塩原周辺の栃木百名山で登り残しの安戸山。眺望はほぼ無く、ネット評ではかなり地味な山であるということでなかなか足が向かなかった。植物学者でもある昭和天皇が登られたという話は有名だが、季節を合わせればきっと色んな種類の植物や花を見ることが出来るのだろう。そんな安戸山だが、いつかは登ろうという気持ちで折りにふれ地形図を眺めていた。自然と目に入るのは南東に伸びる尾根。そして主稜線突端の1055mPが気になる存在である。事実「道の駅塩原」から眺めると、山頂と並ぶその姿は双耳峰のようにも見える。ならばこの二つのピークを踏んでやろうではないかと思い立ったのである。
今回のコースはガイド本に従い蟇沼側からのアプローチとする。蟇沼側の登山口はネットの情報でも皆さん苦労しているらしいが、お陰でいろいろな方々の情報を参考にさせていただき無事一発で到着することが出来た。民家へ入っていってしまいそうな雰囲気の林道入口を見逃すと苦戦する可能性は大である。
かなり道幅の狭い林道に入ると直ぐ鎮守様と貯水場があり、諸情報と一致して一安心する。貯水場脇には三台分の駐車スペースがあるが、先行車一台が変な駐め方でスペースを専有しているのでパジェロミニでさえも隣に駐められない。仕方なく鎮守様の前を失礼させていただいた。
枝打ちされた植林地は程よく光が差し込み、思った以上に明るい道が続く。鉄塔巡視路や林業作業道として整備されているので歩きやすさは遊歩道並だ。
道の駅塩原から安戸山 | 鎮守様手前のスペースを拝借 | 送電線巡視路でもある |
程なく堰堤から滝が落ちる沢に突き当たる。丸太造りの橋を渡り、そこを超えると今度は大きくジグザグに切られた道で植林帯を登っていく。巡視路だけあって勾配はいたって緩やかに作られている。歩くのが楽といえば楽なのだが、つい油断してオーバーペースとなり額の汗を拭うことしばし。
後ろにもう一人ハイカーが居るのは先程から気づいていたが、ハァハァと息を弾ませながら忽然と現れたのは柴犬である。首に発信機も付いていないし、猟犬で無いことは一目瞭然である。後続の単独ハイカーが連れているのだとばかり思っていたが、立ち止まって休憩している時に話をすると、先方もこちらが連れていると思っていたそうだ。先導するように先を行ったかと思えば突然谷の方へ消えてしまったり、気がつくと後ろから現れたりと常に付かず離れずで元気に飛び回る姿に心癒されるものがある。自分の前方にも二人組の登山者がいたが、そちらにも顔を出してるようで、行ったり来たりしながらハイカーの間を渡っているようだ。麓の民家に飼われており、この山を訪れるハイカーと共に山歩きを楽しんでいるようだ。鎖に繋がれ唯一の散歩も飼い主や社会の都合に依存されなければならない街中の犬達に比べればなんと幸せな生き方。
沢を渡る | 犬登場 | 案内してくれるのかな |
鉄塔への分岐を分けこの先はもはや山道と思いきや、なおも道はしっかりとしている。林道と呼ぶにはいささか道幅も狭いが、オフロードバイクなら自分程度のヘタな腕前でも充分通過出来る位なので、山歩きとしては若干面白みに欠ける感じもする。
やがて南側に眺望が開け安戸山の全容が見えるようになり、ここからはしばらく明るい空を仰ぎながら安戸山の裾へと回りんでいく。
巨木と石祠 | 安戸山北面は積雪あり | 光降り注ぐ道を進む |
左端が1055mP右のピークが安戸山。
突然広場が出現し、この先は四輪車でも通れそうなしっかりした林道が始まる。残念なことに、この林道の終点である塩原側は厳重にゲート封鎖されていて一般車の進入は許可されていないようだ。
林道手前で登山道は右手へと別れる。道標に落書きされた「何もみえんよ」に思わず苦笑。
左は林道、登山度は右へ | 道標をよく見ると・・・ | 下世話だが憎めない(笑) |
北斜面になるとにわかに残雪が出てくる。恐らく昨晩あたりに降った雪なのだろう。湿った重い雪は深いところで10センチ程度であろうか。特に歩くのに支障は無いが、先ほど見た安戸山の北斜面も遠目に分かるくらい雪が付いているので山頂付近の様子が楽しみである。
少しづつ雪が | 増えてきた |
徐々に間合いを詰めるが如くトラバースで高度を稼いで登るこのコースは、無駄な体力を消耗しないという点では秀逸である。林道を利用したコースだから当たり前と言えば当たり前だが、登山として考えるといささか面白みに欠けるのも事実。
そんなコースも安戸山北西の主稜線に乗るとやっと山道という趣が出てくる。そして最後は雪付の急登。先行者が足を滑られせて難儀しているのを下で見た自分は軽アイゼンを装着して余裕の通過・・・と言いたい所だが、足回りはともかく、やはり急登は息が切れる。ロープを使わず頑張るも、最後は見栄を捨ててロープを一握り。登り切った次のピークが山頂であった。
成る程、山頂は眺望も無く殺風景。「何もみえんよ」という落書きが頭をよぎって再び苦笑。しかし、本日の目標点は此処ではない。折角登り切った山頂だが、休憩さえ取らずに南東の尾根へと足を踏み出す。
こちらのルートを辿ると道の駅しおばら(アグリパル塩原)方面へ至るようだが、あまり歩かれている雰囲気が無く、一気に静かな尾根となる。蟇沼から山頂に至る前半の作業道歩きはあまりにも人工的なルートだったが、やはり山歩きはこういった所を歩かないと落ち着かないものだ。
樹間聳える1055mPが今日の目標点 | 静かな尾根を行く |
やがて、何も無い1055mPへ到達。ルートはこのあとストンと落ちるようにして続いているが、今日はここまでである。安戸山の山頂と同じで此処とて樹間の僅かな景色以外眺望は無いが、目論見の地点に到達出来た達成感と、想像通りの低い気温でいつものカップラーメンと食後のコーヒーが美味かったのは言うまでも無い。
話が突然変わるが、先日、時流に乗り遅れるまじと入手したGoogleの7インチタブレット(Nexsus7)について少し書かせていただきたい。
現在、いろいろとアプリを入れながら試行錯誤を重ねて楽しんでいるが、Anodoroid用アプリもスマホでユーザー規模が拡大して大抵のものは揃うようである。
ちなみに自分が入手したNexsus7だが、Wifiモデルしか無く自立通信が出来ないと思われがちだ。だが、2月にSIMフリー対応機種が発売されて、各通信会社のSIMを自由に装着して通信を行うことが出来るようになった。これをBIGLOBEがDOCOMO回線の2年縛りセットで売り出したのである。機体のローン代と毎月の通信料を含めても¥2,960とスマホを導入よりかなりお得。第一スマホの画面では老眼に厳しすぎるのだ(笑)
電話はガラケーで充分なのでタブレット機能だけあれば良いと思っていた自分だが、それでもスマホの誘惑と葛藤する日々もあっけなく終焉を迎えた。
機体を入手すると、しばらくは便利そうなアプリを試すのに時を費やした。そんな作業も一巡して「山」関係は?とアプリ検索をすると、やはりあるのだ。山関係のものが。
一つ目は、『山旅ロガー』
NexsusにはGPSが内蔵されてるのでこれの軌跡を取るソフト。単体では地図表示が出来ないが、ネットに繋がっている必要は無く、Wifiも通信も共にカットして更に画面を消灯してももOKなので電池の消費量が極めて少なく実用的である。恐らく日帰り山行ならば一日中電源を入れっぱなしでも問題無さそうである。採取したログはGPXファイルとして出力出来るので当然カシミール3Dで扱う事が出来る。
これはソフトとは関係の無い話だが、Nexsus内蔵のGPSの精度はかなり高く、今回の山行軌跡もガーミンのGPSMap60Csxと比べても遜色が無い。
二つ目は『地図ロイド』
こちらはネットに接続されていないと使えないが、なんと、うぉっちずを表示することが出来る。当然GPSで現在位置を更新したり軌跡の保存も可能である。設定でGoogle地図、Google航空写真、YAHOO地図、マピオン地図、マピオン3D地図も表示可能。Google地図を表示させるだけならNexsus7に標準でインストールされているマップソフトで充分だが、やはりカシミール3Dを使い慣れた者としてはうぉっちずが使えるのは大変嬉しい。これで、パソコンが無くても手軽に地形図を眺めながら新たなるコース模索が出来るというものだ(^^;
そして三つ目が『Yamanavi』
地図はカシミール3Dから自分で切り出してNexsusに配置する。地図をネットからダウンロードしながら動作する訳ではないので、電波の来ない山中でも使える。カシミール3Dで扱える地図は全てそのまま使えるので年間有償契約の「山旅マップ」などもそのまま持ち出せるというのは最大のアドバンテージである。加えて、カシミール3Dで作成したウェイポイントやルートも落とせるのでナビゲーションも可能である。
下の二枚の写真は、うぉっちずの3万5千分の一縮尺で切り出した安戸山北側エリア、そして9000分の一縮尺の安戸山からの南東尾根である。GPSMap60Csxで使っている地図が5万分の一相当なのと、画面の小ささ故に広域表示が大変見づらかったこと。そして何より10m等高線が7インチ大画面で見られるというのが実に有難い。流石にこのデカイ画面を毎回ザックから取り出して確認する訳にもいかないし、山用としてはやはり専用のGPS機に比べれば圧倒的に機能的が劣るのでNexsusだけで行動するわけにはいかない。だが、カシミールの画面そののままだから当たり前なのだが、この地図の見易さには心底脱帽だ。山の装備は軽量化が求められる筈なのに今後の山行は350gの増加は確定である。
何も無い1055mPへ到着 | 3万6千分の1縮尺で切り出した地図 | こちらは9000分の1 |
1055mPでゆったりとした時間を楽しんだ後は来た道を戻る。安戸山への登り返しにじんわりと汗をにじませる頃、またあの柴犬が現れた。何か言いたげなその背中を追いながら呟いた。お前ってほんとうに元気な奴だな。そして山が好きなんだね・・・と。
再び静かな尾根を戻る | 日なたは雪も無い穏やかな笹尾根 | 犬が再び案内 |
沢の脇にあった石像 |
概略コースタイム
駐車地発(09:53)-沢(10:03)-広場(11:06)-山頂主稜線北西肩(11:20)-
安戸山(11:39)-1055mP(11:59)-昼食休憩-行動再開(12:49)-安戸山(13:19)-
広場(13:52)-駐車地着(14:46)
コメント (12)
こんばんは。最初に「犬が再び」、かわいい~ですね! コメせずにいられない犬派の私(^^;)
安戸山について(道の駅の裏手なんですね~ そっかぁ…でした)、降雪後とはいえ、
こんなに雪が残っているとは驚きでした。そろそろ1000m以下の山で…とか、標高基準で考えて
いたのですが、ちょっと見直す必要があるかも…
Nexsus7のアプリ比較、よく分からないながら楽しく拝見しました。というか、
「機体のローン代と毎月の通信料を含めても¥2,960…」これに目を奪われてしまって(笑)
面倒くさがらずに、ネットや携帯を含めて検討すべき?とか、考えてしまいます(^^;)
投稿者: Non | 2013年04月16日 01:39
日時: 2013年04月16日 01:39
過去の記録を見たら2010年5月に道の駅から登ってました。
ダラダラと長い林道歩きが印象に残っていますが、中腹の山ツツジと山頂付近のシロヤシオが綺麗でした。
道標の「何も見えんよ」も覚えています(笑)
当日は山開きのイベントに参加したのですが、山頂からは往復で下山する人が多数派。
私は藪漕ぎ覚悟で1055P方面の尾根から林道に下りる周回コースとしました。
投稿者: リンゴ | 2013年04月16日 06:33
日時: 2013年04月16日 06:33
おはようございます^^
わたしもワンコ派なので、この柴ちゃんに出会いたいです!
でも、林道の道幅、、、狭いですか、、、緊張しそう、、、
ならば、リンゴさんのように道の駅に車を停めて
そこからスタートするのがいいですかね。。。私の場合。
塩原は、温泉と組み合わせての山歩きがしたいなぁと
栃木百名山ガイドブックを見ながら、いつも考えています。
例えば
新湯冨士(富士山)に登って、その日は塩原温泉泊
そして、次の日に安戸山、、、とか。。。
2日で2座は
筋肉痛で無理って、、、噂がありますけど、、、(爆笑)
PS ワンコさま、、、動画にすると
ナニコレ珍百景候補ですよ!!、、、たぶん、、、(汗)
投稿者: 亀三郎 | 2013年04月16日 07:38
日時: 2013年04月16日 07:38
この時期じゃそろそろ蛇が起きだすころですかね。
安戸山と富士山は蛇がたくさん出てきた嫌な記憶が^^;
うぉっちずで見ると道の駅の後ろにある神社マークの所から上の広場まで林道が繋がっていて、おそらく車でいけるんじゃないかと思います。
おそらくというのは、その脇にMTBのシングルトレイルがあってそちらで下ってきちゃったのでした。
地図ロイドは地図をキャッシュしておけるので、前もってそのエリアの縮尺を見ておけば電波が届かないところでも使えます。
ガーミン買うまでは重宝してました^^
投稿者: はら | 2013年04月16日 18:45
日時: 2013年04月16日 18:45
Nexsus7、ご購入おめでとうございます。
私も数ヶ月前に投売りしていたソニタブP+ワンコインSIM
を買って山へ持って行ってます。
休憩の時にしか使いませんが1度使うと癖になりますね。^^
勿論、メインで使うのはガーミンですが。
投稿者: Rindou Hunter&山旅DIARY管理人 | 2013年04月16日 19:05
日時: 2013年04月16日 19:05
Nonさん、こんばんは。
自分は山の中でよく犬に逢いますが今までは殆どが猟犬でしたから、こんなのびのびとした姿のワンコを見るのは初めてでした。
蟇沼側登山口から1055mPまで、そして登山道周辺の谷や尾根も全て熟知しているようで「そんな所へ行ったら危ないよ」なんてちょっとアホな自分の心配をよそに山中を飛び回っていました。
ホント、自由奔放で幸せな奴(犬)でしたよ。
Andoroidアプリは思った以上にいろいろあって面白いですね。
自分はスマホは不要ですが、既にAndoroidスマホをお持ちなら、今回紹介したアプリはお勧めです。
投稿者: まっちゃん | 2013年04月16日 22:22
日時: 2013年04月16日 22:22
リンゴさん、こんばんは
2010年の記事を拝見しました。
花、花、花。凄い事になってますね。
こういうタイミングで登るとまた違ったイメージになるのでしょうね。
山開きがあったのですね、この山は。
山開きと言えば、昨年挫折した三倉山。
今年は大峠からの周回を送迎バス頼みでチャレンジしたいところです。
投稿者: まっちゃん | 2013年04月16日 22:33
日時: 2013年04月16日 22:33
亀三郎さん、こんばんは。
蟇沼の駐車地は大きな車だとちょっと難儀するかもしれませんが、民家脇から駐車地まではほんの僅かなのでそれほど心配無いと思います。
土曜日曜だと結構人が来るので駐車スペースが一杯なんてこともありそうですが、平日ならばその心配も無いと思います。
蟇沼側からでも道の駅からでも、この山は結構林道(跡)歩きが長いのが長所でもあり短所でもあり。
良く歩かれていてコースが明瞭なのは蟇沼側だと思います。
安戸山に花の季節が訪れたら亀家も是非お出かけください。
きっとワンコがお出迎えにあがると思いますよ(^_^)
投稿者: まっちゃん | 2013年04月16日 22:42
日時: 2013年04月16日 22:42
はらさん、こんばんは。
蛇は自分も苦手です。
マムシなどは論外ですが、無毒の奴でもなんとなくあの威圧感に負けてしまいます。
山で逢いたくないのは、熊>スズメ蜂>蛇 です。
道の駅からの林道の話、そういえば以前伺ってましたね。
もう少し季節が良くなったらジェベルで探索してみる価値ありですね。
地図ロイドは地図のキャッシュが可能なんですね。
情報ありがとうございます。
次回山行が楽しみです。
投稿者: まっちゃん | 2013年04月16日 22:56
日時: 2013年04月16日 22:56
Rindou Hunter&山旅DIARY管理人さん、こんばんは。
ハンディGPSの小さな画面から比べると大画面で地図が見られるのは結構快感ですね。
おっしゃるとおり、休憩の時はザックから取り出してニヤニヤしながら眺めておりました。
スマホ使いの方は電池の減りを気にされますが、少なくともNexsus7の場合は5時間ログを取りつづけてたまに画面見たりしても電池消費が10%程度だったのは驚きです。
何にせよ、新しいものの機能性能にはには目を見張るばかりです。
でも、山中で行動中はガーミンが基本ですね。
投稿者: まっちゃん | 2013年04月16日 23:06
日時: 2013年04月16日 23:06
こんばんは。
安戸山へ行かれましたか~ ケン坊も3年前に行ってきました。
まっちゃんのブログを読んでると当時のことが鮮明に蘇ってきました。
でも1055Pは”藪こぎ”と教わったので止めた記憶が...
「何もみえんよ」の落書きはまだありましたか? ケン坊もゲラゲラ!
↑リンゴさんと同じ日に登ったかも? 山開きの日だったから...
ただ、ケン坊は1時間以上も遅れ一般の参加者として登りました。
犬の付き添いがあるなんて楽しい山歩きをされましたね。
でも雪がこんなにあるなんて...ビックリです。でも1ヶ月早いから
雪が残っていてもしょうがないんでしょうね。
素晴しい文明の利器を持参して...ケン坊には雲の上の話なので>笑<
投稿者: ケン坊 | 2013年04月16日 23:28
日時: 2013年04月16日 23:28
ケン坊さん、今晩は。
「何もみえんよ」はホント笑えますね。
犬同伴というのも面白い経験でした。
猿とキジがいたら桃太郎ですね(^.^)
タブレットは直感的に使えるしパソコンに比べるとソフトのインストールも楽ちんなので、お勧めのデバイスだと思いますよ。
投稿者: まっちゃん | 2013年04月17日 00:02
日時: 2013年04月17日 00:02