと次のピークが羽賀場山の山頂らしい。あと一踏ん張りだ。

 小広い山頂は樹に鬱蒼と囲まれていて展望は全く無い。ここまで登って来る間も殆ど眺望も無し、山頂もこれでは人気が無いのも頷けるというものだ。そんな静かな山頂では、ひときわ大きな三角点石が一等三角点を誇っているようにも見えた。

     
羽賀場山が見えてきた    一等三角点がある山頂   

 そろそろ正午という時間だったが、出発も遅かったし、この山頂では食事をする気分にもなれないので先を急ぐ事にする。

 親切にもお天気山下山口のバスの時刻表がくくり付けられていたり、ちょっと下世話かなかとも思ったが、長安寺に車を置いて上大久保バス停から車まで戻るコースを歩く者にとっては非常にありがたい情報であることを、このあと我々も下山後身に染みて思うことになる。

 さて、山頂からも淡々と尾根歩きは続くが やはり他サイトで指摘されていた二番目の要注意分岐をチェックし忘れて直進してしまう。痩せ尾根でやたらと斜度がきつくなってきて雪付きの量も増えてきた。おかしいなとGPSを見てみるとやはり北の尾根に入ってしまったようだ。

 どこに分岐があったのだろうと注意深く戻ると、南西方向に急降下する道があるでは無いか。樹林に落ち込むような急傾斜にジグザグの踏み跡が付いている。ぱっと見た目にはルートらしからぬ感じがするから要注意だ。羽賀場山から西側はあまり歩かれていないようで、慎重に行動したいエリアである。

     
ご親切に    尾根は続くよどこまでも    屋号なのか?

 このルートのアップアダウンのきつさは覚悟していたが、なるほど、なかなか歩き応えのあるコースだ。小ピークからの下りはフィックスロープがちょくちょく出てきて一気に下ってまた登り返しの連続。せめて777mPまで行ってから昼食をと考えていたが、大休止も兼ねて途中の日溜まりピークで昼食とした。

 冬型の気圧配置で日本海側や高山では大雪なのだろう。こんな日は1000m足らずの里山でもえらく強く冷たい風が吹くことを、以前群馬県境の仙人ヶ岳でも経験したことを思い出した。時折冷たい北風がごうごうと音を立てて吹き抜けるのを我慢すれば、日差しはそれなりに暖かい。景色は今一つすっきりしないがまずまずのランチポイントだった。

     
枝越しの北側    日溜まりで昼食    同左

 この後も急下降と急上昇を繰り返し777mPへ到着。7が三つ揃ったこのピーク。きっと縁起担ぎの人が何か山名板のような類のものを付けているに違いないと思っていたのだが何の事は無い。プラスチックの赤い小さな三角点があるのみでちょっと拍子抜けしてしまった。

 777mPからバージンスノー(一応)で輝く尾根を渡り、北北西の急斜面を雪に注意しながら一旦鞍部まで降りると、後はお天気山までの最後の登り返しとなる。

     
ロープを下るH君    777Pからお天気山    雪の尾根を進む

 登りの途中で右手の樹が途切れた所から見える笹目倉山だと思われる山はやはり恰好よい。

 これが最後の登りとばかり力を振り絞り、とうとうお天気山へ到着した。やれやれここまでかなり長丁場だったような気がする。

 山頂の平坦地を囲む雑木は落葉しており、この時期は案外景色が良い。ガイドブックでは眺望無しと書いてあったが、少し北側にある場所からの日光方面と西側の眺めは文句なしだ。スパルタンな縦走であった今日一日のご褒美に相応しい。
 三角点が無いので地図上の標高を知ることは出来ないが、手元のGPSによると標高は784mとなっていた。(誤差補正後の読み取り値)

     
再び笹目倉山(だと思う)    お天気山頂上    かなり古そう
     
      鹿沼市街方面
     
雪の山頂    前日光の稜線    日光方面

 素晴らしい眺望に後ろ髪を引かれる思いだが、時計を見るともう3時になろうとしている。下山を急がねばならない。
 山頂にある説明板には上大久保バス停まで2時間と書いてあった。エェー。2時間?事前の複数情報では1時間だった筈なのに。これではバスに間に合うどころか下山しきる前に日没を迎えてしまう事になってしまう。最悪ヘッドライトの使用もやむなしと覚悟を決めて歩き始めた。
(注)結果的には1時間程度で下山出来たが、途中厳しい下りが続くので安全を見て2時間と書かれていたのだと思う。

 前半の下りが急降下なのは知っていたので、まずは慌てずに確実に。フィックスロープを何本か繋いで、しょっぱなの厳しい下りをやり過ごすと行く手を阻む巨岩が現れる。(下写真左)
 右側がおおよそ6~7mはあろうか、すっぱり垂直に切れた姿はなかなかの迫力だ。この岩の間を縫うようにして進むと、程なく石祠だけがひっそりと佇む二の宮だ。祠の向かう先、どんな人がどんな願いでこの厳しい山奥へ祠を建てたのだろうか。

 更に下って行き、一の宮へ登り返す鞍部からは道標に従い樹林の闇の中へと吸い込まれるように降りていく。ここも始めはフィックスロープが続く急降下の連続だ。ひとしきり降りてふと上を眺めると、一の宮の実体であろう露岩がおどろおどろしくも暗い樹林の中に張り出している。

     
巨岩の間を進む    二の宮の石祠    ここから樹林を下る

 途中一ヶ所踏み跡が乱れている箇所があった。斜面を荒々しくえぐりながら下の方へ向かう比較的新しい踏み跡は、樹の白ペンキの矢印を追っているようだ。もう一方の踏み跡は山を巻いて僅かに上に登っている。さぁ、思案のしどころ。GPSを出して少し下って見ると下山口の方向には向かっているようだが、明らかに予定のルートから外れている。前回、川化山からの下山時はほぼ同じ状況で強行突破したが、まだ200m以上も標高差があるし、時間ロスで日没を迎えると致命傷になりかねない。ここは手堅く、よく踏まれた方を進むべし。

 進めば無事に安定ルートへ復帰。黙々と進むと沢音が聞こえてきて下山も終わりに近い事を知る。やがて斜度も緩くなり作業道を進み、平坦地になると最後はバスの時間が気になり小走りだ。

 バス停に着いて時刻表を見ると4時11分のバスが丁度5分前に出たばかりで、次のバスまで1時間以上間がある。稜線に居た時に「間に合わなかったら3キロ歩いて行こう」と言っていたのに、いざ間に合わないと悔しいものだ。しかし慌てて下山して怪我でもしたら一大事。こうして無事に降りて来れたのだがら良しとしよう。
(注)実際には約3.5Km

 今日の山行の締めくくりとして、夕日に染まるお天気山を眺めながらのんびりと車道を歩いた。大芦川のほとりに差し掛かる頃には、夕餉の支度の煙たなびく集落を見る。こんな時間にこんな所を歩くのも滅多に無いことだろう。
 ひときわ高いところにある長安寺の建物が見えてきた。羽賀場山稜線の上には大きな満月が昇っていく。すっかり体も冷えてしまった。一体今日はどれくらい歩いたのだろうか。早く帰って熱い風呂に入りたい。寒風が吹きすさぶ車道歩きはことのほか辛いが、今日一日の充実した山行を振り返ればさほど足取りも重くはない。こうしてH君との新年初歩きは想像以上のハードな山行となり幕を閉じたのである。

     
夕日に染まる天気山      

概略コースタイム
駐車場発(10:24)-鉄塔一つめ(11:04)-鉄塔二つめ(11:34)-羽賀場山(12:18)-昼食地着(13:12)-
休憩-昼食地発(13:57)-777mP(14:28)-お天気山(14:56)-二の宮(15:15)-
一の宮手前分岐(15:25)-上大久保バス停(16:16)-駐車場着(17:07)

2008年12月13日

かまど倉と川化山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 かまど倉{556.6m}は2回目だ。もっとも1回目は取り付きを間違って敗退。ここは地図に無い林道が縦横無尽に張り巡らされているので登山口までのアプローチが難しい山だった。
 GPSを買ってから何度か車を駐める場所も含めて取り付き地の偵察を行っている。今回はかまど倉から川北山(かわばけやま){497.3m}への縦走、地形図に山名表示の無いこの2座をH君と縦走することにした。

 と、まぁ勇ましい出だしだが、自分の様な道迷い者が多いのを憂慮してか、県内ハイカー有志の手により間違えやすい林道の分岐には真新しい道標がたくさん設置されたようである。実に安心に取り付き地へ到達することが出来た。関係者に大いに感謝したい。

 なんで前回は間違ったのだろうと首を捻る程簡単に取り付き地へ到着。{前回は林道を1本間違えた}

ここから鉄塔巡視路のジグザグ道を登っていき、汗が滲む頃に尾根へ突き上がり、221号鉄塔下へと出る。

 鉄塔脇にも真新しい道標が設置されており、迷うことなく山頂へ進むことが出来た。

     
林道終点取り付き地    尾根にある鉄塔    親切な道標

 気持ちのよい尾根を暫く進み、一カ所急登をこなすと展望台がある。今日は高層の雲が厚く天気は今一つだが、それでも古賀志山方面がよく見えるのが嬉しい。ここを通り過ぎて程なくすると山頂へ到着である。

 山頂からの眺望は木に覆われていてすっきりしない。水を飲んで一息入れていると先の方から声がする。駐車地あたりで先行していたグループが先の方から戻って来た。
 リーダー風の男性に話を聞くと、「かまど倉」由来の大岸壁の上の見晴台が少し先にあるという。

     
気持ち良い尾根    展望台より古賀志山(奥)    かまど倉頂上

 地形図でもはっきりわかる崖記号の真上、かまど倉の岸壁の上に立つと、南や西の眺望もさることながら、やはり下を覗くともの凄い。迫力のカットをカメラに収めたかったが、危険なので止しておく。

 しばし景色を楽しみ、先ほどの鉄塔下まで戻った。一旦往路に入り、すぐの所に赤テープがある。事前情報で得ていた川化山へ向かう稜線への入り口だ。踏み入れるとなるほど、東へ向かって尾根が続いているではないか。

 かまど倉~川化山間は、一般的なガイドブックでは紹介されていないせいか、歩く人は少ないようである。(本日出会ったグループは全員歩いていたが)
 こちらの稜線に入ると流石に道標は途絶え、踏み跡と気まぐれなテープや紐、布の類が頼りとなる。中には包装資材(同じものが一杯あったので、恐らく工場で余っていたのか?)などもあり、種々雑多。もっとも440Pまでは特に迷うようなポイントも無く快適な尾根歩きだ。

 ところが、440Pを通り過ぎ、次の明るい落ち葉のピークを下ってから登り返しを始めると、がらりと状況が変わり岩尾根が出てくる。左右切り立った痩せた岩尾根は慎重に渡るべし。山慣れした人なら面白いコースだろうが、われらビギナーはとにかく安全第一。
 右手に巻けそうなポイントも幾つかはあったのだが、明確な巻道ではないのでそちらも決して安全とは言えず、丹念に一つ一つ岩を越えていった。

 やがて岩が終わり、突き当たった所をトラバースして一旦尾根の南端に出る。そこから方向転換して一登りで川化山である。最後の稜線もあまり歩かれていないのか、自然のままの雰囲気が感じられる。

     
山頂先の展望台より    440Pより川化山    岩尾根

 山頂では、かまど倉ですれ違ったグループが車座になって賑やかに食事中であった。話を聞けば男性リーダー氏は、古賀志山をゆうに三千回以上は登っているという、古賀志山の主だとか。三千回というと毎日登っても10年近くはかかる計算。いやはや本当なら大したものだ。

 グループが下山してしまった後の静寂を暫し楽しみ、我々も腰を上げる。皮肉な事に下山を始める今頃になって、厚かった雲間から光が差し始めた。それにぐっと温度が下がって冷たくなってきた。どうやら天気の変わり目のようだ。

 下山は、「栃木の山紀行」さんで紹介されている440Pから南東の尾根を下って行くルートを歩く予定であった。いざ440Pに立って見渡しても、目指す方角に顕著な尾根は確認出来ない。強行しようにも等高線から考えられるより遙かに急斜面である。

 仕方がないので440Pよりかまど倉側に少し降りた所からやはり下を窺うが、植林地内は思いのほか急斜面である。若干の思案の末、440Pを降りきった鞍部から、白い布が巻かれた一本の木を頼りに植林地へ突入し、トラバース気味に駐車地を目指す事にした。

 降り始めるとすぐに作業道が出てきた。これを追っていくと440P下を東へと巻いた感じで進んでいくが、やがて行き止まり。440Pの南東尾根はGPSで確認するともう少し東側にある。方角は間違っていない事と高度的にはもう林道が目と鼻の先であることを考え、植林地内を斜めに下って行った。斜度はさほどきつく無いが、足元が滑りやすくて体重のあるH君は難儀している。

 どうにかこうにか無事林道に辿り着くと、先ほどから上の方で声が聞こえていた南東尾根から中年夫婦が降りてくる。話を聞いてみると、440Pから初めの急な部分を少し下ると尾根の形が見えたそうだ。我々の辿ったトラバースルートも結構緊張を強いられた事を考えると、南東尾根をもう少し真剣に探すべきだったかもしれない。

 家に帰ってGPSの軌跡を見て残念だったのは、鞍部の後の作業道に引き込まれないようにして真っ直ぐに等高線の緩い谷を降りれば、往路に通った林道に最短で到達出来た事。でも、いざその場に立つと、等高線より斜度がきつく見えたり、進行方向の深い薮に躊躇したり、そして道形がはっきりするとそちらに進みたくなってしまう精神的な脆さ。まだまだルートファインディングにはほど遠いと痛感するのであった。

     
川化山頂上    植林地へ突入    植林地を下る
  
川化集落   

概略コースタイム
駐車地発(9:50)-林道終点(10:10)-211号鉄塔(10:28)-かまど倉山頂(10:49)-展望岩(10:55)-
川化山への尾根分岐(11:16)-440P(11:37)-川化山頂上(12:00)-昼食休憩-山頂出発(12:47)-
440P(13:06)-植林地突入鞍部(13:26)-林道へ復帰(14:01)-駐車地着(14:15)

2008年10月19日

一日に二度登った?二股山

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 今回の主役は何と言っても上の軌跡である。等高線の読める方なら瞬時にして私の愚かな歩行ルートを読み取ることが出来よう。

 そう。一度降りた山をもう一度登り返してまた降りるというトレーニングもどきが今回の山行である。勿論予定していた行動で無いのは言うまでも無い。そんなスパルタンな計画を思いつくほど体力に自信は無いのである。

 

 毎回、前口上から始まるのが通例になってしまったが、今回もお付き合いいただくとして・・・

 ここのところ、超の字が付くほど仕事が忙しかった。先週の3連休などに至っては、日の出の時刻から街が寝静まる頃まで会社に居るという悲しい日々を送っていた。一段落した11日の土曜日は抜けるような晴天に心動かされたものの、仕事が気になり結局午前中は出勤と相成ったのである。

 日曜はあまり天気が良くないという予報だったが、目覚めると結構日差しが明るく空も高い。早い時間に近間でも歩いてくるかと布団の中で思案する。そういえば二股山に周回コースがあったな。仕事の疲れが残っていることなどすっかり忘れて支度にいそしむのであった。

 

 前回同様、下久我から林道に乗り入れ、終点の広場に車を駐める。案内板のコース図を見て、南峰~展望地~加園P~(周回)~下久我Pへ帰還の予定だ。

 加園P~(周回)~下久我Pのルートについては、案内板に等高線が記されていないこと、距離や方角がデフォルメされていることから、道の接合点のみは把握出来たものの、その他の重要な情報について全く未知のままコースに突っ込んでしまったのが後で大きな後悔に繋がることをこの時点では気付いていなかった。

 往路の登りは谷を詰めるとジグザグの樹林登りへと繋ぐ前回と同じコースである。相変わらず雑多な感じのする植林地だ。前回はジグザグで少し息が上がったが、今回はペース配分も余裕で登ることが出来た。木漏れ日の差す植林地は、耀きの強弱が面白くてそれなりに楽しいものである。

 NHKの放送設備が見えると間もなく二股山の双耳峰の一つ、北峰頂上へ到着。宇都宮市内から真西にその姿がよく見える二股山。間に遮るものが無いのでこちら側(山頂)からは鹿沼市街はもとより、古賀志山から鞍掛山、多気山、そして宇都宮の街の高い建物がゴマ粒のようにちりばめられている様子がよく見える。

     
木漏れ日の中    山頂から古賀志山方面    鹿沼市街

 北峰でザックを降ろして一休み。そういえば今日は下久我Pも自分の車だけ、山中もまったく人に出会わない。ハイカー達はきっと紅葉を求めて日光あたりに繰り出しているのだろうか。
 足元に気を付けながら南峰との間のキレットに降りる。南峰への取り付きも相変わらず急斜面だ。このキレットは遠くから見てもはっきりとわかる、いわば二股山の顔とも言うべきポイント。ちと登りがきついが、味わいながら歩を進めていく。何らかの原因で中間部が崩落してこのような姿になったのだろうが、元の姿はきっと鞍掛山のような台形だったのではと思いを巡らせる。

 さて、南峰に着いて時間も予定通り昼食休憩。ストーブで湯を沸かし、山頂も景色も独り占めの贅沢な時間。コーヒーを飲み終える頃には初秋の空気がいささか冷たく感じるようになってきた。

 前回は南峰からピストンで下山だったが、今回は更に南に下り、展望地を経由して一旦下山していく。

 展望地は5分位下った所にある。西から南側に樹が切り開かれ、岩のテラスがある展望台である。

     
キレットから南峰への壁    南峰から鳴蟲山と男体山    上南摩や西方方面

 山々が幾重にも連なっており、私の読図力では山座同定が到底難しいが、恐らく西方や星野方面の山々が見えているのであろうか。山水画のようなシルエットにしばし見入る。

 道はこの後樹林に吸い込まれ、道形が幾らか心許なくなってくる。分岐は真新しい道標があるので迷わないが、かなりあやふやな部分が多くなり、テープ頼りになる。テープはかなりしっかりと付けられているので慎重に追えば迷うことは無いが、山に慣れて居ない人の場合はあちこちにある踏み跡に引き込まれるかもしれないので要注意だ。高度が下がってくるとシダの密生が出てきた。鬱蒼とした雰囲気がどことなく不気味である。足元の黒い紐がにゅっと動いたと思ったらヘビだった。思わずビックリ!

 概念図では途中から二股山の西側を巻くように久我Pへ向かう分岐がある筈なのだが、高度を下げてもいっこうにそんな分岐は現れない。途中西に向かう枝尾根の取り付きが数ヶ所あったが、GPSで現在位置を確認してもその先は谷とその後に聳える尾根筋。これはトラバースルートなんてあり得ないと気が付いた時は半ば諦めムードになっていた。

 やがて傾斜が緩くなり向こうに草の生えた林道の終点が見えた。加園Pである。ここにまた案内板があり、やっと目的の周回分岐に着いた事を知る。これから下久我Pまでのルートが、山を大きく巻いた平坦なコースであることを願うばかりである。

     
三峰山方面 たぶん    テープを頼りに下る    林道出合

 初めによく見ておけば良かったのだが、実はこれから進むコースは周回の下山路になっているのだ。途中登りがあるのは嫌だが、車道に出て4Km以上も歩くのももっと嫌だ。ままよと歩き始めると初めのうちは登りも緩やかだ。

 上手の薮が急にガサガサしたと思ったら、グレーと白の毛並みの動物が目の前を横切り、谷を駆け下りていく。カモシカである。調べて見ると二股山周辺ではたまに目撃されているようで、鳴蟲山方面から尾根伝いに往来しているらしい。奴は恐らくかなり遠くからこちらを眺めていたのだろうが、何も気付かず暢気に歩いてくる熊鈴男がどんどんやって来るのでお先に失礼といった体であろう。

 緩かった登りも谷を詰めるに従いどんどん斜度がきつくなってくる。ジグザグが出て来る頃になると、あまり歩かれていないのだろうか、道が所々崩落していて歩き辛いことこの上もなし。体力もみるみる消耗してくる。

 何度もGPSと地図を出して確認したが、方角は間違いない。高度計が500mを示したあたりで、右手の樹の間にある北峰と南峰の間のキレットを見て確証を得た。「結局もう一度登ってきてしまったのだな」と。

 精神的にもこういう登りはキツイものである。ジグザグの1本2本がどんなにか長く感じたものか。上の方に見える稜線の明るさが唯一の望み。ほの暗い樹林の中で悲壮という言葉の意味が少しは理解出来たような気がした。(ちょっとオーバーかも)

 何とか尾根に辿り着き、あとは下るばかりと進んでいくと伐採で一面が開けたポイントに到達。パッと景色が広がった時は辛かった登りへのご褒美かと思われた程だった。

     
周回起点    峠越えのご褒美    来し方の伐採地

 伐採地から右手(北側)の谷を見ると、往路に登ってきた道がよく見える。前回歩いた時も脇の尾根を見上げて「あそこを行けば軽快だろうなぁ」と思っていたが、なるほどこのようにルートがやはり付けられていたのである。

 再び樹林に吸い込まれ急降下していく。主の帰りを待つパジェロミニの姿を見てほっと一安心。最後まで気を抜くまいと車の許へ。やれやれとんだ山行であったが、終わってしまえばこれもまた楽しい思い出。

     
車が待っていた    駐車地手前へ出る   

概略コースタイム
駐車地発(10:36)-北峰着(11:28)-南峰着(11:41)-昼食休憩-
南峰発(12:29)-展望地(12:39)-加園P(13:22)-登り返して尾根に復帰(14:17)-
伐採地(14:44)-駐車地着(15:02)

2008年03月22日

二股山と鳴蟲山

 
-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 宇都宮から真西を眺めていると、山頂が足袋の爪先のように二股に分かれている特徴的な山容が目に付く。北峰、南峰を持つ双耳峰の二股山(ふたまたやま){570m}である。遠くから見ても二つの頂の間のコル(鞍部)ははっきりしており、是非一度はあそこを歩いて見たいと思っていた。

 今日はH君の都合が付かない為、久しぶりの単独行である。単独行なので、安全の為なるべく人の多い所へ行こうと考えていた。二股山は古賀志山などに比べるといま一つメジャー度を感じないが、行ってみればどうしてなかなかの賑わいの山である。

 鹿沼の街から二股山の南側を巻くようにして県道を進み、ほぼ西端に位置するあたりで林道へ乗り入れる。すぐ舗装が切れるが間髪入れずにパジェロミニを4駆モードへ。FF車なら充分走れる道だが、やはり何となく安心感が漂う走行だ。

 ほぼ突き当たったあたりに広々とした駐車地がある。台数的には10台以上は軽く置けるだろう。この先も4駆車ならあと数百m先の林道終点まで登れそうだが、充分な広さが得られない事や右側の崖が一部崩れかかっていたりで安心して駐められるのはやはり先ほどの駐車地である。

 駐車場の片隅にコース詳細図が張り出されていた。2月に下見に訪れた時は無かったのだが、今回はこの駐車地からのピストンしか考えていなかったので、次回訪れる時は是非参考にしたいところだ。

     
二股山への林道入り口    広い駐車地    コース詳細図

 駐車地より登り始めると、伐採された坊主山が一部崩落していたりして殺伐とした雰囲気を感じる。また、駐車地の左手の斜面を見ると相当に巨大な岩が露出していてこちらも圧迫間がある。

 沢添いの道を登っていくとやがて植林帯に入るが、古い伐採の跡が片づけられずに苔むしていたりして、これまた雑然としているところがガイドブックやネット記事でもよく指摘されているポイントだ。確かにどちらかと言えば「綺麗では無い」という印象を受ける。

 ジグザグの比較的緩やかな斜面を登る頃には、すっかりいつもの落ち着いた雰囲気の植林地歩きとなる。山頂から伸びる主尾根に着けば、向こうに見える建物はNHKのテレビ中継所。この中継所を越えるとすぐそこが二股山北峰である。

     
登り初め    雑然としている    NHK中継所

 途中眺望ポイントが全く無かっただけに、東側だけとはいえ開けた景色に暫し癒やされる。

     
中継所のアンテナ    北峰頂上    古賀志山方面

 ザックを降ろして休憩していると、単独の中年女性が息を切らして登ってきた。荷物からガイドブックを取り出して自分の歩いて来たコースの事、今日はこれからもう一座登らなければならない事などを話して元気に去っていった。
 南峰に向かう急な下りから声がしたと思ったら、今度は比較的年齢の高い女性が数人顔を出す。下から岩をよじ登るので上で見ているとさながら顔が突然ニョキっと現れる感じだが、一番最後はおじいちゃん。もう70は過ぎているだろうか。いやはや元気なものだ。

 おじいちゃん達に刺激されて急な下りをそろそろと降りる。なるほど気を付ければ大した事は無いが、やはり先ほどの高齢者グループは凄い。何故ならば、このコルから南峰への登り。私は慎重にそしてぜいぜいと肩で息をしながら登ったのだが、高齢者グループは事もなげにやすやすとクリアしていったのだから。

     
鹿沼市街方面    北峰から南峰    コルから南峰への急登

 コルからの急登で息を切らせると南峰頂上。樹木越しに北峰で休憩している人が見える。激しいアップダウンだったせいか気持ち的には随分離れているような錯覚に陥っていたが、水平距離はさほど無いので会話の声もよく聞こえる程だ。

 南峰からは日光方面や東側も眺望がある。駐車地に張られていたルート図が此処にも有り、この先5分位で展望地があるというので取りあえず行ってみる事にした。

 南側に突き当たる感じで木が刈り払われた場所が展望地である。恐らく粟野や西方、葛生方面の山並みが見えているのだろうか。浪々と拡がる低山の山並みが美しい。

 一旦南峰へ戻り、少し時間が早かったが昼食とした。下山は往路をそのまま戻る。駐車地からの周遊コースもあるようだし、新設の道標があちこちに整備されているので次回はもう少し研究して登ってみたいと思う。

     
南峰頂上    日光方面    展望地より南側

 さて、思いの外早い時間に下山してしまったので今回はおまけ案として用意していた鳴蟲山(なきむしやま){725m}を登る事にした。かなり高度を稼いだ地点まで車で登れるということなので、時間が無い時のチョイ登りにでもと思っていたが、二股山のお隣さんとも言うべき場所なので車の移動も時間が掛からず絶好のチャンスである。

 林道から県道240号へ戻り更に西へ進む。鳴蟲山へのアプローチは送電線の作業林道を使って一気に山頂直下まで車で進入出来るという。この林道は2駆車だと少し不安があるかもしれないが、パジェロミニにとってはまったく問題無い。途中、新設の砂防ダムが眼前にドカンと現れたりなかなか荒々しい道なので、安全の為に悪天候の時や台風後などは近づくべきではないだろう。
林道入り口地点

 林道の全区画半ばあたりで通行止め。たまたまそこに軽トラを止めて作業をしていた林業関係者の方の話によると、つい最近までは鉄塔直下まで行けたのだが最近路側が崩れてこの先は通行止めになったとの事。見上げると目標の山頂近くの鉄塔も大きく見える。このまま林道を30分も歩けば着くだろうということなので車を置き歩行開始だ。

     
鳴蟲山へ向かう林道入口    ここで通行止め    行く手に目標の鉄塔

 通行止めのゲートの向こうは石を積んで車の往来が出来ないようにしてある。ゲートだけでは強行進入してしまう人が後を絶たないのだろう。石積みの向こうを見るとなるほど谷側がスッポリと崩れ落ちた形跡がある。一応修復はされているものの、やはり谷側が脆い感じでここを車で通るのはかなり危険な感じがする。

     
石を積んで通行止め    崩落箇所    崩落箇所より

 この崩落箇所を過ぎると後はまた通行になんの支障もない道が続く。ただ、流石に往来が無いせいか、草木に浸食されて廃道化している感もある。ヤブの中に忽然と現れるカーブミラーにドキっとしたりする。

 春を通り過ぎて初夏が訪れてしまったのでは無いかと思わせるような陽気の中、額に汗しながら林道を登り詰めると小広い部分で道がヤブに消え入っている。ふと右手を見ると何やら鉄製の簡易階段がある。さて、道標も無いしどうしたものかと思い階段を登って見る。見上げた感じはまさに鉄塔直下なのでルートが有るのかと思ったが、見渡しても何も無し。一旦ヤブに突っ込んだ顔を引っ込め広場へ戻る。

     
廃道化している    林道終点    謎の階段

 林道の先のヤブを見ると僅かに刈り払われている道がある。鉄塔に向かって若干遠巻いた感じがするが、少し辿って見ると蛇行しながら鉄塔へ向かっているので間違え無いだろう。荒れているとはいえ、広場までが舗装林道歩きだったので土が足に優しい。
 ほぼ登り詰めた頃、山頂より下ってくる尾根道に合流する。上手を見るとあの巨大な鉄塔が広々とした空間に設置されていた。
 鉄塔直下からの眺めは後の楽しみにとっておき、まずはもう少し先の山頂を目指す。山頂は樹に覆われており眺望は殆ど無い。数個の石祠がカラフルな鉄塔とは対照的にひっそりと佇んでいた。

     
鉄塔は間近    尾根に出る    鳴蟲山頂上

 鉄塔のところまで戻り、ザックを降ろしてしばし休憩だ。北側に羽賀場山~お天気山の稜線が大きく見える。この稜線は笹目倉から丁度反対側の北側を眺めた時も感じたが、かなり起伏のある尾根だ。以前から歩いて見たいと思っていたが、近くで見るとやはりかなりアップダウンが激しそうで、ハードな縦走になることだろう。

 東側に目を転ずると、先ほど登ってきた二股山の双耳峰がよく見える。雄大な180度パノラマに暫し時間を忘れていると、鳴蟲山では本日初めてのハイカーと出会った。彼もまた単独行。お互い静かな山行である。

 帰りは登路を戻るが、遙か下のほうに主の帰りを待つ愛車の姿がゴマ粒のように見えた。終始南側の眺望を楽しみながらの下山。楽しい春の山遊びであった。

     
274鉄塔から続く送電線    274鉄塔    羽賀場山~お天気山
     
二股山    二股山の南側    ゴマ粒のようなパジェロミニ

概略コースタイム
<二股山>
駐車地発(10:11)-北峰(11:00)-南峰(11:10)-展望地(11:19)-南峰着(11:31)-
昼食休憩-南峰発(11:49)-駐車地着(12:30)


<鳴蟲山>
駐車地発(13:03)-林道終点(13:25)-山頂(13:44)-林道終点(14:05)-駐車地着(14:27)

2008年02月16日

残雪の笹目倉山


-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 車2台で離れた拠点間を結ぶ縦走コースをと以前から考えていたその第一弾、宮小来川より風雨雷山を経て笹目倉山、黒川へ降りていくコースを歩く事にした。

 少しのんびりしたスタートで、9時にH君と宇都宮市内で待ち合わせる。右手に古賀志山を見ながら西へと車を走らせる。正面に見える日光連山の冠雪もスッキリ晴れた青空に映えて一段と美しい。

 板荷を過ぎ、道が黒川に近づいてくる頃、正面にこれから登る山、笹目倉山(ささめくらやま){799.9m}のキッチリとした正三角形が目に飛び込んできた。ピラミダルな、とよく言われるがまさにその通り。

 間もなく今日のコースの着地予定地点、左手に清流園のお店(清流園は廃業してしまっているようだ)がある所にパジェロミニを駐めた。H君の車に乗り継ぎ、再び西へと向かう。
 程なく右手に、「笹目倉山 新登山道」の大きな看板出現。以前からこの道を通る度に気になっていたのだが、最近の流行のルートはこちらかららしい。この新ルート入り口のすぐ隣にも古くからある天善教の直登ルートがあるが今回はいずれもパスする。

 宮小来川にある日光市役所小来川支所にH君の車を駐める。事前に支所に連絡をしており快諾していただいた。ちなみに支所内には休日診療所も有り、まさに地域の生活に密着している施設のようである。

 支所から5分程歩き「鍛冶屋のカヤ」の案内の場所を折れて集落を越えて行く。最後の民家の右手からいよいよ山道である。

 鬱蒼とした植林地をガンガンと(ホントはそんな勇ましくなく休み休み)登っていく。典型的な里山の急登。いやはや容赦の無い登りだ。約一月ぶりの山行なので体がついて行かない。先日降った雪がザクザクと残っているが、高度を上げるに従い段々と一面の雪道になっていった。靴が潜り込まない程の深さと適度な堅さがあるので気にせず登っていく。だいぶ高度を稼いだかなと思った頃に北側に少し眺望が開けた箇所から鶏鳴山の大きな姿が伺える。

     
宮小来川からのアプローチ    残雪を踏みしめながら    鶏鳴山

 登り詰めればまたその先に登りが、そんなことを何度か繰り返しようやく風雨雷山へ到着。雪の鳥居をくぐれば、行儀良く並んだ三つの石祠がお出迎えだ。周囲を樹に囲まれまったく眺望の無いひっそりと静かな山頂。一息入れて再出発。雪の中の急登は続く。

     
風雨雷山    行儀良く石祠が3つ    雪の中の急登は続く

 標高が上がるにつれ雪が柔らかくなってきた。溶けてきているのではなく「溶けていない」のである。雪に靴がめり込む。折からの急斜面で、踏ん張る力がいつもよりも沢山必要なのでかなりバテバテだ。この程度で疲れているのだから冬山登山など到底無理な体力である。
 滑って仕方がないという程のものでは無いが、軽アイゼンを装着すればもう少し快適に登れるものなのであろうか。帰ったら早速軽アイゼンの購入を検討しよう。

 ルートは単純明快な一本道で迷うことはほぼ無いと思うが、それでもコース唯一の道標を見、後方にこれまた西側方面では唯一、されど樹間越しの日光連山を垣間見ながら更に登り詰めると笹目倉山頂。

 こちらも風雨雷山同様樹に囲われており眺望は全く無い。冷え冷えとした雪の山頂には幾枚もの山名板が賑わっているそんな中、天善教奥の院の社殿がどっしりと構えている。

     
山中唯一の道標    これまた西側唯一の眺望    笹目倉頂上

 ガイドブックやネット情報で、ここまでのルートは眺望皆無ということを知っていた。昼食は東側へ降りていくルートの途中に景色の良いポイントがあるらしいので、そこいらでと考えて山頂を後にする。

 山が三角錐のように険しいので、下りもまた厳しい。それでも天善教への道を分け、平成16年に新設されたとされている清流園ルートを進むと段々と南側の眺望が開け出してきた。日差しが充分に差し込むこちら側は、さっきまでが嘘のように雪が見あたらない。適当に道ばたに腰を下ろして食事にしようかと思案しながら歩いていると、ひときわパッと開けたポイントにあつらえたように切り株の椅子が3つ並んでいる。ここで食べずして何処でという好タイミングである。地図を見れば正面南側に見えるのは羽賀場山~777mピーク~お天気山の稜線のようだ。

 往路のハードな登りの疲れを、コース随一の好眺望で癒やして再出発。程なくすると、東へ向かう尾根への入り口に×印の細工がしてある。ここでふと思ったのが、今日の本来のコースである山頂から真東へ伸びる尾根伝いの下山路が見つからなかった事。新・分県登山ガイド(山と渓谷社)によれば山頂から東に延びる境界線上の尾根を進み徐々に境界線から離れ清流園管理道路に沿って下山するように案内されているが、そもそも山頂から東側は明らかに道は今歩いているコースしか見あたらない。積雪で見えなかったのかもしれないが、本で紹介する位のルートならばもう少しわかりやすい目印などが欲しいところだ。また天善教への分岐点も山頂直下の境界線上にあるとされているが、実際には数十m南へ高度を下げた場所に存在する(GPSで確認済み)。{新・分県登山ガイドの恐らく誤記と思われることについては後述}

 そんな訳で、ここの×印の先を東に尾根伝いに進めば地形図と相談してもほぼ予定のルートになるのではと考えたが、少し偵察をしてみると目前の急峻なピークを回避するには足場の悪そうなトラバースを強いられそうな感じなので、ここは無理をせずに踏まれたコースへと戻った。南に下りるこちらのコースは本来予定外ではあったが、事前検討段階からこちらのルートを使うことも考えていた為、状況は把握出来ていたので安心だ。

     
羽賀場山~お天気山の稜線    切り株で昼ご飯    この先危険

 急な斜面にジグザグに付けられた登山道は片側が切れ落ちている。道幅は50センチ足らずのところもありなかなか気が抜けない。途中横根山方面が綺麗に見渡せるポイントがあった。方塞山の電波塔が肉眼でも良く見える。

 道は厳しいがそれでも雪の斜面を降りることを考えれば極楽である。暫くすると下の方に広場と仮設トイレのようなものが見えてきた。何やら資材のようなものも置いてある。先ほど笹目倉山頂からピストンで下山していった2人組男性が、缶詰やら何やら広げてランチの真っ最中のようだ。

 広場まで降り立つとそこは金採掘口跡であった。新・分県登山ガイドの地図で示された場所とこれまた大きな食い違いがある。
 ここから先は木製のガードレールがあつらえてある砂利林道ともう一つは廃道化した林道の二手に分かれる。先ほどの食事中のハイカーに話を聞くとどちらも下で合流するらしい。砂利道を歩くのも嫌だったので廃道の方を選ぶ。冬なお背の高い枯れ草が邪魔をするこちらは、夏場はちょっと手の付けられないルートになるだろう。

 広場のところにあった採掘口から幾らか下げた所にまたもう一つ採掘口がある。下に綺麗な地下水が流れており、少し厳かな感じもする。ここから下は暫く人も歩いていないようで、日陰は降ったままの雪が残っている。幾らか堅めにはなっているものの、足跡の全くない雪をサクサクと踏みしめていくのは気持ちの良いものだ。ふと見ると何やら小動物の足跡が点々と続いている。

 再び背の高い枯れ草の海をやり過ごすと立派な休憩場が忽然と現れた。新旧の林道もここで収束する。

     
横根山方面    金採掘口跡    右手は林道、正面の廃道を降りてきた

 休憩所もそうだが、この清流園ルートは清流園の園長である渡辺久次さんが個人的に開拓整備しているという事らしい。ほぼ下山を終える地点には、自ら整備した滝や宿泊施設等なども見られ、川柳のようなものもあちこちに掲示されていて面白い。どうやら山好きが高じて開発に傾倒してしまったようである。お陰で快適かつ安全な登山を我々は享受出来るので感謝せねばなるまい。

     
立派な休憩所    久次の滝    他にもたくさんある

 登山口の派手な案内板からは暫し車道歩きだ。本来、新・分県登山ガイドの地図通りに歩けばパジェロミニをデポした地点に降りる筈だが、若干離れた場所に出てしまった。

 ここでもう一度、新・分県登山ガイドの誤記について検証してみよう。

1.天善教コースの分岐点の位置が実際の場所と違う
2.紹介されている山頂以降の記述は全て今回歩いた南南東へ降りてくるルートの内容と全く同じである。従って地図で示された山頂から東の尾根を辿るルートについての記述でない事は明らか。
3.ガイドブックに記されている下山地には清流園は存在しない。今回自分が車を置いた地点(清流園)は約300m程西へ離れた所にある。
4.案内にある清流園登山口の大きな標識は、今回歩いたルートの下山(登山)口である。

 つまり、新・分県登山ガイドに記されているコース内容の紹介文は今回我々が歩いたルートそのものであるが、地図がまったくもってデタラメであるということだ。ガイドブックもきちんとした検証を行っているとは限らないということをまさに体感してしまった訳だが、やはり最終的には自分で総合的に判断するしかない山の厳しさを再確認した次第だ。

     
いつも気になっていた登山道口    清流園は閉店したらしい    無断だが車を置かせて貰った

★番外編★

 比較的大柄なH君を窮屈なパジェロミニで小来川支所まで送り届けて解散。まだ時間も早いし、折角ここまで来たのだからと西へ車を走らせ滝ヶ原峠を越えた。標高が840m程もある峠の上は、笹目倉山頂同様やはり気温が格段に低い。ここから見る雄々しい日光連山はいつ見ても圧巻だ。

 日光市内から宇都宮市内に戻る時にいつも通る県道22号線(通称新里街道)は、途中で鞍掛山から半蔵山の中間地点をトンネルが貫いている。この鞍掛トンネルの開通により今市方面から宇都宮へと往来する車は随分と便が良くなったという。その理由はトンネルが開通する前はここを通るには旧道の峠道を通るしか無かった為である。

 いつもなら迷わずトンネルを走るのだが、すぐ隣の鞍掛山周辺の残雪状況も気になったので、偵察がてらすっかり荒廃し始めている旧道を進んでみた。

 深さこそは無いものの、しっかりと積もった雪道はもの好きな車(自分もそう)か、あるいは不法投棄の輩が付けた跡なのか。幾筋かのタイヤ痕が有るのみで深く静まり返っている。いくらか除雪されたとしても、この峠を冬場越えるのが大変であったことは想像に難く無い。下りのアイスバーンはテカテカで、たまらず4駆のローレンジにギヤを投入。歩くより遅いスピードで日の翳り始めた峠を降りていった。

     
滝ヶ原峠下より    雪深し 鞍掛峠   

概略コースタイム
小来川支所出発(9:57)-登山口(10:07)-風雨雷山(11:11)-笹目倉山頂上(11:59)-
昼食ポイント着(12:23)-昼食休憩-昼食ポイント発(12:55)-金採掘口跡(13:13)-
休憩所(13:37)-車道(14:03)-駐車地着(14:12)

2007年11月03日

静寂の鶏鳴山

-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 H君との山行第二弾。

 どこにしようか迷ったが、自分が行きたいという気持ちに軍配があがり、鶏鳴山(けいめいざん){961m}へ登る事にした。

 鶏の文字が付いた山は、県内では有名な鶏頂山(高原山塊)、鶏岳、鶏鳴山、鶏足山がある。鶏岳は既にクリアしているので今回は2座目の登山となる。

 コースは分県「栃木県の山」にガイドされている尾根周回コースである。ネット情報だと山頂から南の尾根はあまり歩かれていないという事なので念の為にGPSへポイントを多めに仕込んで出発だ。登りの累積標高差が800mあまりもあるのでちょっとH君には厳しいかなぁ。まぁ無理なら途中で引き返すか。

 周回コースの林道着地点近くに手頃なスペースを見つけて車を駐めた。静かな山と聞いていたが、ここまでに見た車は1台のみである。さて今日は何人の登山者と出会うのだろう。

 事前情報の通り、林道を進むと程なく立派なログハウスが現れる。この脇の林道を更に進んでいく。空には雲が厚い。しかし高い感じもする。雨はきっと降らないだろう。高度を稼いでいる間に晴れてくれれば良いのだが。

     
駐車地脇の清流    山は会社私有地だ    立派なログハウス脇の登山口

 林道脇から文字通り"山へ取り付く"ようにして登山道に吸い込まれる。砂利林道は初めのうち登山道の脇を付かず離れず並行する。

 暫く登ると別方向からの作業林道に出会うが、ここは山に向かって直進だ。樹にくくりつけられた小さな道標もあるが、さすがに私有地だけあって市や県が整備しているような明瞭な道標はこの山域には無いようだ。

 山頂のある主尾根に乗るまでの登りも、中盤にさしかかるころになると徐々に斜度がきつくなってきてロープが張られた箇所も出てくる。

     
道標を見落とさないように注意    小さな道標    根っこうねうねロープゾーン

 標高が780mを超えた頃一旦やけに道幅が広くなりしっかりとしてくる。作業林道でも作る予定なのだろうか?

 標高830m付近で下から上がってくる林道と北側から上がって来る別な林道に更に出会う。ここから先はさすがに林道も途絶えている。この林道の終着点では周囲は木が伐採されており東側の景色が良い。

     
何故か道幅が大きい    林道最高点より南東方面    同左地点

 林道最高地点で一旦小休止を取り再びスタートするが、ここから先は更にロープゾーンも多くなり、いよいよ斜度もきつくなってくる。だが、地図を見る限り最後の大詰めのようである。

 息があがるので休み休み高度を稼いで登る。H君も辛そうだが2回目の山行にしては善戦をしているではないか。さすがに若さである。

 急登の途中に、忽然と「山神」の碑あり。

     
鞍掛尾根    更にロープの急登    山神

 どうやら上の方が明るくなってきた。長い樹林歩きもとうとうお終いだ。エイヤと最後の登りをやり過ごすと山頂主尾根の北端である。程なく祠が数個立ち並ぶ好眺望ポイントだ。

 祠の脇には手作りの絵馬が並んでいたりとなかなか賑やかだ。山頂への道標もオシャレで奮っている。

 ここからの眺めは実に素晴らしく、少し先にある岩棚からの西から南西にかけての眺望は見応えがある。雲が掛かっていて、かすかに男体山の山姿が見られたが、冬の空気が澄んだ良い天気の日に是非また眺めてみたい景色だ。

     
急登に喘ぐH君    数個の祠    絵馬もある
     
山頂への道標      
     
祠より西側眺望    同 左    真正面は雲に隠れた男体山

 好眺望を後にして尾根を辿るとすぐ山頂に到着だ。 私(社)有地だけあって?山銘板もそこいらの山とは少し変わっている。お洒落な山銘板のお出迎えだ。

 山頂は周囲を樹木に覆われて、唯一西側が枝の間からかすかに覗ける程度。時間は少し早かったが疲れていたので昼食休憩とする。

 昼食後は南側へ延びる尾根を辿ることになるが、山頂から一旦踏み出すと途端に踏跡が薄くなる。落葉が積もりふわふわとした感触が心地よい。
 北側からのルートは良く歩かれているが、南側はあまり人が入っている感じがしない。少し先に行くとまた道型はしっかりしてくるものの、あまりにも踏み跡が薄いのでルートに若干の不安を感じない訳では無い。とにかく尾根を外さないように注意して進む。
 赤テープの過信はとかく危険なものだが、このコースでは尾根上の青ペンキと交互に確認していけばしっかりと誘導してくれる。中途半端に赤テープが散乱している山域とは違うようだ。
 もっとも、枝道とかがまったく無いので、道を外しようが無いというのが正直なところだ。加えて大量にインプットしたGPSのポイントを頻繁に確認しながら進んでいたので今回はまったく危なげ無い進行である。

     
山 頂     お洒落な山銘板    山頂南の尾根

 途中、今日唯一の単独行登山者とすれ違う。挨拶以外の言葉は交わさなかったが、彼もまた静かな山歩きを堪能しているようだ。

 滑りやすい急斜面を降りて、鞍部から標高にして50~60m程登り返せば木立の中の947mピークへ到着。
休憩後の登り返しは結構疲れるものだ。H君と共に「疲れるねぇ」と立ち止まって息を整える。

 尾根はずっと木に遮られて眺望は無い。たまに枝が薄いところから漏れてくる日差しがいとおしい。例えて言えば、暗闇に差し込む一筋の光といったところか。

 ヤセているという程でもなく、大きな尾根でも無く、これぞ稜線と感じるような心地良い道(写真下中)を高度を下げていく。また少し登り返すと今度は815mピークだ。

     
947mピーク    快適な尾根は続く    815mピーク

 815mピークからは東向きの尾根に乗り換える。ここから高度を下げていくと道の様子が若干変わってくる。比較的若い木などが切り倒され放置されている。計画的な伐採とは言い難い状態だが、何か理由が有るのだろう。少し殺伐とした感じも漂う。

 高度が下がってくると沢の音が聞こえてくる。時折木立の合間に景色も見え隠れするようになってきた。右の谷では何やら造山工事をしているようだ。

 下に通る林道が見える頃になると、生い茂る草の丈も高くなり途端に道が不明瞭になるが、しっかり赤テープを追えばここも問題は無い。ただ、最後のほうは滑りやすくて斜度が若干キツイので要注意だ。

 林道に降り立つと、向こう側にひっそり佇む我が愛車。さながら、息をひそめてじっとしている動物のように感じたのはあまりに山が静かだったせいなのだろうか。

     
下山時希少の景色(南側)    林道出合直前は道が不明瞭に    斜度も結構あり滑りやすい

概略コースタイム
駐車地発(8:50)-登山口(9:01)-林道最高点(10:26)-祠(10:56)-山頂着(11:14)-
昼食休憩-山頂発(11:33)-947mピーク(12:00)-815mピーク(12:32)-駐車地着(13:39)

2007年02月25日

かまど倉はどこかいな

  

今日は娘も一緒に行くということでかまど倉(557m)へ張り切って出発したのですが、途中見事に道を間違え敗退しました。

かまど倉は地形図に山名が記載されていませんが「栃木の山140」にも紹介されており、比較的登山者も多いという事で出かけたのですが、ガイドブックやWeb情報と若干の食い違いがあり安全の為途中で引き返して来ました。

おりしも今日と明日の2日間、東京で受験真っ最中の息子。願かけ登山故、途中棄権は縁起が悪いと思い帰りに多気山へ登り三角点を踏んで、下山途中にお賽銭を投げてきました。

上の写真。
恨めしや、向こうの鉄塔の下が正しいルートだったんだよね(;_;)
{222号鉄塔より221号鉄塔を望む}

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