中禅寺湖の展望台、社山
中禅寺湖から南へ目をやると、半月山とピラミダルなシルエットの社山は誰しも印象の片隅に残っていることだろう。
山に登るようになってから社山への憧れは強くなったが、果たしてあの急峻な雰囲気の登りに耐えられるかどうか、今一つ自信が無かった。
最近やっと体力に自信が付いてきたので、そろそろチャレンジしてみようという気持ちと中禅寺湖の紅葉が見頃という情報で計画実行に迷いは無かった。
日光へのアクセスはこの時期4輪だと渋滞で大変である。そこで、Ride&Hike第二弾、オフロードバイク(ジェベル)で軽快な出発をすることにした。今回は反省を踏まえてバイク用ジャケットで走り、登山用防寒着をザックに忍ばせるという万全の体制である。
予想通り、清滝のIC出口辺りから大渋滞。その合間を縫うようにしていろは坂も快走。歌が浜駐車場では、あふれ出した車が右往左往している。前回の沼っ原同様涼しい顔で駐車場最奥へバイクを駐めた。脱いだジャケットやグローブを透明ゴミ袋でくるんでリヤキャリアに縛り付ける。万が一雨に降られると、帰りに濡れた装具で走らなければならないのは避けたいところだ。ヘルメットも同様に袋に包んでメットホルダーへ。
準備OK、さぁ登山開始!。といっても出だしは中禅寺湖畔の約1時間のアプローチ歩行である。以前半月山に登った時もこの道を通ったが、今回は周囲の紅葉が美しい。このアプローチ自体も今日は楽しみにしていただけに、1時間がまったく苦にならなかった。
イタリア大使館記念公園から先は観光客もめっきり少なくなり、独り占めの中禅寺湖という雰囲気に酔いしれながら歩く。狸窪の先になると一旦周囲の紅葉は少なくなるが、湖岸からの風景が大変美しくなる。八丁出島と小寺ヶ崎の中間点辺りから見る中禅寺湖と男体山はイチオシの絶景である。
歌が浜Pから社山 | 狸窪から八丁出島 | 小寺ヶ崎 |
湖岸と周遊道の間にフカフカの落ち葉が堆積していて心地よい。久しぶりに足裏に感じる感触で、季節が移り変わっていくことを感じ取ることが出来る。膝近くまである落ち葉をラッセルしながら尾根を辿る里山歩きの日ももう少しでやってくるだろう。
阿世潟からはいよいよ登山道だ。岩がゴロゴロとした箇所を足の置き場を考えながら登っていく。やがて土が出て歩きやすくなると、そこからほんの一登りで阿世潟峠である。前回半月山に登った時はこの区間で既に息が上がっていた事を考えると、何の苦労もなく登る事が出来るようになった自分の体力の変化に驚く。
峠で給水休憩をしていると足尾側から登ってくる人がいる。かつては中宮祠と足尾を結ぶ通商の為の峠であったと言われているが、そんなロマン漂う道をトレースしてみるのも一興では無いかと思う。
阿世潟峠へ到着 | 社山への道 |
阿世潟峠から社山への登りは初めこそ穏やかだが、直ぐに急登の本性を表しだす。尾根の中心線から僅か南側に通る道からちらとら見える男体山と中禅寺湖は木立に邪魔されているが、この後展開される好眺望を予感させるには充分であった。やがて無人の雨量観測所があるピークが見えるといよいよ登りは本腰である。
まずはあそこまでだな、と覚悟を決めればなんてことは無い・・・筈だが、結構苦戦。だが雨量観測所まで登り詰めると、そこからは南北遮るもののない眺望尾根歩きのスタートである。
折角なのでピークのてっぺんににある雨量観測所に寄り道をするが、実にシンプルなもの。円い筒に雨を溜めて測定し、そのデータを発信するアンテナがあるのみである。でもよく見ると電源はどこから取っているのだろうか?謎である。
雨量観測所の先は少しガレた箇所があり痩せ尾根になっている。注意して進むと、次は背の低い笹尾根となる。実に気持ちの良い山道だ。
雨量観測所が見えた | 南の峡谷 | 雨量観測所のアンテナ |
雨量観測所本体(^_^) | 雨量観測所を後にして | 笹尾根を登っていく |
巻くでもなくジグザグも無く、ひたすら等高線に逆らって尾根を登り詰めるストイックな登りに汗が頬を伝う。時折下山してくるハイカーから「ヤラレテますね」といった風の視線を送られのがちょっと恥ずかしいが、実際自分も後で下山した時にすれ違う登りの人は皆一様にヤラレた表情で登っている。あいこである。社山を往復した者だけが共有しうる、はにかみみたいなものじゃないかな。
眺望はすこぶる素晴らしい。頻繁に足を止めるのは景色が素晴らしいから、それとも息が上がっているから、想像におまかせしよう。
暫くすると、腰まで丈が有るような笹をかき分けながら登り詰めるピークがある。笹の急登の上で三脚を立てて中禅寺湖にレンズを向けている人がいるが、余程良いアングルなのだろう。胸突き上げるようなこの急登をいなすと、その先にやっと山頂ピークが全容を現す。
後ろの景色に見とれてまた休憩 | 腰ほどの笹を登り詰める | ようやく山頂が見えてきた |
最後のツメは登り初めの元気があればたやすいくらいの感じなのに、既に体力を搾り取られているので足取りが少し重い。何とか、えっちらおっちら力を振り絞りどうにか山頂を踏むことが出来た。
昼食は山頂の西側にすぐある眺望地で取ることにした。山頂自体は樹に覆われていて男体山しか見えないが、眺望地は南から北西にかけて遮るものの無い大パノラマである。特に黒檜岳に向かう笹に覆われた稜線やその奥に続く皇海山方面への山並みは日光の奥座敷然としていて実に素晴らしい。
社山を越え、大平山に寄り道をして黒檜岳から千手ヶ浜に抜けるルートもいつしか実現してみたいものだ。
社山頂上 | 西にある眺望地 | 大平山と黒檜岳 |
南側パノラマ | 遠く足尾の街 |
下山は来た道をピストンで戻るだけだが、とにかく中禅寺湖に突っ込んでいくように降りていく景色が素晴らしい。遠く八丁出島が小さく見えて、観光遊覧船の通った跡が湖面に一筋に描かれている。紅葉自体は深紅の葉こそ多くは無いが、浅い色とりどりの木々に覆われた周囲の様子はなかなかの景観である。
中禅寺湖に向かって降りる | 正面は半月山 |
阿世潟峠で一旦腰を下ろして休んでいると、先ほど社山の山頂で食事をしていた白髪の60代くらいの男性がスタスタと半月峠方面へ進んでいった。はなから阿世潟に降りる積もりはなかったので、自分のような若い者が休んでいたんじゃ仕方がないだろうと発奮して出発。
笹尾根は、社山のそれと比べると少し丈があるがどこか優しさに包まれているようなそんな雰囲気がある。だが油断していると案外急登なのであっという間に体力消耗だ。
くだんの男性も時折腰を下ろして休んだり、自分も息を整えるインターバルが頻繁になる。抜きつ抜かれつしているうちに、
「社山の後のこの登り返しは堪えますね」と話しかけると、
「そうですね、もう足が出ない。若い頃は平気だったんですが。でもこちらは静かで良いですね。社山は良いけどやはり今日は随分人が多かったですから」。
汗を拭いながら語る面持ちに、山を心から楽しんでいることがよく見て取れた。そんな静かな笹の登路脇に孤高に燃える紅葉もまたよく似合うものである。
山王帽子山と太郎山 | 阿世潟峠から笹尾根を登り返す |
半月峠手前の1655mPに登り詰めると、もうこれ以上登りは無い。あとは下るだけである。
先に到着した自分は水を飲み、パンのかけらを口に放り込み最後の休憩を取る。あの男性もやがて到着して少し離れたところで休んでいる。ふっと一瞬、柑橘系の果物の香りが漂う。男性が口にしているであろうその甘酸っぱい香りを合図に自分は腰を上げた。「お先に」「お気を付けて」と会釈して別れる。口数の少ない者同士の時間であったが爽やかな気持ちになることが出来た。
狸窪への降下途中で八丁出島 |
概略コースタイム
歌ヶ浜駐車場発(9:38)-狸窪(10:10)-阿世潟(10:34)-阿世潟峠(10:53)-雨量観測所(11:21)-
山頂(12:08)-西眺望地着(12:10)-昼食休憩-再出発(12:54)-雨量観測所(13:35)-
阿世潟峠(13:49)-1655mP(14:31)-半月峠(14:43)-狸窪(15:24)-歌ヶ浜駐車場着(16:07)
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