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残雪の笹目倉山

アーカイブ:今市鹿沼の山達  日時: 2008年02月16日 21:49

-- 『e-trex Leggend US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 車2台で離れた拠点間を結ぶ縦走コースをと以前から考えていたその第一弾、宮小来川より風雨雷山を経て笹目倉山、黒川へ降りていくコースを歩く事にした。

 少しのんびりしたスタートで、9時にH君と宇都宮市内で待ち合わせる。右手に古賀志山を見ながら西へと車を走らせる。正面に見える日光連山の冠雪もスッキリ晴れた青空に映えて一段と美しい。

 板荷を過ぎ、道が黒川に近づいてくる頃、正面にこれから登る山、笹目倉山(ささめくらやま){799.9m}のキッチリとした正三角形が目に飛び込んできた。ピラミダルな、とよく言われるがまさにその通り。

 間もなく今日のコースの着地予定地点、左手に清流園のお店(清流園は廃業してしまっているようだ)がある所にパジェロミニを駐めた。H君の車に乗り継ぎ、再び西へと向かう。
 程なく右手に、「笹目倉山 新登山道」の大きな看板出現。以前からこの道を通る度に気になっていたのだが、最近の流行のルートはこちらかららしい。この新ルート入り口のすぐ隣にも古くからある天善教の直登ルートがあるが今回はいずれもパスする。

 宮小来川にある日光市役所小来川支所にH君の車を駐める。事前に支所に連絡をしており快諾していただいた。ちなみに支所内には休日診療所も有り、まさに地域の生活に密着している施設のようである。

 支所から5分程歩き「鍛冶屋のカヤ」の案内の場所を折れて集落を越えて行く。最後の民家の右手からいよいよ山道である。

 鬱蒼とした植林地をガンガンと(ホントはそんな勇ましくなく休み休み)登っていく。典型的な里山の急登。いやはや容赦の無い登りだ。約一月ぶりの山行なので体がついて行かない。先日降った雪がザクザクと残っているが、高度を上げるに従い段々と一面の雪道になっていった。靴が潜り込まない程の深さと適度な堅さがあるので気にせず登っていく。だいぶ高度を稼いだかなと思った頃に北側に少し眺望が開けた箇所から鶏鳴山の大きな姿が伺える。

     
宮小来川からのアプローチ    残雪を踏みしめながら    鶏鳴山

 登り詰めればまたその先に登りが、そんなことを何度か繰り返しようやく風雨雷山へ到着。雪の鳥居をくぐれば、行儀良く並んだ三つの石祠がお出迎えだ。周囲を樹に囲まれまったく眺望の無いひっそりと静かな山頂。一息入れて再出発。雪の中の急登は続く。

     
風雨雷山    行儀良く石祠が3つ    雪の中の急登は続く

 標高が上がるにつれ雪が柔らかくなってきた。溶けてきているのではなく「溶けていない」のである。雪に靴がめり込む。折からの急斜面で、踏ん張る力がいつもよりも沢山必要なのでかなりバテバテだ。この程度で疲れているのだから冬山登山など到底無理な体力である。
 滑って仕方がないという程のものでは無いが、軽アイゼンを装着すればもう少し快適に登れるものなのであろうか。帰ったら早速軽アイゼンの購入を検討しよう。

 ルートは単純明快な一本道で迷うことはほぼ無いと思うが、それでもコース唯一の道標を見、後方にこれまた西側方面では唯一、されど樹間越しの日光連山を垣間見ながら更に登り詰めると笹目倉山頂。

 こちらも風雨雷山同様樹に囲われており眺望は全く無い。冷え冷えとした雪の山頂には幾枚もの山名板が賑わっているそんな中、天善教奥の院の社殿がどっしりと構えている。

     
山中唯一の道標    これまた西側唯一の眺望    笹目倉頂上

 ガイドブックやネット情報で、ここまでのルートは眺望皆無ということを知っていた。昼食は東側へ降りていくルートの途中に景色の良いポイントがあるらしいので、そこいらでと考えて山頂を後にする。

 山が三角錐のように険しいので、下りもまた厳しい。それでも天善教への道を分け、平成16年に新設されたとされている清流園ルートを進むと段々と南側の眺望が開け出してきた。日差しが充分に差し込むこちら側は、さっきまでが嘘のように雪が見あたらない。適当に道ばたに腰を下ろして食事にしようかと思案しながら歩いていると、ひときわパッと開けたポイントにあつらえたように切り株の椅子が3つ並んでいる。ここで食べずして何処でという好タイミングである。地図を見れば正面南側に見えるのは羽賀場山~777mピーク~お天気山の稜線のようだ。

 往路のハードな登りの疲れを、コース随一の好眺望で癒やして再出発。程なくすると、東へ向かう尾根への入り口に×印の細工がしてある。ここでふと思ったのが、今日の本来のコースである山頂から真東へ伸びる尾根伝いの下山路が見つからなかった事。新・分県登山ガイド(山と渓谷社)によれば山頂から東に延びる境界線上の尾根を進み徐々に境界線から離れ清流園管理道路に沿って下山するように案内されているが、そもそも山頂から東側は明らかに道は今歩いているコースしか見あたらない。積雪で見えなかったのかもしれないが、本で紹介する位のルートならばもう少しわかりやすい目印などが欲しいところだ。また天善教への分岐点も山頂直下の境界線上にあるとされているが、実際には数十m南へ高度を下げた場所に存在する(GPSで確認済み)。{新・分県登山ガイドの恐らく誤記と思われることについては後述}

 そんな訳で、ここの×印の先を東に尾根伝いに進めば地形図と相談してもほぼ予定のルートになるのではと考えたが、少し偵察をしてみると目前の急峻なピークを回避するには足場の悪そうなトラバースを強いられそうな感じなので、ここは無理をせずに踏まれたコースへと戻った。南に下りるこちらのコースは本来予定外ではあったが、事前検討段階からこちらのルートを使うことも考えていた為、状況は把握出来ていたので安心だ。

     
羽賀場山~お天気山の稜線    切り株で昼ご飯    この先危険

 急な斜面にジグザグに付けられた登山道は片側が切れ落ちている。道幅は50センチ足らずのところもありなかなか気が抜けない。途中横根山方面が綺麗に見渡せるポイントがあった。方塞山の電波塔が肉眼でも良く見える。

 道は厳しいがそれでも雪の斜面を降りることを考えれば極楽である。暫くすると下の方に広場と仮設トイレのようなものが見えてきた。何やら資材のようなものも置いてある。先ほど笹目倉山頂からピストンで下山していった2人組男性が、缶詰やら何やら広げてランチの真っ最中のようだ。

 広場まで降り立つとそこは金採掘口跡であった。新・分県登山ガイドの地図で示された場所とこれまた大きな食い違いがある。
 ここから先は木製のガードレールがあつらえてある砂利林道ともう一つは廃道化した林道の二手に分かれる。先ほどの食事中のハイカーに話を聞くとどちらも下で合流するらしい。砂利道を歩くのも嫌だったので廃道の方を選ぶ。冬なお背の高い枯れ草が邪魔をするこちらは、夏場はちょっと手の付けられないルートになるだろう。

 広場のところにあった採掘口から幾らか下げた所にまたもう一つ採掘口がある。下に綺麗な地下水が流れており、少し厳かな感じもする。ここから下は暫く人も歩いていないようで、日陰は降ったままの雪が残っている。幾らか堅めにはなっているものの、足跡の全くない雪をサクサクと踏みしめていくのは気持ちの良いものだ。ふと見ると何やら小動物の足跡が点々と続いている。

 再び背の高い枯れ草の海をやり過ごすと立派な休憩場が忽然と現れた。新旧の林道もここで収束する。

     
横根山方面    金採掘口跡    右手は林道、正面の廃道を降りてきた

 休憩所もそうだが、この清流園ルートは清流園の園長である渡辺久次さんが個人的に開拓整備しているという事らしい。ほぼ下山を終える地点には、自ら整備した滝や宿泊施設等なども見られ、川柳のようなものもあちこちに掲示されていて面白い。どうやら山好きが高じて開発に傾倒してしまったようである。お陰で快適かつ安全な登山を我々は享受出来るので感謝せねばなるまい。

     
立派な休憩所    久次の滝    他にもたくさんある

 登山口の派手な案内板からは暫し車道歩きだ。本来、新・分県登山ガイドの地図通りに歩けばパジェロミニをデポした地点に降りる筈だが、若干離れた場所に出てしまった。

 ここでもう一度、新・分県登山ガイドの誤記について検証してみよう。

1.天善教コースの分岐点の位置が実際の場所と違う
2.紹介されている山頂以降の記述は全て今回歩いた南南東へ降りてくるルートの内容と全く同じである。従って地図で示された山頂から東の尾根を辿るルートについての記述でない事は明らか。
3.ガイドブックに記されている下山地には清流園は存在しない。今回自分が車を置いた地点(清流園)は約300m程西へ離れた所にある。
4.案内にある清流園登山口の大きな標識は、今回歩いたルートの下山(登山)口である。

 つまり、新・分県登山ガイドに記されているコース内容の紹介文は今回我々が歩いたルートそのものであるが、地図がまったくもってデタラメであるということだ。ガイドブックもきちんとした検証を行っているとは限らないということをまさに体感してしまった訳だが、やはり最終的には自分で総合的に判断するしかない山の厳しさを再確認した次第だ。

     
いつも気になっていた登山道口    清流園は閉店したらしい    無断だが車を置かせて貰った

★番外編★

 比較的大柄なH君を窮屈なパジェロミニで小来川支所まで送り届けて解散。まだ時間も早いし、折角ここまで来たのだからと西へ車を走らせ滝ヶ原峠を越えた。標高が840m程もある峠の上は、笹目倉山頂同様やはり気温が格段に低い。ここから見る雄々しい日光連山はいつ見ても圧巻だ。

 日光市内から宇都宮市内に戻る時にいつも通る県道22号線(通称新里街道)は、途中で鞍掛山から半蔵山の中間地点をトンネルが貫いている。この鞍掛トンネルの開通により今市方面から宇都宮へと往来する車は随分と便が良くなったという。その理由はトンネルが開通する前はここを通るには旧道の峠道を通るしか無かった為である。

 いつもなら迷わずトンネルを走るのだが、すぐ隣の鞍掛山周辺の残雪状況も気になったので、偵察がてらすっかり荒廃し始めている旧道を進んでみた。

 深さこそは無いものの、しっかりと積もった雪道はもの好きな車(自分もそう)か、あるいは不法投棄の輩が付けた跡なのか。幾筋かのタイヤ痕が有るのみで深く静まり返っている。いくらか除雪されたとしても、この峠を冬場越えるのが大変であったことは想像に難く無い。下りのアイスバーンはテカテカで、たまらず4駆のローレンジにギヤを投入。歩くより遅いスピードで日の翳り始めた峠を降りていった。

     
滝ヶ原峠下より    雪深し 鞍掛峠   

概略コースタイム
小来川支所出発(9:57)-登山口(10:07)-風雨雷山(11:11)-笹目倉山頂上(11:59)-
昼食ポイント着(12:23)-昼食休憩-昼食ポイント発(12:55)-金採掘口跡(13:13)-
休憩所(13:37)-車道(14:03)-駐車地着(14:12)

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コメント (4)

Non:

 こんばんは。車2台で縦走コース、さっそく試されたんですね! この山は『新・分県登山ガイド』の
検証(3)が気になっていたので・・・ 有難いことです。迷わなくて済みました(^^;) 清流園も廃業して
いたなんて・・・ もしチャンスがあったら、まっちゃんさんの山行記録を元に歩きに行きたいです。

 ところで、やはり地図が大きく間違っていたんですね・・・。うーん、間違いから「地形図が読めるように
なってから歩け」という教訓を導いてもいいですが、ガイドブックは念には念を入れて欲しいものですよね。
 

まっちゃん:

今回は事前に有る程度下見していたので初めから?な感じはしていましたが、実際に歩いてみて幾つかの疑問が氷解してスッキリしました。

今回歩いたコースは前半ホントに全く景色無し。やはり、大きな看板の所からのピストンのほうがお勧めかもしれません。
バリエーションを加えるなら、登りに天善教からというのもアリかもしれませんね。

せろー:

こんばんわ せろーです。笹目倉登行記拝読いたしました。
雪中登山は軽アイゼンがいいですよ。

清流園の渡辺久次さんは 2年ほど前に他界しました。豪放磊落なおじちゃんで
70代位から自宅の製材業は 長男さんに譲り 清流園を開き 周辺の黒川沿いに桜を
植えたり キャンプ場 バンガロー 笹目倉登山道整備に力を注いだ人でした。
久次の滝なんて 自分の名前を 勝手につけちゃうし 女性大好きな ちゃめっけのある
大人でした。家にも幾度となく来て 庭石に車をよくぶつけていきました。 合掌(-_-;)

まっちゃん:

せろーさん、こんばんは。

渡辺久次さん、お知り合いだったのですね。
せろーさんのお宅に久次さんが行っていたということは・・・
せろーさんのお得意さんだったんでしょうか。

好きな事もああいった風に形に残るというのは素晴らしいですね。

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    せろーさん、こんばんは。 渡辺久次さん、お知り合
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