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赤薙山

アーカイブ:日光の山達  日時: 2012年02月19日 20:12

-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --
赤薙山の過去の記事
  2010年8月29日 女峰山を目指して
  2009年5月9日 快晴の赤薙山と丸山
  2008年9月13日 久々の山行にグロッキー
関連山行
  2011年2月19日 雪の丸山に登る
  2007年7月8日 雨の丸山を登る

 丁度一年前の同日、霧降高原スキー場跡から丸山に登った。
 その時に、赤薙山へ至る道筋の雪の感触を掴んでいたので今年は是非赤薙山の山頂を踏んでみたいと考えていた。
 霧降高原近辺は基本的に太平洋側平野部の天気が支配するエリアである。冬の西高東低の気圧配置では晴天に恵まれる。だが、日本海側でどっさり落とした雪の名残が此処にもそれなりに降るので、適度な雪と快晴と、冬の赤薙山は実はいいとこ取りの山なのである。


 外が白み始める頃に自宅を出発すると、大谷川の向こうに現れた日光連山が朝日に赤く照らされている。これから向かう赤薙山の頂きに思いを馳せると心持も自然と高揚する。
 今年は雪が少ないのか、旧霧降道路も標高1,000m付近までは路面にまったく積雪が無い。圧雪路を慎重に進むとやがて旧第三駐車場へ到着。去年は駐車場の入口が閉鎖されていたが、現在工事関係車両用に駐車場が開放されているようだ。

 道路をまたぎ、建設中のロッジ(旧リフト乗り場あたり)脇で足回りを整える。念の為にスノーシューも持ってきたが、雪質を見て不要と判断して車に残置した。
 本日の装備はワカンの下に9本爪アイゼン(6本+横3本の変わった軽アイゼン)である。同時装着は今日が初めてだが効果は如何に。

 取り付きのトレース痕はあちこちに付いているが、主にバックカントリースキーのもののようだ。いずれも昨日かそれ以前か。半分雪に埋もれつつある痕跡を追い、本日の初トレースを刻んでいく。

     
真正面にこれから登る赤薙山    今日の装備はワカンの下にアイゼン    元スキー場の最下ゲレンデより出発

 リフト(スキー場)跡地の遊歩道化整備は着々と進んでいるようで、真新しい案内板などが整備されている。脇には木製の新設階段があり、完成後は今歩いている下が日光キスゲの花畑となるのだろう。ゲレンデを横切るコースなども設置されているようで完成後が楽しみだ。

 雪は適度に締まっていて概ね良好。油断していると時折脛あたりまで潜りながらも、表面がささくれだった硬い箇所を選ぶと沈まず快適に登っていける。斜面一杯に屈託なく描かれているバックカントリースキーヤーのシュプール。営業中のゲレンデでは味わえない爽快感できっと滑っているのだろう。

     
新ハイキングコースが整備されている模様    ザクザクと登る    我が足跡

 斜度のきつい旧第四リフトの区間は昨年同様に辛い登り。何度も何度も立ち止まりながら登っていく。今日は早立ちだから時間の貯金は充分。体力温存、のんびり確実に行くべし。

 最後の急斜面をこなしてキスゲ平へ。今日の本命、赤薙山とそこへ続く雪の稜線がいよいよ姿を表す。

     
快晴なり    キスゲ平までもう少し    キスゲ平到着

 ザックを降ろしてしばし休憩としたが、流れる雲が一瞬太陽を覆うと見る見る間に体が冷たくなってくる。

 この先、焼石金剛までは比較的緩斜面なので楽に登って行ける。先人のトレース跡も所々雪で覆われ消えては現れ。ゲレンデ同様、表面の風紋が鋭い所を選んで歩けば踏み抜きも無い。たまに踏みぬいてもワカンが効いていて心強い。焼石金剛付近の夏道は岩と笹で案外歩きにくいものだが、一面が雪に覆われている今の季節のほうがルートに気を使わなくてすむ分歩きやすいと感じた。

     
   山頂と直前の痩せ尾根    焼石金剛から

 山頂直下にある樹林帯手前の痩せ尾根が見える。夏道で歩くこの稜線は景色がすこぶる良く、赤薙山登山の楽しみと言ってもよいだろう。南側に広くえぐられた斜面は、この季節、純白の雪に覆い尽くされ目も眩むばかりである。

 この痩せ尾根に雪庇があるというのを山レコの報告などで読んでいた。今日も、ここの状況によっては撤退も充分視野に入れていた。

 一箇所目に突き当たった雪庇は右手にトレースあり。北側の樹林の中を縫って進む。やがてトレースは再び稜線へ引き戻され、足幅程度の所を伝っていく事になる。雪の表面は硬くもなく新雪でも無く丁度良い塩梅にワカンが噛む硬さ。少し蹴り込んでみても下層がクラストしている感じは無い。ゆっくりと一歩一歩慎重に進む。やがて樹林帯脇にある道標地点に到達してほっと一息である。

 樹林帯の中は雪付きも少なくてきっと楽だろうと考えていたが、案外これが甘かった。夏道と違ってトレース痕はほぼ直線的に付けられている。急斜面になると、前爪が無いアイゼンなので滑りやすく大変登りづらい。苦し紛れにトレースを外すと踏み抜いたりするので、大人しくトレースを追うほかないのだ。危険こそ少ないが、体力を思いの外奪われ今日一番の難所だったかもしれない。

     
痩せ尾根注意    樹林帯入り口でほっと一息    夏道では見られない光景。ここを登っていく

 女峰山方面へ向かう巻き道もご覧の通り。トレース痕のかけらも無いこのルートは北側にあるので、下手に突っ込むのは自殺行為であろう。

 夏道で記憶鮮やかな、道を塞ぐような倒木くぐり。次に大岩を見るとやがて山頂の鳥居が目に入った。無事赤薙山へ到達である。

 とりあえず山頂は素通りし、かなり薄いトレース痕を辿って西側の肩に進んでみる。奥社跡方面に向かう一つ目のピークへの道筋は、沈黙に閉ざされた感のある近寄りがたいものがあった。

     
女峰山への巻道も深く雪に閉ざされている    赤薙山西の肩より女峰山へ続く奥社跡方面    流石にこの辺は膝までもぐる

 山頂まで戻り思案した。景色の良い焼石金剛まで下って食事か・・・。痩せ尾根もある事だし山頂で腹ごしらえと鋭気を養ってから出発したほうが良いだろうと結論付ける。

 いつものメニューとコーヒーで腹を満たした後、樹の枝に脚が曲がる三脚をくくりつけて初めてセルフ撮りなるものにチャレンジした。その栄えある(?)第一作目が下の写真である。ポーズが硬い、表情が硬い(モザイク処理済なので読者にはわからないだろうが)、我ながらつまらない写真なのだがご愛嬌。色彩感覚に乏しい自分だが、こうしてみるとこのスッパッツの色はどう考えてもアンマッチで笑える。まぁ、恥を偲んでご愛嬌写真と一笑いただければ幸いである。

     
   初めてのセルフ撮り。笑える一枚    いつものメニュー

 食後は山頂の裏手から見える女峰山方面の景色を堪能する。眼下には、見えないが先日訪れた雲竜渓谷があると思えば感慨もひとしおである。

 このコースは帰路はひたすら下るだけ。滑らないように気をつけて、ご褒美のような景色を楽しみながら降りていく。稜線から見る風景は広大で素晴らしいが、雪のついた枝間から見る無雪の平野部も色彩的に素晴らしく贅沢な風景である。

     
女峰山黒岩、直下は雲竜渓谷    女峰山は険しく気高い    樹林帯から今市方面

 痩せ尾根通過は先程の自分のトレースがあるので幾分安心だが、依然気を抜くと危ないので神経質に進んだ。

 焼石金剛付近まで降りてくると、自分以外に下山方面の足跡が混ざる。対向した登山者は居なかったので、どうやら途中で引き返したようである。

     
痩せ尾根と高原山    北側も雪庇があるので油断出来ない    焼石金剛付近から

 キスゲ平付近では登ってくる登山者に遭遇。足元を見るとツボ足で、何も付けずによく此処まで登ってこれたものだと感心した。この登りの緩い区間で少し登っては休み休み。いささか疲れた足取りである。決して早い時間とは言えないだけに赤薙山の山頂狙いも如何なものかと思ったが、挨拶だけで別れたのは今となってはいささか心残りであった。

 程無く丸山方面からスノーシューの若者が降りてきた。合流した快活な彼としばらく会話を交わし、最後のゲレンデ下りに興じる。第四リフト跡はやはり急で、ワカンのテールに体重をかけるとスライドするように下降できるので面白い。尻餅をつくとそのまま数メートルくらいは滑落するが、此処は元ゲレンデなので怖いものは無い。ソリでもあれば滑降でもしてみたいものだ。

 登りで散々汗をかいた区間もあっという間に終了。昨年に続き無風快晴の好天に恵まれたことに感謝しながらゲレンデを後にした。

     
外山、鳴虫山、鶏鳴山、笹目倉山       駐車場まであと僅か

概略コースタイム
駐車場発(7:22)-第四リフト跡始点(8:04)-キスゲ平(8:43)-焼石金剛(9:49)-
山頂西の肩(10:47)-山頂着(10:57)-昼食休憩-行動再開(11:42)-焼石金剛(12:18)-
キスゲ平(12:47)-駐車場着(13:25)

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コメント (10)

お疲れ様でした。
天気最高で、気持ち良さそうですね(^_^)/

いわっ歩:

女峰山や他の雪景色青空が、何とも言えない澄んだ色合い。
冷たい空気を肌で感じながら、見る雪山の景色は素敵でしょうね。
山の雪の状態によって、装備も色々あるようだし、ルートも心配・・・雪山のハードルは高そうです(^^;)

せろーG:

雪山登山の楽しさをしっかり堪能してきましたね。
リフトを使っていないのですから標高差も結構あったのでは?

さとう:

いーなー!!
景色も良くて気持ちよさそう!
まっちゃんさんが歩いていた頃、時折外を眺めてため息つきながら資料作りしてました。
(T_T)
山行きたいです。。。

まっちゃん:

>フライマンさん

冬以外の霧降高原はなかなか天気に恵まれない、というか"霧に恵まれ過ぎている"といった方が正解のような気がしています。(だから霧降なんでしょうね)

雪山は天気が良いのが、気分的にも安全マージン的にも一番だと思います。

まっちゃん:

>いわっ歩さん

不思議ですね。日常生活だとちょっと寒いだけで縮こまってしまいますが、山に入ると途端に元気が出てしまって。困り者の中年ですね>自分

まっちゃん:

>せろーGさん

標高差約700mですが、雪に足を取られる分夏道よりも疲労したような感じがします。
というか、やはりワカン+アイゼンの足捌で長時間歩くのに慣れていないので、いつもと違う筋肉が疲れました。

夏場ですと人気の赤薙山の山頂は、雪にひっそり閉ざされた静かな空間でした。

まっちゃん:

>さとうさん

お仕事お疲れさまでした。
天気の良い日は平日とて気もそぞろ。ましてや休みの日となればなおの事。
自分も3月は遊ぶ時間が極端に制限される予定です。(仕事じゃないんですが)

藪計画も今シーズンの予定消化未了だし、こちらは木々が芽吹いてくるとそろそろシーズンオフなもので(笑)
2月中に今年はまだ一回も履いていないスノーシューをやりたいと思っているのですが、25、26は天気悪そうです。

Non:

 こんばんは。じっくり拝見しました。雪道の状況としては、山王帽子と同じような感じです。トレースが
あればまだ潜らないけど、一歩外しただけで抜け出すのも大変な感じで…(笑)
 ただ、雪庇の存在とゲレンデ跡、これらが赤薙の特色ですよね。山王帽子は樹林帯のみで、クラストと
いうのですか、それも山頂部だけ。雪庇ももちろんありません。雪庇は間近に見ただけで、緊張しそう…
 あと、最近、雑誌やショップの店頭で見る大型スコップのようなやつで、ゲレンデ跡を滑りた~いと
思いました。遊歩道の完成も楽しみですが、ゲレンデ滑りもすごい楽しそう~(^^)
 それと、女峰山と今市方面の展望は秀逸ですね! じっくり眺められたら、十分に満足しそうです。

まっちゃん:

>Nonさん

雪山は足が埋まると体力消耗しますよね。
ラッセルで登っていく人ってやはりかなり体力あるんだなと思います。

稜線の雪庇付近は、下層クラスト表層新雪だと怖いなと思いましたが、適度な硬さで助かりました。

>大型スコップのようなやつ
実はワイルドワンで売ってるのを見て衝動買いしちゃいました。(と言っても確か525円)
今回はいろいろ装備があったので持って行かなかったのですが、機会があったらどこかで遊んでみようと思っています。
本当は子供用のプラそりが最高なんですけど、流石に持っていくのが大変(笑)

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    >Nonさん 雪山は足が埋まると体力消耗しますよ
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    >フライマンさん 冬以外の霧降高原はなかなか天気
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    いーなー!! 景色も良くて気持ちよさそう! まっち
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    雪山登山の楽しさをしっかり堪能してきましたね。 リ
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  • いわっ歩
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    女峰山や他の雪景色青空が、何とも言えない澄んだ色合
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  • フライマン
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    お疲れ様でした。 天気最高で、気持ち良さそうですね
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  • 北関東の山歩き
    ご夫婦で仲良く山歩き。栃木県内や宇都宮近郊の山はもとより、HPのタイトル通り北関東の山並みを歩かれているNonさんのサイトです。楽しそうな山行記録を読みながら、「是非自分も歩いて見たい」と思うこと度々。
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