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リベンジ、桝形山

アーカイブ:塩原の山達  日時: 2011年02月13日 22:10

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 前回(1月30日)、登り逃した桝形山のリベンジである。

 三連休の二日間にかけて通過した低気圧のせいで、平野部にもたっぷりと降雪があった。山間部の積雪は疑う余地も無しのパウダースノーであろう。そんな白銀の世界を求めて再び八方ヶ原へと向かった。

 前回は軽いスノーハイキングとタカをくくっていた。八方ヶ原がまさかの好コースコンディションで、スノーシューが埋まる程の深雪とは想像していなかったのだ。そんな嬉しい思い違いがあだになり、少々消化不良の感が拭えなかったのであった。

 今回はトレッキングシューズに嫌というほど防水スプレーを吹きかけ、オーバーズボンの下にスパッツ装着という体勢で望む。そしてもう一つの新兵器。スノーシューが西洋カンジキと言われるならば、元祖かんじきであるワカンを用意した。
 きつい斜面を登るならヒールリフター付きのショートめのスノーシューというのが昨今のトレンドだろう。しかし、所有の安物スノーシューは平地歩き用。要は雪遊び用である。昨年はこのスノーシューで大間々から八海山神社を往復したものだが、稜線までの急登の間はスノーシューのテールが邪魔で登り辛かった。ワカンの先行者の軽快な雰囲気の足跡を見て溜息をついたものである。

 今回のコースは緩斜面の連続故に、ワカンよりスノーシュー向きなのは言うまでも無い。だが、ワカン扱いの習熟と歩きの感覚の確認の為に帰路に頃合を見て履いてみることとする。

 八方ヶ原へ向かう道も、もうすっかりお馴染みになった。学校平が近づくにつれてどんどん圧雪となっていく。今日もゲレンデの状態は良好だろう。眩しい青空と、時折舞い降りる雪が朝の光を受けてキラキラと輝く。

 駐車場は既に数台の車があったが、皆大間々方面へ向かったようである。八方湖へ向かう林道は自分が一番乗り。スノーモービルも今日はまだ入っていないようだ。

     
バッチリ圧雪    今日は一番乗り   
     
   昨日までのトレースも新雪に覆われている    展望台周辺も足跡は無い

 晴れているせいか、気温が若干高めで汗ばむ。展望台のやぐらでインナーのフリースを一枚脱いだ。背中のワカンが出番待ちだが、まだまだお預け。

 進めば進むほど、新雪の沈み込みは深くなっていく。吹き溜まりは膝近くまで埋まるので結構なラッセルである。脇道に一本入ると、これまた裏切ることの無い無垢なパウダースノーエリアが待っている。

     
筑波山    出番待ちのニューアイテム    無垢なパウダースノ

 桝形山林道に差し掛かると、前回も撮影した「熊出没注意」の看板が雪でほぼ埋まる寸前。積雪量の多さを改めて感じさせる。まるでシルクを敷き詰めたような綺麗な雪道がどこまでも続いていく。

     
スノーシューでもここまで沈む    前回に比べて埋没寸前    眩しい新雪


 我、粛々と雪を踏みしめ向かう先に何もなし。伴侶は我が足跡のみ。そんな桝形林道を進み前回撤退を決意した地点に到達。林道を最後まで詰めて、短距離のラッセルか、あるいは此処から緩い尾根を目指して樹林に突入か。

 ここまで来るのに、緩傾斜とはいえ新雪歩きにだいぶ体が慣れてきている。靴もスパッツと防水スプレーのお陰でまったく問題は無い。地形図を見る限りは此処から登るのが絶好のポイントであろう。

 一歩踏み出し植林帯に入ると思ったほど沈み込みも無く、案外雪が締まっていて歩きやすい。なによりも緩斜面なので体力はさほど消費しないからこれならば安心だ。

     
後続は我が足跡のみ    前回の撤退地点    樹林に足を踏み込むと

 一登りするとすぐに林相が変わり広葉樹の自然林となった。一気に空が明るくなって気持ちよい。冬枯れの枝越しに、雪煙が舞う前黒山の勇姿が見える。

 高みを目指して登っていくと、地形図では判り辛いが稜線へと突き上げた。稜線上はことのほか雪が深くてラッセルも大変で難渋するが、、向かうべきルートは明瞭なので気軽である。

     
気持ちよい広葉樹林へ抜けた    登路を振り返る    行く先に道は無いがルートは明瞭

 暫くすると、まだ真新しいトレースが行く手を横切っている。先行者か?桝形林道に足跡は皆無だったから何処か他のルートがあるのだろうか?

 近づいてみると、稜線を上から降りてきた"そいつ"は直角に左折して谷に降りていった模様。足跡を観察すると、沈み込んだ足先の形が犬のような動物にも見える。ハンターの気配が無いから猟犬の可能性は無いとは思うのだが。

     
先行者か?    谷に降りていくトレース    犬の足跡なのか?

 桜沢から吹き上げる強い風の作り出す造形美。雪庇のミニチュアのようなオブジェがあった。角度を変えてみるとディシャで掬ったアイスクリームのような感じもして面白い。人知れず山中にて繰り広げられる自然の美しさに改めて感動。周囲には先ほどの足跡よりもっと新しい、蹄の形がくっきりした足跡があった。形が崩れていないことから、ほんの直前に付けられたような雰囲気である。 

     
雪庇のミニチュア    真新しい蹄の足跡    前黒山が大きい

 斜度が緩いうえに夏道は雪に覆い尽くされている。どこをどう歩くかは自分一人が決めることである。進路を間違える訳にはいかないが、ラッセルさえ厭わなければどこでも通過可能なのは、薮漕ぎの辛さを多少なりとも知る者にとってはありがたいことである。
 そろそろ山頂という頃になってくると、樹の枝の高い所に括り付けられている青や赤のリボンが見られるようになり、これを追っていく。

 登り詰めた所が桝形山の山頂である。三角点の存在を示す標柱のてっぺんが少しだけ雪から顔を覗かせていた。先ほどまで吹いていた風が運よく収まってくると、静寂が支配する山頂は、抜けるような青空とキラキラと光り輝く雪の結晶に包まれる。ザックを降ろしいつものように湯を沸かし、食後の熱いコーヒーまでの至福の時間だ。

 食事の間穏やかだった風が再び吹き出してきた。木々を揺らしてごうごうと凄みがある。気温も急に下がってくる。束の間の自然の配慮に感謝しつつ山頂を辞することにした。

 さて、帰りはワカンの履き心地を検証することにしよう。

     
雪に覆われた桝形山三角点       スノーシューからワカンに選手交代

 浮力だけならば、やはりスノーシューに比べると劣るが、それは構造上致し方のないことである。取り回しのしやすさや急斜面での足裁きは思ったとおりワカンのほうに断然軍配が上がる。沈むといっても許容できないレベルではないので、アイゼンの同時装着も考えるならやはり登山はワカンだろうという結論に自分の中では落ち着いた。

 帰路の林道でスノーモービルのキャタピラ痕を歩いて感じたが、スノーシューではこのキャタピラ痕が足幅に合わずに思いのほか歩き辛かったが、ワカンでは快適であった。極端に雪面が硬くなっている箇所は、ワカンの2枚の大きな爪が食い込まずにかえって歩き辛いという側面もあったが、そんなに硬いところは八方ヶ原には殆ど無いし、そういった所はむしろアイゼン単体装着になるだろう。

     
自分のトレースを忠実に辿る       ワカンは深雪だとこんなに沈む

 八方湖の手前から車道に出ると傍らに牧場へ向かうトレースが見られた。このまま車道を行くのもつまらないのでトレースを追ってみることにした。車道から大きく外さなければ駐車場への復帰も難しくはないだろう。

     
クラストした所はスノーシューより楽    柵を越えるトレースを追う   
     
   牧場内の風景   

 トレースは、時折牧柵を越えながらも続いていく。夏場なら放牧地は立ち入れないので、雪のある時ならではのコースであろう。

 やがてハイキングコースと合流する。ここから先は前回も歩いているが、「冒険コース」方面は誰も歩いていない。朝からずっと新雪にトレースを付け続けてきたが、風紋で美しい雪原を惜しげもなく踏みしめて進んでいくのもまた楽し。雪三昧の八方ヶ原スノーハイクであった。

     
時折柵を跨ぐ       『冒険コース』はトレース無し
           
     

概略コースタイム
駐車場発(9:10)-展望台(9:48)-桝形林道入口(10:23)-林道より樹林へ(10:42)-
広葉林帯へ(10:50)-桝形山頂上着(11:28)-昼食休憩-下山開始(12:13)-
桝形山林道へ復帰(12:49)-牧場へ入る(13:29)-ハイキングコースに合流(14:00)-
冒険コース分岐(14:17)-駐車場着(14:35)

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コメント (4)

Non:

 こんばんは。早速お邪魔しました。そういえば、大間々から八海山神社の往復で、「ワカンの
先行者の軽快な雰囲気の足跡」をまじまじとご覧になっていたんでしたね。こうした履き比べを
なさった理由が、よく分かりました。ワカン、かなり優秀ですねぇ。

 私自身はそうした比較はしないまでも、ちょっとした雪遊びなら行くのに、しばらくの間
スノーシューも履いてないので、久しぶりに「沈まない感覚」を味わいたくなりました(笑)

 そうそう、気になったのが足跡。体高や歩幅から考えたら鹿なのかなぁって思ったんですが、
意外にぎりぎりですれ違ったりとか、あるのかもしれませんね。

 最後に、
>ラッセルさえ厭わなければどこでも通過可能なのは、薮漕ぎの辛さを多少なりとも知る者に
>とってはありがたいことである。
この1行、まっちゃんさんならでは!と思いました(^^)

まっちゃん:

Nonさん、こんばんは。

早速ワカンを買ってしまいました。
ショップに行くと、黒く塗装したおしゃれな感じのものも売ってますが、アルミの生地のままのほうがなんか無骨っぽくて良い感じです。
これって、他の種類を見た事が無いので、作ってる所は一箇所だけなんでしょうかね。

雪山での動物の足跡は結構リアル感があって楽しいです。
実物に出会えたらもっと最高なんですが、ザグザグしながらこの静かなエリアに侵入していくのだから、彼らにとっては実にやかましい限りなのでしょうね(笑)

リンゴ:

13日と言うと、私も八方ヶ原を予定していた日です。
途中まで上がりかけたのですが、県民の森分岐の伐採地付近でUターンして鶏岳に向かってしまいました。
今週末こそはと思っているのですが、この雨と気温の高さで雪の状態が心配ですね。
枡形山はまだ未踏の地ですので興味があります。
熊の出ない今のうちか、シロヤシオの時季がチャンスかも!

まっちゃん:

リンゴさん、こんばんは。

何か急に気温が上がってきてしまって拍子抜けですね。
まぁ、一般的には暖かくなるほうが吉なのは言うまでもありませんが。

八方ヶ原のスノーハイクは実に楽しいですね。
傾斜が緩いのでスノーシューには最適だと思いました。
今年はワカンも入手して今回練習しましたから、来季は八海山神社よりもう少し上を狙ってみたいなと思ってます。

枡形山の山頂周辺は見事な自然林で素晴らしい所です。
是非無雪期に行ってみたいですが、単独だと熊に取って食われそうなので、徒党を組んでいく時に是非声を掛けてください。

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