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晩秋の尾出山

アーカイブ:安蘇の山達  日時: 2008年11月09日 18:34
-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 どうにもこうにも山行と晴天が噛み合わない。もう半ば諦め気分だが、雨が降らなきゃいいやということでH君との2人山行と相成った。
 土曜日より日曜の方が若干天気快復の見込みアリという情報に心が動かされる所など、少し解脱しきれていない感もあるが(爆)、眺望二の次でも面白いのではと腹案していた鹿沼の山奥、上永野の尾出山(おでやま){933m}へ向かった。

 細い県道を進んで行くと、やたら熊注意とシカ注意の看板が目に付くようになる。そのうち路側に猿が2頭いるのを見かける。人家もまばらな奥地ならではの風景である。やがて川久保の集落を過ぎたあたりで砂利道の寺沢林道へ進入。ギアを四駆に入れた。

 寺沢林道は、今年の春に家内と永野の「たろっぺ茶屋」へ蕎麦を食べに来た時についでに足を伸ばして偵察済みである。今回の登山の駐車地も既に把握しているので安心だ。

 車3台程度の駐車スペースに駐めると、既に県外ナンバーの夫婦連れが準備を終えて歩き出すところだった。少し手前の路側にも1台駐まっていた。こんな天気なのに隠れファンが居るものだ。

 駐車地から暫くは砂利の林道を登り徐々に高度を上げていく。パジェロミニなら結構上の方まで上がれそうな感じだが、下山ポイントのことを考えると止むを得ない。

 林道歩きも馬鹿にならないものだ。そこそこに汗が滲んできてやれやれ終点まで到達。いよいよここから登山道である。

 尾出山への手製道標がくくり付けてある左手が、ガイドブッック等で紹介されているいわゆる正規ルート。他にも、林道から真っ直ぐ樹林に吸い込まれるようにして登っていく方にもワープロ書きの「周回コース」なる紙が木にくくりつけられていた。ネットで調べて見ると、「新コース」と言われているこちらは、峠(嶽ノ越)を経由せずに尾出山の山頂から南西に伸びる尾根を行くような感じである。後から地形図を眺めて見ると、谷を詰めて急登する正規コースより「新コース」の方が気分が良さそうであるが、情報不足故今回は見送る事にした。

 さてさて正規コースだが、スタート直後いきなり左側沢へ落ちそうになるトラバースルート。道幅は狭いというよりも殆ど無いに等しい部分もあり、きわどい箇所は流石にロープが張られているが、先ほどの車の主達も皆通行に難儀して渋滞している。沢へ滑落すればタダじゃ済まない位の高度差はあるので慎重に通過する。こんな時滑りやすい落ち葉は仇になるものだ。

     
林道終点からの取付地    沢沿いのトラバース    同左

 緊張のトラバース区間をクリアすると、今度は鬱蒼とした植林地を右手に見るようになる。左手の沢と合流すると、道は谷を詰めていく感じになる。不明瞭感が強いルートだが、谷の終点からは上手の峠へ直登に近い登りとなった。ここまで後ろのグループとダンゴ状態で登っていたものの、急登の途中で後ろから来た健脚夫婦に先を譲る。

 峠(嶽ノ越)へ着くと右手は尾出山へ、左は高原山への縦走路へとそれぞれ伸びる。禁猟区の赤い標識だけが目立つ静かな場所である。

 ここから上へ行くと段々と広葉樹が増えてくる。所々紅葉が見られ、木の切れ間から見える周囲の山々も同じ標高付近は色づいている。今回は紅葉を見たいという腹づもりもあったので、まずは満足である。

 山頂が近づくにつれ急登の連続で、更に所々に岩が目立つようになってくる。岩の背を乗り越して登って行くのが本来のルートのようであるが、鎖やロープも無く、岩登りの経験のある人で無いと難しいかもしれない位険しい箇所が多い。巻道が必ずあるのだが、こちらもまた厳しい状況で、時には直登、しかも滑落すると下は深い谷という箇所がところどころにある。この山は危険ゾーンが多いので、よほど山慣れしていない人以外は単独で歩いてはいけないだろう。

 「勝道上人修行 第二宿堂跡」の碑と小さな石祠の建つ山頂へ到着。さにあらん、こんな峻険な山ならさぞハイレベルな修行になったことだろうよ、と思いを馳せて(笑)食事とした。あまり景色の良くない山頂だが、明るい感じのする場所である。

 広い山頂に3グループが前後して到着し食事となったが、出発は我々が一番遅くてビリっけつ。僅かでも人が居なくなると実に静かな山頂である。気温も恐らく10度は割っているのだろうか、指先が冷たい。もうすっかり冬の気配である。

     
峠(嶽ノ越)    紅葉がちらほら    尾出山頂上

 先ほど息を切らしながら登って来た急登のピストンだから今度はジェットコースター状態である。そのまま谷に突っ込んで行ったら夜になって熊の餌食になってしまうのがオチなので慎重に次ぐ慎重で歩を進める。やがて下の方に先ほどの峠が見えてきて一安心だ。

 峠から825mピークへは標高差にして80m程度の登り返し。いつも食後の登り返しを歩くたびに、もう少し食べる量を減らしておけばよかったと後悔するものだ。額に汗を滲ませ息も絶え絶えに825mピークへ。何やら山名板が。何々「山田山」だとな。地形図に表記が無いのでこれはアウトだが、山田さんの気持ちも解らないでもないので、まぁよしとしよう。

     
   きつい下り    825mピーク

 この825mピークで後ろを振り向くと、今降りてきた尾出山の鋭い円錐形が樹幹越に大きく見える。なるほど峻険である。登り下りが大変だったのも頷ける。

 この辺からは緩やかな気持ちの良い尾根道が続く。降り積もった落ち葉が膝に優しい。サクサクと踏みしめる音も軽やかである。

地形図で、大久保の頭と記載がある平坦地あたりにシカよけネットが張ってあった。一部倒れてしまっている箇所もあるので事実上機能していないような気もするのだが、西側の谷から鹿が往来をするのだろうか。

     
振り返ると尾出山    木の葉を踏みしめて    シカよけネット

 大久保の頭から一旦転げ落ちるような下り、そして高原山へとまた登り返し。この辺は道がかなり不鮮明な箇所もあった。特に高原山直下付近では枝を払いながら登っていく箇所もあった。
 四方を木に囲まれた高原山(たかはらやま){754m}もまた静かな佇まいである。

     
西側眺望    シカの食害    高原山

 さあ、いよいよここからは下りオンリーである。辛かった登りからやっと解放される。山頂から歩き出すと、すぐ東側の眺望が開けた。向かう186号鉄塔から伸びる送電線が、更に下の下山通過点である185号鉄塔、そして向かい側の山の彼方まで伸びているのが見える。

 186号鉄塔に到着すると、遠く二股山や鳴蟲山、そして石裂山の山並み。手前には谷倉山が見える。今日のコースは後半なかなか良い景色に出会えることが出来る。天気も相変わらずどんよりとはしているが、雲も高いので案外遠望が効くようである。 

 186号鉄塔より鉄塔巡視路を下ることになる。よく整備された巡視路だ。それまでの難所の数々が嘘のような快適さである。

 ジグザグの下りを続け、やがて沢音が聞こえてきた。沢に一旦降りて対岸をよじ登るとそこに林道があった。登りに通った所とは別の林道であるが、これを降りていけば良いようである。やれやれ今日のコースはなかなか充実していたねとH君と話しながら歩いて行けば、向こうにパジェロミニの待つ駐車地が見えてきた。

     
186号鉄塔より    同左    駐車地へ帰還

概略コースタイム
駐車地発(9:26)-広場(9:40)-林道終点(10:00)-峠(10:36)-尾出山着(11:36)-
昼食休憩-尾出山発(11:53)-峠(12:25)-825mピーク(12:46)-高原山(13:28)-
186号鉄塔(13:44)-185号鉄塔(14:09)-林道出合(14:26)-駐車地着(14:32)

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コメント (4)

Non:

 こんにちは。早速拝見しました。なるほど、「山慣れない人は、この山での
単独行動は避けるべし」とおっしゃる理由が、分かるような気がします。
「沢沿いのトラバース」や「同左」から傾斜のきつさ、滑りやすさが窺えるし、
「きつい下り」からも厳しさが想像できるし…。
 ガイドブックについては、『栃木の山』よりも『栃木百名山』の方がより
注意を促しているような…。書き手の心がまえって、大切な気がします。

 さて、私の方は古賀志山まで、と思いつつも、森林公園をウロウロして終わりました。
公園内の紅葉が進んでいることもあって、サイクリング、ランニング、キャンプ、
BBQ、キャッチボール…と相変わらずの人気ぶりでしたよ。

まっちゃん:

Nonさん、こんばんは。

慎重に行動すれば極めて危険という程ではないのですが、少なくとガイドブックの情報って結構執筆されてからも山の状況が変わっている可能性が高い(眺望とかは木が育って随分変化)のでやはり鵜呑みには出来ないなと思いました。

森林公園は三々五々色んな方が楽しまれていてまさに市民のオアシス的な雰囲気ですよね。
たまには、古賀志山を眺めながらのんびり昼寝なんてのもいいなぁとは思うのですが、貧乏性なので、「どれ、天狗鳥屋あたりでも・・・」なんて事になりそうですね(爆)

せろー:

まっちゃん こんばんわ。

低山逍遥に よい季節になってきましたね。良い相棒との山登り楽しいですよね。

9日の日は 私も二股山へ行ってきました。今回は 下沢~展望所~南峰~北峰~下沢の縦走ルートでした。

誰にも会わず 静かな山旅でした。


来年の初日の出は どこの山頂で見るのですか?

まっちゃん:

せろーさん、こんばんは。
水曜から出張していてレスが遅れてしまいました。

二股山。案外静かな所ですね。
古賀志を歩き飽きた人が流れてきそうな感じではありますが、案外穴場かも。
真冬の山頂は、日溜まりが心地よさそうですね。

>来年の初日の出は どこの山頂で見るのですか?
うーーん。考え中ですが、男抱山の手軽さと好ロケーションはなかなか越えがたいからなぁ。

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