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不動岳

アーカイブ:安蘇の山達  日時: 2011年03月05日 22:00

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 上永野にある不動岳。下野新聞百名山ではあるが、いかにも地味な雰囲気と人気の低さに天邪鬼な自分は妙に登校意欲を駆り立てられる、そんな山である。

 今回は塩沢峠を経て登る一般ルートを歩き、不動岳と北東にある613mP(雷電山)を踏む。下山は、雷電山から北西に伸びる顕著な尾根を辿って落合の集落へ着地するという計画である。このルートは尾根を忠実に追えばさほど難しくは無いが、一般路では無い為、ルーファンや悪路の経験者以外は通過しないほうが無難である。また、塩沢峠へ至る谷詰めの正規(?)ルートも一部不明瞭の場所があるため、山慣れない方は経験者の同行が好ましいと思う。

 ネット情報(多謝)通りに与州公民館に車を置かせて貰い出発をする。なるほど、ネットの不動岳記事で散見される犬の吼え声が随分間近に聞こえるではないか。この鳴声の主は、下山時の着地ポイントである長壽院の脇にある民家に飼われている2頭の犬である。
 地元の軽トラが通過したくらいで大騒ぎで鳴きたてるので、登山口に向かう自分は彼らからみれば立派な侵入者。朝から大いに吠え立てられた。ただ面白いのは鳴きながら尻尾を振っているのだ。口笛を吹いて好意を現すと鳴くのをやめる。とりあえずいつもと違った状況で吼えるなら番犬としては一応仕事をしていると評価される。過密した住宅地ではちょっとした騒音問題に発展しかねないだろうが、こののんびりした里では瑣末なことのようである。

 この元気な2頭の鳴声は遠く不動岳の山頂までにも到達する。今日の下山ポイントは彼らが待ち構えている場所の至近の薮から出てくる可能性があるので、下山時に大騒ぎになるのではないかと登る前からそれだけは憂鬱であった(^^;

 歩き出して暫くは舗装の林道を行く。マジックで書いたような素朴な手作り道標があった。途中、人が居るのか居ないのかよく判らないが、庵のような小屋が両脇に二軒ほどあった。週末の隠れ家として道楽でこんな所に住むのも一興だなとお気楽頭で進んでいくと、途中に「動物のフンに注意」という看板があった。肝心の箇所が色あせて見えなくなっている。謎掛けのようでなかなか飽きさせない道中である。

     
与州公民館に駐車    色あせゆく手作り道標    正解は(フン)に(注意)

 やがて舗装が切れ、枝打ちされた杉の葉が堆積したフカフカの林道となる。はじめ沢沿いだった道も沢底を歩くようになってくると、放置された倒木が邪魔になってきた。

     
植林地の林道を行く    放置倒木で荒れだす    谷を詰める

 沢の水が消え、枯れ沢になる頃には倒木が更に激しく折り重なり、歩き辛いことこの上ない。確か右手の尾根に登ってしまえば早晩ルートに戻れるだろうと考え、若干急ではあったが側面を直登した。この時、地図を見て現在地の確認を行わなかったのが実は失敗。30~40mくらいの標高差を登り詰めてGPSを見たらびっくりした。途中で谷の分岐を一本見落として少し南側に入っていたのだ。従って、尾根を乗り越してまた北側の谷へ戻らなければならないという事態になってしまった。
 落ち葉が堆積していて滑りやすい。神経を使いながらじりじりと下降していくが、この乗り越し迷走で思いのほか体力を消耗した。このクラスの山で最近筋肉痛になることは無いが、これを書いている今、太ももの痛みがこの時の瞬発力を物語っているようである。

 復帰した谷も状況は同じで、相変わらず歩き辛い荒れ沢である。上を窺うといよいよ谷が詰まろうかというあたりで、今度はGPSと地図で念入りに現在地を確認してから右手の尾根に取り付く。このルートは地形図の破線ルートそのものだが、定まった踏み跡は無い。決して一般登山道では無いだろう。山の経験が浅い人は注意したい箇所だ。

 尾根に取り付くとよく踏まれた道が現れた。下手のほうに行くともしかしたら先ほど気がつかなかった分岐があって実はこちらが正解ルートだったのかもしれない。このあと山中で出合った数人に尋ねると、一様に「道が判らなかったので谷から尾根に直登で取り付いた」と証言している。件の尾根を下ってみれば判ることだが、今日の自分の予定では帰りに此処を通らない。

     
歩き辛いことこの上なし    谷を詰めきる前に右手の尾根へ    よく踏まれた道が現れた

 尾根の心地よい陽だまりで心が安らぐ。一休みして歩きだすとすぐにトラバース状に登っていく。再び植林帯の中を進んでいくと、首の欠けた地蔵様と佐野方面の山塊が目に飛び込んできた。塩沢峠に到達である。

 首かけ地蔵の背中に続く稜線を辿れば高原山から尾出山へと勝道上人の修験道である。いつかこちらも歩いてみたいものだが、今日はここから南へと不動岳を目指す。西側の谷からは、鹿なのだろうか。枯葉を踏む足音がこちらを窺っている。

     
塩沢峠へ到着    峠より北進すれば高原山へ   

 不動岳までの尾根道は、広葉樹の穏やかな道。それまでの暗澹たる谷詰めが嘘のような快適さである。あの苔むしてじめじめした谷を我慢した者のみが御褒美で歩ける明るい尾根である。不動岳に近づくと尾根が痩せてくるが、特に岩で難儀するとかそういうこともなく、また左右に木が生えているので通過に特に困難もない。

     
暫くは穏やかな尾根道が続く       この先尾根が更に痩せるが問題は特に無い

 雷電山の分岐を見て、ほんの少しで不動岳の山頂である。この時期は枝越しに幾らか景色を覗くことが出来るが、春先から葉が生い茂ればまったく景色の無い山頂となるだろう。それは途中の尾根も同じことで、この山は冬場以外は薦められないだろう。

     
雷電山への分岐点    不動岳山頂   

 山頂は景色も良くないので早々に撤収。雷電山に向かうべく踵を返す。

 雷電山に向かう尾根もまた自然林で、途中のコルなどは木もまばらで実に長閑で良い雰囲気だ。

     
640Pとの間のコル    雷電山が見えてきた    640mP

 640mPからは少し急な下り。高度を下げ過ぎでは無いかと気を揉んで地図を出そうと足を止めると、今日一番の好眺望ポイントから日光連山が見える。男体山が一部部分しか見えないアングルが新鮮だ。

 残りの僅かな登りを詰めればそこが雷電山の山頂である。石祠と小さな金属製の鳥居があった。毎年三月の下旬には麓の集落の講があるというが、今はまだ特に新しい造作や飾りも無くひっそりとした感じである。

 食事の準備に取り掛かっていると、不動岳の山頂で逢った単独の男性がやってきた。歳の頃は自分より一回り若いくらいだろうか。彼は不動岳の南尾根を辿って下山を試みるも途中でルートが不明になり断念。1時間40分もロスタイムして山頂に登り返したという。山頂で休憩を取る彼を残して自分が雷電山に先発したというわけだ。
 話によると東京から電車に乗り、途中ヒッチハイクをしながら登山口にやってきたという。一週間前も隣の山塊の尾出山と高原山に登ったということだが、地元のハイカーでも渋好みのこのエリアに毎週通っているのだからよほど静山が好きと見える。

 「東京なら奥多摩とか山梨あたりに良い山が一杯あるのではないですか」と尋ねると、そういう山は人が多くて行く気がしないという返事が返ってきた。その点は自分も同意できるが、東京から遠路はるばる、しかもヒッチハイクまでして北関東の寂れた山を歩くというのは静山歩きも筋金入りだなと思った。

     
コース唯一の眺望箇所    雷電山頂上   

 東京のハイカー氏は行動食よろしく慌しくカレーパンを齧ると手帳になにやら書き込むと直ちに出発していった。下山路は・・・

 なんと、躊躇することなく北西尾根を降りていったではないか。自分も今日のメインコースと考えていた情報が少ないこのルートを良くぞ遠方から歩きに来たものだ。ますますもって奮っている。

 さぁ、地元代表として負ける訳にもいかない・・・というのは冗談だが、自分も出発。

 雷電山から伸びる尾根は北西と北東の2本。麓まで顕著に伸びる北西の尾根が今日の下山メインコースとなるが、先ほど既に先発されてしまって答え合わせが済んでいるような心持なのが少し残念である。

 初め急な下りだが、斜度が緩んでくると時折松の老木が点在する自然の趣が深い尾根となる。

 標高400m地点で眺望が急に開け、不動岳と塩沢峠を結ぶ稜線をはっきり見渡すことが出来る。この地点からの尾根の選択が少し難しかった。事前の地形図検討では、真北に下りる案と少し東に振って降りる案。真北は斜度もきつく下のほうに薮が見える。先行者はどちらに降りたか判らないが、ここは手堅く東向きを選択した。初め不明瞭だった尾根形も進むに従い段々と鋭敏なルートとなっていく。所々積もった落ち葉で足元が滑りやすいので神経を使うが、GPSを見てももはや進路に間違いは無い。その証拠に件の犬達の鳴声が向かう先からよく聞こえてくる。この辺りで道迷いをしたら犬の鳴声を目指して歩けばよいという訳だ(笑)

     
北尾根にとりかかる    松の老木が点々と続く    尾根終盤の急降下


400m地点より塩沢峠~不動岳間の稜線を望む

 下るに従い段々薮っぽくなってきたが、我慢して尾根をキープしていくと長壽院の庫裏の脇にある荒地に着地。元気な二頭の犬に盛大に迎えられたのは言うまでも無い。

  
最後は多少薮っぽいが尾根キープで進行    長壽院の右奥に着地

概略コースタイム
与州公民館発(9:14)-コースミス(9:57)-リカバリ復帰(10:21)-谷から稜線へ(10:55)-
塩沢峠(11:08)-不動岳(11:55)-雷電山(12:23)-昼食休憩-行動開始(13:03)-
400m眺望地(13:36)-300m地点でGPS電池切れ(13:51)-与州公民館着(推定14:00頃)

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コメント (4)

けむ:

静かでいい感じの山ですね。
それにしても東京からわざわざ電車でくるとは驚きです。
人がいない山を歩くのが当たり前みたいに思っている私は、ぜいたくもんなんでしょうねえ。

そんな静かな山なのに、里から響き渡る犬の声・・・
不動岳まで聞こえるとはハンパないでかい声ですね。
口笛を吹くと一瞬黙るということは、おそらく「遊べ! 遊べ!」と言ってるんでしょう。
入山前によーく手なずけてから登れば・・下山時にはさらに大歓迎されるか。だめだなこりゃ。

Non:

 こんばんは。沢を登って尾根を下る、しかも周回で、読図歩きにはぴったりなルートですね~
展望の少なさがややネックですが(Non夫は展望好き)、歩いてみたい~と思っちゃいました。
 でも、GPSはこういうルートミスの時も便利ですね。ロスが40~50mで済むんですから。
普通にルーファンで行くと、もし沢を間違えたままだったら100m登るかもしれないし、
行きたいのは南側の沢だった、と、場合によっては真逆に向かう可能性もあります。

 東京から来たという人、情報の少なさがいいのかもしれませんね。かなり静かな山が好きで。

>けむさん
 思わず笑っちゃいました。さすがはけむさん、犬たちの気持ちが解っていますね(^^)

せろーG:

まっちゃんの 今シーズン籔山もそろそろ 最終章ですね?

お疲れさんでした(^^)v

まっちゃん:

>けむさん

犬は小型犬でしたが、何せ回りが静かな里なんで吼え声は随分遠くまで聞こえてました。
音といえば、朝のうち北側の山で発砲音が連続してましたね。不動岳側は休猟区なんで安心ですが、どうも鉄砲の音は肝を冷やします。また、丁度正午には近くの山で発破があり、腹に響くような音でした。


>Nonさん

不動岳は稜線までが地獄、登ってしまえば天国。下りの北西尾根は自然味溢れるルーファン。
全体あわせるとなかなか面白い山でした。

落ち葉の急登急降下は、思ったより気力も体力も使いますね。
保険として細めのザイルを装備に加えようかと思ってます。


>せろーGさん

娘の件で3月はドタバタしそうです。
子供に金が掛かるので、ますます親父は山の霞でも食っていくしかなさそうです(笑)

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    不動岳
    >けむさん 犬は小型犬でしたが、何せ回りが静かな
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  • せろーG
    不動岳
    まっちゃんの 今シーズン籔山もそろそろ 最終章です
    3月 8日

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    不動岳
     こんばんは。沢を登って尾根を下る、しかも周回で、
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  • けむ
    不動岳
    静かでいい感じの山ですね。 それにしても東京からわ
    3月 8日

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  • PIAN PIANO.
    バイク仲間であり山仲間のなおさんのブログ。ブログ名のPIAN PIANO.(ピアン ピアーノ)は、イタリア語で「あせらず、ゆっくり」という意味だそうです。

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