市街地の山、関東ふれあいの道を歩く
足利方面で市街地に隣接している両崖山と大小山、自分は未踏であるが、いつかそのうちということで伸び伸びになっていた。両崖山には天狗山経由で周回する手軽なコースもあるようだが、こちらは家内と一緒にのんびり歩くためにとっておこうと思う。
今回は織姫神社を出発とし、行道山まで「関東ふれあいの道」をつたう縦走の計画とした。コースは「分県 栃木の山」でも紹介されている一般的なものである。行道山からの帰りは、朝のうちに浄因寺近辺にデポした自転車で約6Kmのサイクリングとなる。バスも一応あるのだが、一日に数本なので時間がぴったり合わせられるものでもない。
鬱蒼とした杉木立の中、浄因寺から少し離れた名草巨石群方面へ向かう登山道の入り口に自転車をデポした。最近は施錠も手慣れたもので、ワイヤーロックを三本使って固定物に繋ぐようにしているのでそう簡単に盗難されることも無いだろう。盗む価値があるとは思えない程度の自転車だが、帰りの足として計画上重要な任務を帯びているが故にもし失うと大変痛い。毎回、「今日も無事に帰りまでそこに居てくれよ」と念じながら出発するのである。
足利市役所を通り過ぎ、目的地の織姫神社駐車場に到着。織姫公園の駐車場は少し山に登った所にあるらいしいが、なにせ調査不足で場所がよく解らない。それよりも、自転車で帰ってくるなら登りがないほうが断然楽であろうと考え、神社階段下の駐車場がまだ空いていたのでこちらへ駐めることにした。
こんな街のど真ん中に車を駐めて山に登るのは初めての経験で、周囲の目が気になり準備を進めるのも少々恥ずかしい。だが周りの車の人達もハイキングの恰好が多く、流石人気の山であることが伺える。
横断歩道を渡り、よく清められた石段を登っていく。振り返ると街なかの駐車場に小さく駐まるパジェロミニが見えた。
織姫神社駐車場 | 石段を登る | パジェロミニはあそこ |
石段を登り切ると、鮮やなか朱塗りの織姫神社の社殿が目に飛び込む。後ろを振り向くと渡良瀬川が街を横切り、その向こうにポツンと浅間山が配されている風景がなんとも情緒がある。足利っ子にとってこの眺めは長年親しんだ愛すべき風景なのではないだろうか。
社殿脇もハイカーの姿が多い | 渡良瀬川と浅間山 |
社殿脇を、道標に従い暫くは織姫公園の遊歩道を進む。山歩きという実感が無いが、段々奥に行くに従い岩礫に松が生える尾根になるといくらか登山道然としてくる。「関東ふれあいの道」として整備されているだけあって、行道山まで全般的に道幅も広く危険な箇所、道迷いの可能性がある箇所も皆無である。マウンテンバイクを担いで登っている人も何人か見かけたが、比較的平坦な箇所も多いのできっと楽しめるのであろう。そんな人気なコースなのでとにかくハイカーの数は多い。
中でも、10人くらいのグループで全員一様にこの山に明らかに似合わない大型ザックを背負っている人達がいた。会話を小耳に挟んだところ、どうやら会の忘年会を兼ねた鍋山行のようで、「○○さん、その大きなザックの中は全部肉ですか?」などという会話も聞こえてきた。そんなイベントにももってこいの山なのだろう。
公園の中を行く | 岩が細かく露出するもよく整備されている | とにかくハイカーの数が多い |
途中数カ所のビューポイントを経由して両崖山の山頂へ到着。山頂はかつての足利城址であり神社が奉られていた。年末のお清めであろうか、地元の方々が清掃に汗を流していた。
登山道は安全に配慮されよく整備されているが、石段の多さにはやはり閉口する。道自体は崩壊しないので管理上安全なのだが、決して歩きやすいわけでもなく、また登山者の膝にも優しくはないのだ。
両崖山頂上 | 地元の方が清掃をしていた | 続く石段にはいささか閉口 |
舗装林道を横断する箇所から登り返すと、丁度北関東自動車道の「大岩トンネル」の真上を横断する。眼下の高速道路を走る車がその次のトンネルに吸い込まれていく風景を山登りで見るのも珍しいことである。
大岩山へ到着。山頂には、「関東ふれあいの道」標記の巨大な標柱がある。木のベンチがあるが眺望は今ひとつである。ここは足利百名山らしい。
北関東道を西に見る | 巨大標柱 |
次に石尊山へ到着。地形図上では無名峰のここ441.7mPの石尊山は、行道山エリアの最高標高点であるが故に『行道山』とも呼ばれているようだ。地図に山名標記があった両崖山も大岩山も山名板が無かったし、ここ石尊山にもまた山名板が無い。常日頃歩いている山では、先日歩いた三床山から金原山に至る途中の無名ピークでさえ手製の山名板を見ているし、訪れる人が少なくない山は幾種類もの山名板が所狭しかけられているものだ。故にこれほど整備された山に山名板が無いのも少し寂しい気がした。「関東ふれあいの道」として行政が整備しているので、私設山名板や中途半端なものは掲示出来ないのかもしれないが。
石尊山からの眺めはなかなか秀逸。登山中は今ひとつ空がすっきりしなかったが、何故か山頂で食事をしているうちにどんどん晴れてきて最後はご覧の通り。いつもより一層大きく見える富士山。遠く霞んで榛名山。少し奥に赤城山の山塊が見えて一番端には冠雪の黒檜岳。仙人ヶ岳の手前に目をやると、大きな台形の深高山から、あちらも同じ名前の石尊山の一帯が広がる。右手奥には見慣れないアングルの白根山、男体山と女峰山も遠く小さく見える。
混雑していた山頂も団体さんが下山すると一挙に静かになる。いつも昼飯を食べに来ているという地元の単独ハイカー。話好きな彼とひとしきりの山談義の後、自分も山頂を後にした。
山頂から降りていくと分岐があり、右手に下降していくのが登山道である。地形図を見ると直進は行道峠へ向かう破線ルートがあり、その途中に434mPがある。ここは道を外して真っ直ぐ進みピークを踏みたいところ。あっという間の距離だが、それまでのよく整備された遊歩道に比べるとどこかほっとするような落ち着いた雰囲気があり、心癒される思いがあった。434mPから先はなお一層踏み跡も薄く何処までも辿って行きたい気持ちに駆られたが、今日のルートとしては予定外の行動。この先、行道峠から馬打峠へは再び訪れる時の宿題としよう。
右浄因寺、直進434mP | やはりこういう雰囲気が落ち着く | ひっそりと434mP |
登山道に戻り高度を下げていくと小さな石像が沢山ある眺望の良いポイントへ出る。ここに有る寝釈迦は小さいながらも後ろに雄大な景色を背負っており、泰然としたものだ。こんな景色の良い所で寝っ転がって仏に成れるなら山好きなら願ってもかなったりじゃないかとふと思ったり。もっとも、日頃の行いで果たして成仏できるかどうかは知らぬ所だが(笑)
寝釈迦 | 最後の眺望 |
寝釈迦から更に下ると、一気に植林の杉林へと飲み込まれていく。眺望はもうお終いである。
行基上人開創と伝えられる浄因寺。下山のフィニッシュはこの独特な雰囲気を持つ古刹の境内を鑑賞しながら通過する。岩の上に配された「清心亭」と「天高橋」はひときわ目を引くが、現在は崩落の可能性が高く近づくことは出来ない。良い言い方をすれば、寺全体が渋く立ち枯れつつある雰囲気。逆に言えば廃れていると言った表現が正しいのか。
この真上が寝釈迦のある岩場 | 浄因寺境内 | 人家なのか寺なのか解らない不思議さ |
猫が4匹ひなたぼっこ中 | 「清心亭」と「天高橋」は立ち入り禁止 | 第二の山門 |
埋もれかけた石仏に年代が感じられる | 第一の山門 | チャリデポ地へ到着 |
自転車のデポ地へ着けば、後はダラダラな下りのサイクリングを残すのみである。軽く汗ばんだ体に、自転車で進む風が冷たくも少しばかり心地良い。田舎道はそんないつもの呑気さだが、街に近づくと無意識にすました気分になるから可笑しいものだ。ザックを背負った山の出で立ちで、ワインレッドの折りたたみ自転車に乗る中年の姿はどう見ても市街地には馴染まないなぁと苦笑しながら漕ぐペダルであった。
長閑な風景 | 無事車の元へ |
概略コースタイム
駐車場発(08:40)-両崖山(09:34)-北関東道真上(10:14)-
大岩山(10:53)-石尊山(11:11)-昼食休憩-行動再開(12:08)-浄因寺(12:42)-
自転車デポ地(12:58)-自転車走行-駐車場着(13:41)
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