まだ栃木の山に登ることに縁が無かった頃、星野遺跡公園に遊びに行ったことがある。お椀を逆さまにしたようにどっしりと構える山が、公園に展示されている縄文式藁屋根の風景に妙に似合っていた記憶があった。これが今回登る三峰山(みつみねさん){605m}である。
砂利が綺麗に敷き詰められた御嶽山神社隣接の駐車場に車を駐めて、神社境内から里宮へ進む。社殿脇の石段から今日の登山はスタートだ。
車でも無理すれば上がれそうな林道を歩いていくと左手の清滝不動に着く。白装束をまとった修験者が滝に打たれるさまが目に浮かぶようだ。道はここから荒れ出していよいよ山道然となっていく。
里宮右脇から登山道 | 社殿と山と畑 | 清滝不動 |
普寛霊神の立派な社に到着する頃にはうっすらと汗をかき始めた。右手の道はと見ると、石祠が急な斜面に沢山安置されており、そこを進む我々もまさに修験者の心もちである。
ベンチのある御嶽大神御岩戸入り口で一休みをする。見上げると殆ど垂直な感じで鎖が下がっている。鎖の上に上がれば岩戸の中が覗けるのだろうが、高度もありとても取り付く気にはなれない。
コースはここから右に巻いていくと眼下に星野の里が見渡せるようになる。
普寛霊神の先 | まさに修験の場 | 御嶽大神御岩戸 |
右側が切れ落ちたトラバース気味な道を慎重に進むとまた樹林に吸い込まれていく。枝打ちが徹底されたよく管理されている樹林は、ピリリとした山全体が持つ信仰の雰囲気に似合っている。
ようやく上に明るさが見えてきた。尾根に出てみれば、稜線の日溜まりに残る残雪が楽しい。そんな明るい尾根の先は奥ノ院である。
枝打ちされた美しい樹林 | やっと明るい尾根に | 奥ノ院 |
奥ノ院からの眺望は西側に少し開けているが、他は微妙に枯れ枝が邪魔していて今一つだ。三尊立像のおでこのシワがリアルで可笑しい。三人の神をもう少し個性豊かに表現したらよかったのに・・・なんて言ったらバチあたりかな。
奥ノ院から一旦少し戻り、尾根沿いに三峰山方面へ向かう。傾斜の緩い軽快な尾根道を歩き極楽気分。でも楽なのはここだけ。この後は足場の悪い急降下と登り返しが数回続くことになる。
前半の奥ノ院までのルートは路傍の石祠や社殿の数も沢山あり信仰色が色濃い。ある意味賑やかだったが、いつもの低山の風景にすっかり戻ってきたこの尾根にもふと気が付くと足元に神様が祀られている。
三尊立像 | 鼻歌交じりの快適尾根 | あちこちに神様が |
杉や檜の落ち枝が積もった急斜面は思いの外滑る。上から見ると滑りそうも無さそうな所でスルッといくのでなかなかに油断が出来ない。おまけに残雪が所々アイスバーン状になっている箇所もあり、ますますもって厄介である。
尾根の途中から南側にロープが張られ、立ち入り禁止の看板が所々に立てられている。吉澤石灰工業の採掘現場になっているのだ。昼頃に発破があると書いてあったが、山頂到着直前の11時50分丁度に辺りを轟かすズドンという音が聞こえた。
子供の頃父親に連れられて歩いた奥多摩の山で何度か発破の音は聞いた事があったが、こんなに近くで聞いたのは初めてだ。
幾度かの登り返しに汗をかきながらようやく山頂へ到着。山頂は木に囲まれて全く眺望は無い。西側の立ち入り禁止のロープの向こう側に石灰採掘場が痛々しく広がる。あいにく霞がちのため遠景もいまいちだが、まぁよしとしよう。午後から低気圧が接近してくるという予報の通り、風がにわかに強くなってきた。樹に覆われた山頂は逆に日溜まりとなり暖かなランチタイムを楽しむことが出来た。
ロープの向こうは立入り禁止 | 三峰山頂上 | 山頂南側 |
山頂から御嶽山神社に直接降りていく道もまた険しい。こちらもまた滑りやすいことこの上も無し。わざわざ道を外して斜面を直接歩いたほうが格段に歩きやすいところもある。
それまで下ってきた谷沿いのルートが突然険しくなり怪しい感じがした。今回は樹林が深くGPSも先ほどから衛星の補足が困難で殆ど役に立たない。地図とコンパスで頭をひねっているとH君が右手に寂しそうにぽつんと付けられている赤テープを発見。導かれるようにしてトラバース気味のヤセた道をやり過ごすとそこに浅間大神が祀られている。
ここからはハシゴとクサリとナイロンロープで慎重に降りていく。降りてしまえば、先ほどの谷筋と合流する。ハシゴを面倒がる人達が谷を直接降りてくるので、歩かれた感じが少し残っていて引き込まれそうになったのかもしれない。
山頂南側 | 厳しい下り | 浅間大神 |
浅間大神を過ぎると幾らか厳しさも和らいできた。いよいよ緩やかになるとほどなく林道に出会う。遠く向こうの山並みに続くが如く見える真っ直ぐな道は、それまでの緊張の連続であった一日を慰めるように穏やかであった。山中にH君と私のしりもちの置きみやげがあった事を知る者は、どこかでそっと見ていた神様以外には居るまい。
やれやれ林道だ | 確かに30分は無理かもね | 駐車場が見えてきた |
概略コースタイム
御嶽山神社発(9:10)-奥ノ院(10:42)-三峰山頂上着(12:08)-昼食休憩-頂上発(12:34)-御嶽山神社着(14:09)
今回は衛星の捕捉状況が極めて不良であり、軌跡の採取も不正確な結果となってしまった。
コメント (4)
こんばんは。ゲストブックに書き込んでいただいたコメントを見て、思わず、「ええ~!」
でした。何といっても、私たちは24日でしたので・・・ こういうこともあるんですね(^^)
さて、山自体の印象は私も同じです。予想していた以上に修験者の山というか、それこそ
宗教色が濃いというか・・・ 途中で「祠が何個(何基?)あったんだろうね」と会話に出たほどで・・・
山頂はなるほど、南側がよく開けている感じなんですね。途中から見えていたとおり、
採石場を見下ろすような。タイムアップで山頂を踏めませんでしたが、ヨシとしちゃおう(苦笑)
そうそう、【厳しい下り】の部分、凍結していませんでしたか? 今回こそは軽アイゼンの威力を
実感しました。それもあってかな・・・ 普通の山よりも疲れた気がします(^^;)
投稿者: Non | 2008年02月25日 00:51
日時: 2008年02月25日 00:51
早速ご覧いただきありがとうございます。
いやー、奇遇とはこのことですね。
私のほうは直前まで羽賀場山~お天気山縦走とどちらにしようかと悩んでいたのですが、さすがに先週の笹目倉から見たとき結構きつそうだったので、もうちょっと足場のしっかりした頃に行こうと考えました。
ところが三峰山のほうも負けず劣らずに足場悪かったです。
もっとも午後からの悪天を考えて早く撤収することを考えると正解だったような。
下りはホント気疲れしました(^^;
投稿者: まっちゃん | 2008年02月25日 21:36
日時: 2008年02月25日 21:36
こんばんわ 三峰山登られましたね。登りはじめの石階段結構きつかったでしょう。
信仰の山 修験の山ですよね。 私は山頂近くよりの石灰採掘場を眺めてがっかりした
思い出が強く残っています。
24日の日に 玉田山に登ってきました。頂上よりの眺望は全く駄目で 嘉永元年に
建立されたらしい祠が倒れていました。夜 大河ドラマ 「篤姫」の中で ペリーの
浦賀来航が嘉永6年?とか言っていました。そのころの 玉田住人があの祠を建てたんだなー
と感慨深いものがありました。
投稿者: せろー | 2008年02月26日 21:55
日時: 2008年02月26日 21:55
せろーさん、こんばんは。
登りもキツイし下りも厳しい。奥の院から三峰山への尾根の前半だけが極楽でした。
私も石灰採掘場にはちょっとがっかりでしたが、南側は吉澤石灰工業の山なんでしょうがないといえばしょうがないんですね。
でも、いろいろと変化があってそれなりに楽しめました。
鹿沼の玉田山、行かれたんですね。
ネットで調べたのですがあまり情報ありません。
岩山の東北東約1㎞あたりにある266mピークが玉田山なのでしょうか。
駐車地とルートを教えていただけますか。
投稿者: まっちゃん | 2008年02月26日 22:38
日時: 2008年02月26日 22:38